金次郎、我流の記憶術を紹介&京極堂にはまる

このブログでも何度か書いておりますが、このところお客様の前でプレゼンをする機会が多く、その際には用意したスクリプトを読むのではなく、話すべき内容をできるだけ記憶してお話するよう心掛けております。そのプレゼンを聞いている同僚から、どうしてそんなに内容を覚えられるのかと尋ねられることが結構多いので、金次郎なりの記憶法についてちょっと書いてみたいと思います。ただ、そうは言っても特別な技法を用いて記憶しているわけではなく、当たり前すぎて恐縮ですが、①先ずはとにかく何度も話す内容を繰り返して口に出す、が最も効果的だと思います。

自分の中でこの手法を〈幼児法〉と勝手に呼んでおりますが、小さい子供がどんどん新しい物事を覚えられる背景としては、勿論脳が柔らかく吸収し易いというのは有るのでしょうが、とにかく飽きずに周囲の大人がうんざりするほど何度も同じことを繰り返し言い続ける幼児ならではの行動様式が記憶の定着に寄与していることは間違い有りません。大人になると同じ事を繰り返す集中力も時間も無くなってくるのでこの①の効果は見過ごされがちですが、50歳を過ぎ脳細胞がかなり死んでしまった金次郎でもこの方法が有効である点は実証済みですので、若干時間は掛かりますが、急がば回れということで先ずはこのやり方がおすすめです。そして、とにかく効率的に記憶するためには、②必ず何かと関連付けて覚える、ことが有効だと思います。例えば、箇条書きにした5行の文章を記憶する必要が有る場合は、覚えるべき文章のそれぞれに番号を振るだけでも記憶の定着度合いが全然変わってきます。1から5までの番号を振ったことを覚えていれば話すべきことが5つ有ることが記憶の枠組みを構成して全体を頭に入れやすくなりますし、数字と文章が関連付けられることで、どういう順番で語るべきかも記憶に残りやすくなるという理屈になります。パワポを用いたプレゼンなどでは、スライド番号と説明内容を結びつけることを意識すると頭に入り易くなると思います。また、③こちらはアウトプットする際により有効ですが、例えば10個のキーワードを覚えようとする際に、頭から記憶しようとするのではなく、1個・4個・5個のように幾つかのグループに分け、それぞれのグループに順番を付けて1個の後は4個話す、その後は5個について話す、のように構造を覚えるように意識すると頭からなかなか引っ張り出せない、所謂〈真っ白になる〉のようなケースが避けられると思います。後は④重要なキーワードにできるだけ関連する言葉を紐づけて覚えておくと、全てを完璧に記憶していなくてもキーワードさえ浮かべば自然にそれに関連した幾つかの事項が思い出せるので便利です。この場合でもその関連を頭に入れる際には①の繰り返し手法をさぼらずやることが重要では有りますが。②と似ていますが、よく記憶術の本で紹介されている方法としては、⑤頭の中でイメージした画像と記憶すべき事柄を関連付ける、というものが有ります。金次郎はあまりこのやり方は使っていませんが、頭の中で見慣れた町の風景をイメージし、そのイメージの中に存在しているもの、例えば電柱やポストやお店の看板などに覚えるべき事柄を貼り付けていく方法で、一応は右脳と左脳を上手く同期して使うことで記憶の定着を助けるとされています。番外編としては、全く理論的な裏付けは無いものの、⑥単調な運動をしながら記憶したい事柄を頭の中で繰り返すのが効果的なような気がしています。金次郎は家で踏み台昇降運動を一日2回、だいたい30~40分/回やるようにしているのですが、この運動を汗をかきかきやりつつ記憶を試みると結構定着率が高いように感じています。更に精神論としては、全くお勉強していなさそうなタレントやアイドルの方々でも、歌番組では歌詞を、ドラマでは台詞を、バラエティでは台本をきちんと覚えて問題無くパフォーマンスされていることを思い出し、自分にも絶対できる筈だと言い聞かせることも気休めとしてはかなり有効だと思います(笑)。

さて、本の紹介です。京極夏彦先生の百鬼夜行シリーズ17年ぶりの新作である「鵼の碑」(京極夏彦著 講談社)がいよいよ発売となりました。恥ずかしながら、このシリーズはとにかく一冊一冊がボリューミーなのと妖怪系のお話というイメージが先行してしまい、読書家にあるまじきことに未だ手つかずにしてしまっておりました。今回この新作発売を契機にシリーズ読破に取り組んでみようと思い立ち、著者デビュー作でありシリーズ第1作となる「姑獲鳥の夏」(同)から読み始めることといたしました。そもそも「うぶめのなつ」というタイトルを正しく読むところから苦労するハードルの高さであり(笑)、シリーズの中では短い部類に属するこの作品でも621ページという大ボリュームなこともあいまって、読破するのに苦労するかと思いきや、あまりの面白さに全くその長さを感じず気付けば一気に読み終えておりました。主人公は〈憑物落とし〉を生業とする〈拝み屋〉であり古書店京極堂の店主である中禅寺秋彦(仇名は京極堂)で、この京極堂が百鬼夜行に出てくる妖怪は勿論、古今東西のあらゆる事象に通じている信じられない博識の人物で度肝を抜かれます。本作でも、20か月以上懐妊状態を続けているという謎の女性久遠寺梗子の話が得体の知れぬ物の怪姑獲鳥の物語として展開する訳ではなく、京極堂による量子力学や不確定性の話がいきなり始まったり、「この世には不思議なことなど何もないのだよ」と平然とコメントしたりと、ポジティブに先入観を裏切られどんどん京極堂という人物へのリスペクトや信頼度が増し物語への没入度が深まる一方でした。久遠寺牧朗の失踪、嬰児殺しの噂など産院を営む久遠寺家にまつわる数々の怪奇譚や謎、語り手関口の不安定な精神の根底に有るトラウマなど、一見妖怪の仕業に見えてしまう事象を、人間の心の闇が生み出す〈憑物〉として明快に祓い謎を解いていく京極堂の快刀乱麻を断つ活躍に胸がすく思いでした。一方で、古来妖怪とは人間の内面の暗い影の部分が生み出したある意味リアルな存在である点に目を向けることとなり、百鬼夜行に象徴されるそのバラエティの多さに別の意味での怖さを禁じ得ない読後感でもありました。更に、うつ病の文士関口に加え、破天荒で京極堂と対極をなす人物として描かれる榎木津や刑事の木場、京極堂のキュートな妹敦子などシリーズを通じて活躍する魅力的な脇役達の存在もこの物語世界の広がりを期待させる一つの要素になっているかと思います。感想が長くなってしまうので、とりあえずこのシリーズは毎回一冊ずつ紹介していくことといたします。

「成瀬は天下を取りにいく」(宮島未奈著 新潮社)は発売当初非常に話題になった本でしたので、本屋大賞候補作へのノミネートも意識しながらかなり期待して読み始めました。閉店が決まった地元の西武百貨店にカウントダウン期間の夏休みじゅう野球のユニフォームを着て毎日通う成瀬、突然幼馴染の島崎を誘ってM-1予選に出ようとする成瀬、高校入学と共に髪の毛の伸び方の検証をすべく丸坊主にする成瀬、と主人公成瀬は基本的に自分の世界だけで生きているちょっと変な子で周囲から浮いています。正直この主人公に焦点を当てて読んでしまうと、彼女が周りに溶け込めない状況を強いメンタルと鈍感力で乗り切っているリアルに少し悲しくなってしまい、どうしてこの本売れているのだろうという印象を禁じ得ませんでした。ただ、読み進めるうちに、幼馴染島崎の暖かい眼差しが常に成瀬を見守っている事実に気づかされ、そのことで本当に少しだけであっても成瀬が変わっていく様子が感じ取れるようになると、この作品がどのような青春小説であるかを理解することができ金次郎の評価もある程度上がりました。でも、この本がノミネートされてしまったら順位予想にはかなり悩むと思います。ノミネートされないで!(笑)

一連の騒動で完全に死語になりつつある〈ジャニーズ系〉という言葉ですが、新事務所の名前が○○と決まったら〈○○系〉という形でイケメンを表す言葉として復活するのか、その忌まわしさ故にこの言葉が意味していた概念そのものが消えてしまうのか、少し注目しております。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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