【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2023予想対決の結果を発表!

いよいよこの日がやって参りました。ただなんとも悩ましいことにこの重要な本屋大賞発表が行われる4月12日(水)の夕方のタイミングで、金次郎と宿敵Mが揃ってお客様にプレゼンを行いそのまま食事に流れるという予定が入っており、結果が気になるあまり月や星やクイズやノアの方舟の話をしてしまい、本業のプレゼンを疎かにする事態になってしまうのではと大変危惧しておりました。ところが幸運にも今年は午後の早い時間に順位が発表され、アポイント時には勝負の結果も判明していたので、若干ニヤニヤしながらではあったものの、ご機嫌な感じでプレゼンを無事終えてその後の会食も存分に楽しむことができて良かったです。そう、既に行間から喜びが滲み出てしまっておりお分かりかと思いますが、昨年に引き続き今年の対決も金次郎が制し対戦成績を3勝2敗の勝ち越しに持ち込むことができました。

ただ、昨年は148点vs207点という大差での決着だったものが、今年は106点vs110点というこの対決至上稀に見る接戦となり、かつ5年間の切磋琢磨の甲斐有ってか予想と結果の乖離度合いを示している点数の絶対値も急速に小さくなっていて来年あたり大賞も含めかなり当たってしまうのではないかと今から期待を膨らませております。ちなみに、2019年は123点vs143点で金、2020年は196点vs142点でM、2021年は185点vs135点でM、2022年は148点vs207点で金の勝利という戦績になっております。(数字が小さい方が勝ち。一番下に点数計算のルールを掲載しております。)

前置きが長くなってしまいましたが、本屋大賞2023を制したのは443.5点を獲得した「汝、星のごとく」(凪良ゆう著 講談社)で、見事王様のブランチBOOK大賞との二冠を達成いたしました。凪良先生は映画化もされた「流浪の月」(東京創元社)以来二度目の戴冠となり、恩田陸先生に続き史上二人目の本屋大賞複数回受賞者となりました。おめでとうございます!金次郎は初読時には気づけなかった本作が持つ、ありふれたストーリーを繊細にドラマチックに描き出す凄さに再読してみて漸く気づいて心を打たれ、滑り込みでM同様2位に推すことができ、ぎりぎり何とかなった格好です。混戦と言われた今回の本屋大賞ですが、金次郎がチェックしたどの予想でも本作は上位に選出されており、終わってみれば断トツの大差で大賞という正に横綱相撲と言える圧勝でした。では、そんな秀作をどうして大賞と予想しなかったかと言うと、ひとえに既にメジャーとなった凪良ゆうを敢えて推す必要は無かろうという暗黙のプレッシャーというか呪縛の故であり、そういう意味では一番面白いけど大賞にはならないだろうと勝手に思われた本作を除いた9作の争いをして混戦と言わせしめていたのだと感じます。凪良先生、大変恐縮ですが今年はもう面白い作品を書かないでいただけますでしょうか。次回の予想が難しくなってしまいますので。そして、正に混戦との評判にふさわしいサプライズで、ダークホース(と我々が勝手に思っていた)の「ラブカは静かに弓を持つ」(安壇美緒著 集英社)が388点という高得点をマークして2位に入りました。金次郎、M共に内容のこなれてなさが気になって6位予想でしたが、改めて音楽ものの強さを再確認させられる結果となりました。ただ、本作は第25回大藪春彦賞を受賞しており、音楽ものとしてはディテイルが弱いと見るのではなく、金次郎が辛いと感じたサスペンス的、冒険的あるいはスパイ小説的な特徴に注目しそこに本作の真価を見出してもう少し上位に予想すべきだったというのが反省点です。まだ3作目という安壇先生が次回も斬新な切り口の作品を繰り出せるのか今から楽しみでたまりません。3位には「光のとこにいてね」(一穂ミチ著 文藝春秋)が337点で入りましたが、一穂先生は二年連続この順位に甘んじることとなり、大賞に推したMの期待を微妙に裏切る結果となりました。金次郎は4位予想でほぼ想定通りでしたが、発表当日に食事をご一緒した読書家のお客様が、なぜ幼少期に偶然出会った主人公の二人がお互いへの思いを深めて行くことになったのかという本作の背骨とも言える部分に納得感が無かったのが残念と述べられていたのが大変印象的でした。結末のリアリティについては金次郎とMは最後まで意見合わずです(笑)。

【Mの敗戦の弁】

近年まれにみる接戦だったのではないでしょうか。凪良ゆうの二度目の大賞受賞はないという(見えざる)前提に縛られず心の赴くままに1位に据えていれば難なく勝利を収めていたわけですが、たらればを論じても仕方ないので、素直に負けを認めます。一番の敗因となった「宙ごはん」については、確かに金次郎さんのコメントに首肯する部分多く、上位に入らなかったのも納得です。他方、「月の立つ林で」の予想では勝負に徹し、ここで大きな痛手を負うことはなかったので、そこは自分で自分を褒めてあげたいと思います。これで2勝3敗と負け越し状態。カド番(ではないですが)の千代大海が如く来年は粘り強さを発揮して、まずはイーブンに戻したいと思います。

以下、4位以降の順位と簡単なコメントです。(関連記事はこちら:【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2023順位予想対決!

4位(金5、M5)「爆弾」(呉勝浩著 講談社)307.5点:あれほどにキモいスズキタゴサクへの不快感をものともせずに上位進出を果たしたという結果が順位以上にこの重厚な物語の力を雄弁に語っていると思います。ただ、このキモさがもう少し軽ければいずれも横山秀夫先生の「64」(文藝春秋)や「ノースライト」(新潮社)のようにもっと上位に食い込むことも可能だったかもしれません。金次郎とMの感想戦では、Mがしきりにリアルの世界で模倣犯が出現するのではないかと懸念していました。

5位(金1、M4)「月の立つ林で」(青山美智子著 ポプラ社)254.5点:金次郎が大賞に推す一方でMは心の最下位としたこの作品、結果はちょうど中間の5位となりましたが、私情を捨てて勝負に徹したMの4位予想が水際立った妙手であったと思います。確かに上位と比較すると人物造形が平板でやや盛り上がりに欠ける展開と捉えられても仕方無く、今年の書店員は心を癒す静かな感動よりも、心をかき乱す濃厚なキャラや物語を求めていたことを後の祭り的に実感いたしました。ただ、Mの好みと全く合わずMの緻密な予想を混乱させ得る青山作品は貴重ですので、青山先生には次回のノミネート作にも残る作品を是非世に出していただきたいと切に願います。

6位(金7、M7)「君のクイズ」(小川哲著 朝日新聞出版)244点:二人とも予想はほぼ当たっており、出版業界の小川先生押しの圧力が想像よりやや強かったという印象です。直木賞作「地図と拳」(集英社)をもう少し読み易くして、ある意味読者に迎合というか歩み寄った作品が出てくると次回は台風の目になること間違い無しの注目作家だと思います。我らがクイズ王Mは作中の重要キーワードである〈クリーニング小野寺〉が実在することを何故だか確認しておられました(笑)。

7位(金8、M10)「方舟」(夕木春央著 講談社)232点:とにかく暗くて登場人物がやや不潔、結末のどんでん返し一発狙いのプロット構築が見え見えということで7位であっても若干過大評価ではないかとの印象です。金次郎はタイトルをこれにするなら哲学的にもう少しノアの方舟に絡めて欲しかったですし、そちらに寄せないならばタイトルは違うものが良かったかなと少し思いました。

8位(金9、M3)「宙ごはん」(町田そのこ著 小学館)225.5点:さて問題の本作、予想サイトでは上位に推す人が多く正直焦りましたが結果は8位と町田先生としては去年の9位に続き無念の下位沈没となりました。金次郎とMの意見が、扱う課題を絞るべき(ネグレクトと過干渉の両方出てくるのはやや辛い)、ごはんの中身の必然性を担保すべき、犯罪加害者の家族を辛い目に合わせ過ぎ、と珍しく一致した感想戦となり盛り上がりました。幼少期から既に完成の域に到達していた中ちゃんの人格がとにかく尊い作品でした。

9位(金10、M8)「川のほとりに立つ者は」(寺地はるな著 双葉社)224.5点:寺地先生はもっともっと面白い作品を書く力の有る作家さんですので、次回は確実に上位を狙える感動の物語を紡いでくださると確信しております。奇をてらうことなく、大賞作である「汝、星のごとく」のように、社会の周縁で苦しむ市井の人々をしっかり描いていただければ全く問題無く上位争いに加わってくると思います。

10位(金3、M8)「#真相をお話しします」(結城真一郎著 新潮社)86.5点:金次郎は下位作品を誤って上位と予想しても罰が少ないこの対決のルールに救われたと言わざるを得ません。やはり非連作の短編だとミステリーであるか否かに関わらずストーリーに厚みを出すのが難しいため次回からはその部分を折り込んで予想すべく注意したいと思います。しかし、その不利な形式で昨年3位に入った一穂先生の「スモールワールズ」(講談社)はやはり凄かった。

今年も我々の趣味の世界にお付き合いいただきまして誠にありがとうございました!

(*)順位予想対決ルール:作品の予想順位と実際の順位の差の絶対値に(11-順位)を懸け合わせたものを合計し、合計点が少ない方が勝者。具体例を挙げると、3位となった「光のとこにいてね」は金次郎が4位と予想したので|3-4|X8=8、一方Mは1位としており|3-1|X8=16となる。4位の「爆弾」はどちらも5位としたので|4-5|X7=7となる。これを全作品について計算し合計得点が少ない方が勝者。特に上位予想の外れ度合いが小さいことが重要。このルールでの最高点は0点(大賞から10位まで全部当てるケース)、最低点は298点となる。


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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