【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2023順位予想対決!

またまた今年もこの日がやって参りました。4月12日(水)の本屋大賞2023結果発表を前に誰にも頼まれていないのにその順位を勝手に予想し、何の必要も無いのに知力の限りを尽くして友人と予想の精度を競うという、究極の遊びと言えなくもないこの企画もはや5回目を迎えました。これまでの戦績は2勝2敗と拮抗しており、金次郎も宿敵Mも互いに譲れないところですが、果たして勝者に贈られる金の栞はどちらが手に入れるのか、以下それぞれの予想です!図らずも2、5、6、7位の予想が完全に被り、勝負の帰趨を制するのは町田そのこ著の「宙ごはん」と結城真一郎著の「#真相をお話しします」の順位にかかっていると思われます。

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【金次郎の総評】

候補10作の著者が上位入選実績の有る4名と初めて候補入りした6名という構成で、刺激を求めての目移りを躊躇しない読者の興味を繋ぎ止め続けるために、常に一歩先を行こうとする玄人書店員のお眼鏡に叶い本賞レースで勝ち残ることの難しさを実感します。常連組には上積みを、新規組には斬新さと伸びしろを貪欲に求める書店員の視点を意識して予想し、迷った時はコロナ災を乗り越え、晴れ晴れとした希望に溢れる世相を象徴する読後感を遺してくれる作品を優先しました。大賞は「月の立つ林で」です!自然なプロット、多様な人物の描き分け、納得感の有る感動と2年連続2位の過去作を上回る仕上がりで青山先生の実力と成長の勢いが抜群でした。2位には「汝、星のごとく」を凪良作品らしい繊細な文章が紡ぎ出す人間の強さに希望を込めて選出。3位には新味と独創性に溢れた「#真相をお話しします」が食い込みました。一穂作品はラストに難有り惜しくも次点。

【Mの総評】

『光のとこにいてね』『汝、星のごとく』が抜きんでて面白かった。記念すべき第20回本屋大賞は一穂ミチが獲り、スターダムにのし上がっていく展開を予想(昨年1位予想も7位に沈んだ小田雅久仁の仇を今年こそ)。青山美智子は知念実希人に並んで個人的には非常に相性の悪い作家だと改めて気づいたが(あくまで個人的な感想なのでファンの方すみません)、一方でますます諸事が複雑化するいまにおいてこのプレーンさが受け入れられる素地もまたあろうと考え、不承不承ながら強気の4位とした(更に上位に入ってくる懸念もあるが10位に置くよりはマシという作戦)。『爆弾』『君のクイズ』『#真相をお話しします』『方舟』のミステリー四兄弟は、例年のセオリー通り下位に固め、ただしエンタメとしてレヴェルの高かった『爆弾』を5位に据えた。なお今年は講談社から3作がノミネートされているので、順位を散らしてみた(2位、5位、10位)。なんとかここで勝ち越しておきたいところ。

【金次郎順位予想】

大賞 「月の立つ林で」(青山美智子著 ポプラ社)

2位 「汝、星のごとく」(凪良ゆう著 講談社)

3位 「#真相をお話しします」(結城真一郎著 新潮社)

4位 「光のとこにいてね」(一穂ミチ著 文藝春秋)

5位 「爆弾」(呉勝浩著 講談社)

6位 「ラブカは静かに弓を持つ」(安壇美緒著 集英社)

7位 「君のクイズ」(小川哲著 朝日新聞出版)

8位 「方舟」(夕木春央著 講談社)

9位 「宙ごはん」(町田そのこ著 小学館)

10位 「川のほとりに立つ者は」(寺地はるな著 双葉社)

【M順位予想】

大賞 「光のとこにいてね」(一穂ミチ著 文藝春秋)

2位 「汝、星のごとく」(凪良ゆう著 講談社)

3位 「宙ごはん」(町田そのこ著 小学館)

4位 「月の立つ林で」(青山美智子著 ポプラ社)

5位 「爆弾」(呉勝浩著 講談社)

6位 「ラブカは静かに弓を持つ」(安壇美緒著 集英社)

7位 「君のクイズ」(小川哲著 朝日新聞出版)

8位 「川のほとりに立つ者は」(寺地はるな著 双葉社)

9位 「#真相をお話しします」(結城真一郎著 新潮社)

10位 「方舟」(夕木春央著 講談社)

【候補作別評価】

「川のほとりに立つ者は」(寺地はるな著 双葉社)

(金)10位:狭量で無知なこの社会の枠組みからこぼれ落ちてしまいがちなディスレクシアやADHDといった症状を抱える人々の苦しみに気持ちを寄せられる想像力の大切さ、偏見を排して共生を図る意識を持つことの難しさを主人公の成長を通じて描き出そうとした心意気は買いますが、正直既視感は禁じ得ず、川底の石のメタファにもキレが無く、リアリティの粒度が不揃いな点もいただけず、既に萌芽の見える寺地人気の爆発は次作に譲るとの結論です。

(M)8位:ウエストランドではないですが、教訓めいた感じのストーリーが少し鬱陶しかった感。純愛を描いた作品なるも、登場人物の深堀の度合いや、伝えたいメッセージを直截的に描きすぎてしまっているというところで、『宙ごはん』まで含めた上位3作と比べると見劣りするかなという印象。

「君のクイズ」(小川哲著 朝日新聞出版)

(金)7位:クイズ王決定戦の決勝で〈万物を記憶した天才〉本庄が放った設問を聞く前に正解するという離れ業の謎に、敗れた三島が迫る過程でクイズの深淵が語られる本作では、如何にしてプレイヤーが合理的に解答の選択肢を狭めていくかというプチ謎解きが潤沢で満足度は高いです。昇り竜の著者を一気にメジャーにしたい業界の期待は有れど、クイズに正解することでしか人生を肯定できない三島に共感できずラストも気になり7位止まりです。

(M)7位:分量も短く、佳品という感じ。トリックは途中から気づいてしまったかな。。参考文献にも名を連ねている天下のクイズ王伊沢拓司先生はこれを見てほくそ笑むのか、焦るのか。なおあまり深掘るとネタバレなのでやめますが、過去アタック25に出た私も実は類似の経験をしたことがあり、その意味では作品テーマは意外と普遍的なのかも。『地図と拳』(恥ずかしながら未読)、で見事直木賞を取っているので本屋大賞ではまぁこのくらいの位置で良いのではないでしょうか。

「宙ごはん」(町田そのこ著 小学館)

(金)9位:過度な躾、過干渉、虐待からネグレクトまで町田作品らしく様々な家族の問題が幕ノ内的に詰め込まれた本作、そんな苦境を救うのがタイトルにも有る〈ごはん〉の力という構図なのですが、美味しそうではあるものの、メニューの選択とその齎す効果の必然性に欠けるごはんの存在がシャレでなく宙ぶらりんの印象で残念。絶対グレるだろう環境で何故だかすくすくと成長した主人公宙(そら)の根拠レスな強さのみが光り輝く作品でした。

(M)3位:登場人物につらいことが起こりすぎるという意味で逆にご都合主義という感もあり、そもそも展開も読めてしまう感も若干あり…と先にネガティブコメントをしたが、主人公の母親「花野」の人間的成長にフォーカスした内容は面白かった。書き込まないと嫌なタイプの作家なのだろうが、エンディングへの流れがややくどい印象はあった。町田先生(康じゃないよ)も過去本屋大賞を獲っているので、1位は残念ながらないが、上位に食い込むと予想。

「月の立つ林で」(青山美智子著 ポプラ社)

(金)大賞:儘ならぬ仕事や家族との関係に悩み、見通せぬ将来への不安を抱えた人々が、月を語るポッドキャストを聞きながら見えずともそこに在る新月の存在に思いを馳せる中で、見失っていた大切なものに気付き進むべき道を見出していく物語。ポッドキャストで語るタケトリ・オキナの言葉に宿った人々の心を打つ力の訳が明かされた瞬間の、物語全体を遡って包み込む感動は、昨年僅かに頂点に届かなかった壁を壊し得ると判断し大賞としました。

(M)4位:紋切り型の人物描写。どこか説教臭い内容。占い・祈りといった、最近の流行りを書いておけば良いでしょ感。新聞記者出身だからと自分に言い聞かせ湧き上がるネガティブな気持ちを抑えてもやはり好きになれず、極私的ランキングでは10位。が、青山先生は既に本屋大賞ノミネート常連となりつつあり(昨年は2位)、今年も上位入賞の可能性もあるかもしれませんね。。。

「汝、星のごとく」(凪良ゆう著 講談社)

(金)2位:瀬戸内海に浮かぶ島でのボーイミーツガールという超オーソドックスな序盤に、都会に染まる男、思い合いながらすれ違う二人という擦り切れ果てた展開をたたみかけられて尚この物語に惹きつけられてしまうのは、本当に大切なもの以外全てを捨てる覚悟を固めた人間の強さと、そんな強さが関係する人々の心を救う光景が繊細な凪良節で描かれる美に胸を打たれるからでしょう。苦しみを越える感動をくれる流石のブランチBOOK大賞です。

(M)2位:代表作の呼び声高いという評判も、まさにその通りでけだし名作。個人的には最推し。「ラ・ラ・ランド」の日本版(瀬戸内版?)か。 生きるための力とは。才能とは。その中での救いとは、愛とは、喜びとは。作家としての技量も不思議と上がった感があり、カッコいい言い回しがことごとく決まっている。ただ、凪良先生は本屋大賞受賞者。さらに本作はブランチBOOK大賞に選ばれ、直木賞候補作でもある。…といったあたりが逆風となるも、しかし作品の力で押し切り堂々の2位入りを予想。

「方舟」(夕木春央著 講談社)

(金)8位:人里離れた山中の地下建造物に閉じ込められた登場人物達が、脱出に必要な生贄を選び出すために閉ざされた空間内で発生した殺人事件の犯人を見つけようとする展開で、終盤の謎解きにも納得感は有り、ラストの衝撃の破壊力の凄まじさには確かに一読の価値を認めるものの、ノアの方舟に寄せ過ぎた善悪論がやや陳腐で、どんでん返しアイデア一本足との印象は拭えず何より作品全体の雰囲気が暗過ぎるため強くは推せず8位としました。

(M)10位:エンタメとしては面白かったが、それ以上でも以下でもないか。グロ描写がややきつく、読書人口を増やすという位置づけの本屋大賞として適当かどうか。ただしこちらもトリックは見破れず(単に私がミステリー初心者で着想の蓄積が無いだけとも)、Kindleをスワイプする手が止まらなかったことは認めます。しつこいですが大事な経験則=「ミステリーは下位」ということでごめんなさい、今年の下位枠はこの作品です。

「#真相をお話しします」(結城真一郎著 新潮社)

(金)3位:月面宙返りならぬどんでん返し1回半ひねりとでも言うべき技巧が特徴的な本作では、各短編で読者が結末を見通して油断した最終盤に絶妙に配置された想定外展開の強烈なインパクトにより、読み手は宙に投げ出され、誰が善で誰が悪なのかも判然としない不穏かつ不安な気分を味わわされます。嫌ミスの新たな地平を切り拓いたと言っても過言ではない独創性を評価して非連作のミステリー短編集としては大健闘の3位と予想します。

(M)9位:オムニバス形式の今作、読み口も非常にライトで、読書に慣れていない層向けか。最後の離島の話はオチに結構意外性があり面白かったが、それ以外は着想は斬新もやや食い足りない感が拭えず。結城先生の同窓(※1つ先輩)としてエラそうなコメント恐縮至極なるも勝手な期待値を込めて言わせていただくと、この作品で評価されても先生的には詮無いのではないでしょうか、というところ。

「爆弾」(呉勝浩著 講談社)

(金)5位:弱者への社会の無関心が悪意の種を生み、その種が多くの人々の生命を脅かす怪物スズキタゴサクとなり姿を現します。利己心を抑えただ目の前の人を救いたいと願う捜査官のひたむきさが唯一の希望の光である本作は、クライムサスペンスでありミステリーであると同時に現代の闇を描く社会派小説だと思います。取調室と東京全体双方を舞台とする場面展開の妙も秀逸で作品の質は高いも、如何せんタゴサクがキモ過ぎてやや減点です。

(M)5位:全編を通じて緊張の糸が張り詰める中、トリックも全く読めず、同時に、和製ハンニバル・レクターが如きスズキタゴサクの思考のプロセスを否が応でもトレースせざるを得ず、と中々どうして読み応えあり。ただ、重厚というか、重厚長大な作品で、読者を選ぶ感じもあり、更にミステリーは上位に入りにくいという経験則も踏まえ、この位置とした。

「光のとこにいてね」(一穂ミチ著 文藝春秋)

(金)4位:うらぶれた団地の一角で血の通う愛情を欲する結珠と人生の導き手を求めていた果遠が邂逅し、期せずして血盟を交わす場面から長く切ない物語が始まります。欠落を抱えた者同士が魅かれ合い、その欠落故に互いを傷つけてしまうことに怯えて近づけないもどかしさがそれぞれの一人称で交互に語られ感情移入を誘います。百合ジャンルの枠を超える普遍性も兼ね備え幅広い支持が期待できるも突然リアリティを失ったラストが惜しまれます。

(M)大賞:一見無理筋なプロットも、読み進めてみればストーリー展開に決して無理はなく、主人公のふたり及びその他登場人物の人物描写も秀逸(いい人も悪い人も)。去年の本賞候補作『スモールワールズ』がオムニバス形式で些か食い足りなかった感を、渾身の長編で見事取り返して余りある感じ。一穂ミチ先生、直木賞のリベンジをぜひ本屋大賞で。ところで毎年純愛を書いた作品を一番にしているような気がする…がまぁそろそろそういうお年頃ということでご勘弁を。

「ラブカは静かに弓を持つ」(安壇美緒著 集英社)

(金)6位:タイトルからの狩猟民の少年という主人公像予想は外れ、著作権法の演奏権侵害を立証すべく音楽教室に生徒として送り込まれたスパイの話という想定外展開で掴みはOK。トラウマを抱えた主人公の心が音楽への思いを共有する仲間と絆を結ぶことで解けていく様は胸熱ですし、著者の新星感や音楽ものの過去実績もあいまって上位を狙う条件は整うものの、読んでいる間のあまりの苦しさが読後の満足感を越え切れず上位進出はならずです。

(M)6位:音楽を題材とした作品の中では珍しい切り口だが、JASRAC的な職場のあれこれを描くパートのリアリティがちょっと足りないような気が、、安壇先生は会社勤め多分したことないのだろうなと。さらば青春の光の好きなコントがこの作品と若干似ていてそれが脳裏をちらついたこともあり。過去本賞受賞作である恩田陸『蜜蜂と遠雷』が如く、もう少し正攻法で音楽家の葛藤を書くという手法のほうが良かったのではという気も。映像化との相性は良さそう。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!次回でいきなり結果発表です。緊張しますね(笑)。


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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