先週は出張に出ており全く時間の余裕が無くブログをお休みしてしまいました。楽しみに読んでくださっている読者の皆さん、すみませんでした。金次郎は30年の会社員生活の中でそれなりに海外出張をしており数えてみると21か国を仕事で訪れておりましたが、幸いなことに荷物を盗られる、ロストバゲージする、パスポートを失くす、大きく体調を崩す、飛行機が飛ばない、乗り継ぎをミスして途方に暮れるなどの出張あるあるトラブルに見舞われたことは殆ど無く、せっかくなのでこのまま定年までトラブル無し記録を更新し続けたいと考えております。
そんなドラマ性に欠ける金次郎の出張人生ですが、心に残っているのはやはり以前このブログでも書いた、中国出張中に悪寒がひどかったにも関わらず顧客との宴会で浴びるように酒を飲んだ結果脱水症状となりほぼ一睡もできず、早朝になって後輩にポカリスエット調達をお願いしたところ、ようやく戻ってきた後輩に手渡されたのがアミノバイタルであった時の絶望でしょうか(笑)。帰国後インフルだったことが判明し肝を冷やしたのが懐かしく思い出されます。他には、成田からシカゴ、ヒューストンと乗り継ぎ、ほぼ丸一日かけて辿り着いたメキシコシティで面談する予定であった顧客担当者が体調不良で急遽休んでしまい、仕方が無いので世界遺産であるテオティワカンのピラミッドに登ってお茶を濁した完全な無駄出張も印象に残っています(汗)。シンガポール出張時に駐在員の先輩が空港に停めておいた筈の社用車が煙のように消えてしまい、2時間程探し回っても見つけられず警察に盗難届を出す直前でそもそも探していたのが車を停めたのとは別の駐車場であったことが判明し事無きを得たのも今では笑い話です。タイの高速が渋滞しているのをいいことに、先輩が小用を足そうと車外に出た瞬間に車が流れ始め、取り残されることを恐れた彼が高速道路上を必死の形相で車に追いすがろうと全力疾走していた姿は一生忘れることができないと思います。フィリピンに出張した際には金次郎の乗った車の前を機関銃を持った一団が横切り脂汗が出る経験をいたしました。ただ、それよりも現地に駐在されていた先輩との会食時に何故だかきりたんぽ鍋を食べることになり、共に鍋をつつく直前に「僕はもう治っているから」と〈肝炎治療証〉のようなものをささっと見せられた際の衝撃の方が大きかった気がします。イスラエルのテルアビブで、町中でやっている花火イベントには絶対に近付くなと念押しされ不審に思っていると、どうやら火薬の臭いが身体に付着してしまうと、空港で一発テロリスト認定されるのだそうで、日本赤軍のような過激派扱いはさすがにまずいと気持ちを引き締めたのを覚えています。最近は出張することもあまり無く、心を動かされる場面との遭遇機会も減っておりますが、今後はもう少し積極的に出張してブログのネタを充実させたいと考えております(笑)。
さて本の紹介です。「バタン島漂流記」(西條奈加著 光文社)は江戸時代初期に実際に発生した海難事故を題材に、嵐に遭い1か月以上も動力を失った船で太平洋を漂流し、漸く漂着した南方の島でも更なる苦難に見舞われた15人の船乗りの姿を描いた歴史冒険小説です。プロットとしては「十五少年漂流記」にかなり似ていますが(笑)、さすがは時代小説の大家で直木賞作家でもある西條先生だけに特に当時の廻船オペレーションの実態が丁寧な調査に裏打ちされた非常に詳細な筆致で描かれており抜群のリアリティでどんどん読まされました。具体的には船乗りという職業のメリットやデメリット、当時の徒弟制度の実態、操船の仕組みや関連する役割分担などがよく分かりすっかり船に乗っている気分になりました。当時の船乗りが肉食を忌避したり重要な決定をくじで行うなどとても信心深い一方で、技術的にはランビキと呼ばれる船上での海水淡水化手法が活用されているなど進んでおり対照的で興味深いと感じました。この物語は、貧しい農家に生まれ船匠を目指すも挫折した半端者の和久郎の視点で描かれますが、数多の苦難や仲間との確執を経つつ、親友との絆や経験豊富な船頭らの導きで彼が少しずつ成長していく姿には、ありがちな話とは思いながらも、史実を下書きにしているという迫力が勝りかなり感動させられました。和久郎らが漂着したバタン島(現フィリピン)の島民の暮らしぶりの描写もリアルですが、なんと金次郎はこのバタン島に行ったことが有ります!20年以上前のことですが、正にバタンで運転している顧客工場を訪問する機会が有り、マニラからフェリーで行くと早いけど時々沈むよと言われ、びびって延々時間をかけて車で向かった記憶が蘇りました。工場のゲストハウスで出されたサワガニのお化けみたいな巨大ガニをどうやって食べればいいのか全く分からず途方に暮れたことも今では良い思い出です。
「首木の民」(誉田哲也著 双葉社)は大学客員教授で政府の経済財政諮問会議の委員に推されている経済通の久和が公務執行妨害の微罪で逮捕された事件をきっかけに、この国の財政政策の根底に横たわる闇の一端を垣間見るという経済サスペンス小説です。歳出を歳入ではなく税収のみで賄うべきという財政法をたてにしたある意味で財務省の省是ともなっている緊縮財政への拘りを、税金の分配を通じた自らの権力基盤維持目的と喝破し鋭く批判するくだりはなかなかに印象的でした。公務員は何人たりとも信用しないと言い切る久和が取調室で語る、分かり易い比喩を用いながらのマクロ経済講義は経済学部出身としてお恥ずかしい限りですが(汗)、なかなかに目からうろこの内容で、経済を活性化させるためには状況を見つつではあるものの、ある程度借金である国債発行に依存すべきという主張には一定の納得感が有ったと思います。ちなみに公務員は財務省により入出金の首根っこを押さえられているために常にその影響力が及び得る存在であることから信用しないというのが久和論法でした。その他にも、実際に流通している貨幣量と独占的に貨幣発行権を有する日銀が市場に供給する資金の総量を示すマネタリーベースの違いなど勉強になる内容が多くおすすめです。念のためですが、本作はちゃんと謎で読者を引っ張るサスペンス構造になっており、若干理屈っぽい点はご容赦いただくとして、きちんとエンタメ小説として成立しておりますので安心してお読みいただければと思います(笑)。
匂いフェチの金次郎は、以前は出張のたびに新たな香りを求め免税店を隅から隅まで歩いておりましたが、年のせいかはたまたコロナ後遺症と思われる嗅覚ダウンのためか、最近はすっかりそういう活動が疎かになっておりました。出張再開と同時にこちらの活動も復活しようと画策しているところです。
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