前回のブログで凶暴熊として恐れられたOSO18について書きましたが、熊胆と呼ばれるクマの胆のうから取れる生薬は、肝臓や胃腸の働きを助けたり解毒の効果が有るそうです。なぜこんなことを書くかというと、先日整体の先生から、漢方ではミミズは生薬になると教わって驚いたので、ちょっと服用を遠慮したい生薬について調べてみたうんちくの披露のためでした(笑)。赤ミミズは地龍と呼ばれる生薬で、血流の改善や熱冷まし、痙攣やひきつけに効くとされ、昔からよく用いられていたのだそうです。
血流改善効果は、ルンブロキナーゼという酵素の働きによる可能性が有り科学的にも検証されているようです。利尿作用も有りむくみにも効果的なことも考慮すると、代謝の改善に有効な優れもので見直すと同時に、釣り餌のりんたろうミミズを冷蔵庫にしまっていたのを見つけ、幼少期の金次郎に激怒した亡き母を見返してやりたい気分にもなりました(笑)。その他にも、牛の胆のうにできる結石は牛黄と呼ばれ、非常に強い鎮静効果が有ったり、ヒキガエルの耳腺から取れる蟾酥は毒薬と認定されているほどの強い生薬で、ステロイド成分による強心作用、気つけ、解毒、麻酔など様々な効能が有るのだそうです。生薬とは少し違うのかもしれませんが、「禁断の江戸史 教科書には載らない江戸の事件簿」(河合敦著 扶桑社)という本の中で、江戸時代の日本人はミイラを食べていたというくだりが有りたまげました。これはミイラっぽいものを食べていたというような盛った話や都市伝説ではなく、出島に出入りしていたオランダ商人から本物のエジプトのミイラを薬として購入していたことが確認されており、俄かには信じられませんが事実です(汗)。実は、ミイラが万能薬として珍重されていたのにはそれなりの根拠が有り、それにはミイラの製法が関係しています。古代エジプトではミイラを作る際にハチミツが使われていたとされ、そこに含まれるのが抗菌、抗ウイルス、抗炎症、抗酸化、免疫強化など多くの効能が確認されているプロポリスで、江戸時代の人々はプロポリスを服用して健康になるためにミイラを食べるという現代からするとなかなかに凄いことをしていたようです。まどろっこしさや人間の変わらぬ健康への執着は興味深いですが、一方で民間療法も侮れないと感じました。
さて本の紹介です。「魔窟 知られざる『日大帝国』興亡の歴史」(森功著 東洋経済新報社)は、明治期の法律専門学校に源を発する日大の歴史を紐解きながら、記憶に新しい最近の不祥事だけでなく、過去に遡ってその歴史の影の部分に光を当てた非常に濃密なノンフィクション作品です。保守層を後ろ盾としながら規模の拡大を図った日大は、学生運動全盛期に応援部や運動部の武闘派を動員しての暴力的運動潰しを行った歴史が有りますが(日大に限ったことではないでしょうが)、そんな大学側の暴力装置の中心として学生横綱であった田中英壽元理事長が暗躍していたとも仄めかされており、その武闘派ぶりがうかがえます。彼は、相撲部であの名横綱輪島の1年先輩にあたり、なんと後に黄金の左腕と恐れられることになる輪島より強かった時期も有ったとのことで驚きです。その後彼が角界を目指さず大学に残り、教員の見習いから事務方に転身し、相撲部監督として後の久島海や舞の海を育てる一方、暗闘の果てに出世の階段を昇りつめ絶対的な権力を握るに至った経緯が事細かに解説されており非常に興味深いです。また、角界のタニマチとの金銭的癒着や、JOC副会長辞任の契機ともなった反社会勢力との深い関係、イトマン事件などの経済事案で世間を騒がせた許永中との関係など、あまりにも深く幅広いその地下人脈が面白過ぎて、上質なエンタメ小説であるかのように一気に読んでしまいました(笑)。更に、元演歌歌手で、お相撲さんの追っかけでもあり、悪の巣窟として有名になった〈ちゃんこ田中〉を経営し女帝とも呼ばれていた征子夫人の大学経営への関与についても書かれていますが、絶対権力者田中元理事長を裏で操っての大学の私物化ぶりには恐れ入ります。勿論、アメフト関連の悪質タックル事件、大麻事件の経緯や大学側の対応のずさんさについても詳述されていますし、大学改革を謳って華々しく就任した林理事長体制の迷走についてもしっかり言及されておりフェアな印象ですし、7万人の学生数を誇り、17学部を有する超巨大組織のガバナンスを健全に維持することの本質的な難易度の高さを改めて認識でき、経営についての学びにもなりました。詳しく書きませんでしたが、先日引退を表明した総理経験者の親族が日大理事長候補になった事実や、某大臣経験者の関係者が学内の諸事業に入り込んだり、元は日大の分校的位置付けであった近畿大学を政治家一族の世耕家が代々経営しているなど、学校運営と政治の関係についても考えさせられる内容でした。
現在NHKで放映されているドラマ「テミスの不確かな法廷」は松山ケンイチが演じる発達障害と診断された判事の安藤が、悩みながらも独自の視点とこだわりで事件を解決に導いていくというお話で毎回楽しみに観ております。原作は直島翔先生の同名小説なのですが、これはドラマ完結後に読むとして、他の作品も読んでみました。〈仕事をし過ぎる〉せいでキャリア的には冷や飯を食わされ続けている検事が主役の「転がる検事に苔むさず」(直島翔著 小学館)、「恋する検事はわきまえない」(同)のシリーズ作品は、主人公の久我検事のうだつの上がらなさ、その不遇について思い悩む人間臭さと彼の抜群の観察力や洞察力とのギャップを楽しめるだけでなく、強気な若手女性検事、真面目で刑事を目指す交番巡査などの脇を固める登場人物のキャラがしっかり立っている点もストーリーの厚みに繋がっていて読みどころが多い作品との印象です。久我に焦点を当てた長編、脇役も含め登場人物を深掘りした連作短編ときて物語の世界観がほぼ固まってきているので、次作への期待が激しく高まっております。重厚なミステリーでありながらじんわりエモい本シリーズの集大成的な内容となれば直木賞も夢ではない実力と感じております。検死を担当する偏屈な法医学者を描いた「警察医の戒律(コード)」(同 角川春樹事務所)も、主人公が抱える心の闇には人間ドラマを感じましたが、ジェンダーに関する多様性についてはやや既視感を禁じ得ませんでした。今後も、著者の得意分野である司法が内包する課題や矛盾について突き詰める骨太作品をたくさん世に出して欲しいというのが金次郎の希望です(わがまま)。
いよいよ来週2月6日(金)に本屋大賞2026のノミネート10作品の発表です!楽しみにお待ちください!
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