引き続き金沢旅行記の第3回です。いよいよ今回の旅の一つのメインイベントとなる夕食の時間がやって参りました。アフタヌーンティー後入浴でカロリー消費を図った我々夫婦と、宿の近辺を散策してお腹をすかせたAさんご夫妻が18時に合流し、落ち着いた個室で一緒に食事をいただきました。新鮮な魚介や加賀野菜が贅沢に使われた食事は一皿一皿どれも素晴らしく、前菜では、甘エビ・イカとキャビア、紅ズワイガニと加賀太胡瓜などの凝った取り合わせの小皿が並び、その後は日本海の旬の海の幸のお刺身、高級魚ノドグロの一匹塩焼き、能登牛の焼肉と豪華なラインアップが続きました。更に畳み掛けるように、鯛とウニ、加賀蓮根と白子というゴージャスな取り合わせの皿が出た後に極めつけの鯛茶漬けで締めるという内容に満足以外の何物でもない上機嫌でメインイベント終了となりました。
美味しい食事を満喫した後は、予め予約しておいた時間制の貸し切り露天風呂を楽しむ時間で、金次郎家は22時からのお風呂でしたが、若干眠くなりながら広々とした浴槽につかり、完全にオープンでないとはいえとにかく外気を感じながらのリラックスタイムは最高で、本当に来て良かったと感じました。妻はおでこを蚊に刺され痒がっていましたが(笑)、ポカポカで部屋に戻った金次郎は、「乱歩と千畝」(青柳碧人著 新潮社)を読みながらだらだら過ごすという至福の時間でパーフェクトな一日を終えました。翌朝は同じ場所で朝食をいただきましたが、朝からメインは焼き河豚という豪華メニューに加え、南蛮漬けや胡麻豆腐をはじめバラエティに富む品々が並ぶ光景はとても朝食とは思えず、とどめに北陸らしく一粒一粒がしっかりと主張している美味しいお米を供されては食べないわけにはいかず、全く体重のコントロールができない大満腹になってしまいました(汗)。それなりにお値段もしましたが、気前良く支払いたいという気持ちにさせてくれた百楽荘を9時過ぎに出発し、二日目の金沢観光がスタートいたしました。先ずは金沢と言えばの兼六園に向かい、宏大、幽邃、人力、蒼古、水泉、眺望という庭園に必要な6つの景勝を兼ね備える国内有数の名園を本来じっくり見て回るべきところでしたが、とにかく朝から尋常でない猛暑が厳し過ぎて長時間歩き回るのはほぼ不可能な状況であったことから、90分コースの兼六園散策は諦め、前回登場したべっこう眼鏡のおじさんも絶賛の隣接スポットである成巽閣を拝観するに留めることといたしました。1863年に第13代藩主前田斉泰によって母の隠居所として建立された成巽閣は、階下が武家屋敷風、階上が数寄屋風の書院造り様式となっており、階下は謁見の間の計36畳という威容、名工の手による檜の一枚板に施された彫刻絵の技巧に加え、天井や障子の繊細な細工や描画が素晴らしく圧倒されました。階上は赤や青といった原色の鮮やかさが際立つおしゃれな空間で、特に群青の間の美しいウルトラマリンブルーは妻が大変気に入っておりました。階下から眺めるつくしの縁庭園も素晴らしかったですが、眺望を損ねぬよう柱を配さず屋根を支える縁側の構造に一同驚きました。成巽閣そのものも重要文化財なのですが、建物内の見どころを解説してくれる音声ガイドも非常に古めかしく威厳に満ちており、あと10年もすればこのガイドそのものが文化財になるのではと思ったりもいたしました(笑)。しかし、当日は本当に暑く体感は35℃を超えていたと思いますが、レンタカーをちょっと駐車しておいただけでも車中がサウナのような高温になってしまう状態で、初日に市場でアジの佃煮を購入してしまったAさんは、適切に佃煮を保管する場所が無く、常に佃煮袋をぶら下げて観光するという十字架を背負うこととなりかわいそうでした。金次郎も持参していた点眼薬が車中の高温で劣化したことが懸念されるため、泣く泣く廃棄することといたしました。酷暑おそるべしです。そんな暑さの中、べっこう眼鏡おじさんから推奨されたため、もはや行かなければ呪われるというような強迫観念から(笑)、前日訪問した野村家より家格が高く、ツツジが有名な武家屋敷である寺島蔵人邸へ向かいました。勿論武家屋敷としての佇まいは見事でしたし、案内の方の朗々とした説明も分かり易かったですが、いかんせん見どころであるツツジが咲いていないという季節外れ感のハンデは大きく、呪いは解けたことにしてそそくさとお屋敷を後にして最後の観光ポイントとなるひがし茶屋街へ向かったのですが、その様子は次回最終回に書きたいと思います。
さて、本の紹介です。「彼女たちの牙と舌」(矢樹純著 幻冬舎)は、進学塾の保護者説明会で知り合った家庭環境から収入までほぼ共通点の無い母親4人が、とりあえず続けている上辺だけの付き合いの裏に隠している生活の実態やどろどろの感情のリアルについて、それぞれの登場人物の視点で描く構成のサスペンス小説です。章が変わる毎に視点人物が変わるのですが、その都度様々な事実が明かされ、全く違う世界を見せられて人間不信に陥りそうになります(笑)。また、ただのママ友同士の確執に留まらず、詐欺犯罪グループとの関わり合いもストーリーの重要な核となっている点が全体の緊迫度を高める効果を上げていると思います。よく集中して読まないと話の筋や人間関係が追えなくなりそうになるのですが、そんな集中に値するよく練られた作品でした。
「令和元年の人生ゲーム」(麻布競馬場著 文藝春秋)は、令和という時代のトレンドに乗り切れずそこはかとない生き辛さを感じているZ世代の主人公たちが、意識高い系の人々と、現代の人生ゲームからベタ降りした〈沼田さん〉という両極端のパスの狭間に自分の進むべき道を見出していくという連作短編集です。大学のビジネスサークル、新興大手企業、意識高いシェアハウス、カルチャー銭湯と何れもいかにもな舞台で繰り広げられる若者たちのやり取りには考えさせられますし、会社の若者との共感が課題となりがちな中年としては非常に勉強にもなりました。徹底的で一貫した意識の低さにリスペクトすら感じていた〈沼田さん〉の第4話での変貌ぶりが非常に不穏で、彼にいったい何が起こったのかと想像して悶々としてしまいました。時代の雰囲気を感じるのに大変適した作品だと思います。
「不等辺五角形」(貫井徳郎著 東京創元社)は王様のブランチBOOKコーナーで紹介されていたのを観て読んでみました。マレーシアのインターで知り合った幼馴染の重成、聡也、梨愛、夏澄、雛乃の5人が、久々に集まった泊りがけのイベントで発生した殺人事件の真相に迫っていく構成のサスペンス小説です。亡くなったのは雛乃でその犯行を梨愛が認める中で、ストーリーは残る3人のインタビューのみで構成され、こちらも人間が呼吸をするように嘘を吐く様子を見せつけられ、いたたまれない気分にさせられました。少しずつ明らかになる5人それぞれの微妙な関係が事件の全体像の印象に影響を与え、その究極系が終盤のどんでん返しとなるわけですが、それなりに楽しめたものの、正直ラストは想定内の内容で、構成の唐突感もあいまって貫井大先生にはもう一歩踏み込んでいただきたかったとの印象です。
パリを訪問した際に面談先からピエール・エルメのお土産をいただき、チョコレートだ!と喜んで空港ではラデュレのマカロンを調達してほくほくで帰国しました。帰宅してピエール・エルメを開封したところ、なんとこちらもマカロンで、妻と二人で計24個のマカロンを消費期限内に食べきると言う難題を抱え体重が数キロ増となってしまいました(涙)。
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