金次郎が会社に入った30年前には考えられなかったことですが、最近はオフィスにスーツで行く必要が無くなり、逆にスーツを着ていると「今日はフォーマルですね」、「何か有るんですか」と眉をひそめられるような状況となっており隔世の感を禁じ得ません。以前はスーツを数年間着回す方が面倒も少なく、季節毎に私服を調達するのと比較してコスパも圧倒的にいいことから、頑なにスーツを着て出社していた金次郎も、時代の流れには抗えずすっかりカジュアルモードになっております。田舎者故に中高時代の私服選びがおぞましいヤンキースタイルにならざるを得なかった黒歴史持ちの金次郎はセンスに全く自信を持てないものの、うちには着るものに一家言有る頼もしい妻がおり、基本コーディネートは全てお任せしており助かっております。
ただ、問題が一つ有りまして、会社の同じ部署に金次郎妻とコーディネートの方向性がかなり似通っている後輩がおり、彼と同じ会議に出る機会もそれなりに多いので、毎日出社する際には、40代男と50代男のペアルックコンビに仕上がってしまっていないか心の底からはらはらしております(汗)。冗談抜きに同ブランド同型同色の靴をはいていたことも有りましたし、トップス・ボトムス・靴の配色が完全に同じという現象が発生して驚愕することが、多いと月に数回有って怖いです。そんな状況を妻に訴えたところ、最近は差別化を図るために、これまでとは方向性の違うコーディネートに挑戦する気概を見せ始め、50代としてはやや攻め気味の服を着せられるケースも出てきており、それはそれで別の意味ではらはらしております(笑)。そんな攻めたコーディネートを見た同僚からは、「金次郎さん、ちょっとZ世代みたいな服ですね」と賛辞なのかディスりなのかかなり微妙なコメントを頂戴し、ペアルック化が懸念される後輩からは、「インテリDJみたいですね」などと意味不明の揶揄を食らったりしながらも、そのままゴルフに行けそうな典型的なおじさんスタイルになってしまうのも切ないところですので、X世代ど真ん中の身ではあるものの、定年まであと7年攻め続けようと思います(笑)。
さて本の紹介です。「安倍宗任伝 前九年・後三年合戦」(平谷美樹著 実業之日本社)は、武士が中央貴族の番犬でしかなかった11世紀に、鎌倉幕府を開いた源頼朝の祖先である河内源治の頼義が陸奥守・鎮守将軍として奥六郡の名手である安倍氏を滅ぼした前九年合戦と、その子の義家が清原氏の内部対立を利用して影響力の拡大を図った後三年合戦の成り行きを、両合戦を生き延びた安倍宗任の視点を中心に描いた歴史小説です。源氏ヒーロー説を強調すべく脚色されたエピソードが多く流布され、ことさらに奥羽の豪族を貶める印象操作がされがちなことから、参考書として「前九年・後三年合戦と兵の時代」(樋口知志編 吉川弘文館)を傍らに置きつつ読み進めましたが、本作はかなり中立的な視点から描かれていることが分かり、それでいて大変ドラマチックな内容で、ざっくり千年前の出来事が鮮やかに目に浮かんできて感心いたしました。更に一歩踏み込んで、民の安寧と奥羽の豊かな暮らしを守りたいという地方豪族安倍氏の立場でこれら合戦の背景を捉えなおす試みはなかなか新鮮でした。前九年合戦で安倍氏の血を引いていたにもかかわらず助命された〈藤原経清の息子〉が、後三年合戦の主役であり、奥州藤原氏を開いた藤原(清原)清衡として歴史の表舞台に躍り出る経緯が完璧に理解できてとても嬉しい気分になりました。歴史の苦手な帰国子女の同僚に、前九年合戦について聞いたところ、「江戸時代ですか」との返答(笑)。奥州藤原氏を開いた人だよと清衡について説明すると、「あー今泉ですね」との反応でした。中尊寺金色堂は平泉です(笑)。
「ハウスメイド」(フリーダ・マクファデン著 早川書房)は過去に秘密を抱え車上生活を余儀なくされていたミリー・キャロウェイが、奇跡的に裕福な理想的な一家に見えるウィンチェスター家の住み込みメイドとして雇われるところから物語は始まります。ただ、少し読んだだけで、有り得ないほどに情緒不安定で奇行の多いニーナの怖さと、ニーナとその夫であるアンドリューとの異常な関係に面食らうことになります。全く何を考えているか理解できない一人娘のセシリアもかなり怖いですし、寡黙なイタリア系庭師のエンツォも不気味以外の何物でもなくとにかく文章から溢れ出す不穏さが際立ちまくったホラーサスペンスでした。ラストに向け、伏線もきっちり回収されますし、展開もまぁそうだろうなという方向性ではあるものの、ストーリーの起伏は想像を遥かに凌駕する激しさで、緊張しながら読み終えること間違い無しの秀作であったと思います。
最後に簡単に。「マチルダによろしく」(福澤徹三著 小学館)は、東京谷中の古びたシェアハウスに同居することとなった、無気力男子、コミュ障女子、30年の服役を経験した元ヤクザ、フリーター中年というメンバーが、半グレ集団が関与する現代的な犯罪に巻き込まれる中での様々な経験を通じて、生きていく道筋を見出していくというお話でした。何かと言えばコスパやタイパといった効率が重視される現代において、昭和のヤクザである鳶伊が語る朴訥とした任侠道の対極的な価値観に心を動かされなかったかと言えば嘘になります。鳶伊の博多弁も大変懐かしい響きで心に沁みました。タイトルに有るマチルダとは、シェアハウスで共に暮らす黒白ハチワレのネコちゃんの名前なのですが、この子がとにかく信じられないぐらい可愛く描かれていて、ネコ好きの金次郎はマチルダとの別れの場面で思わず涙してしまいました。
自民党新総裁に選出された高市さんは最近になってメイクの方向性を大きく変えて、それがポジティブな印象の変化に繋がり成功しているのだそうです。妻に言わせると、自分も含めて歳を取れば取るほどどうしてもメイクは厚塗りにならざるを得ず、今回の高市さんのように眉やリップを薄めのナチュラルメイクに転換することはそうそうできる決断ではないとのことでした。その決断力に大いに期待したいところです。
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