金次郎はこのブログを更新すると、直ぐにFacebookでその旨投稿して、繋がっている皆さんにお知らせするようにしておりました。Xでも同様のポストをして、返報性の法則狙いの下心も有り、タイムラインに流れてくるポストに禁断の義理「いいね!」を量産するなど、ページビュー(PV)を増やそうと、涙ぐましくみみっちい、そして1円にもならない努力を続けて参りました。ところが、1月中旬に突然Facebookを運営するMetaから、「Facebook投稿への外部リンク貼り付けは月2回まで。それ以上貼りたければ有料となる認証取得(Meta Verified)をしなさい」との内容を一方的に通告され途方に暮れてしまいました。
とりあえず気を取り直し、制限非対象とみられる投稿+コメント欄へのリンク貼り付けという苦肉の策で対応したのですが、そのパターンでは手間が増えるせいで、当然ながらPVが顕著に落ちる結果となり悲しい気分になりました。せっかく書いたブログなので、なるべく多くの方に読んでいただきたいという気持ちが強く、サブスクのコスパに厳しい妻と協議を重ね、あまり活用できていない他のサブスクを幾つか解約した上で月額1600円という高額の課金をする決断をいたしました(涙)。本件は、Metaによる一部のFacebook/Instagramユーザーを対象としたテスト運用なのだそうで、リンクを貼られることでユーザーがMetaのサイトから外部に離脱する機会損失を補いつつ収益化を目指す試みとされており、Tech企業の強欲な後出しぶりに悲憤の念を禁じ得ません。ただ、Facebookの投稿の98%はリンク無しなのだそうで、2%に入ってしまった自分が悪いと諦めつつ、アカウント凍結などのトラブル時に優先サポートが受けられるというあまり実用的でないメリットを心の支えにしていくしかないなと自分に言い聞かせております。
さて本の紹介です。「赤朽葉家の伝説」(桜庭一樹著 東京創元社)は、製鉄業で財を成した鳥取の名家である赤朽葉家で起こる様々な出来事を、非常にユニークな女三代それぞれを主人公とした三部構成で描く大河小説です。サンカとも呼ばれる山の民が町に遺した赤子で、〈拾われっ子〉として微妙な立場で育てられながらも、町のヒエラルキーの頂点に立つ赤朽葉家の女主人に見初められて嫁入りを果たす万葉は、文盲ながらも未来を見通す不思議な力で〈千里眼〉と呼ばれていました。その娘でレディースの頭として君臨した後に人気漫画家となる毛毬は、彼女への嫉妬というか執着が尋常でない異母妹の百夜との奇妙な関係も含め、登場人物中最も激しいキャラとして描かれます。そして、母や祖母との比較において圧倒的に凡庸であることに戸惑う瞳子は、冷静な視点で赤朽葉家の衰退を眺めています。彼女たちの不可思議な人生が、激動の戦後~平成の時代を彩った出来事と共に語られるのですが、おかしな話なのに妙にリアルという、ガブリエル・ガルシア=マルケスのマジック・リアリズムを彷彿とさせる筆致には桜庭先生の才能が溢れており、本作での高評価を契機にその後直木賞受賞など大活躍となったこともさもありなんと思います。泪、鞄、孤独など変わった名前を持つ赤朽葉家の人々や個性的な脇役たちも、それぞれしっかりと人間が描かれており(孤独は「百年の孤独」にちなんでいるのかも?)、個人的には〈ストリーキング〉の真砂、〈寝取り〉の百夜という変人親子から目が離せませんでしたが、幼少期は万葉をいじめ、その後親友となる黒菱みどりと万葉が、魂を揺さぶる原体験の共有を通じて繋がっている関係もいいなと思いながら読みました。物語全体を通して幼い万葉が幻視した〈空飛ぶ一つ目の男〉の謎が解き明かされる構成になっているのですが、この謎が明かされる場面の切なさは通常のミステリーの謎解きから得られるカタルシスとは全く違う感動で非常に印象的でした。一つ目(と片足)がたたら製鉄の象徴であるとの民俗学的背景も押さえてあるなど、随所に知的好奇心を刺激する表現が多く読み応え十分の秀作であったと思います。
「カラマーゾフの妹」(高野史緒著 講談社)は、ドストエフスキーが「カラマーゾフの兄弟」で描いたフョードル・カラマーゾフ殺人事件から13年後のロシアを舞台に、未解決事件担当の特別捜査官となったフョードルの次男イワンが、父の事件の真犯人を突き止め、兄ドミートリーの冤罪を晴らそうとする物語を描く、壮大な二次創作作品です。実際にドストエフスキー自身が第2部完結編を構想していたものの未刊のまま亡くなったことは広く知られており、原作の読者誰しもが続編の内容をあれこれ想像して楽しむ一方で、重厚長大かつ深淵な世界観とその思想性に圧倒され、続編の執筆にチャレンジした人は殆どいないのではないかと思います。そんな暴挙に果敢に挑戦した高野先生の本作は、原作の雰囲気を毀損することなく、新たな殺人事件が発生した現在と13年前の過去が交錯する中で、無理なく原作で未回収のまま残された伏線を片付け、幾つかの謎にも解答を与える内容となっていて、乱歩賞受賞にふさわしい素晴らしい作品に仕上がっていると感銘を受けました。通常なら眉を顰めてしまいそうなイワンの多重人格設定でさえ、違和感無くすんなり受け入れてしまっている自分に読みながら驚かされました。ただ、やはり長すぎて読了率が低いことでも有名な原作を読んでおかないと充分に楽しめないという点においては、商業的成功を諦めた求道的創作となっており、出版時には色々と大人の事情が発生したのではと下衆の勘ぐりをしてしまいました(笑)。
「龍の守る町」(砥上裕將著 講談社)は、大水害の際に大切な人を救えなかったことが心の傷となり、極度に水が怖くなるPTSD状態のために現場での業務が難しくなった消防士の秋月が、新たな職場となった〈指令室〉の仲間や家族と関わり合う中で、少しずつ心を解きほぐしていくというお話です。単に119番通報を受けるだけと思われがちな〈指令室〉が、高度なスキルや広範な情報収集に加え、瞬時の判断力が求められる超高難度の緊迫した現場であることに初めて思い至り、妻がキッチンで怪我をした際にパニックとなり、よく考えもせずに119に電話してしまった過去を真摯に反省いたしました。独りで苦しむ秋月を、辛抱強くぶっきらぼうに思えるほどの淡々とした姿勢で支え続けた妻・薫の思いが伝わってくるラストにじんわりと感動し、さすがは砥上先生とその筆力を再認識いたしました。
サブスク削減の検討では、日経新聞のキャンセルが一瞬頭をよぎりましたが、ビジネスパーソンとしてそれはさすがにダメだろうと思いなおしました(笑)。
読書日記ランキング