【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2026予想対決の結果を発表!

4月9日(木)に本屋大賞2026の結果が発表されました。金次郎、宿敵M、Chat GPT(CG)がいずれも「カフネ」を大賞と予想した前回と異なり、三者三様の大賞予想となった今回は、予想の巧拙が言い訳のできない形で明確に結果に表れることとなるため、著者をはじめノミネート作品の関係者や出版業界の人々以外では、結果の発表にあたり我々が最も緊張していたのではないかと思います(笑)。当日は15時からの会議を終えて少し時間があったので一瞬だけYouTubeを観たところ、朝井先生がやや高めの声でインタビューに答えられており、誰にも気づかれぬよう小さくガッツポーズをいたしました。ということで大賞は金次郎の予想的中で「イン・ザ・メガチャーチ」(朝井リョウ著 日経BP 日本経済新聞出版)が452点を獲得して栄冠に輝きました!

物語の入り口こそ推し活に関するマニアックかつ苦しめの内容であったものの、現代人が抱える孤独、視野狭窄が齎す安心感とその裏腹として生じる共感力の退化、揺るがぬ正しさの不在が招く対立の連鎖や途切れぬ不安などの現代社会のリアルを描き、最後には人間の根源的な弱さという地平にまで読者を連れていく骨太さは受賞にふさわしい内容であったと思います。昨年8位に沈んだ「生殖記」の評で、朝井先生には鮮烈なデビュー作であった「桐島、部活やめるってよ」の頃の気持ちを思い出して欲しい、と書いたのですが、この「イン・ザ~」は原点回帰をテーマに書かれたとのことで、思いが通じそれが結果に繋がったことを勝手に喜び感動しております。朝井先生、大賞受賞おめでとうございます!Mは、今作が心のどこかにしっかり刺さったことがその選評の長さからも明らかであったにもかかわらず、その事実から目を背け、この勝負では絶対にやってはいけない自らの好き嫌いを予想に反映させるという愚を犯してしまい7位予想と大外し、CGも4位に予想し結構外しておりました。意外と僅差の2位には419.5点を獲得した「熟柿」(佐藤正午著 KADOKAWA)が入り、今回随一のサプライズとなりました。心にはしっかりと沁みるものの、ちょっと暗くて長くて渋過ぎるだろうということで金次郎もMも6位、CGは5位との予想でしたが、目の肥えた書店員が重厚な人間ドラマの感動を見過ごしにはしないことは、2024年に「存在のすべてを」が3位に入った実績で証明されており完全に抜かりました。また、佐藤先生のような寡作の作家の新刊が推される傾向にあるというのも、重要な気付きとして次回以降の予想に活かしていきたいと思います。何れにせよ、西へ西へと流れていくかおりの静かな情念とその人生の変転を緻密に描いた秀作であることは間違いなく、珍しく映像化作品でもじっくり味わってみたいと感じました。影の有るかおり役は安藤サクラか蒼井優でしょうか。3位にはこちらも僅差の404.5点で「PRIZE―プライズ―」(村山由佳著 文藝春秋)が入りました。金次郎が2位、Mが4位、CGが3位といずれも上位に推した本作は、〈直木賞〉を切り口に作家や編集者のリアルを描きつつ、文学というものの本質に迫ろうとした大変な意欲作であったと思います。Mの選評を読んでいただければ分かりますが、やたらと本作中の登場人物の台詞を引用して順位予想に反映させており、直木賞論を軸に本屋大賞の予想をしてしまうという過ちを、熟練の予想屋であるMに犯させるこの作品の力に心からの敬意と感謝を表したいと思います(笑)。物語のラストで高らかに宣言された、村山先生の目指す高みにはリスペクトしかないですが、早くそんな理想を具現化した作品を読みたい気持ちでいっぱいです。さて、ここまで4勝3敗で迎えた金次郎とMによる順位予想対決の結果は、大賞と10位が的中で、その他も手堅くまとめて順位外しの平均値が1.8とシャープであった金次郎が、的中順位無し、かつ大賞と2位の上位で痛い失点を重ねたMを100点vs181点の大差で下し対戦成績を5勝3敗といたしました!しかし、昨年は70点vs87点と大変なロースコアとなり、予想の腕前も熟練の域に到達したとの慢心からか、今回は二人揃って精度を落とす結果となり反省も必要です。CGは157点で2年連続での人類の勝利となりましたが、物凄い進化を遂げている生成AIでもかなり外しているという事実は、Mの選評にもあった通り今年の予想が難しかったことを示しているのかもしれません(点数が少ない方が勝ち、点数計算ルールは本記事の最後に記載しています)。以下Mの敗戦の弁並びに4位以降の結果です。

【Mの敗戦の弁】“3連単”を当てても敗れた昨年に比べ、今年は明らかな大差での負けで、率直にへこんでいます。勝敗を分けた大賞作『イン・ザ・メガチャーチ』については、去年の敗因たる恩田陸『spring』で得たはずの教訓―― “好き嫌いを予想に持ち込んではならない” ――について同じ轍を踏んでしまった感があります。…そう、寸評を敢えて大幅な文字数制限オーバーにするくらい私は朝井リョウが苦手なのだと思います。ほぼ同い年で、それゆえ広い意味では似たような時代感覚を(きっと)持っており、しかしそこへの彼独特のアプローチたるニヒルなタッチが単純に気に食わないのでしょう。ただ何のことはなく、多くの読者の共感のツボを刺激し人生に多少なりとも影響を与えうる作品であることが今回の大賞受賞で明らかになったというわけです。偏屈なのは私で、民意は書店員さんの投票にありました。それから『熟柿』も昨夏日本橋丸善でこれでもかと平積みになっているのを見た記憶があり、次なる重要な教訓として“すでに売れている本も上位に入りうる”も心に刻むこととします。ミステリーは上位入りが難しい、伊坂幸太郎ほどのビッグネームでもつまらない作品は容赦なく下位になる、といった、この対決の中でこれまで見出されてきたセオリーも概ね例年通りの傾向を見せておりもっと予想の精度を上げられたであろうことを改めて猛省、臥薪嘗胆して来年は何とか金次郎さんから星をもぎ取るべく頑張りたいと思います!

4位(金3、M1、CG8)「エピクロスの処方箋」(夏川草介著 水鈴社)372点:シリーズ作品で前作越えは難しいというジンクスは破れず、前作と同じ4位の結果でしたが、常に新たな刺激を求め続ける消費社会にあって、本作の物語世界の熟成度が、急速に失われていく鮮度という大きな不利と拮抗し得ているというのは凄いことだと思います。人間が生まれ死んでいくという営みを大自然に託して描いた「神様のカルテ」から一歩進んで、人々の手で紡がれた古都京都の悠久を背景に綴られる死生観は夏川先生の医療への信頼と期待を著していると感じます。雄町と彼を取り巻く人々の今後が気になるので続編待望なのですが、その作品がノミネートに入ったら予想は本当に悩むと思います(笑)。

5位(金9、M3、CG2)「暁星」(湊かなえ著 双葉社)335点:本作については、予想で最下位グループに入れてしまったことを反省すべきと痛感しております。宗教2世問題を取り上げた社会性、ノンフィクションとフィクションを融合させて読者にその実情を想像させようとした工夫、後半の「金星」パートでの心を揺さぶられる人間ドラマは、読みにくさを辛抱してでももう少し高く評価すべきであり、ここはMやCGに軍配だと思います。湊先生が「告白」の衝撃以来17年ぶりのノミネートであったという話題性にも目を向けるべきであった点など、次回の予想に向けた学びと気付きに溢れた一冊でした。

6位(金4、M2、CG10)「殺し屋の営業術」(野宮有著 講談社)321点:乱歩賞とブランチBOOK大賞のダブル受賞となった本作としては、やや意外な結果となりました。完全に後知恵ではありますが、サスペンス・ミステリー・お仕事といったジャンル分けにおいては、平均して出来が良い仕上がりであった一方で、どのジャンルの作品としても若干中途半端な印象となり、書店員の視点では刺さる読者層のイメージが湧きづらく投票するのをためらわせたという面は否定できないと感じます。金次郎は〈面白ければジャンル不問〉派なので、もう一段深く没頭させてくれる次回作に大変期待しております。

7位(金8、M10、CG1)「ありか」(瀬尾まいこ著 水鈴社)229.5点:6位とほぼ100点の大差でもあり、本作を最下位グループとした予想は間違いでなかったと自信を深めております(笑)。友人は途中で読むのをやめたとその物語の平板さに不満を漏らしていましたが、それが正解と言わざるを得ない心に深く刺さらぬ内容であった一方、そういう低刺激ハピエンジャンルを心の癒しとして求める読者層が存在していることも事実であり(例えば金次郎の妻)、この点は「殺し屋の~」の逆パターンで順位を押し上げる結果になったのではないかと推察しております。とはいえ、CGが大賞と予想したのはさすがにやり過ぎの敗着でした。

8位(金7、M5、CG7)「探偵小石は恋しない」(森バジル著 小学館)226.5点:かなりの僅差で8位となりましたが、こちらもこの手のミステリーは質の良し悪しとは無関係に上位に入りづらいという経験値から中位グループの最下位とした予想の正しさにほくそ笑んでおります(笑)。ミステリーは既刊作とのネタ被りのリスクを常に抱えるジャンルにて、作り手としてはミステリー史の研究がライフワークにならざるを得ず、結果作品のあちらこちらに散りばめられるミステリーうんちくが引力と斥力を同時に発生させ、どうしても読者層が偏ってしまう難しさが有るのだと思います。人間ドラマとの組み合わせで市場を押し広げるのも一策ですが、森先生には、伊坂先生の仙台、河崎先生の北海道、宇佐美先生の松山のように、我が故郷福岡のご当地作家として人気地方都市の力を存分に生かす作品を世に出し続けていただきたいと思います。

9位(金5、M8、CG6)「失われた貌」(櫻田智也著 新潮社)164点:前述のセオリー通りに、ミステリーに人間ドラマを掛け合わせた構成で上位に入る資格十分とみて5位に予想するも、意外なブービーという結果に終わり残念でした。振り返ってみると、初読時の感想で警察小説としては警察組織内部の描写にリアリティが欠けていると自ら指摘しており、この素直な感想を予想に反映できなかった点は反省です。昆虫オタク探偵が活躍するミステリーから一気にシリアスな警察小説へのジャンプに挑戦された櫻田先生の意欲を買い次回作に期待したいと思います。

10位(金10、M9、CG10)「さよならジャバウォック」(伊坂幸太郎著 双葉社)131点:本作が予想通り圧倒的なビリとなったことには胸を撫で下ろす一方、大御所+ベテランvs新鋭の構図となった今回の本屋大賞が概ね実績組の勝利となる中で、作家生活25周年となる伊坂先生の低迷ぶりには首を傾げざるを得ません。直木賞候補入りを辞退されたものの本屋大賞で1位となった「ゴールデンスランバー」をはじめ、今年で第23回となる本屋大賞を支え続けてきた、すなわち商業作家として面白くて売れる作品を世に出す方向に全振りしてきたというご自身の原点に立ち戻り、「重力ピエロ」の心に沁み入る感動や「砂漠」での胸が熱くなる共感をまた我々読者に与えていただければと思います。

今年も視野狭窄に陥りまくった我々の対決に最後までお付き合いいただき誠に有難うございました!次回は文字通りMにとっての背水の陣となりますが、予想の手を緩めることなく3連勝を目指したいと思います。

(*)順位予想対決ルール:作品の予想順位と実際の順位の差の絶対値に(11-順位)を懸け合わせたものを合計し、合計点が少ない方が勝者。具体例を挙げると、5位の「暁星」は金次郎予想が9位なので|5-9|X6=24。Mは3位の予想なので|5-3|X6=12となる。9位となった「失われた貌」は金次郎が5位と予想したので|9-5|X2=8。一方Mは8位としており|9-8|X2=2となる。この計算を全作品について行い合計得点が少ない方が勝者。特に上位予想の外れ度合いが小さいことが重要。このルールでの最高点は0点(大賞から10位まで全部当てるケース)、最低点は298点となる。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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