先日、大学の陸上部の大先輩にあたる方と会食する機会が有りました。金次郎と同じ業界で活躍されたその方は雲の上の存在で少し近寄りがたい印象を勝手に持っていたのですが、実際お話ししてみると大変気さくな方で、やや緊張気味の金次郎に率直に意見をできる雰囲気を作ってくださりとても有難かったです。また、金次郎の携わる化学産業のみならず、陸上競技界に対しても大変熱い思いをお持ちの方で、それらに関わる後進のために身を粉にしておられる真摯なお姿に大きな刺激を受けました。
そんな目線高く熱い魂に触れてしまうと、どうしても大学時代に全力で陸上競技に向き合えなかった自分自身への後悔の念を改めて感じてしまいます。これまでも時々やりきれなかったことへの自省のためか、ちょっとした悪夢を見ることすら有ったのですが(汗)、妻から度々指摘される〈ストイック過ぎる〉という現在の行動様式の根本に自堕落だった若かりし自分を無意識のうちに否定する力が働いているのかもしれないと改めて思いました。金次郎の専門種目は走り幅跳びだったのですが、大学時代は高校時代の自己記録を大きく超えることができず、怪我などもあって不本意な競技生活でございました。年齢を重ねビジネスでの経験を積む中で、今であれば目的と対応すべき課題を見定め、それぞれに優先順位を付けて具体的なアクションとそのスケジュールを明確にすること、そしてその進捗をモニタリングしアクションを常に修正していくことといった前進・改善へのイメージが直ぐに湧くのですが、当時のアホな金次郎は全くそのように考えられず完全に行き当たりばったりで、情け無さ過ぎるダメ部員でした。具体的には、ファウルのリスクを極小化するために必要な安定した助走を生み出す150~250メートル走(とてもきつい)の重要性に気付けず本数をこなさずに隙を見てサボる、助走時及び空中で姿勢を維持するための体幹トレーニングは地味なのでやらずに自分の好きなウェイトトレーニングのみをひたすら繰り返す、下半身のエネルギーを受け止めるために必須である上半身の筋力向上もつまらないのでサボり気味で結果走りがぶれぶれになる、着地に向けた姿勢制御に不可欠な柔軟性のトレーニングも痛いからやらないと泣きたくなるダメぶりでした(涙)。また、生活の自制という観点でも、全てのトレーニングの基礎となるプロテイン摂取を含めた栄養バランスの確保と充分な睡眠を疎かにして遊びまわるのみならず、タンパク質合成を阻害するアルコール摂取のコントロールに目もくれず飲み歩くなど記録が伸びなくて当たり前という怠惰ぶりを思い返すともはや号泣です。時間を元に戻すことはできませんので、金次郎も大先輩の爪の垢を煎じる気持ちで、会社の後輩や時々OB会費集めに来て活動状況を説明してくれる部活の後輩に、茶化し気味の面白話は封印して若かりし頃の失敗談を共有し、恥ずかしがらずに後の反省から得た気付きを少しでも共有して何かの役に立てていただこうと思います。
さて本の紹介です。「カオスの帝王 惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち」(スコット・パタースン著 東洋経済新報社)は、ポートフォリオの多様化を通じてリスク分散を図るという現代経営の常識とされる理論を完全否定し、確率は低いものの予期せぬタイミングで出来し、一旦発生するとその影響が甚大となる所謂〈ブラック・スワン〉事象に対応することこそこの不透明な社会で生き残ることは勿論収益を上げる上で唯一の原則であるという主張を様々な事例を引きながら解説する内容となっています。市場の暴落を機会とする投資顧問会社ユニバーサの最高投資責任者である天才マーク・スピッツナーゲルと、ブラック・スワンの概念を提唱しそのものズバリの著書「ブラック・スワン」(ダイヤモンド社 上・下)を著したナシーム・タレブの人生と思想を軸に書かれた本書ですが、平常時はコストばかり高くてリターンを生まないユニバーサの運用が開始当初は全く市場の興味を惹かなかったにも関わらず、直近では記憶に新しいパンデミック時のような暴落局面で巨万の利益を上げ市場の鼻を明かす彼らの姿は非常に痛快でした。ポートフォリオ理論が100人のギャンブラーが同時に丁半博打を実行した平均値を考えるのに対し、ブラック・スワン理論では丁半博打を100回連続して実行することを前提としており破産は免れないとしているところが大きな相違で非常に興味深いです。後半では気候変動問題について語られますが、確率が如何に低くても人類の全滅という無限大の損失を含むようなリスク・プロファイルは絶対に持つべきではなく、どんなにコストが高かろうともブラック・スワンの発生を回避するためにあらゆる方策を採るべきとの主張には一定の納得感が有り、いつの間にかウォール街で大儲けする話でなくなっていて「ん?」とは思いましたが面白かったので良しとします(笑)。
江戸川乱歩賞受賞作はいつもクオリティが高いですが、「フェイク・マッスル」(日野瑛太郎著 講談社)も歴代受賞作に劣らぬ面白さでした。アイドルが突然マッチョに変貌を遂げるというだけでもそれなりに意外性の有る展開なのに、更にその筋肉増強がドーピングによるものとの疑惑が生じるという、このストーリーはどこに流れていくものかという先の読めなさに正直なところ読みながら不安ではありました(笑)。そんな不安を乱歩賞だから間違い無い筈という一点突破で読み通したわけですが、最後は信じて良かったと思える充実の内容で大満足でした。主人公が勤める出版社をはじめとした組織の描写が平板過ぎるとか、主人公の成長が一本調子で深みが無いなど粗が無いわけではないですが、ミステリーに必須である捻りを効かせつつも全体の整合性は確保されていて総合的にみて高水準の作品であったと思います。上から目線ですみません(汗)。
「龍の墓」(貫井徳郎著 双葉社)は上述の江戸川乱歩賞で審査員を務める大御所貫井先生の近刊です。VRが社会でかなり実装されている近未来を舞台に、現実世界で発生する連続殺人事件とVRゲーム内のストーリーが何故だかシンクロしているという新奇性の高いミステリーでした。ネタバレを回避しようとすると内容について殆ど言及できないのが残念ですが、本編のかなりの部分を占めるVRゲーム内での殺人事件の謎解きもよく練られており、別々の世界で同時進行する事件を整合的に書くのは大変だっただろうなと思いつつ、改めて貫井先生の「慟哭」を読んだ時の衝撃を思い出したりもいたしました。
前回のブログで不思議の国ペルーの野草療法について書きました。早速その話をペルー生まれの日系人である金次郎夫妻の整体の先生に伝えたところ、普通の病院の治療で症状が改善しなかった場合にはペルーでは割と直ぐに「アマゾンへ行ってください」と言われるんですよー、と当たり前のように告げられ驚きもひとしおでした(笑)。
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