パソコンの買い替えで金次郎夫婦の心が砕け散る

本屋大賞予想対決真っただ中の3月に突如パソコンが起動しなくなり、それまでに書き溜めていた各候補作の感想を見直すことができなくなってしまい途方に暮れた事件についてはこのブログでも軽く触れました。慌てふためいて家電量販店に駆け込みパソコンを手に入れようとしたのですが、そこから金次郎家は期せずしてインターネットプロバイダー・携帯電話キャリア間の仁義無き血みどろの戦争に巻き込まれることとなってしまいました。

事の発端はパソコンを買った際にプロバイダーを乗り換えたら安くできるよという、最近のパソコンはこんなに高いのかとダメージを負っていた我々には福音に聞こえる魅力的な口車でした。基本的にデジタルに非常に疎い我々夫婦は、そこからあれよあれよという間にキャリアをこっちにしたらもっと安くなる、このセットを使えば更におトク、という怒涛のプロモーションの波に呑まれてしまい、ほぼ思考力を失った状態で多くの乗り換えをすることとなりました。それで問題無ければ良かったのですがそうは問屋が卸さず、ネットの乗り換え作業は全てプロバイダー間で調整してくれるので楽勝という最初の説明は真っ赤な嘘であったことが判明、自分で連絡や調整をする面倒なプロセスが発生したり、乗り換え前のプロバイダーと乗り換え後のプロバイダーで手続き時に指示されることが違っていたりとキャパの小さい我々夫婦をパニックに陥れるような話が次から次へと発生し心が激しく削られました。更に、プロバイダーからレンタルを受けていたルーターを安いものに買い替える方がおトクと言う人がいるかと思えば、今使っているレンタルルーターは性能がいいので高いルーターを買わなければネットが遅くなると脅してくる人もおり、またややこしい設定は不要と言われて購入したルーターに(金次郎家にとっては)大変面倒なカスタマイズ作業が必要でテクニカルサポートにも電話が繋がらず絶望したりと、本当に恐ろしいことの連続でした(涙)。お恥ずかしいことに、どうしようもなくなってルーターを買い替えることにしたのですが(汗)、この買い替えでようやく全ての作業が完了したと安堵したのも束の間、ルーター売り場で我々夫婦に忍び寄ってきた「キャリアの人間ではありません」と「チート教えます」が口癖で手書き名刺を携えた謎のスーパー販売員によってまたもや心が揺さぶられることとなってしまいました。そもそも〈チート〉という言葉が裏ワザ的な意味だと知らない金次郎は本来の〈騙す〉を想起してしまい、これから我々は騙されるのか、そして何故それを宣言するのだろう、といきなり大混乱いたしました。その後の会話の中で何となくチートの意味するところが分かってきてやや緊張は緩んだものの、そのキャリアの人間ではない販売員が、元々のプロバイダーにまた乗り換えて(巻き戻す、と連呼していましたがIT用語でしょうか?)、キャリアも揃えればネットも速くなるし強いルーターもレンタルしてもらえるし、更にキャッシュバック的なものも有るとちゃぶ台返しを畳み掛けられ、極めつけに「未来の契約ができるので追加で○○円おトクですよ」と正に未来の国からやって来たような異次元のチートを食らわされ、情報の洪水とこれまでの作業は何だったのかという無力感により我々夫婦の心は砕け散りました。しかし、現金をちらつかせることで顧客を取り合うプロバイダー・キャリア間の争いは激烈を極め、消費者にとっては競争によってコストが下がるのは良い点なのかもしれませんが、サービス提供側の視点では細かい違いは色々有れど、最後はカネでしか差別化できないという何とも殺伐とした市場での競争を強いられており辛いだろうなと砕けてしまった心を痛めた1か月でした。結局ネットは0.3秒ほど遅くなり(涙)、不勉強と無知を反省&後悔しております。

さて本の紹介です。ハードボイルドは好きで結構読むジャンルなのですが、勿論レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウシリーズはコンプリート済みです。他の作品を読む際にどうしても主人公をマーロウと比較してしまい、やはりこの傑作シリーズは越えられないかと少し失望しながら読むのが常なのですが、大沢在昌先生の失踪人調査人佐久間公シリーズは先生のチャンドラー好きもあいまってレベルが高く満足できる読後感でした。「標的走路」(双葉社)、「感傷の街角(同)、「漂泊の街角」(同)、「追跡者の血統」(同)と続くシリーズ作何れも佐久間が失踪人を探す過程で事件に巻き込まれ、ヤクザに絡まれたり外国人用心棒にボコボコにされたり、はたまた傭兵に殺されかけたりとさんざんな目に遭いへこたれそうになりながらも自らの信念を貫き筋を通そうとするタフさが非常に格好良く描かれていて好みです。時代設定は80年代後半から90年代が中心で盛り場の様子や人々の遊び方などに感じるノスタルジーも魅力の一つかと思います。また、佐久間の親友で六本木の帝王という異名を持つ一方で理論物理学を学んでいたというインテリでもある謎の遊び人沢辺のマッチョなキャラも物語のスパイスになっていて、この二人の友情は非常に熱く、「追跡者の~」ではその絆が特に印象的に描かれています。

「愚道一休」(木下昌輝著 集英社)はアニメ一休さんでお馴染みの一休宗純の人生を描いた歴史小説です。千菊丸と呼ばれていた安国寺時代はアニメと違ってとんちではなく詩作に優れていたとされ、禅寺の腐敗や折檻に苦しんだということで意外でした。長じた後にも様々な屈託に悩みつつも、一休が貫いたアウトローな生き様は生き方そのものが禅問答における公案のようであり、彼独特の風狂と呼ばれる破戒や愚行の中に見え隠れする真理を追い求める一途さに心を打たれました。北朝方の後小松天皇と南朝方である楠木正成の血統に連なる母を持つ一休が南北朝対立の名残を残す時代に赤松越後守に政治的に利用されるエピソードや、応仁の乱の一方の主役である山名宗全との絡みなどは史実かどうかは分かりませんが物語にのめりこむのに充分な引力が有りどんどん読まされました。現在墓所を宮内庁が管理しているということなので、天皇の落胤というのは実際そういうことなのだと思います。アニメでは思慕の対象として美しく描かれている〈母上様〉が精神的に不安定になっていく様子はイメージとだいぶ違って面喰らいました(笑)。

「ユージニア」(恩田陸著 KADOKAWA)は過去に地方の名家で発生した大量毒殺事件に光を当て、関係者へのインタビューを通じてその隠された真実に迫るというミステリーやサスペンスのようでもありホラーとしても読める不思議な作品でした。最終的に真犯人や動機が明示されないのでミステリーとしては賛否の分かれるところだとは思いますが、自らにとって都合の良いように嘘を織り交ぜながら当時について語る人々の思惑と、誰が誰にインタビューしているかが判然としないままに話が進んでいくことへの気持ち悪さに挫折しそうになるものの、怖いもの見たさで先が気になって読まされてしまう世界観の迫力には圧倒されました。恩田先生は作品の幅が広いですが、根っこはホラーなのだなと近刊の「珈琲怪談」(幻冬舎)を読んでも思いました。「不連続の世界」(同)に収録された短編「夜明けのガスパール」から繋がる話で、おやじ4人が日本各地の純喫茶を巡りながら怪談を披露し合うという内容ですが、作中の怪談がほぼ実話というのが本当に怖いです。

今年もGWの恒例行事となっている名探偵コナンの映画鑑賞をして参りました。アニメ過去作品の予習がマストのシリアスエピソードでしたが、今回はいつもと違い小五郎のおっちゃんが全編格好良く、映画でだけいい奴になるジャイアン的な活躍に痺れました(笑)。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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