金次郎夫妻、青森の秘境山菜を堪能する

このブログで度々登場する人間国宝級寿司職人であるM男さんは青森県のご出身ですが、毎年GWのこの時期にイタリアンシェフのK子さんとご夫妻で帰省され、その際に山中に分け入って様々な山菜を採取されるのが恒例行事になっているそうです。この時期の青森は桜が咲いているかと思えば、そこからさほど離れていない場所に雪が残っていたりして冬と春を同時に体験できる趣深い場所と教えていただきいつか行ってみたいと思っています。下北半島の付け根に位置し陸奥湾に面した野辺地町のご実家を基地に、下北半島を縦断しながら、山中に分け入ったり断崖を下ったりしつつ地元の人もほとんど来ない秘密の場所で山菜取りをされているそうなのですが、イタコで有名な恐山やカルデラ湖の宇曽利湖をはじめ秘境と言っても過言ではない凄いところまで足を延ばされているようで、いつもながらそのバイタリティに圧倒されます。

秘境産かつ取れたてという貴重な山菜をK子シェフのお店で出していただいたのですが、どれもこれも深山の豊饒さとエネルギーを感じられる逸品ばかりで、憂鬱なGW明けの仕事に取り組むパワーをもらいました。殆どの山菜をフリットでいただいたのですが、いの一番に供されたのが春の山菜の定番であるフキノトウで、お約束の苦みも少なくコクとキレが素晴らしく感動しました。そして、ウコギ科三大山菜とも称されるタラの芽、ハリギリ、コシアブラをコンプリートする贅沢ラインアップが続き、若芽ならではの生命力を有難い気持ちでいただきました。山菜の王様とされるウドと山菜の女王と呼ばれるコシアブラを一度に食べられる機会は相当に貴重だと思います。更に珍しいところでは、小さくて可愛らしいコゴミも美味でシダ類特有のぬめりとほろほろとした触感が何とも言えぬ絶品でした。由来は不明ですが通称が〈あいこ〉のミヤマイラクサをはじめ前出のウコギ科山菜はバラのようなトゲが多く取るのがかなり大変なのに加え、山菜全般は下拵えに異常に手間が掛かるのだそうで、M男さん・K子シェフご夫妻(そして付き人兼運転手のKちゃん)には大感謝のディナーとなりました。勿論山菜だけでなく苦みや雑味ゼロのドイツ産ホワイトアスパラや、かつてはフランス王しか食べられなかったという仔羊のお肉なども堪能したのですが紙幅都合で詳細の解説は涙を呑んで割愛いたします。帰省の土産話として10分以上入っていると肌がチリチリし始めるという危険度抜群なるも効果絶大という温泉の話や、工夫を凝らした絶品フレンチの話など青森の魅力をたくさん伺いましたので、また別の機会にこのブログで紹介したいと思います。

さて本の紹介です。「青嵐の旅人」(天童荒太著 毎日新聞出版 )は幕末の伊予松山藩を舞台にそれぞれが人を救う医道あるいは武士道を貫こうとする三人の若者の成長を描く天童先生初の時代小説です。へんろ宿さぎのやで育った主人公ヒスイと坂本龍馬の印象的な出会いの場面から始まる本作は、動乱の時代にあってもできるだけ戦乱を避けようとした竜馬の思いと、ヒスイとその弟で医学を志す救吉の願いとが共鳴し、最後はそんな思いの強さが大きなうねりとなって歴史を動かすストーリーとなっており天童先生の強い反戦平和へのメッセージも込められていると思います。様々な対立を引き起こす〈不信〉の象徴として描かれる松山藩士鷹林の徹底したニヒリストぶりがもう一人の主人公辰之進の真っすぐさと対照的ですが、この対立軸はややチープで金次郎は寧ろヒール役の鷹林に肩入れしたくなってしまいました。松山藩を出奔し新選組隊士となっていた原田左之助に加え、桂小五郎や高杉晋作といった松山藩と戦うことになる長州藩の面々など幕末のオールスター勢ぞろいというのはちょっとやり過ぎの気もしますが、様々な文脈が交錯する土地である松山藩を舞台に選んだことが物語に厚みを出す効果を生んでおり、天童先生の慧眼だったと思います。ストーリーに全く関係無く正岡子規と登場人物の薄い関係が折に触れ語られるのですが、これは完全に「坂の上の雲」へのオマージュだなと思いつつ読んでおりました。

「アケメネス朝ペルシア」(阿部拓児著 中央公論新社)は前550年から前330年の220年間にわたりオリエントを中心にインド、エジプト、ヨーロッパにまたがる大帝国を築いたアケメネス朝ペルシアの歴史について詳述した一冊で忘れかけていた世界史の知識を思い出させてくれる良書でした。帝国の創始者とされるアンシャン王キュロス2世は新バビロニアを滅ぼして捕囚の身となっていたユダヤ人を開放したことで有名ですが、なんと彼はアケメネス家でもペルシア人でもない可能性が高く、最盛期の王であるダレイオス1世を初代とする説も存在していると知り驚きました。アケメネス朝を滅ぼしたのはマケドニア王アレキサンドロス3世ですが、彼はペルシアの王族を妻とし、帝国の統治体制も維持したことから彼をペルシア最後の王と規定する学説も有るようで歴史はやっぱり面白いと感じました。西洋中心史観ではギリシャとペルシアの間で争われたペルシア戦争はギリシャの勝利で幕を閉じたことになっており教科書でもそう学ぶのですが、大帝国ペルシアの視点では周縁の小競り合いでの失地に過ぎないとの見方もできるそうで、その後のギリシャ都市国家間の争いへのパトロン的関与を見てもそう考えるのが正しいような気もしました。このあたりの歴史は本当に面白いのでもう少し深掘りしてみたいところです。

すっかり紹介したつもりになっていましたがどうやらまだだった「五つの季節に探偵は」(逸木裕著 KADOKAWA)の続編である「彼女が探偵でなければ」(同)を読みました。このシリーズは、他人の本性を知ることに執着してしまう主人公みどりが、そのしつこさと推理力で秘されておくべきであった真実に辿り着いてしまうことで何とも言えぬ痛切な雰囲気になってしまうという、文字通り彼女が探偵でなければ良かったのにと思わされる(笑)、少し風変りな連作短編ミステリーです。前作では高校生であったみどりが本職の探偵しかも管理職となっており、更に二児の母として謎に挑んでいます。ジャンルとしてはイヤミスに分類されるのでしょうが、事件を解決することで誰もが心の中に持っている陰の部分を引きずり出される展開となっており、謎が解き明かされる爽快感、イヤミスならではのどんより感に加え、人間のネガティブな部分を突きつけられ考えさせられる感覚が混在する読後感で短編であるにも関わらず深みの有るミステリーだと思います。変わり者の時計職人父子を描いたやや希望の無い「時の子」から始まりますが、辛い中にも一条の希望を見出せる最後の「探偵の子」でやや救われるので意外と気持ちよく読み終えることができ、構成もよく練られていると感心いたしました。中途半端な紹介となり恐縮ですが、当然「五つの~」から読んでいただいた方が良いと思います。

NHKでドラマ「ワタシってサバサバしてるから」のシーズン2がいよいよ始まりました!全くサバサバしていない丸山礼扮する網浜さんが気になってしょうがなく、夫婦二人で楽しみに観ております。クセになること請け合いなのでぜひご覧いただければと思います!

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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