金次郎、マンゴーを食べながら「世界秩序が変わるとき」を読む

先日も少し書きましたが、5月も下旬となりいよいよ国産マンゴーが本格的に旬の季節を迎えました。出始めの頃と比べると少しずつ価格も下がってきて、宮崎産のブランドマンゴーである〈太陽のタマゴ〉もだいぶお求めやすくなり、ぎりぎり手が届く価格帯となり嬉しい限りです。完熟マンゴーを売りにしている〈太陽のタマゴ〉は熟して自然に木から落ちたものしかブランド認定されず、落ちた際に糖度15以上、重量350グラム以上で表皮の色が3分の2以上真紅なものがAAの〈赤〉グレード、2分の1程度が真紅のものをAの〈青〉グレードとして売っているようです。

〈赤〉と〈青〉の違いは見た目の部分もそれなりに大きく、〈青〉でも充分に美味しいというフルーツ店のお姉さんの言葉を信じ、金次郎家では少しでもお財布に優しい〈青〉を選んで清水の舞台から飛び降りることにしております(笑)。マンゴーは熱帯産の常緑樹なので、冬の有る宮崎ではハウスでの加温設備を用いた温度管理が必要となり、放っておくと40メートルの高さに育ってしまうマンゴーの木を6メートル程度のハウスに収める剪定の手間もかかるためにコストがかさみどうしてもお高くなってしまうのだそうです。プロモーションの成功も有ってか国産マンゴーといえば宮崎産というイメージが強いですが、実は国内で生産量が最も多い県は沖縄県で、なんと宮崎県の倍近くの生産量を誇っております。マンゴーが熱帯性の植物であることを考えると当たり前と言えば当たり前ですが、全く認識できておらず想像力の欠如が情けないです(汗)。沖縄産マンゴーのブランドは〈美らマンゴー(ちゅらマンゴー)〉で、糖度15以上、色は真紅で450グラム以上の大きさという厳しいスペックを充たさないとブランド認定されない逸品です。ハウスしか無い宮崎と違い、沖縄には露地栽培もハウス栽培も両方有るようで、ハウスの場合も冬の加温というよりは開花時の温度を20~30℃に維持して品質の安定を図る目的で活用されるのだそうで、結果的に若干コストが抑えられ価格帯も宮崎産より少しお安いのかもしれません。しかし、あんなに甘くて香りが素晴らしいマンゴーですが、開花時にはひどい腐敗臭的な悪臭を撒き散らし、その臭気で熱帯では活動できないミツバチに代わって受粉のためにハエを呼び寄せる仕組みになっているというのは驚きでした。一方、ハウス栽培のマンゴーはハウス内で飼育しているミツバチによる受粉が主流とのことにて、虫全般が苦手でとりわけハエのような不潔イメージの有るものは絶対NGのうちの妻の性格から金次郎家では割安な沖縄産によるコストダウンの道は閉ざされたかと思いきや、聞いてみると現物のハエが登場しなければOKのようで結婚23年になりますがまだまだ知らないことが多いと感じております(笑)。マンゴー栽培の歴史は古く、原産地の一つであるインドでは紀元前から栽培されており、ヒンドゥー教の神の化身として崇められている果物になっているということで、とにかく有難くいただくことといたします。

さて本の紹介です。「世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ」(齋藤ジン著 文藝春秋)は、ジョージ・ソロスや彼の片腕であったスコット・ベッセント現米国財務長官などのヘッジファンドにエッジの立った助言をして彼らをしっかり儲けさせた経歴を持つ著者が、大きなシステム転換の入り口にある世界経済の過去と未来をシンプルかつクリアに喝破した大変に面白くてためになる本でした。経済システムが自由放任、弱肉強食のレッセフェール時代から世界恐慌を経て大きな政府によるコントロールの時代となり、その非効率を打破すべく市場メカニズムに全てを委ねる新自由主義がこの30年繁栄を謳歌してきた流れが語られています。そして、この新自由主義がグローバリズムの進展を通じて生み出した格差や人工的価値観の押し付けが、システム全体への不満となって噴出し、とにかくこのシステムを壊して欲しいという社会的要請がトランプ大統領という象徴的な存在を押し上げたという現状の解説には納得感が有りました。つまりは恐ろしいことに、世界を混乱に陥れているトランプ現象は彼の任期であるあと4年弱の話で終わる一時的なブームではなく、歴史的に見て大きな振り子のように揺れるシステム変動の端緒として捉えるべきとされています。すなわち、我々は新自由主義やグローバリズムへの回帰ではなく、効率重視よりも政治主導の社会経済システムへの移行を前提とした戦略を構築する必要が有るということになり、金次郎の勤める会社も含め新自由主義以外のシステムを経験した社員が全くいない企業にとってそれは非常にハードルの高い課題なのだろうと感じました。バブル崩壊後の日本が失われた30年と呼ばれる期間に生産性を落としながら雇用の維持に努めてきた結果、生産性が低いが故に企業に資金が流入せず株価は低迷し全般的にPBRが低くなっているという構造の説明は腹に落ちますし、日本の雇用環境がルイスの転換点を超えて労働者不足に近づく中で、リストラの痛みが小さい状況で米国並みの生産性を目指すことでまだ成長余力を見いだせるという話には勇気づけられました。生産性が高く労働者に良い条件を提示できる企業が希少な人材資源を確保して生き残るという流れは、〈雇用の維持〉という戒めに縛られ続けてきた時代を生きてきた金次郎にとっては隔世の感でしたが、冷静に今この国で起きていることを眺めてみるとなるほどと思わされることが多いです。その他にも多くの示唆が得られる内容でおすすめですが、性的マイノリティとして常に現行の社会システムに懐疑的な目を向けることを強いられてきた著者の斬新かつ説得力の有る立論をお楽しみいただければと思います。

「タイガー田中」(松岡圭祐著 KADOKAWA)はイアン・フレミングの大人気作品007シリーズの「007は二度死ぬ」の後日譚で「007 黄金の銃を持つ男」の前日単となる非常に優れたパスティーシュ作品です。主役は日本が舞台であった「二度死ぬ」の登場人物で公安のトップであるタイガー田中とその娘の斗蘭で彼らが日本に潜伏していたジェームズ・ボンドを助けCIAやイタリアマフィアと関わり合いながら、悪の親玉スペクターと対峙するという内容になっています。松岡先生は相当な本シリーズのマニアなようで、どうやらオリジナル作品で明かされていない謎や説明のつかない矛盾について本作でしっかり辻褄を合わせているようです。伝聞調となってしまうのは、何を隠そう金次郎は007シリーズを全く未読だからなのですが(苦笑)、パスティーシュから手を付けたことをやや後悔しつつオリジナルもこれから読んでいこうと思います。戦後18年の1963年が舞台の本作ですが、国内外で様々な不可解な事件が発生した時期でもあり、そんな事件の背景も垣間見える近代史ミステリー的な読み方もできて歴史好きの金次郎にとっては二度死ぬならぬ二度楽しめる作品でした(笑)。

金次郎が仕事で長らく携わってきたプロジェクトはようやく第1フェーズを完了し一区切りとなりました。これから更に責任の重い次のフェーズに入っていきますが、気を引き締めて頑張っていこうと思います。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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