仕事はオンライン中心のご時世となり、金次郎の会社ではMicrosoft Teamsを使ったコミュニケーションが急速に普及していますが、そんな中やたらと使われるようになった言葉にメンションがあります。勿論英語の~の名を挙げるという意味のmentionからきておりますが、なんとなくカタカナで表記すると情けない感じになるなと思っているのは金次郎だけでしょうか。
さて、このメンションと切っても切れないのがご存知@(アットマーク)です。これまではメールアドレス上や@渋谷のような形で場所を表す意味で使われたり、金次郎@悲しいや金次郎@陸上部のように状態や所属団体を表したり、また、(@o@)のように絵文字でつぶらな瞳を表現するというのがメインだったように思います。更に、面白いところでは、@30分、@5人のように〈あと〉の代わりに制限の意味でつかわれたり、@=なると=なるほど、ということで〈なるほど〉の代わりに使われたりもするそうです。
そんな@ですが、今やチームにメンションで@Team、Aさんにメンションで@Aさんのように使う機会も急増し、非常に頻繁に使う記号に成長していることから当然万国共通だろうと思い込み、何かのはずみで英会話の講師に対して使ってみたところアットマークではちょっと通じていない雰囲気でした。まさかと思い調べてみると、なんとこの記号の正式名称はcommercial at(コマーシャルアット)またはat sign(アットサイン)というそうで、英語圏ではat symbol(アットシンボル)と呼ばれることもあるようです!しかも、他の国では、以下のような全く違う呼ばれ方をしているとのことで、@はどう観ても誰が見てもアットマークだろう、と信じて疑わなかった金次郎は目からウロコの発見でした。しかし、思い込みとは恐ろしい。
@の呼称:かたつむり(イタリア語)、エスペラント(ウクライナ語)、サザエ(朝鮮語)、ねずみ(台湾の中国語)、小さな犬(ロシア語)、ゆれる猿(オランダ語)、猿の尻尾(ドイツ語)、ミャウ(猫の鳴き声(フィンランド語)、シナモンロール(スウェーデン語)
Adという言葉が合体して@になった説をはじめ、由来には諸説あるようですが、一般には16世紀から普及し始めたと言われている、古いような新しいようなこの記号@について、引き続き注目していこうと思います。というか、新しい使い方を考えてみました。@驚く(あっとおどろく)、@u間(あっというま)、な@う(なっとう)、などどうでしょう。ただのオヤジギャグですね(笑)。
さて、予告通り今回は直木賞候補作であり、早くも本屋大賞2022での上位進出が噂される「スモールワールズ」(一穂ミチ著 講談社)を紹介します。連作短編というほどではないのですが、微妙に関係する六つのお話が世間は狭い=スモールワールズ的な感じで展開していきます。どれも力作なので、珍しく1話ずつ観て行くことにします。
第一話「ネオンテトラ」:夫との関係に鬱々としつつ子供を望むも上手くいかない美和の生活が、父親から虐待を受ける少年とのふとした出会いをきっかけに動き始める、というお話ですが、プロットの巧さと嘘ばかりつく人間の怖さに震える作品です。
第二話「魔王の帰還」:ややコメディ的なタッチの作品ですが、トラウマを抱える鉄二が、傍若無人かつ型破りでとにかくあり得ない性格の姉の支えにより一歩前に進み出す、愛をテーマにしたお話です。収録作の中では最も怖くないストレートな内容ですね。勿論それだけではありませんが。
第三話「ピクニック」:育児の大変さに押しつぶされそうになる母親を描いた作品かと思いきや、ストーリーはどんどん不穏な方向に展開していき、最後には二転三転驚かされるというミステリー仕立ての内容です。ふわふわとした不思議さを醸し出す視点と文体が印象的な作品。
第四話「花うた」:全編書簡形式で綴られる本作は書き出しの第一書簡から物語の世界にぐっと引き込まれる吸引力があります。直接は描かれていない、手紙のやり取りの合間の登場人物の苦悩や葛藤が実感を伴って浮かんでくる、〈書かない表現〉によって人間の罪と罰、そして許しを描き切った著者の筆力に感嘆する作品です。金次郎はこの短編が一番好きです。
第五話「愛を適量」:しがない中年教師の慎悟が長らく別居していた娘とかりそめの同居を始めるところから動き出すこの物語は、人生って難しいとつくづく感じさせられる内容ではあるものの、だからといって読者を絶望させるわけではなく、不思議と気持ちは前に向く地味だけど味わい深い作品です。
第六話「式日」:奇妙な縁でつながった高校時代の後輩からその父親の葬儀に誘われるという書き出しから想像力を大いに刺激されますが、登場人物の細かな心の振動が丁寧に描かれていて、正に人間が描けている優れた作品だと思います。そして、その描写が素晴らしいがゆえに、後半に作動する仕掛けがもたらす大きなショックと少しの希望に強く心を揺さぶられる、この傑作短編集の最後にふさわしい作品となっています。
この簡単な紹介だけからでもお分かりいただける通り、とにかく様々なパターンで人間の喜怒哀楽を描く豊富な表現のバラエティ、緻密に設計されたプロットの巧みさ、読者の感情を揺り動かし語り手の視点に引き込んでしまう表現力、と評判に違わぬ紛れもない傑作でした。百聞は一読に如かずということで、ぜひ手に取られることをお薦めします。
読書ブログのくせに読書を疎かにして無駄話ばかり書いているな、というご批判もあろうかと思います(笑)。無駄話はさて置き、読書はちゃんとしてますよということでもう少し本の紹介です。
「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」(白石一文著 講談社 上・下)はお恥ずかしながら以前序盤を読んで珍しく脱落した作品でしたが、読書家の方から薦めていただいたこともあり再読に挑戦し無事読了することができました。読み通してみると、本作は「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー著)を彷彿とさせる著者渾身の思想書的性格を有しており、前回の挫折は単純に金次郎の読書人としての力量が足りていなかったものと納得しました。格差と経済、結婚観など多くのテーマについて深く語られる内容ですが、何と言ってもガンと闘いつつも決してニヒリズムには陥らず生々しく生きる主人公カワバタの実存と死生観に心揺さぶられる作品です。ただ、我々の現実世界で流れている時間とは少し違う、別のループを形成する時の流れのようなものが表現されている気がするのですが、そちらはよく理解できませんでした(苦笑)。もう少し腕を上げて再再読しようと思います。
なんだかんだと今年の上半期は191冊を読了、通年で374冊だった昨年は6月末時点で181冊でしたので、決して冊数を追ってはいけませんが今年は380冊を目指せるペースとなっています。週末が4回しか無く、(しかもうち一回は都合により全く読めず)、祝日も無い6月を27冊でクリアしたのが大きいですね。