この4月から大学生になった甥っ子がどんなサークルに入るのだろうかと興味津々だったのですが、ちょっと硬派っぽいボクシング部に入ったと聞いてやや意外に感じました。ただよく考えてみると、かく言う金次郎も高校時代はボクシングが大好きで毎月ボクシングマガジンを欠かさず購入して熟読し、海外でビッグマッチが計画されると、授業そっちのけでその試合についての情報を独自にまとめ、教室の後ろの壁に勝手に壁新聞的に貼っていたのを思い出しました。今も昔も同じようなことをしていますね(笑)。じいさんに当たる金次郎の父も大学時代は空手部だったようなので格闘マニアのDNAが受け継がれているのやもしれませんが(笑)、怪我などせぬよう気を付けて充実した大学生活を送ってくれればいいなとひっそり応援しております。
そういえばオンライン英会話の講師には流れ者のさすらい西洋人が多いのですが、かなりの割合の人がタイに住み着いており、揃いも揃ってという程ではないものの結構な人数の講師がムエタイなどの格闘技をやっていて驚きます。先日もグローブ無しのベアナックルファイトのプロの方が講師でファイトマネーは勝てば1万ドルで負けると5千ドル、グローブを付けた一般のボクシングの方がダメージが蓄積するのでパンチが当たればすぐにKOとなる素手よりも死亡率が高いなどの豆知識(?)を教えてもらいました。そんなふうに会話のネタがすぐに見つかれば良いのですが、通常は特段準備しないと毎回ウクライナ問題についてフリーディスカッションすることになり悲しい気分になるので(ちょっと前まではコロナの話ばかりでしたが)、DMMが用意しているデイリーニュースを題材に会話を進める場合が結構有ります。そのニュースがどういう基準で選ばれているのかよく分からないのですが、先日upされていたその日のニュースに〈日本の学校、350万円の水道料金の請求書を受け取る〉というものが有りました!これは、神奈川県のある中学校でプールを管理していた教員がプールに水を入れ続けることで塩素とフィルターの効果により生徒がコロナウイルスから守られるとの意味不明な思い込みのもと、3か月以上に蛇口を亘って開けっぱなしにしていた(他の教員が蛇口を閉めるたびにしつこく開けていた)、という理解し難い事件について紹介した内容で、学校側が公に謝罪して、その水道料金の半額を校長、副校長、担当教員で自己負担する、という処分の詳細まで記載されておりました。この事件はこの事件でなかなか興味深くはあるのですが、正直これを題材に外国人とディスカッションするのには相当厳しいものが有りました。どう話してもhis misunderstandingというところに帰結してしまい話が展開しませんし、いつ「なぜ負担が半額なのか?」と聞かれるかと思いひやひやして集中できませんし、プール11杯分の水が無駄になったということで講師が水不足に苦しんでいる国の方でなかったことがせめてもの救いでした。DMMにもう少しマシな記事を選択してくれるよう心からお願いしたいところです。
さて本の話です。タイトルに興味を惹かれ「御社のチャラ男」(絲山秋子著 講談社)を読んでみたのですが、会社にも時々いる意識高い系で中身の薄いチャラ男を断罪して楽しむエンタメ小説かと思いきや、さすがは芥川賞作家の絲山先生、チャラ男として描かれる三芳部長の同僚社員の様々なチャラ男論を通じ、チャラいでは済まされない現代社会の危うさをポリフォニックに浮き彫りにする奥の深い作品でした。そもそも舞台となっている会社の名前がジョルジュ食品というのがいかにもチャラくて笑えます。三芳のチャラさにニヤつきながら読んでいた前半部分にも様々な示唆が埋め込まれているのではないかと、珍しく読み終えた瞬間に頭から読み返したくなる作品でした。作中でノーベル文学賞作家であるジョン・ゴールズワージーの名作である「リンゴの木」(KADOKAWA)が紹介され、主人公の上流階級の青年フランク・アシャーシーがチャラ男としてけちょんけちょんにけなされていて面白そうと思って読んだところ、なんとも切なく胸が苦しくなる作品でした。イギリスの田舎の描写が素晴らしいのでぜひ読まれることをお薦めします。本屋大賞全部読みプロジェクトで2005年度第4位の「袋小路の男」(講談社)を読んだ際もその危うさを漂わせる筆致が素晴らしいと思いましたので、今後も絲山先生には注目していきたいと思います。
続いては、2010年度第4位の「神去なあなあ日常」(三浦しをん著 徳間書店)とその続編である「神去なあなあ夜話」(同)の紹介です。三浦先生の父方の実家の有る三重県美杉村をモデルにした神去村を舞台に、進路も定まらずヤンキー高校を卒業した都会育ちの平野勇気が、突然何も無い山村に放り込まれ訳も分からぬまま林業の修行をやらされているうちに、少しずつ地に足を着け本物の人生を生き始める姿を描いた青春小説です。とにかく何よりも山の神と共に自然に抱かれておおらかに暮らす、勇気の居候先の主人である飯田与喜をはじめとした神去村の面々が文句無しに大好きになります。山奥での生活の現実は非常に厳しいとは分かりつつも、山の自然の懐の深さに魅了され、読んでいるうちに5回以上はこんな村に住んでみたいと真面目に思わされてしまうところが凄い。そして、こんなほっこりする作品を書くかと思いきや、2005年度第9位の「私が語りはじめた彼は」(新潮社)においては、「神去~」とは全く違う作風で、やや古めかしく抑制の効いた筆致で淡々と不気味に村川という大学教授にまつわる男女のどろどろした関係を巧みに描き出すという三浦先生の才能の幅にもはや脱帽です。最後まで村川という人物の内面は語られず謎の存在のまま6作の連作なようなそうでないような短編集は終わるのですが、それでいて彼の存在感が凄まじいという不思議な読後感でした。
今回はチャラ男やモテ男が登場する作品を何冊か紹介しましたが、「伊藤くんA to E」(柚木麻子著 幻冬舎)は幼稚で無神経で自意識過剰ですぐに逃げる伊藤くんという最強のダメ男に振り回されつつ立ち上がる女子たちを描いた作品で、この伊藤くんは本当にムカつきます(笑)。
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