2月末に身内に不幸が有り、先日葬儀に参列して参りました。記憶に有る限り母が亡くなって以来の葬儀でほぼ10年ぶりでしたが、先月の結婚式に続き立て続けの礼服着用となり何はともあれ10年以上前に新調した礼服が無理なく着られることに自分を褒めております。葬儀は新宿区上落合に有る落合斎場で営まれましたが、妙正寺川と神田川が形成する谷底平地と武蔵野台地の高台が入り組んだ地域だけのことはあり、斎場に辿り着くまでの坂道は結構ハードでした。加えて道路の舗装も悪くなかなかの悪路で歩きづらく、うちの妻は霊柩車の走り過ぎで地面削れた?と言っていたのでやんわりと否定しておきました(笑)。ちなみに落合という地名は先述した二本の川が落ちあう場所ということで名付けられたようです。
この落合斎場は想像以上に新しくて見た目も良く、本館はセレモニーホールと火葬場が一つの施設に統合されているコンプレックス型になっていて、不謹慎ですが非常に便利な構造で、お年寄りが多い家族葬だったこともありとても助かりました。ただ、コンプレックスだけに一般火葬用の炉が6基も付設されていて、出棺のタイミングが複数重なってしまったために多くの棺桶が入り乱れつつ行き交うカオス状態で、やや情緒に欠ける面は否めませんでした。とは言え、複数の読経が響き合う様子は良く言えば荘厳であり、さすがは葬儀をするまでに1週間待つこともある人口密集地東京だけのことは有ると、亡くなって即葬儀が当たり前の故郷福岡とは違うと変に感心いたしました。少し時間は戻りますが、新鮮だったのは葬儀の際の読経で、どうせお経だから聞き取れないし意味も分からないだろうと気を抜いていたところ何となく聞き取れる単語が多いことに気付き集中してみたところ、どうやら故人の経歴や人となりをお経の節に乗せて言わばラップ調に紹介しているくだりが挿入されており面食らいました。金次郎の葬儀の際にも「福岡に生まれ~、2年間岡山で過ごし~、○○小、××中、□□高、△△大で学業を修め~、●●株式会社に勤め~、シンガポールに4年間駐在し~」などと紹介され、更に「読書を趣味とし~、年間300冊以上の本を読み~、ブログにその感想を書き記し~、友人と本屋大賞の予想対決を楽しむ~」などと暴露されてしまうのはちょっと恥ずかしいので、きちんとエンディングノートに希望の紹介文草案を載せておこうと心に決めました(笑)。また、曹洞宗の様式なのだとは思いますが、住職により節目節目に狂ったように打ち鳴らされる鈴の響きにはロックのソウルを感じ、そう言えば黄檗宗様式であった母の葬儀でも途中で「喝!」という大声の気合が入り驚いて自分まで心臓が止まりそうになったことを思い出し、禅宗とはそういうものなのかなとどうでもいいことを思ったりいたしました。葬儀が終わり控室に戻りながら妻に「ちょっとお経っぽくなかったね」と大声で話していたらすぐ傍に住職がいらっしゃってまたやっちまったと反省いたしました(汗)。金次郎の座右の銘は「口は禍の元」です(涙)。最後になりますが、関東式ということなのか、お骨を粉一粒まで全て骨壺に入れる収骨様式にはかなり驚きました。福岡では一部のお骨しか拾わないので骨壺は比較的小さいのですが、今回のものは年老いた喪主の方が抱えきれない程に巨大で、自宅に置いておくには存在感が大き過ぎて納骨を急がねばと感じさせる迫力でした。
さて本の紹介です。山崎豊子大先生の代表作の一つである「華麗なる一族」(新潮社 上・中・下)を遂に読みました。キムタクさん主演ドラマでは長男の万俵鉄平が主人公だったこともあり、どちらかと言うと阪神特殊鋼の挑戦と破綻に焦点を当てる展開でしたが、原作では冷徹な野心家の銀行頭取である家長の万俵大介が主役であり、彼の画策する〈小が大を喰う合併〉を巡るどろどろの権謀術数が中心で中年になった今こそ読むべき作品でした。とにかく先ずは妻妾同居も含めた強権的家父長制の実態に驚かされますし、それが僅か60年程しか昔の話でない点にもこの国の保守性や様々な社会的課題の病巣を見た気分にさせられました。そもそも大介の娘たちである万俵家の三姉妹が一子(いちこ)、二子(つぎこ)、三子(みつこ)と非常に適当に名付けられているのがそんな時代を象徴的に表していると感じました。まぁ、阪神特殊鋼にいる長男が鉄平、父親が頭取である阪神銀行に勤める次男が銀平と、血統を大事にする設定の割には龍介、敬介、大介と受け継いできた万俵家伝統の一文字である〈介〉をあっけなく手放しているので山崎先生は登場人物の氏名にはさほど拘りが無いというのが事実に近いのかもしれません。金融再編の荒波が間近に迫る中で、預金額で都市銀行中10位に甘んじる阪神銀行を生き残らせ更に成長させることを目論む大介が合併のターゲットにするのが大同銀行ですが、日銀系の大同を巡って大蔵大臣や高級官僚のみならず、日銀や他の都市銀経営陣も入り乱れ、それぞれの利害と思惑を胸に化かし合いを繰り広げる様には混沌の中にも底知れぬ生命力を感じパワーをもらいました。万俵一族もさることながら、大介の娘婿である大蔵官僚の美馬、大介の愛人の相子、大同銀行で日銀派の一掃を狙う叩き上げの綿貫専務などは非常に人間臭いキャラ達で嫌な奴らではありますが目が離せぬ存在でした。この物語が描かれた時代には銀行といえば隆々とした勤務先で銀行員は花形の職業だったと思うのですが、バブル崩壊を契機に急速に進んだ金融再編という未来を見事に見通した山崎先生の取材力と洞察力は正に慧眼だと感服いたしました。
「さやかの寿司」(森沢明夫著 角川春樹事務所)は心に傷を抱えた登場人物達が、天才寿司職人で寿司おたくである江戸川さやかの握る極上の寿司の旨さやその癒し系の人柄により救われるというグルメ感動小説です。寿司やネタについてのうんちくをふりかざすかなり痛いおやじが出てくるエピソードを読み、自分もそっちの方向に進みかねないと強く自戒いたしました(笑)。グルメ小説でありながら寿司の記述が少な過ぎるので、まだまだ全貌が明かされていない夕凪寿司の常連達の過去にまつわるエピソードも含め続編更にはシリーズ化に多いに期待しております。
あるあるなのですが、葬儀終了後に出てくる精進落としのお料理は、どうやったらこんなに・・・と唸らされるクオリティでした(笑)。何とか立て直すべく帰りに日本橋の鶴屋吉信で食べた抹茶と生菓子セットは心が救われる美味しさで夫婦でほっと一息つけて良かったです。
読書日記ランキング