持病の関係で金次郎は鍼灸の治療を受けた経験が一般の人より多いと思います。東洋医学は西洋医学と違って統一されたシステムが存在していないこともあり、それなりに流派などは有るのでしょうが、施術においては先生それぞれの考え方やアプローチで行われるものが多く、更にその施術法を長年にわたる治療経験を踏まえ独自に進化させているパターンが殆どなので本当に多種多様です。一度だけ行った小岩の先生の治療は、絶叫したくなるほどの施術の痛みが通常の不調より圧倒的に辛く、全く割に合わない受診で二度と行きませんでした(汗)。
シンガポールから帰国して間もない頃から、ネットで見つけた武蔵小山の治療院に長らく通っていたのですが、治療前後によく食べた駅前のパスタ店や小山台高校の前のハンバーグ店、商店街の中のファーストフードそしてちょっと離れた場所のラーメン店などが懐かしく思い出されます。ここの治療院の先生は本場中国で修行されたこともあってか、正統派の中国鍼灸をされていたとの記憶で、中国の技法であるちょっと珍しい刺絡も時々やっていただきました。ツボや手足指の末端に小さな鍼を刺して、そこから汚血を少量放出することで自律神経の働きを整える手技である刺絡は、時に劇的に気分が良くなってすっきりする効果が感じられなかなかに衝撃的でした。ただ、刺絡は良いのですが、この先生の鍼による治療も別の意味で非常に痛く、怖がりの金次郎はいつもびくびくしながら施術を受けておりました。どう痛いかというと、アキレス腱のちょっと上の足の内側部分など特定の部位に鍼を刺した際に、運が悪いと全身に電流が走るようなヤバい刺激が有り、ひどい時は身体がビクッと痙攣したりもするので結構ダメージが残ります(汗)。こちらはそのビリビリがいつ来るかと気が気でなく全身に力が入ってしまうため、いくらリラックスしなさいと促されても全く無理で、願いが叶わずビリビリ状態になってしまった際に先生がやってやった感を出すたびに殺意すら覚える状況でした(笑)。この先生は新奇な治療法にも積極的に取り組む方で、私が受けた信じられないほどに太い金の鍼を腰の辺りに突き刺す治療、粗塩のようなものをお腹の上に敷いた紙の上で燃やす治療の他にも、純金のへらのようなもので患部をこすり続ける治療や鼻の奥の粘膜を強く刺激してひたすら大量の鼻水を出す治療など、横で見ている分にはなかなかに面白い経験でした。もうあのビリビリには耐えられそうにないので受診はしませんが、長らく行っていない武蔵小山の街並みがどう変わったのかは久々に確認しに行きたいなと思いました。
さて本の紹介です。「ホモ・サピエンス30万年、栄光と破滅の物語 人類帝国衰亡史」(ヘンリー・ジー著 ダイヤモンド社)は、我々人類=ホモ・サピエンスが繁栄を謳歌する一方で、静かに絶滅に向けた時計の針が進み続けていることを示し、人類が生き残るために選ぶべき道筋についてエドワード・ギボンの「ローマ帝国衰亡史」のフォーマットをなぞる形で提示する刺激的な内容の本でした。かつて恐竜がそうであったように、閉じた領域で支配的な種となったものが直面する運命づけられた絶滅について、過去の極端な人口減少に起因する人類の遺伝子の想像以上の均質性や人口増加率の減速といった科学的根拠を参照しながら淡々と突きつけられる語り口には、不思議と怖さは感じず寧ろ納得させられたとの印象です。特に、背景は未だ解明されていないものの、現代男性の精子の数が統計的に有意に減少しているというのは何らかの形で人類の活動が地球の資源のキャパを越えてしまっていることの証左ではないかと思い知らされました。全体的に納得感は高いのですが、著者が結論として示した、人類の多様性を回復するために宇宙に進出することが生き残りの道との提言については、若干消化不良にて今一度読み直してみなければと感じています。その他にも、気候変動に伴ってグローバルサウスからノースへの大規模な人々の移動がトレンドになる、イノベーションを起こすには人類の頭脳の絶対数が重要であり、宇宙開発に向けまだまだ必要な技術革新は人口減少が顕著になる前に進めなければならないなど、多くの新たな視点を得られる刺激的な読書となりました。
「密告はうたう」(伊兼源太郎著 実業之日本社)は人気シリーズである「警視庁監察ファイル」の最初の作品で、〈警察の中の警察〉と呼ばれ身内の不正や問題行動を調査する監察に所属する主人公佐良の葛藤を軸に描かれるサスペンスです。捜査の過程で後輩の刑事が殉職した過去の未解決事件が心の傷となっている佐良は、身内から激しく嫌悪される監察に異動し孤独感を強めていきます。そんな中、殉職した後輩の婚約者であった女性警察官の皆口に対する密告により、心ならずも彼女の行動確認を担当することになった佐良は私情と職務の狭間で更に悩みまくることになります。警察組織の描写にはリアリティが有りますし、複雑なプロットも読みごたえ十分で、全編やや暗い雰囲気で重苦しくはあるものの、しっかり読ませる重厚な人間ドラマという内容とはフィットしておりレベルの高い一冊だったと思います。続編も読むのが楽しみです。
最後に簡単に。「歌舞伎町ララバイ」(染井為人著 双葉社)は15歳で実家を飛び出し、心に傷を抱えて歌舞伎町に辿り着いた七瀬が、ようやく見つけた居場所のトー横広場で悪い大人に翻弄され大切な友人を失うという辛い体験をします。死の瀬戸際に追い込まれながら九死に一生を得た七瀬が、社会に落とし前をつけるために歌舞伎町に舞い戻り大人たちに復讐を遂げるという痛快な展開ではありますが、そんな中にドラッグ、若者がいつの間にか関与させられている犯罪、性的虐待といった社会派なテーマをしっかり描いているところは染井先生の面目躍如といったところかと思います。
我が家のトラブル発生サイクルは全くとどまるところを知らず、ようやくシーリングライトが復活したかと思いきや、今度は電子レンジの故障が発生し、プロテインを冷たい牛乳割りで飲まねばならないのみならず、レンチンメニューが全部NGとなり苦しい状況です(汗)。エラー表示によるとマグネトロンが不調とのことですが、何のことだか全く分からず週明けの修理の成功を祈るばかりです。
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