金次郎、初めて食べた浜松餃子に舌鼓を打つ

先日、出張で豊橋方面に行く機会が有り、日帰りではあったものの大変有意義な遠出となりました。東京駅からひかり号で品川、新横浜、三島、静岡を経て浜松まで乗り、そこから東海道本線に乗り換える行程でしたが、やはり浜松と言えば宇都宮と鎬を削って餃子日本一を争う街ですので、餃子は絶対に外せないと、同僚と示し合わせて少し早起きにはなるものの昼食の時間を確保するスケジュールを組んで勇躍浜松に向かいました。お客様との面談を前にニンニクはまずいだろうということで、しっかりと歯磨きセットとミンティアを準備する万全の態勢で臨みましたが(笑)、浜松駅直結の商業ビル内でいただいた餃子定食は、それだけの準備をするに足る非常に高いクオリティーで唸らされました。

元祖浜松餃子とされる石松餃子は、やや小ぶりなたたずまいと横に添えられたもやしが特徴的で、キャベツやタマネギ中心のあっさりとした具材を薄めの皮で包んだ軽い食べ心地が素晴らしく、セットで食べた肉餃子と比較すると、その甘くて軽い食感が際立つ逸品でした。美味し過ぎてあっという間に計10個の餃子を平らげましたが、気分を出そうと注文したノンアルコールビールと餃子との相性が抜群過ぎて、そんな筈もないのに少し酔っぱらった気分になりました(笑)。石松餃子がニンニク控え目であったことを言い訳に、歯磨きを横着してミンティアで乗り切ることとした我々は、3人皆が同じニンニク臭だったから感じなかっただけではないかとの一抹の不安を抱えつつも、無事お客様への説明を終えほっと一息つきました。その後、途中で合流した同僚と一緒に軽く打ち上げをすることとなり、またもや浜松で降車し近くの居酒屋に行ったのですが、これがふらりと入った割にはなかなか良いお店で、浜名湖の海苔、ホルモン焼き、豚肉のグリル、イカの肝焼き、浜名湖うなぎの白焼きとどれも美味しく、勿論出てきた浜松餃子も高水準でニンニク尽くしの一日となりました(笑)。途中の新所原駅というところで天竜浜名湖線に乗り換えというアナウンスが入り、金次郎は乗り鉄ではないものの非常に興味をそそられる鉄道でしたのでちょっと調べてみました。東海道本線をバイパスする形で掛川と新所原を結び浜名湖北岸を通る通称天浜線は、全長67.7km(37駅)の路線で、東海道本線有事の際の輸送路確保という軍事目的で敷設された鉄道なのだそうです。同じく掛川・新所原間が53.1km(14駅)の東海道本線と比べると浜名湖をぐるっと回るためか総延長も長くかなりちょこちょこ停まる印象ですが、その分確実に風光明媚なのでしょうから、次回が有れば1時間ほど早起きして餃子の代わりにこの電車に乗ってみようかと思いました(笑)。

さて本の紹介です。「研修生」(多和田葉子著 中央公論新社)は、1982年に当時西ドイツのハンブルクに渡った著者の半自伝的小説で、ハンブルクの書籍取次会社に研修生として勤める22歳の〈私〉が主人公の物語です。心もとない異国の地の異国人として、また非常に覚束ない身分である研修生という立場からの不安を、見分を広げることに重きを置いて薄めながら、自分の世界を拡張し逞しく生きる様子が鮮やかに描かれています。危ういドイツ語は繊細な人間関係を構築するには不十分であるものの、本質に切り込むには意外と有効という利点を逞しく武器にしているあたりはやるなという感じで印象的でした。同じく洋行した漱石や鴎外に思いを馳せて力に変えているところや、アイデンティティクライシスとその克服、大陸ヨーロッパの多様性と懐の深さなどのテーマも興味深いですし、何より自分がシンガポールに赴任した当初の何とも言えない心もとなさを思い出すこともでき、いろいろと楽しめる小説でした。鬼才多和田先生のルーツの一端を垣間見られたのは収穫でしたが、衝撃を受けた「犬婿入り」(同 講談社)の筆致と全く違うことに驚かされました。

「シン・関ヶ原」(高橋陽介著 講談社)では、天下分け目の戦いとして日本で最も有名な合戦と言っても過言ではない〈関ケ原の戦い〉に関し、ほぼ常識として認識されている多くの通説が実は歴史的事実ではないという衝撃的な最新の研究成果について解説されています。例えば、大河ドラマなどでもよく描かれる小早川秀秋の東軍への寝返りの場面も、実は戦の前から寝返りは確定しており、秀秋の逡巡はおろか寝返りの催促のために東軍から大砲が撃ち込まれたというあまりにも有名なエピソードも有り得なかったとされています。そもそも豊臣秀吉が没した時点で徳川家康は既に天下人であり、この戦そのものが〈天下分け目〉ですらなく、東西両軍の総兵数も一般的に言われている20万弱とは程遠い3万程度であったと知り若干がっかりいたしました。江戸時代に流布したこの戦いに関する風聞を、明治になって帝国陸軍がまとめ直したものをベースに司馬遼太郎大先生が小説「関ケ原」で描いたものが通説の根拠になっているようです。昨今の史料検証によりこれら通説の誤りが明らかになっているのだそうですが、こんなに常識化しているものが史実ではないという事実に、改めて歴史の難しさと奥深さについて考えさせられました。

少し前のブログで「密告はうたう」(伊兼源太郎著 実業之日本社)を紹介しましたが、切り口が斬新で面白かったので「警視庁監察シリーズ」の後続作品を読んでみました。「ブラックリスト」(同)と「残響」(同)は内容がかなり繋がっており、警察内部の〈互助会〉なる闇の組織の実態に迫りつつ、「密告はうたう」で未解決となった刑事殉職事件の真相が明らかになる展開です。監察官は直接事件の捜査をするわけではないため、内偵や行動確認の対象となる警察官を通じてしか〈犯罪〉に関わることができず、ストーリーの展開にはどうしても制約がかかるのですが、意外にもこの制約が物語全体を貫く抑制された雰囲気を強調する効果を生んでいて寧ろプラスに働いている点が印象的でした。警察官が悪事に手を染めすぎている点はやや気になりますが(汗)。「偽りの貌」(同)では、それまで主要キャラであった佐良や皆口が少し後ろに下がり、脇役として描かれてきた若手である毛利の成長に焦点を当てたエピソードです。相変わらずの警察官の不正にトー横キッズの生態、危険ドラッグが絡む展開で、シリーズ的にはひと休みの内容ではあるものの社会派エンタメとしてメッセージはしっかり出ていると感じました。

石松餃子を堪能した3人のうち、金次郎を除く若手2人がインフルに罹患し非常にびくびくしておりましたが、どうやら感染は免れたようです。アルコールを飲むのをやめて、疲労が蓄積するのを回避しているのが奏功しているのかもしれませんし、マヌカハニーの効力が出ているのかもしれません。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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