金次郎夫妻、老舗名店のお汁粉を堪能する

先日、お休みをもらっていた平日午後に時間ができたので神田須田町の名店である甘味処竹むらを訪問いたしました。神田須田町一帯には東京大空襲で奇跡的に焼け残った老舗が多く、あんこう鍋のいせ源や鶏すきやきのぼたんなど趣深い建物と伝統の味わいを楽しめるエリアとなっています。昭和5年創業でそんな老舗の一角を占める竹むらは、NHKの朝ドラ「虎に翼」に〈竹もと〉として登場したことで人気に拍車がかかり、週末は長蛇の列で1時間以上待つことも有るそうですが、金次郎は平日の変な時間の訪問だったためか幸運にも並ぶこと無くするりと入店することができました。

当日は気温がとても低かったので温まろうとお汁粉を所望したのですが、そこで初めてこしあん仕立てが御ぜんしるこ、つぶあん仕立てが田舎しるこという定義になっていることを知り、人生ひたすら勉強だなと改めて感じました(笑)。下手をすると一口で食べられるのではないかというお上品な量のお汁粉でしたが、金次郎の注文した御ぜんしるこはしっかりと甘いのに甘過ぎず、甘過ぎないのにコクが有るという絶品で、田舎しるこを選んだ妻と共に瞬殺で完食いたしました。御ぜんしるこはお餅が一つ、田舎しるこにはお餅が二つ入っていて、田舎の方がお餅の焼きが強くより香ばしい仕上がりになっていたように思います。本当は名物の揚げまんじゅうも食べてお腹を満たしたいところだったのですが残念ながら売り切れており、さすがにちょっと物足りなかったので、勢いで徒歩1分と至近のやぶそばに入りこちらも絶品の日本そばをいただくという至福の時を過ごさせていただきました。また、竹むらでは一部商品のお持ち帰りも可能で、これまた好物のあんみつを購入し翌日自宅で楽しみにいただきました。お汁粉同様に絶妙な甘さのバランスがたまらないこしあんと黒みつは最高のクオリティでしたが、あんみつの影の主役である寒天については、かなり主張の強いところてん風の味わいになっていて、黒みつとのハーモニーも完璧ではなく、求肥もやや素朴な仕上がりであったため我々夫婦としては5点満点の3.5点という評価でした。やはりあんみつと言えば、コロナ禍期間に銀座4丁目交差点の一等地に有った実店舗が閉店し、現在は銀座三越の地下でお持ち帰り用のみ販売されている銀座鹿乃子のあんみつが我々の中では最高点で、まだこれを脅かす存在には出会えていないものの、浅草いづ美、浅草梅園、あんみつ みはしなどまだまだトライしていない名店も多数残っており確り食べ比べねばと考えております。そもそも、地元で長蛇の列に並んでいるところを知り合いに見られるのがやや恥ずかしくて訪問できていない、人形町の老舗甘味処である初音に行かないと始まらないですね(笑)。

さて本の紹介です。「宇宙地政学と覇権戦争」(ティム・マーシャル著 原書房)は人類の宇宙開発の歴史を概観しつつ、米中ロのビッグ3を中心とした宇宙を巡るパワーバランスの現状や将来想定される宇宙戦争のシュミレーションまで網羅したなかなか興味深い内容の本でした。稀少なレアアースを含めた鉱物資源を巡る競争のみならず、極地での水資源確保、更には火星への中継拠点としての重要性の観点でこのところ再注目されている月開発のポイントを改めて捉え直すことができ勉強になりました。冷戦期には常にアメリカに一歩先んじていたロシア(旧ソ連)が凋落し、予算的にも技術的にも中国に大きく水をあけられている状況には隔世の感を禁じ得ませんでした。地球と月の双方から重力の影響を受けないとされる5つのラグランジュ点の戦略的重要性と、その周辺領域の支配権確保に向けた熾烈な競争について理解する中で、ようやくSF小説「三体」のタイトルの持つ意味を少しだけ実感することができました(笑)。ロケット打ち上げ時に自転のエネルギーを活用できるため、各国の打ち上げ拠点は東部海岸線に置かれがちという豆知識を得ると同時に、西側にしか海の無いイスラエルはそんな逆境を寧ろ糧にしてより高い技術水準を求めて研究開発を進めているという〈らしさ〉に感心いたしました。

「ラウリ・クースクを探して」(宮内悠介著 朝日新聞出版)では、親ソ連か独立かで揺れる冷戦期のエストニアで生まれ育ったプログラミングの天才ラウリ・クースクの紆余曲折の人生を描くことで、歴史に翻弄されるとはどういうことかを平和な戦後80年を生きる日本人に語り掛けている部分も有る作品と感じました。プログラムを書くことによって細々と社会との繋がりを維持していたラウリでしたが、プログラムが生み出すアウトプットが現実世界と交錯して初めてそこに〈意味〉が生まれるという事実に気付くまでの彼の長く険しい道のりが様々な関係者の視点で語られる内容となっています。世界の見え方や捉え方は人によって違っていて、それぞれの行動の意図するところも勿論他人が勝手に思い込んでいるものとは異なるわけですが、仮に最後までそのずれが擦り合わなかったとしても、色々な思いが交錯することそのものに意味が有ると気づかされる、コミュニケーションというものの字面を越えた価値に思いを馳せるきっかけになり読んで良かったと思いました。

この観点は先日読んだ話題の本である「小説」(野崎まど著 講談社)において語られる、〈虚構〉の意義と重なるところが有るなと勝手に感動しておりました(笑)。そもそもタイトルが「小説」というのは余りにも大それているのではと危惧しながら読み始めた本作ですが、徹底的に自らの内面世界を押し広げるという創作活動の本質を、現実から逃げ虚構の世界に逃避する内海と、他者との関わりよりもひたすら自らの情動に忠実な外崎という対照的な二人の友情をモチーフに見事に描き出していると感じ看板に偽り無しと感動いたしました。ただ森見ワールド的な不思議さも有り、リーダビリティを生み出す謎要素も有りの盛りだくさんな内容で、テーマが深淵なだけに消化不良な部分は否めず、必ず近日中に再読したいと思います。

最後に簡単に。「北辰の門」(馳星周著 中央公論新社)は、天然痘が蔓延し、藤原不比等以来栄華を誇っていた藤原四家がやや勢いを失っていた時代に、自らの才覚と権謀術数で天皇と並び立つ地位に昇る野望を抱いた藤原仲麻呂(恵美押勝)が主人公の歴史小説です。叔母である光明皇后の権力を背景に、その娘である阿倍内親王をも取り込んで橘諸兄、奈良麻呂父子などの政敵を葬っていく仲麻呂の姿を古代とは思えぬリアリティで描いた筆力はさすが直木賞作家と舌を巻きました。

先日気まぐれで受診した大腸内視鏡検査は軽い気持ちでやってはいけなかったと後悔する程に事前の準備が面倒でした。野菜、果物、海藻類など直前の3日間に食べてはいけない食材がかなり多く、結果タンパク質重視の食生活となり、三越の地下食品売り場で焼き魚を買い家で焼き魚定食を食べるという贅沢を覚えてしまい更にお財布がピンチです(汗)。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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