金次郎、フィラーワードによるイップスを心配する

金次郎は仕事柄お客様の前でプレゼンをする機会が有るのですが、そんな時に気になってしまうのが自分の発言に忍び込んでくるフィラーワードの存在です。フィラーワードとは、発言の中で単語と単語の間に差し込まれる無意味な言葉の総称ですが、代表的なものとしては「えー」、「えーっと」、「まぁ」、「そう」、「なんと言うか」、「はい」、「やっぱり(やっぱ)などが挙げられ、読者の皆さんも思わず口に出したり他の人の発言が気になってしまったりというご経験をお持ちと思います。考える間を取ったり、自分の中で言葉のリズムを整えたりする効果を無意識のうちに狙って出てしまうフィラーワードですが、頻度が低ければ気にならないものも濫発されてしまうと文章がぶつ切れとなって意味が通じなくなったり、聞き手の集中力を削いだりとコミュニケーションを阻害するリスク大の要注意癖です。

例えば、上司A「これって今日中にやってもらうことになっていたよね?」、部下B「えー、はい、やっぱ、やってません」などのやり取りはAの立場では結構もやもやせずにはいられませんね(笑)。また、年配の政治家で特に多いケースで、言葉の語尾の母音を伸ばしてフィラーワードにするパターンは、その存在を意識して気になりだしてしまうと本当に発言内容が入ってこなくなります。「この度は、あー、国会審議において、えー、与党の強引なやり方に、いー、憤りを、おー、感じる次第です」のようなイメージは皆さんにも共有いただけると思います。その他にも、口癖的なものがフィラーワードとなって入り込むことで意味が通らなくなるケースも結構散見されます。例えば「逆に」と言いながら順接だったり、「要は」と言いながら説明が長いなどのパターンで、逆になってないじゃん!要約してないじゃん!と激しく突っ込みたい気分になり会話に集中できなくなってしまいます(笑)。勿論英語にも同様の言葉は有りまして、メジャーどころだと、you know、I mean、how can I say、so、actually、well、sort of、kind of、likeなどでしょうか。金次郎の英語暗黒時代は以下のようにフィラーワードだけが口を突いて出てしまい、振り返ってみるとまるっきり意味をなさない発言をしていたことに気付き愕然とします(汗)。「I am, so, from, you know, Tokyo. I mean,I have stayed in Singapore for, kind of, three years. Life in Singapore is, how can I say, kind of, actually, heaven to me.]。恥ずかしいですね。ただ、ひたすら「You know I mean how can I say, you know I mean how can I say」的な繰り返しを続け、何も言わぬうちに先方を根負けさせてしまう凄腕の先輩もいらっしゃいましたので高等テクと言えなくもありません。こうやって書いていると必要以上に意識するようになってしまい、自分の発言中のフィラーワードが気になるあまりにイップス的に何もしゃべれなくなる事態すら懸念されるのでこの辺でやめておきます(汗)。有効な対策としては、意識して間を取りながらゆっくりしゃべることを心掛けるのがやっぱ一番ですかね(笑)。

さて本の紹介です。話題作の「ゴリラ裁判の日」(須藤古都離著 講談社)はゴリラが主人公ということでやや食指が動かず長らく積読になっていましたが、いつも面白いメフィスト賞受賞作ということもあり思い切って読んでみることにしました。ストーリーに入り込めるのかという懸念は全く杞憂で、アメリカ式手話を解し人間と自在にコミュニケーションができるニシローランドゴリラのローズが、カメルーンのジャングルを離れアメリカに渡って自らの世界を拡げる中で夫ゴリラの死やアイデンティティクライシスに直面しながら、自らの進むべき道を見出していくという規格外の内容にすっかり没頭してしまいました。読んでいるうちに、ピュアで素直でユーモアに溢れたローズがどんどん大好きになりますが、この物語は単なるローズ愛に留まらず、正義とは、人間とは、自由とは、幸福とはなどの深淵なテーマを突き付けられる読み応えも十分な一冊でした。ニシローランドゴリラの生態やジャングルの自然の描写がとてもリアルであることに加え、登場人物が外国人であること以上に物語全体の雰囲気が海外文学的で、とても日本の新人作家が書いたとは思えず、読みながらずっと驚かされっぱなしでした。印象的な裁判の場面から始まるプロットもよく練られており、クライマックスの法廷のシーンでは不覚にも感動させられてしまいました(笑)。それこそゴリラへの偏見を捨て去って手に取っていただきたい一冊です。

「身代りの女」(シャロン・ボルトン著 新潮社)は名門高校の卒業を間近に控えた男女6人が、若気の至りの度胸試しで自動車事故を起こし母子3人を死に至らしめるという詰んだ状況から物語は始まります。頭脳明晰な女生徒メーガンが残りの5人と契約を結んで一人で罪を被るという流れとなり、彼女の真意への不審、贖罪と打算が入り交じり苦しむ5人の姿が第1部の終盤で印象的に描かれます。20年後が舞台の第2部では、今や成功者となり多くの失う物を抱える立場となった5人が、刑期を終え出所したメーガンの奇矯な振る舞いや相変わらず真意の掴めない言動に怯え、追い込まれて次第にパニックになっていく様子がかなりおどろおどろしい感じで描かれます。そうこうするうちに失踪や傷害事件に加え殺人事件までが発生し、真犯人や動機の謎を巡るスリリングなサスペンスが展開します。当然すっきりハピエンとはいかず、どんよりした読後感とはなりますが人間の心の闇に迫る怪作でした。

最後に簡単に。「あの日、タワマンで君と」(森晶麿著 小学館)は王様のブランチBOOKコーナーでも紹介されたタワマン文学ミステリー作品です。フードデリバリーの配達員である山下創一は、高級タワマンの最上階に住む多和田からの注文に対応したことをきっかけに頻繁にその部屋に呼ばれるようになり、多和田の享楽的な生活に巻き込まれていくことになります。多和田からの好条件過ぎる入れ替わりの提案の裏にはどんな企みが隠されているのか、偶然再会したかつての思い人との関係はどうなるのか、様々な仕掛けに驚かされながら一気に読めてしまうリーダビリティの高いエンタメ作品でした。森先生の作品は初読だったので既刊作を調べてみると大量に出版されており、まだまだ読書家として半人前と自分を叱咤いたしました(笑)。ランダムに選んで読んでみた「ホテル・モーリス」(同 講談社)は登場人物のキャラで勝負するタイプの軽いタッチのミステリーで良くも悪くも気楽に読めました。

会社の同僚から、エレベーターの中で金次郎さんのブログが面白いねと話している人を見かけましたという最高の情報をもらいほくそ笑んでおります。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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