金次郎夫妻、玉置浩二ライブで滂沱の涙

今週は日本の歌手で最も歌が上手く、生歌はテレビとは比較にならない程素晴らしいと評判の玉置浩二さんのライブ〈LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2025 ‘ODE TO JOY’〉に妻と共に初めて行って参りました。九段下の日本武道館に詰めかけたファンの年齢層の高さに驚愕しましたが、自分たちもそのど真ん中の歳であると気付き自己認識の甘さを反省いたしました(笑)。お孫さんに連れられ歩くのも大変というような高齢の方もおられ心配になりましたが、逆にそんな高齢の方が、出入りするだけでも疲労困憊する混み合った武道館を訪れる苦労を厭わず、どうしても聴きたいと思う彼の歌声に期待が高まりました。

この武道館でファイナルを迎える今回のツアーは玉置さんがオーケストラをバックに歌う構成で、座席が後方ということもあってやや音響に難有りとされる武道館でのパフォーマンスはどうなのだろうかと少しだけ懸念しておりました。ところが、荘厳なオーケストラ演奏のクラシック曲に続く玉置さん作曲の「歓喜の歌」で始まったライブの迫力は凄まじく、そんなインストゥルメンタルの余韻冷めやらぬ中での「GOLD」で放たれた美声にいきなり夫婦揃って心を掴まれ号泣してしまいました。ぶれることの無い音程、安定度抜群のリズム、バラエティに富む発声の変幻自在さ、身体全てを鳴らすような声の響き、マイク無しで武道館全体に届く圧倒的な声量とシンガーに求められる要素が全て最高水準であり、噂に違わぬ異次元のクオリティに、これ程までかと素直にびっくりいたしました。ただ、今後他の音楽ライブに行っても玉置さんとの比較において常に残念な気持ちになってしまう可能性を考えると、少しだけ苦しい気分になりました(汗)。圧倒的な表現力のみならず、歌唱以外には一言も発しないにも関わらず会場全体を支配してしまうカリスマ性に魅せられ、とにかく歌声がどんどん心の深い部分に沁み入ってくる感覚は初めての体験で、妻などは帰宅後のメイク落としが不要なほどに滂沱の涙を止める術の無い状態となりました。セットリストはヒット曲メドレーのサービスも含め充実の内容で、メジャー曲が多く大変楽しめましたが、金次郎は「friend」、「JUNK LAND」、「メロディー」で特に大量の落涙となりました(笑)。勿論、アンコールとWアンコールでの2度の「田園」のパフォーマンスも感動で、2度目の演奏が始まった際にも会場に〈またかよ感〉は皆無で、会場全体が何度でも繰り返し聴きたいという雰囲気で充たされておりました。中高年が命を削って繰り出す拍手の嵐が感動に拍車を掛ける素晴らしいライブで、11月のソロコンは音響がもっと良い会場なので更に楽しみです!

さて本の紹介です。「自由」(アンゲラ・メルケル著 KADOKAWA )は、2005年から2021年まで16年に亘りドイツを率いたメルケル元首相の自伝です。彼女はハンブルクで生まれた後間も無く牧師であった父親の教区異動で東ベルリンに移り住んだため、反体制的と見られることが非常に危険で常に密告のリスクに怯えねばならない旧東側の社会で青年期を過ごしておりオーウェルの「1984」を彷彿とさせる当時の描写はかなり怖いです。学生時代は優秀だが目立たない生徒という自己認識の一方で、ソ連兵との会話を試みロシア語を上達させる場面などアグレッシブな一面も垣間見え、生来の呑気さのおかげで抑圧的な社会をどうにかやり過ごしたという分析も含め興味深く読みました。また、スパイに勧誘された際に「私は秘密を守るのが苦手です」という殺し文句で難を逃れたエピソードに臨場感を感じる一方、彼女に常につきまとう東独出身=スパイという風評を断固否定するような書きぶりになっている点も意図を感じて面白かったです。物理学の博士号を取得した後で政治活動にのめり込んでいく背景の説明がやや不充分だったとの印象ですが(改めて読み返してみます)、とんとん拍子の出世の様子は東独出身女性の政治家としてのサクセスストーリーとしても楽しめる内容だと思います。首相在任中には、リーマンショック、福島原発事故、ギリシャ危機に端を発するユーロ危機、ロシアによるクリミア侵攻、英国のEU離脱、難民対応、コロナ禍と多くの問題が発生しますが、これら大事件の裏側がどうなっていたかを、渦中のど真ん中にいた人物の視点で疑似体験できるというのは本当に得難い読書体験でした。また、中道政治家として、難しい課題に譲れないラインを引きながら粘り強く対話と妥協を繰り返しつつ落としどころを探っていく交渉力とリーダーシップには学ぶところ大でした。白か黒、あるいは右か左しか存在しないかのような決めつけが横行し、熟慮無しに二項対立の構図に持ち込もうとする危うい現代政治において、キリスト教的価値観、自由そして多様性を重んじ揺るぎない信念を持ちながら妥協を厭わないプラグマティックな政治姿勢を貫いた彼女の信念に感銘を受けました。EU各国首脳をはじめ、歴代米国大統領とのやり取りの臨場感有る描写には引き込まれますが、文面からブッシュやオバマに対する好意が滲み出ているのに対し、プーチンやトランプとのやり取りの描写からは激しいフラストレーションが溢れており、そんな対比も本作の読みどころだと思います。

「ウォッチメイカーの罠」(ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋)は、四肢マヒの科学捜査官リンカーン・ライムと時計職人のように緻密に犯罪計画を練り上げる宿敵ウォッチメイカーとの対決に遂に決着がつくリンカーン・ライムシリーズの第16作です。いつもながらのスリリングなどんでん返し連発の展開に加え、本作では武闘派捜査官でありライムの妻でもあるアメリア・サックスの毒ガスを吸ってもへこたれない超人ぶりがやや限界を超えています(笑)。これまでに無いウォッチメイカーの人間らしい側面や彼の過去が描かれているのは新機軸ですが、結果としてシリーズを通じ精密機械のような犯罪プランを繰り出してくる手強い相手であった彼が、思ったよりもあっさりと敗れ去る流れとなり少し残念ではありました。一方で、今回因縁を持つに至った新たなる敵も登場し、過去作では頼りない存在であった捜査官ロナルド・プラスキーの成長ぶりにも見るべきところが有り、シリーズとしては引き続き今後が楽しみという読後感でございました。しかし、この作品を読んでいるとニューヨークに遊びに行きたくなりますね。

実は我々夫婦は武道館2daysの両方行きまして、あまりの安定感に録音を流しているのではないかと一瞬疑いすらいたしましたが、ファンには神扱いの玉置さんもやはり人間で、2日目はほんの僅かですが疲れが感じられ逆に安心いたしました。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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