金次郎、久方ぶりに台湾を訪れる

先日、久々に出張で台湾に行って参りました。最後の訪問がいつだったか記憶が無いぐらい間が空いてしまっており、少なくとも10年以上ぶりということで雰囲気がどう変わっているのか興味津々で松山空港に降り立ちました。そもそも前回は台北市街からは少し離れた桃園空港着でしたので、台北中心部まで車で20分とかからないという松山空港のアクセスの良さにいきなり感動いたしました。一応出張なので感動してばかりではなく仕事もせねばならないわけですが(笑)、こちらも出だしは好調で、最初の面談では会議時に幻のコーヒーとして名高い台湾産の阿里山コーヒーでもてなしていただき感激いたしました。そもそも台湾でコーヒーが栽培されていることすら全く知りませんでしたので、旅を通じて見識を広める喜びを改めて噛みしめることとなりました。

更に、プレゼン後の質疑応答中であるにも関わらず、しゃべれなくなるほどの勢いで口に詰め込んでしまったぐらい美味しいパイナップルケーキを振舞っていただき、食いしん坊ぶりがばれてしまってやや恥ずかしくはあったものの、和やかかつフレンドリーな良い雰囲気の顧客訪問となりました。終了時にお土産までもいただいてしまったのですが、これがなんとその激うまパイナップルケーキで、やはりその美味しさ故にかなり並ばないと買えない逸品なのだそうで、お客様の心づくしに感動いたしました。ところが、なかなか良いことは続かないもので、そんなほくほく感も束の間、次の面談では一転ほろ苦い経験をすることとなりました。2社目のお客様との会議は、何故だかいつの間にか非常に気難しげな雰囲気となってしまい、同行した宿敵Mは先方の偉い方から市川團十郎ばりの〈睨み〉の表情で威圧され続けるというトラウマになりかねない恐怖体験をすることとなってしまいました(汗)。ただ、どうやらその偉い方は過去の最短記録として20秒で会議を打ち切った実績をお持ちの大変厳しい方だったようで、今回は何とか1時間ほどは話を聞いていただけたので、我々はそれなりに頑張ったと自己満足することといたしました。

帰りのフライト前に少し余裕が有ったので街を散策してみましたが、台北の街中にはスシロー、ココイチ、牛丼3社や有名ラーメン店など日本の外食チェーンが目白押しでこの点は10年前と比較して大きな変化と感じました。三越台北店にも行ってみましたが、開店直前に入口の周囲で大量の人がわさわさと集まっており、その目的は何だろうと不思議に思っておりました。すると、開店後数分の時点でデパート内に入っている小籠包で有名なディンタイフォンが整理券を配りまくっており、80分待ち状態となっているのを発見し、あの群衆が狙っていたのはこれだったのかと合点がいきました。ご存知の通りディンタイフォンは日本でもチェーン展開しておりますが、やはり本場で食べる方が圧倒的に美味しいとの評判ですので、次回訪問時にはぜひ群衆に紛れてみたいところです。しかし、三越の食品フロアはほぼ日本と同じラインアップで、多くの台湾人が基本的に日本人に優しいという点も考え併せると、日本人にとっては相当住みやすい外国だなと改めて感じた次第です。ちなみに、日本から台湾に行く人はコロナ前で年間のべ200万人ほどであったのですが、人口が約5分の1の台湾から日本を訪れる人の数はなんと年間のべ約500万人ということで、その親日ぶりは数字にも表れていると思います。

それなりに充実していた今回の出張でかわいそうだったのは同行の宿敵Mで、〈睨み〉を浴び過ぎたストレス解消のために当日夜に飲み過ぎたせいか、意識朦朧状態での夜の歯磨き時に誤って治療中の歯の詰め物をむしり取ってしまい、剥き出しの歯神経が露わになってしまったとのことでした。暗い雰囲気で朝食の待ち合わせに登場した宿敵Mは、温度や流動性に関係無く液状のものを口に入れると激痛のため数秒無言、思わず笑ってしまった際に吸い込んだ息が神経を刺激してまた数秒無言と、オン・オフを繰り返すといういたたまれない状況となっておられました。そんな状態でも金次郎の倍ぐらいご飯を食べる健啖ぶりと、最終的に奥歯に触れずに液状のものを胃に流し込むシステムを構築された逞しさに尊敬の念を禁じ得ません(笑)。

さて本の紹介です。「イーロン・マスク」(ウォルター・アイザックソン著 文藝春秋 )は毀誉褒貶の人と言っても過言ではないイーロン・マスク氏の人生を、スティーブ・ジョブズ伝も手掛けた著者が多くの関係者へのインタビューと自らの観察を通して事細かに描いた半生記であり、既に350冊近くとなっている今年の読了本の中でもトップ3に入る刺激的で面白い内容でした。Twitterの買収や最近ではアメリカ大統領選挙におけるトランプ候補の支持など話題に事欠かないマスク氏について、大金持ちで何をしでかすか分からない変人というようなイメージを固めてしまう前に是非読まれることをお勧めしたい一冊です。実際彼の人となりはほぼ情実の認識通りで、共感力が極めて低く拘りが異常に強いキャラクターに、将来を見通す洞察力と寝食を忘れて目的達成に没頭できる集中力が加わってしまっているために、彼の周囲で仕事をする人は敵味方を問わず耐え難い苦難を経験することになります。彼が他人に与える不快感やストレスは、父親からの虐待という幼少期の辛い経験を勘案しても容易に許容できるレベルではないのですが、そんなネガティブな部分を差し引いて尚金次郎が感銘を受けずにいられなかったのは、彼の持つヴィジョン達成に向けた純粋なパッションの強さでした。世界最高レベルの金持ちでありながら、その仕事は全てが〈人類の意識を途切れさせないこと〉のために遂行されており、お金を儲けることそのものが全く優先されていないという点はイメージとのギャップが大きかったのでなかなかに驚かされました。ビル・ゲイツが儲かりそうだからという理由でTesla株を空売りしたことに怒り猛然と異議を唱えるマスク氏の姿は清々しくすら見えて印象的でした。まぁ、Twitter買収は若干微妙ですが(笑)、TeslaもSpace XもNeuralinkも地球環境を人類が居住可能な状態にできる限り維持しながら、最終的な解決策である火星への移住を実現する目的で経営されていて、どんなに大きな失敗をしても必ずそのヴィジョンに立ち返って再起する彼のある意味で真摯な姿からはビジネスに携わる者として参考になる点が多いと感じました。勿論彼生来のリスク選好度の高さは一般人の金次郎には全く参考になりませんが(笑)。また、彼が非常にクリエイティブで実務的なエンジニアであるのも魅力を感じるポイントで、本作で細かく記述されているTeslaモデル3の量産目標である週5000台を達成するために、自ら製造ラインに入ってアイデアを出し、不要なものを徹底的に切り捨てて生産の効率化を推進する姿は、直接マスク氏から攻撃される被害を受けない傍観者金次郎の視点では特に感動ものでした。絶対不変な物理法則のみを前提とし、その他の慣例や過去からの蓄積に基づくオペレーション基準を疑うことに躊躇しない姿勢には爽快感すら感じますし、実際にそれで結果を出しているところがまた凄いと思います。プライベートでも多くのパートナーと大喧嘩を繰り返しながら、たくさんの子供をもうけていて決して一般的とは言えませんが(笑)、大人に対するよりも子供に対する思いやりは明らかにきめ細かく、不器用なりに温かく子供の成長を見守っている姿にはおかしみと共に微笑ましいとの印象を持ちました。金持ちを徹底的に嫌悪する共産主義者となった長男(トランスジェンダーのため後に長女)との関係を修復するために、金持ちの象徴である大邸宅を全て売り払い借家住まいになったというエピソードも彼のそんな一面をよく表していると思います。結局仲直りはできていないようですが(涙)。まだまだ書きたいことは尽きませんが、紙幅の都合でこの辺りでやめておきます。上下巻合わせて800ページほどの大作ですが、年末年始のお休みにでも読まれることを強く推奨したい一冊です!

金次郎の勤めている会社を卒業され、現在は台北で仕事をされている先輩と今回の出張時に久闊を叙すことができて嬉しかったです。その方が、台北在住の日本人コミュニティにネットワークをお持ちとのことにて、時々台北を訪れているらしい台湾出身(福岡在住)の直木賞作家である東山彰良先生のサイン本の確保をお願いしておきました。図々しいとは思いつつファンなので仕方が有りません(笑)。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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