6月に金次郎がコロナに罹患した際に予定していた帰省のキャンセルを余儀なくされ、その結果大量のお菓子が自宅にデリバリーされることとなった惨事のいきさつは以前このブログに書きました。今回は約5か月を経て、再度金次郎家がお菓子の山に埋もれることになったお話です。先ずはこれまでも何度か触れましたが、10月1日に妻がFAXを送りまくってようやくゲットした名店フロインドリーブの元祖シュトーレンと、昨年も堪能し川崎手土産の頂点にランクされていると噂の新百合ヶ丘リリエンベルグのシュトーレンをそれぞれ複数個確保しております。そもそもダイエット中で一度にたくさんは食べられないところに、フロインドリーブのシュトーレンにはバターも砂糖もふんだんに使われており本場ドイツを感じさせる力強い味わいであるためになかなか消費のペースが上がりません。更に、せっかくリリエンベルグに行ったのだからと食いしん坊ぶりを発揮してあれもこれもと買ってしまった幸せのお菓子ポルボローネや金次郎の大好物フロランタンといった焼き菓子も積み上がっていてやや手に負えなくなりつつあります。
また、折角の美味しいお菓子ですので、楽しんでいただければと色々な方に少しずつおすそ分けをしていたら、目には目を的にエーグルドゥースのマカロンをはじめ様々なお菓子をお返しにいただくことになり、食べても食べてもお菓子の山が全く減らない嬉しい悲鳴の状況となっております。少し前にいただいていてしっかり味わおうとちびちび食べていたパリセヴェイユのクッキーや、忘れてはいけない台湾産パイナップルケーキもまだまだ在庫が有り、そこにお菓子ではないもののふるさと納税で苦心して確保した大量のリンゴまでが届いてしまいもうカオス以外の何物でもありません(汗)。更に更に、以前三大饅頭についても書きましたが、毎年一緒に旅行に行っているAさんが、これに匹敵する饅頭として、源平合戦の藤戸の戦いに由来し実に800年以上の歴史を誇る倉敷名菓藤戸まんぢゅうをお土産に下さって嬉しい悲鳴を上げ過ぎて喉から血が出るほどのかなり詰んだ状態となりました(汗)。三大饅頭の一角を占める大手まんぢゅうが比較的日持ちするのに対し、藤戸まんぢゅうは無添加故に消費期限が短く、美味しさは上だがお土産に向かず知名度が上がらなかったというのも頷ける味わいでした。四大饅頭でいいじゃんと思う旨さで夫婦でばくばく食べたものの、消費期限の短さはどうにもならずさすがに全部は食べきれないかと諦めかけた矢先に、同封されていた紙片が目に止まりました。美味しい食べ方が記されたその紙片に、天ぷらにしても良し、冷凍して温め直しても尚美味しいという記載を発見し、大喜びで冷凍庫に保管いたしました。大宰府名菓である梅ヶ枝餅や天神岩田屋の蜂楽饅頭でも我が家では実証済みですが、あんこ物はレンジ解凍後もかなり美味しいのでこれから暫く楽しめそうです。Aさん、有難うございました!
さて、本の紹介です。「恋とか愛とかやさしさなら」(一穂ミチ著 小学館)は直木賞受賞後初の長編小説ですが、プロポーズされた直後の幸せの絶頂で恋人が盗撮で捕まるというひどい状況で主人公の新夏がパニックになるところから物語は始まります。新夏の苦悩や葛藤を通して、愛するとは、結婚とは、罪とは、許すとは、等の重いテーマを正面から描いた一穂先生新境地の意欲作だと思います。絶対に許すな別れるべきと強硬に迫ってくる恋人の姉、こんなことで優良物件である恋人を手放すのは勿体ないと妥協を迫る新夏の友人、一旦性犯罪者になったらそのレッテルからは二度と逃れられないと語る性加害者サークルのメンバー等、様々な立場から多くの論点や意見が提示され大いに考えさせられる内容でした。後半では盗撮された女子高生の立場から容姿に対するコンプレックスが語られ、盗撮を行った新夏の恋人が自らの行為や犯した罪の本質に少しずつ近づいていく展開となりますが、前半とのコントラストで重要なポイントが明確になっていく構成は良く練られているなと感心いたしました。
「最悪」(奥田英朗著 講談社)は、奥田先生初期の作品でバブル崩壊後の不況期に為す術無く人生の坂を転がり落ちて行く三人の男女を描いた群像犯罪小説です。小さな鉄工所を経営する中年男の川谷は下請業者の悲哀を感じつつ、近隣住民との軋轢を抱え家族や従業員との関係に悩みながらも日々真面目にこまごまとした部品を作っていました。また、窓口担当の銀行員であるみどりは妹の非行や支店でのセクハラに悩み、二十歳のチンピラの和也はパチンコに明け暮れる自分のハンパな人生と強い耳鳴りに辟易しながら日々を送っておりました。そんな三人それぞれの日常が、些細な不運やボタンの掛け違いが積み重なるうちに、少しずつではあるものの着実に軌道を外れ、どんどん取返しがつかない方向に加速しながら突き進んでいく様子には寒気を覚えました。自らの意志ではもはや制御できない三人の人生は狂気すら帯びていきますが、終盤にかけそれまで無関係であった三人が出会い、お互いの狂気がそれぞれ打ち消し合うように働く中で、カオス状態から一気に物語が空中分解して収束に向かう描写は圧巻でした。犯罪小説ではあるものの、事件ありきではなく、主人公達の人生にフォーカスする構成が手触り感を生んでいて非常に良いと感じました。序盤はやや退屈なものの、時折挟み込まれる「退屈な一日は長いが一週間は早かった」のような結構含蓄の有る台詞が多かったので投げ出すことなく最後まで楽しめたと思います。
最後に簡単に。変人刑事の三ッ矢と若手警官の田所という凸凹コンビが活躍するシリーズの既刊3冊を一気に読みました。「あの日、君は何をした」(まさきとしか著 小学館)では、息子の大樹が連続殺人犯に間違われ、逃げる途中で交通事故に遭って亡くなるという不幸に見舞われたいづみがメインとなる2004年と、殺人の容疑とついでに不倫の疑いがかかったまま行方不明となっている息子を探し続ける智恵の視点を中心に描かれる2019年という二つの舞台で物語が進行します。多くは書けませんが、二つの事件のつながりが全く見えない中で終盤の伏線回収とどんでん返しが一気に押し寄せる展開とイヤミス特有の読後感に呆然とする作品でした。「彼女が最後に見たものは」(同)は、新宿区で殺されたホームレスと思われる女性の不可解な死の謎に三ツ矢が拘り捜査を進めるうちに、被害女性ともう一つの事件との繋がりが徐々に明らかになっていきます。なぜ彼女はホームレスになったのか、なぜ殺されなければならなかったのか、という謎が解けタイトルに有る彼女が最後に目にした光景を想う時、イヤミスの枠を越えたスケールの大きな人間ドラマが立ち上がってくるなかなかの秀作だったと思います。「あなたが殺したのは誰」(同)は現代の東京とバブル終盤の北海道鐘尻島という時空も超えた舞台で起こる全く無関係に思える事件が終盤で一気に繋がり急展開を見せるいつものパターンでは有りますが、繊細かつ慎重に配された伏線が見事に回収される芸術的なプロットは過去2作を上回る出来だと思います。タイトルの意味にはっとさせられるラストは圧巻にてお薦めです。しかし、日本の最僻地まで到達したバブル経済の浸透ぶりと、バブル崩壊後に無力感で満たされた鐘尻島の閉塞感は本当にリアルで怖かったです。
うちのシュトーレン在庫を近所のK子シェフにおすそ分けしたところ、インド直送で超純粋な香りが素晴らしいローズティーを出していただいてしまいました。美味しいものが別の美味しいものを引き寄せるこのループを大変気に入っております(笑)。
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