美味!稀少固有種ビワマスの衝撃再び

8月14~16日は休暇をいただき11日の山の日から都合6連休の夏休みを満喫しておりました。折角のお休みを体調万全で過ごすべく、休暇初日の11日に食事の後は食材のパワーでいつも元気百倍にしてもらえるお気に入りレストランである水天宮前のキオキータに夫婦でうかがいました。今回はその天然ぶりで図らずもお店の雰囲気を支配してしまうスタッフKちゃんがお休みで不在ということもあり、やや落ち着いた雰囲気となった店内で(笑)カウンターに陣取ってシェフと楽しくお話をしながら極上のお料理をいただくという贅沢なひとときとなりました。途中からはシェフのパートナーである伝説の寿司職人M男さんもふらりと現れ、我々夫婦の隣に座ってワインを飲みながら食事をつまむシチュエーションで、故郷青森の思い出、厳しい修行時代の苦労、築地や豊洲市場のあれこれなどお寿司以外のことについても興味深いお話をたくさん聞くことができ、気づけば11時という、時間が経つのを忘れてしまうほどの充実したディナータイムとなりました。

代々木のお店で15歳から修行に入られ、一時は久兵衛でも腕を磨かれたM男さんの60年に及ぶ寿司人生で築かれた人脈があまりにも華麗で驚くばかりでしたが、最近の歴代首相で来店されなかったのは故田中角栄元首相だけとのことです!コンチクショウの一員であった某元首相に可愛がられ、夜な夜な飲み歩いたとのエピソードには改めて凄い方と席を同じくしてしまっているなと恐れ多い気分になりましたが、そんな凄さを微塵も表に出すことなく、常にフラットな姿勢で楽しそうにきらきらとお話をされるM男さんの純粋なお人柄に自然と心がほぐれ、緊張するどころか逆に癒されながら食事をするという有難さに思わずM男さんを拝みそうになりました(笑)。主役のお料理について触れる前にすっかり寄り道してしまいましたが、アナゴの天ぷら、鮮度抜群の平貝、力強い味わいの多様なお野菜たち、えも言われぬ牛腿肉などいずれ劣らぬ美味過ぎる品々の中でやはり一段と際立っていたのは、以前もこのブログで絶賛した琵琶湖固有種の稀少食材であるビワマスでした。カルパッチョで供されたビワマスの雑味を全く感じさせない透き通るような味わいは他のお魚では感じたことが無く、その透明感と絶妙に同居し味覚を刺激し続ける純粋な脂のコクも絶品で昨年末の感動が蘇りました。ビワマス二品目は、前回は焼いたものを出していただきましたが、今回は趣向を変えて煮凝りにアレンジされており、これがまたカルパッチョの時の純度とコクを失わずに美味しさのパワーを更に引き出した脱帽の逸品でした。それら二皿を充分に堪能し、もうこれ以上は無いと思っていたのですが、その後出てきたビワマスの平打ちパスタが味は勿論食感のバランスが最高の一品で夫婦揃って完全に恐れ入りました状態となりました。前回に引き続き、じっくりと釣り上げ丹精込めて〆た選りすぐりの一本を送ってくださった漁師のSさんとその食材を相変わらずの技で完璧に調理してくださったシェフのお二方に心から感謝いたします。今回のデザートは巨峰の美味しさを糖度19と20の間に微妙に調整して閉じ込めたシャーベットで、その濃厚でいてさっぱりとした味わいに冗談でなく同じものをあと5杯は食べられる、いや食べたいと思いました(笑)。自分の分だけでは足りなかったM男さんがうちの妻からシャーベットを少しもらっていた姿が非常にかわいらしく最後にまた癒されるという心に残る休暇初日となりました。

さて本の紹介です。伊豆旅行の際に井上先生のお墓参りをしたのも何かの縁ということで名作「氷壁」(井上靖著 新潮社)を読んでみました。登山を通じた盟友である魚津恭太と小坂乙彦は、昭和30年の元旦にかけて前穂高東壁の冬季初登頂に挑みますが、登山直前から美しき人妻八代美那子に恋心を寄せ、思いつめた結果精神的に不安定になっていた小坂が頂上を目前に滑落死するという事故が起こります。切れるはずのないナイロンザイルは何故切れたのか、小坂はどんな思いを抱えながら山頂を目指していたのかという謎や、美那子に惹かれてしまうという褒められぬ自らの心の動きを徐々に無視できなくなる魚津が自分の気持ちとどう向き合い、どんな未来を選び取るのかなど読みどころの多い、人生と登山を重ね合わせて実存すなわち死生観まで語り切る奥深い小説でした。金次郎は登山にさほど興味が無いからか(笑)、魚津の務める商事会社の東京支社長で危険な登山にやや否定的な立場の常盤大作の思想に共感するところが大で、彼と魚津の禅問答のようなやり取りも、臨場感抜群の登山中の描写に劣らず本書の名シーンであったと思います。しかし、捉えどころの無い美女として描かれる美那子のキャラクターはニヒリズム作家である井上先生の作品に共通する女性像だそうなのですが、一読しただけではその内面を理解するのは難しく、まだまだ修行不足と反省いたしました。

「大名倒産」(浅田次郎著 文藝春秋 )は幕末の小藩を舞台に260年のつけを現役世代に押し付けようとする狡猾な先代と、真面目さと誠実さを武器に藩の経営再建に挑む当代の対決を描いた歴史エンターテインメント小説です。舞台となった丹生山松平藩は僅か3万石の石高にも関わらず積もりに積もった負債はなんと25万両。倹約、殖産興業、適切な年貢の取り立てという王道の再建策では金利を支払うことすらままならない状況で、どんな奇策でこの苦境を乗り越えるのだろうと読み始めた当初は非常にわくわくしたのですが、肝心の後半では経済小説として読むには禁じ手とも言えるご都合主義が多発してやや残念な印象でした。貧乏神や七福神の登場も苦手なファンタジー展開で読み通すのに難儀しましたが、本作を江戸人情噺として、武士や町民の日々の暮らしやしきたりを知る導入として、あるいは大江戸の各地域の成り立ちや所以を現代の地理と重ねる楽しみに主眼を置いて読むのなら(含む七福神にまつわるうんちく)、総合的な判断では面白い小説ということになるのだろうと思います。神木くん主演で映画が公開中だと思いますが、どういう仕上がりになっているのか少し気になるところです。

一方、「日本ゲートウェイ」(楡周平著 祥伝社)は行き詰まった老舗百貨店の再建という難しい課題に見事に解決策とビジネスモデルを提示しているという意味で、流石は楡先生というしっかりとした経済小説に仕上がっていると思います。オリンピック開催を一つの契機として進められてきた外国人観光客誘致というある意味〈神風〉的な活況が覆い隠してきた小売業の構造的な問題が、コロナ禍で一気に顕在化する中で、待った無しとなった改革を日本橋の老舗(笑)が如何にして成し遂げるのか、提示されたモデルはなかなかに魅力的で目から鱗の発想も多く参考になる内容でした。商社に同期入社した仲間の人脈を通じ様々なアイデアが結びついて形になっていく様子は素晴らしいと思う一方で、あまり同期の友人が多くない金次郎の身にはこのような僥倖は訪れないかと悲しくなったりもいたしました(涙)。

休暇最終日には東京三大豆大福の一角である原宿瑞穂のこしあん豆大福をゲットいたしました。一口食べるごとに豆が食感のバラエティと味変を生み出し続ける正に芸術的な逸品でした。三大の残りの二つはつぶあんということなので、こしあん好きの金次郎家は瑞穂推しです。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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