金次郎、エルニーニョ・ラニーニョとチョコレートとオレンジジュースの味変を考える

だいたい3~5年に一度発生するとされる、太平洋中央部~東部の熱帯地域で海面温度が顕著に上昇する状態はエルニーニョ現象と呼ばれておりますが、これが発生すると世界中の多くの地域で多雨(=洪水被害)とその後の少雨+熱波(=旱魃被害)が頻発することとなり、我々の生活にも様々な影響を及ぼすことになります。最近では、これが世界のカカオ生産の3分の2を占める西アフリカのアイボリーコースト(コートジボアール)とガーナを直撃し、チョコレートの原料であるカカオ生産が減少してしまったことから、その国際市況は何と1年前の3倍の水準に到達しております。これに加え、日本では円安がざっくり輸入品のコストを1.5倍ぐらいに押し上げていますので、単純計算でカカオすなわちチョコレートのコストは3×1.5の4.5倍に跳ね上がっており、カカオ比率の高い高級チョコレートになればなるほど庶民には手の届かない高嶺の花となりかねない状況で、チョコレート好きの金次郎夫婦は悲嘆に暮れると共に近所にあるアラン・デュカス路面店の存亡を勝手に心配しております(涙)。

まぁダイエットのためには好都合なのですが。勿論そんなエルニーニョ現象の影響はチョコレートに留まりません。例えばブラジルでは高温に引き続いた少雨で特産のオレンジの生育が阻害されたことに加え、泣きっ面に蜂でオレンジが熟する前に落ちてしまうカンキツグリーニング病まで流行してしまった結果オレンジの収穫量が激減し、こちらも国際市況は史上最高値を更新してしまっている状況です。同じくエルニーニョ現象が影響していると思われますが、23年にかけてオレンジの主要産地であるアメリカのフロリダ州をハリケーンが襲い、オレンジの生育に大打撃を与えていたことも重なって、消費期限が2年間とされる冷凍オレンジ果汁の在庫が世界中で底を突いてしまう事態も懸念されています。これは全く他人事ではなく、オレンジ果汁の輸入比率が9割と高い日本では、実はオレンジ類ではなくミカン類に分類されるマンダリンオレンジへの切り替えや他柑橘類を混ぜる等のレシピ変更で供給減少に対応する動きがこっそり広がっているので、これからオレンジジュースを飲まれる際には、意図せざる味変になっていないかよく吟味されることをお薦めいたします。今年はようやくそんなエルニーニョ現象も終わりに近づき、天候は少しずつ通常モードに戻るかと思いきや、引き続いて発生するとされるラニーニャ現象がまた厄介なのです。ラニーニャ現象とはエルニーニョ現象の逆で今度は太平洋東部の海面温度が下がる状態なのですが、これが発生すると大気中の風の流れが停滞してしまうことが知られており、温暖化の影響と見られる地球規模での海面温度及び大気中の湿度上昇により発生する熱帯低気圧の急速な発達を促進してしまうと予測されており、特にアメリカでは今年のハリケーンシーズンに例年より強いハリケーンが多数発生する事態が想定され、大きな被害をもたらすと懸念されています。これまた他人事ではなく、似たような状態が太平洋の反対側でも起こる可能性は高く、日本も台風当たり年になってしまうやもしれません(涙)。

さて、本の紹介です。世界史の授業では、ナポレオンのエジプト遠征軍がたまたま見つけたロゼッタストーンと呼ばれる石塊に刻まれた絵文字であるヒエログリフはフランス人のシャンポリオンにより後に解読された、と非常にシンプルにしか習わないのですが、「ヒエログリフを解け」(エドワード・ドルニック著 東京創元社)ではヒエログリフの解読がどのように難事であったのか、その解読までにどういうドラマが繰り広げられたのか、解読のきっかけになったのは何か、などにつき詳細に亘り解説されており、知的好奇心を充足してくれる多くの新情報に触れることができ大変満足のいく内容でした。ヒエログリフを用いて表記されたと思われる古代エジプト語が失われてから長い期間が経過してしまっていたため、右から読むのか左から読むのか、はたまた上から下に読むのかも分からない意味不明の絵柄の連なりであるヒエログリフの解読は手がかりが全く無いという一点からもその難易度が窺い知れると思います。また、絵文字であることから直感的に表意文字と見做されがちであったことも解読を遅らせた要因となりましたが、実は何と表音文字だったようで、絵で音を表すという発想を理解しようとするだけで読みながらかなり混乱してしまいました(笑)。最終的には決着までに20年を要することとなった解読競争の主役は、27歳でかのニュートンに挑戦するほどの天才であったイギリス人のトマス・ヤングと、貧乏かつ病弱で比較的裕福であったヤングに対しかなりの不利を背負って戦ったフランス人のジャン・フランソワ・シャンポリオンでした。上述の通り最終的に解読し歴史に名を残したのは後者で、古代エジプト語の構造を遺していたコプト語を含めた多数の言語を操った彼の特殊能力が勝利の決め手となったと解説されています。ヒエログリフが表音文字であることに気づき、頻出するパターンがエジプト新王国の王家の名であるプトレマイオスであると同定できたことが全ての謎を解く鍵となったとのことでロマンを感じる一方で、シャンポリオンが解読直後に力尽き病没したという事実からもその作業が想像を絶する苦行であったことがうかがえ、その真摯な探求心に心からの敬意を表したいと思います。

「アルプス席の母」(早見和真著 小学館)は、高校野球の名門桐蔭学園で野球に取り組んだ経験の有る著者が、選手ではなくその親の視点から甲子園を目指す道程と高校野球の闇を描いた少し毛色の違う野球小説となっています。中学時代にシニアチームでそれなりのレベルで活躍していても、大阪桐蔭のような本当の野球名門校にはその門を叩くパスすら見えず、そんな名門校の監督が試合を見に来るかもという不確かな噂を信じて、活躍すればスカウトされるとの確約も無いままに、一縷の望みをかけて必死でプレイする中学生の姿と、監督の姿を目ざとく見つけアピールを試みるその親の懸命さにいたたまれない気持ちになりました。そうかと思えば、おおっぴらにはできないものの、様々な好条件をちらつかせて有力選手を囲い込もうとする甲子園常連校スカウト達の暗躍や、スカウトの際は愛想がいいのに、その後手のひらを返す監督の豹変ぶりにもなかなか恐ろしいものを感じました。野球部監督に与えられた絶対的権力に加え、金銭的な部分は勿論のこと、その他にも保護者にのしかかる重い負担の数々には正直唖然といたしました。父母会は学年ごとのチームに分かれ運営されており、席に並ぶ順番から応援での言動に至るまで厳格なルールがマニュアルという形で明文化されているのも怖いですが、選手である息子の活躍度合いに応じて変わる親の序列、やっかみやいじめ等、そんなしょーもない目に遭ってまでやる必要無いでしょ、という言葉がノドまで出かかるひどさでした。ひたすらに息子の活躍を願っていじめたりいじめられたりする親の姿は、正直白球をひたすらに追いかける美しい青春のイメージとは1ミリも重ならず何とも言えぬ幻滅を感じずにはいられませんでした。一方、息子を寮に送り出す際の母親の悲しみはあまり想像したことが無かったので印象的でしたが、18歳で東京に出ることが決まった際の楽しみしかなかった金次郎の浮ついた気分と、なんとなく寂しそうにしていた母親の雰囲気がそこはかとなく思い出されしんみりした気分になりました。

いつもアニメの話で恐縮ですが、高校野球について書いたついでに現在テレビ東京系列で放映中の「忘却バッテリー」という野球アニメをおすすめしておきます。ストーリーもギャグの要素も楽しめるのですが、声優宮野真守の抜群の演技力が光る作品だと思います。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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