【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2025予想対決の結果を発表! 

4月日(水)に本屋大賞2025の結果が発表されました。金次郎、宿敵M、そしてChat GPTまでもが「カフネ」(阿部暁子著 講談社)を大賞に予想しており、今回は大賞を外して恥ずかしい思いをするのではという胃の痛くなる危機感は薄く比較的余裕を持って発表の瞬間を迎えることができました。そして、予想通り大賞は「カフネ」が獲得し、点数見ても581.5点と2位に約230点の大差をける圧勝となりました。出だしは妄想癖、キレキャラ、酒びたりと全くダメダメであった薫子が次第に大変な有能ぶりを示す一方、抜群の料理の腕前とぶれない信念で無欠に見えたせつなが意外と弱みを見せるという裏切り展開も読者を飽きさせない仕組みとして機能しており、改めて巧いなと感じ、その良さに気付けた自分を褒めたいなと思いました(笑)。成瀬の揺るがなさに100%依存しその強さを信奉すらした去年と異なり、人間の多面性や弱さや心の揺らぎを正面から受け止め、これが人間だと世に問うた本作が大賞に推されたことを心から嬉しく思います。阿部先生、受賞誠におめでとうございました&有難うございました!

惜しくも353点で次点となったのは「アルプス席の母」(早見和真著 小学館)で、金次郎は4位予想とやや外したのに対し、M及びChat GPTは何れも2位予想で的中でした。ラストがややハピエン的になったことにより若干リアリティや物語の余韻を毀損した感は有るものの、読後にタイトルに謳われた情景がじんわり心に沁みてくるストーリーテリングの妙は早見先生さすがでした。ストレートな感動系の作品が少なかったことも上位進出の要因となったとも思います。「店長がバカすぎて」で9位に沈んだトラウマの傷は癒え、最新刊の「問題。 以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい」(朝日新聞出版)でもすれ違いながらも繋がっている家族の絆を感動的に描いており早見時代の到来すら感じさせる充実ぶりです。3位には金次郎もMも最高評価をしながらも予想では大賞とせず3位に抑えた「小説」(野崎まど著 講談社)が345点と僅差で入り、5位と予想したChat GPTに人類の力を示したという意味でも非常に嬉しい的中でした。Chat GPTがそう考えたように、分かりにくさや展開の突飛さから書店員からも敬遠されて下位に沈む可能性すら有り3位という予想は賭けでしたが、きちんと上位入賞という結果となり読書界と書店員の底力はやはり捨てたものではないと安堵いたしました。ただ、小説=虚構の意義をクリアに言語化して伝えるという偉業をここまでやり切ってしまった野崎先生にとって次回作のハードルは相当高いものになるだろうとお節介極まる心配をしつつ、自分の仕事のハードルも結構高いことを思い出し才能溢れる野崎先生の心配をしている場合ではなくおこがましいと身がすくむ金次郎でございました(汗)。さて、金次郎とMによる順位予想対決の行方はというと、華麗に大賞~3位を的中させたMではありましたが、「spring」での取りこぼしが響き、10作中5作を的中し下位作を上位に予想し外してもダメージが少ないというルールの綾にも救われた金次郎の勝利となりました。これで対戦成績は金次郎の4勝3敗と勝ち越しです!一昨年は106点vs110点で金次郎、昨年は120点vs107点でMに軍配という結果でしたが、今年はなんと70点vs87点という対決史上最もロースコアでの決着となり二人の予想精度の向上が目に見える結果となりました(点数が少ない方が勝ち、点数計算ルールは本記事の最後に記載しています)。しかし、恐るべきはChat GPTで、初出場ながらスコアは77点と非常に高い予想精度を示し、恐らくこの7年で300時間程はこの対決に費やしたであろうMをあっさり超え、Mが総評でいみじくも言及したホワイトカラーの危機が現実のものとなった瞬間でした。勝ったとはいえ金次郎は7年で500時間程をこの勝負に捧げており、今年は過去一のパフォーマンスを示したにも関わらず僅か7点差での辛勝であり、次回AIの進化ペースを凌駕して再び人類の威厳を見せつけられるかどうか非常に不安です(汗)。以下Mの敗戦の弁並びに4位以降の結果です。 

【Mの敗戦の弁】 

今年は本対決史上初の “3連単”的中にもかかわらず敗れたという悔しさもさることながら、ロースコアゲームの中でもちゃんと金次郎さん、AI、Mという着順となったのを見るにつけ、まだここに文章処理をめぐる人間とAIの”最終攻防ライン”が残っていたかという不思議な感慨があります。金次郎さんの年間350冊ペースの読書量はやはり伊達ではないですね。そして私の反省としては青山美智子や知念実希人、そして大賞受賞作の逢坂冬馬「同志少女」の失敗から学ばず、あまり相性が良くないと感じた恩田陸「spring」を最下位としてしまったことに尽きます。同作がテーマ・構成・文章どこをとっても水準が高いのは言うまでもなく、目の肥えた書店員さんたちから一定の支持を集めることは容易に予想ができたところでした。「カフネ」にはやや辛口評だった妻が作ってくれた卵味噌がなかなか美味だったので、その味を忘れず、来年こそは50点切りで華麗に”寄り切って”イーブンに戻すことを目指し、臥薪嘗胆の一年としていきたいところです。 

4位(金5、M7、CG3)「禁忌の子」(山口未桜著 東京創元社)323点:候補作中唯一の本格ミステリーであったことに加え、二転三転する展開の妙とラストのインパクトで幾つかの気になる問題点を薙ぎ倒し堂々の上位進出となりました。周囲に話を聞いても、ラストは驚いた、面白くてどんどん読めたという感想が多く、金次郎としては探偵役の言動の不自然さがやや気になるものの、素直にそのリーダビリティの高さを評価すべきなのだろうと思い直しているところです。 

5位(金10、M8、CG10「人魚が逃げた」(青山美智子著 PHP研究所)234.5点:金次郎としては全く面白いと思えず、青山先生に休暇取得をお勧めするほど酷評したにも関わらず見事上位枠に食い込む結果に当惑しております(汗)。短くて読み易く、ちょっとした謎で読者を引っ張って読ませているうちに、人生についての示唆を押しつけがましくなく軽いタッチで与えてくれる作風が一部の読者そして書店員に強く支持されている現実を直視し次回の予想に活かしたいと思います。金次郎の70点のうち30点が本作の順位の読み違いから来ており、50点切りという異次元の目標達成に向け青山美智子は越えなければならない壁と認識いたしました。 

6位(金6、M10、CG7)「spring」(恩田陸著 筑摩書房)228点:Mの敗着となった作品ですが、史上たった2人しかいない本屋大賞複数回受賞の恩田先生を過小評価するのはリスク・リターンが見合わぬ蛮勇であったと言わざるを得ません。勿論、天才しか出てこない非現実感や貴族親子と春の関係の必然性など細かな違和感は否定しませんが、素人には触れることすら許されないと感じていたバレエの、しかも融通無碍で更に難解なコンテンポラリーの世界の入口まで連れて行ってくださった恩田先生には感謝しか無く、妥当な順位と思います。 

7位(金7、M4、CG4「恋とか愛とかやさしさなら」(一穂ミチ著 小学館)223点:直木賞受賞直後の一穂先生の勢いに気圧されたのみならず、特に後半は実際に読み応えも有ったので当初は4位に予想しておりました。ただ、再読する中でどうしても〈出来心での盗撮〉という物語の起点となる事件が場面設定を整えるための人工物的な印象となってしまい、その不自然さが惹起する違和感から最後まで抜け出すことができず気になって順位を下げました。話の筋は変わってしまうし、恐らくつまらない小説になるのでしょうが、婚約者が盗撮癖に目覚めて苦悩するという設定の方がまだ良かったように思います。 

8位(金、M5、CG8)「生殖記」(朝井リョウ著 小学館)219点:創作を通じて自らの思想を表現し世に問うという行為には意義が有ると思う一方で、影響力の有る書き手であればあるほどその表現の強度や読み手に許容する受け止め方の自由度には配慮が必要になるのだろうとも感じます。そもそもすっきりとは割り切れない我々の社会に溢れる問題に対し、安易に割り切れたと感じさせてしまう単純明快な解決策を提示するのはミスリーディングになりかねないと懸念します。朝井先生には、思春期のどうしようもなく曖昧で不安定な思いをそのまま受け止めて表現した「桐島、部活やめるってよ」の頃を一度振り返っていただきたいところです。 

9位(金2、M6、CG6)「死んだ山田と教室」(金子玲介著 講談社)196.5点:今回の予想で金次郎が最も外した作品でした。ブランチBOOK大賞受賞に煽られた部分も有りますが、バカ男子高校生だった自分へのノスタルジーが予想の目を曇らせた感は否定できません。冷静になれば男子高校生のバカさや下品さ、或いは慶應志木校への強すぎる思い入れが読者の幅を狭めるという当然の帰結に気付けた筈なのですが、本作には金次郎を冷静にさせない何らかの魔力が有りました。この魔力の謎を解明しないことには次回の勝利は覚束無いので1年かけてじっくり考えていこうと思います。 

10位(金9、M9、CG9「成瀬は信じた道をいく」(宮島未奈著 新潮社)163点:あの凪良先生の「星を編む」ですら上位には入れなかったという、大賞受賞作の続編の不利をものの見事に証明する結果となりました。逆に言うと、前作からほぼ内容に変化や上積みが無いにも関わらず10作の候補作に入ったという点で去年の成瀬の勢いが本当に凄かったのだなと改めて感じました。そのうち続編も書かれるということですので、思い切って成瀬の心の揺れや葛藤や挫折、島崎との深刻な対立或いは決別などを盛り込んでマンガ調から劇画調になった成瀬ワールドを読んでみたいと思うのは恐らく金次郎だけでしょう(笑)。 

今年も独断と偏見のみならず自己満足に溢れ返った我々の対決に最後までお付き合いいただき誠に有難うございました!次回も頑張ります。 

(*)順位予想対決ルール:作品の予想順位と実際の順位の差の絶対値に(11-順位)を懸け合わせたものを合計し、合計点が少ない方が勝者。具体例を挙げると、4位の「禁忌の子」は金次郎予想が5位なので|4-5|X7=7。Mは7位の予想なので|4-7|X7=21となる。9位となった「死んだ山田と教室」は金次郎が2位と予想したので|9-2|X2=14。一方Mは6位としており|9-6|X2=6となる。この計算を全作品について行い合計得点が少ない方が勝者。特に上位予想の外れ度合いが小さいことが重要。このルールでの最高点は0点(大賞から10位まで全部当てるケース)、最低点は298点となる。 

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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