いつの間にか読書の秋が始まり、慌てて文学女子に本を紹介

金次郎がまだ若かりし頃、政界ではYKK(山崎拓・小泉純一郎・加藤紘一)が新世代のリーダーとしてもてはやされておりました。それがいつの間にかNが増えてNYKKになったので、Nこと中村喜四郎代議士とはどんな人なのか、と興味を持ったことを覚えています。その後彼は若くして建設大臣となり、建設族のプリンスとして将来の総理候補と目されるまでになったのですが、突然のゼネコン汚職スキャンダルで逮捕、起訴され、最終的には有罪が確定して服役の憂き目を見るというアップダウンの激しい半生だったと記憶していました。

金次郎はその後政治に興味を失ってフォローしていなかったのですが、最近中村喜四郎の名前をちょくちょく見るなと思い調べるとなんと未だ連続当選中で、無所属で国会議員を続けられていると知り驚きました。そこで、昨年刊行された「無敗の男 中村喜四郎 全告白」(常井健一著 文芸春秋)を読んでみたのですが、中村代議士の政治に拘り続ける執念がとにかく凄くて圧倒されました。格差是正を掲げて70歳を過ぎても打倒自民党を目指して野党共闘を働きかける意気軒高ぶりや、自らバイクで地元を走り回る〈選挙の鬼〉の姿は故田中角栄を彷彿とさせ印象的です。人のいないところを選んで辻説法するとか、組織的な選挙活動はしないなど、選挙に関する逆張りの理論もなかなか面白いと思いました。

また、ロッキード事件前後の田中派の状況や、当時の小沢一郎との確執など政局についての裏話も盛り込まれており、最近の話では特に恩讐を越えた小沢一郎への働きかけの場面はなかなか迫力が有って引き込まれますし、逮捕取り調べ時の140日間完全黙秘で名前すら名乗らなかったエピソードや、刑務所暮らしでどう自分を保っていたかの話などは本当に凄みを感じます。最近めっきり少なくなった〈政治屋〉に思いを馳せ、令和の時代の政治について改めて考えるきっかけとなる本でした。

さて、ちょっと前まで暑かったのに、最近めっきり過ごしやすくなり、もう秋じゃないか、と慌てて恒例のお薦め本企画です。文学女子ABさんは中学生となり部活でお忙しいようですし、金次郎がE美容師に紹介した本をEさんに先んじて美容室図書館からレンタルされているとのことなので(笑)、今回はそれらを外して六作品選んでみました。楽しんで頂けると嬉しいです。

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金次郎、久々に出社して中途覚醒が改善

このところ苦しんできた中途覚醒不眠ですが(→金次郎、中途覚醒症状に苦しみつつ読書は継続)、色々と生活の中で対策を講じてみたり、かかりつけの鍼灸の先生に診てもらったりした結果、一進一退しながら少しずつではあるものの症状は快方に向かっておりました。

そんな中、緊急事態が解除され、会社の判断も諸々留意しながら一部出社せよということになりましたので、断続的にやって来る眠気と闘いながら3か月ぶりに会社に行って参りました。

そうしたら!今週は一度だけの出社だったのですが、その晩、次の晩とかなり長時間眠ることができ、何のことはない、金次郎の身体メカニズムが25年の社会人生活を経て、ヒューマンビーイングからサラリーマンビーイングにリプログラムされていただけだったというオチで、嬉しくもあり切なくもなる出来事でした。

とは言え、まだ完快ではないので、もっと会社に行かねばと思う一方、快適で読書にも便利な在宅勤務を離れがたいという気持ちも有り、このジレンマに悶々としましたが、とりあえず来週は2日出社でお茶を濁します(笑)。

さて、金次郎は妻と共にネコ好きで、我が家に家族としてネコちゃんを迎えるかどうか悩むことが最早趣味と言うかお約束となっていますが、なかなか決断できずにおり、その反動かついついネコをタイトルに含む本を手に取ってしまいがちです。そんなことで、今回たまたま読んだのが「おひとり様作家、いよいよ猫を飼う。」(真梨幸子著 幻冬舎)で、ネコちゃんの話は後半にしか出てこないこのエッセイ集を読んでしまったために、組み立てていた読書計画が大きく狂うことになりました。

元々の計画では、「英仏百年戦争」(佐藤賢一著 集英社)、「双頭の鷲」(同 新潮社)と連続で読破して面白かったので、佐藤先生の「小説フランス革命」全12巻を冊数を稼ぐシリーズものとして、集中して読むことにしておりました。

「英仏百年~」では、当時の欧州大陸側から見た英国の位置づけが、日の沈まぬ大英帝国を経験した現代のものとは全く違う周縁的なものであった事実を改めて認識することができ、その後長らく続いて行く英仏抗争の根源に触れることができます。シェークスピアでしか歴史を学ばない英国人が、英仏戦争は英国の勝利に終わったと事実誤認しているという点は、前回のブログに書きました「すばらしい新世界」に登場した野蛮人ジョンを思い出してちょっと笑えます。

 

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7-9月期TVドラマはどうなるのか?+「21lessons」(ユヴァル・ノア・ハラリ著)を読む

いよいよ6月から本格的にwithコロナを意識した生活に移行することとなりますが、ふと「ハケンの品格」や「半沢直樹」などの人気作が予定されていた4-6月期の春ドラマはどうなるのだろうと思う一方、7-9月期のドラマ撮影にあたってはコロナ有りの生活様式をベースにするのか、それとも何事も無かったように〈マスク無し〉、〈密〉の世界でリアリティ無しの作品となるのか、かなり気になってきました。そういう面倒な設定を気にしなくていい〈昭和もの〉やいっそ時代劇がたくさん製作されたりするとちょっと笑えます。この話は小説にも当てはまるわけで、作家さんたちは舞台設定に頭を悩まされていることと思います。

〈今晩は避密コンである。自宅で夕食を済ませ、自作ハイボールをいつもより数杯多く一気に飲み干して、念入りに酔っぱらった状態で午後時に家を出た。ちなみに避密コンというのは読んで字のごとく、三密を避けての〈コロナ時代の合コン〉である。店に入ると、店と言っても所謂会議室なのだが、だいぶ間隔を空けて男女名が既に着席していた。皆同様に既に酩酊状態かつマスク&フェイスシールド着用である。マスクで顔の半分以上が見えない上に、何人かはフェイスシールドも曇ってしまっているためもはや個人の識別が難しい。さすがにそれでは情報不足過ぎて相手選びに支障をきたすので、とりあえず皆ルールに従い顔写真を表示したスマホを首からストラップでぶら下げている。なんとも異様な光景である。いや、今日は特別な日、異様さにひるんでいる場合ではない。この、酒無し、食事無し、だんだん酔いが覚めて行く避密コンで半年間練りに練ったゲームプランを確実に遂行しなければならないのだ。あいつの無念を晴らすために。〉

素人的にはこんな感じのヘタクソ文章となりますが、プロの先生方がこの状況をどう乗り越えるのか、今後出版される新作が楽しみです。

さて、本日は「21 lessons 21世紀の人類のための21の思考」(ユヴァル・ノア・ハラリ著 河出書房新社)のご紹介です。「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福」(同)、「ホモ・デウス」(同)で一気に著名学者の仲間入りをした、〈知の巨人〉ハラリ先生による、遠い過去でも未来でもなく人類の現在とこれからに焦点を当て、それぞれが関連し合う21の重要かつ壮大なテーマについて鋭い現状分析と、我々はどう生きるべきかについてのヒントを与えてくれる作品です。

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「蠅の王」(ウィリアム・ゴールディング著)は「ハエ男の恐怖」とは違った!、そして「危機と人類」(ジャレド・ダイアモンド著)を読了

緊急事態宣言がどんどん解除される方向となり、残るは東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県そして北海道となりました。どうでもいいですが、この地名の並びで考えると、東京や神奈川に対応するのは北海道でなく北海になるべきと思いますが、そうなっていない理由は元々「北海道」で一つの地名だからなんだそうです。ネットで調べると色々書かれていますが、どうせなら北海道県にしてもらった方が統一感有って良かったのにな、と思いました。

さて本題。こちらも色々な本で引用されることの多い作品で、かねてから読もうと思っていた「蠅の王」(ウィリアム・ゴールディング著 集英社)をコロナ不眠症で夜中にどうにも眼が冴えて眠れないので、その機会を捉えて読んでみました。

ストーリーのイメージは映画の「The fly」だったので、全く結び付かない珊瑚礁の無人島から始まる穏やかな物語にやや当惑気味でしたが、読み進めて行くうちに、こんな夜中に何というディープな作品に取り掛かってしまったのかと後悔するはめになりました。

同じ無人島サバイバルをモチーフとしていても、小学生の頃に読んだ「十五少年漂流記」(ジューヌ・ヴェルヌ著)のような少年漫画的なプロットのハピエン話では全くなく、恐ろしいことに誰もが心の内に飼っている〈内なる悪〉を残酷に描き出す内容で、コロナストレスで世界の皆さんが正気を失ってしまわぬことを願わずにはいられなくなりました。

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引きこもりのGWに「風と共に去りぬ」を読了

唐突ですみません。先日大阪府が提示した休業要請解除の基準の中に「陽性率7%以下」が一週間継続、というのを見たのですが、この数字は何かの役に立つものなのかとちょっと疑問に思いました。

この数字が意味する、かかりつけ医などの診察の結果検査が必要と判断された人や、明らかに濃厚接触していて感染が疑われた人のうち、どのくらいの割合の陽性者がいたか、というのは、つまりは「コロったかも?(by自分)」、「あなたコロってるかもしれませんよ。(byかかりつけ医)」の見立てがたまたま正しかった割合を表しているだけで、この数字が下がるというのは1.単純にPCR検査基準を緩めた(=上記見立てをもっと適当にした)、2.コロナに似た症状のかぜ患者が増えた、ことが示されているに過ぎず、コロナウイルス感染の広がり具合とか深刻さとかを代表している数字とは思えません。

「陽性率」を指標とするなら、無差別抽出した人にPCR検査をして、そのうちどの程度がウイルス保持者か、の比率を追いかける方が実際的と思うのですが如何でしょうか?

さて、水曜日でGWの5連休は終わってしまったのですが、この「妻と共に籠りぬ」だったお休みはひたすら「風と共に去りぬ(Gone with the wind)」(マーガレット・ミッチェル著 新潮社 全5巻)を読みふけっておりました。ダジャレですみません(苦笑)。

アカデミー賞受賞作の映画も見たことがなく、合計2000ページ超という大長編であることにも尻込み気味だったのですが、とにかくこれまで読んだ多くの本の中にヒロインであるスカーレット・オハラの人となりや物語の内容がたびたび登場するので、この本を経験しておかないと今後の読書が深まらないという問題意識の下、今回覚悟を決めて挑戦してみたところ、このところ興味を持っていたアメリカ史の最重要イベントの一つに数えられる南北戦争時代の社会がしっかりと描かれており、スカーレットの過激な性格には面食らいましたが、文学作品としては勿論のこと、歴史小説としても想像以上に興味を惹かれる内容で時間的には結構かかったものの気分的にはあっという間に読了した感覚です。

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「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~後編

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディ・ミカコ著 新潮社)は今とても売れている、と言うか売れ続けているノンフィクション作品ですが、とにかく本書の主役である中学生の息子くんが最高なのです。

アイデンティティの定まらない、東洋系で時には差別の対象にもなりかねないいたいけな中学生が、日本とは比較にならない多種多様な人種や階層、価値観のるつぼであるイギリス社会で、勿論本人なりには悩んでいるのだとは思うものの、我々大人が分別くさく難しい顔で理屈をこねながら、我が身やその言動を縛ると嘆いてみせるしがらみの数々を、 いとも簡単に、屈託無く、素知らぬ様子で軽やかに飛び越えて見せる姿に、 本当に胸のすく思いがする、そして我々が暗いと思い込んでいる世界の未来に希望を持たせてくれる本です。

自分の子供の頃を振り返ると、現代イギリスほどでは無いものの、当時の小中学校には確かに色々なバックグラウンドの子供たちが通っており、勿論そんな背景は気にせず日々の生活を送っていたわけですが、そういう違いに少年金次郎がただの無知だったのに対し、この息子くんはかなり分かっている、分かっているのにひょいと前に進んでいるところが本当にすごいと思います。

著者ミカコさんは金次郎と同じ福岡出身で年代も近いので、なんとなくギャップへの戸惑いというか驚きに共感するところ大ですが、 そのポジティブな驚きが成長する息子くんの姿への〈母ちゃん〉のなんとも言えない眼差しを通じて描かれている本作は、さすが売れているだけのことはある面白さでおすすめです。

そして、前回に引き続き、「興亡の世界史」シリーズ読破記念として、以下11~20巻の感想です。 (00~10巻の感想はこちらです→「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~前編

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「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~前編

緊急事態宣言下の東京で引きこもりの生活が続いておりますが、 おかげさまで今のところ夫婦共々元気に過ごしております。コロナになると嗅覚異常が出るとのことで、二人してやたらと色々なもののニオイを嗅ぎまくるというおかしなことにはなっておりますが(笑)。

2006年にシンガポールから帰国した際、海外での食道楽と運動不足生活がたたり大きく体重を増やしていた金次郎は、妻の友人の推薦すすめで「踏み台昇降運動」(通称フミショー)によるダイエットを始めました。

フミショーは床に置いた踏み台の昇り降りを40分前後繰り返すだけの単調な運動なのですが、これが存外有効で、体重は渡星前のレベルに戻り、その後もフミショーを継続しているおかげで、それなりに不摂生もしてきましたが標準体重を維持できている状況です。

フミショーにはインナーマッスルが刺激できるとか、太腿の筋肉がついて代謝が上がるとか、科学的にも色々と利点は有ると言われているそうなのですが、金次郎が特に気に入っているのは以下のポイントです。

●思い立ったらすぐできる

ダイエットで最も重要なことの一つは継続することで、それがなかなか難しいのが人情というものですが、 フミショーは運動することのハードルが極めて低い、すなわちやりたい時にすぐできる、特別な準備やジムに行く等のプロセスが不要、 ということで継続が容易という特徴が有り優れものです。外が暑かろうが、雨が降っていようが関係無く年中いつでも簡単にできるのもいいですね。

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金次郎、父に電話をする+「興亡の世界史」シリーズ(全21巻 講談社)もいよいよ終盤

昨晩はユリコショックにより、海外赴任する友人の送別会が急遽キャンセルとなり(海外赴任そのものも当面難しそうですが)、在宅勤務終了後、在宅だらだらを楽しみつつ、実家@福岡の父に連絡してみました。

福岡はコロナ患者が11件というまずまずの優秀県ということもあり、幸い父はすこぶる元気そうにしており安心したのですが、逆に「東京は大変なことになっとらんか?あの街に集まっている若者はなんばしよっとか?電車にはどげんして乗りよるとか?」と立て続けに質問&激しく心配され親のありがたみが身に染みると同時に、地方からは東京はそれほどデンジャラスに見えているのだな、と改めて感じました。

SARSが流行した2003年にシンガポールに駐在しておりまして、感覚的にはあの時より危機感は高い気がしており、ネットメディアによる情報過多のせいか、年を取ったせいか、はたまた本当に危険な状態なのか、正直分かりませんが、親に心配かけぬよう感染防止には最大限気を付けたいと思います。 (あの時は、コンラッドホテルで食事した後、車寄せのおじさんに当日の宿泊者数を聞いたところ「5人!」と言われて絶句したことを鮮明に覚えています。)

コロナは勿論大変なのですが、読書が趣味というのはとても都合が良く、外出できないストレスも無く、在宅勤務修了時点で一瞬で趣味の時間に移行できるというのは非常に幸せです。おかげさまで今月は目標の25冊を既にクリアし、28冊目に突入しているというハイペースになっており、今年も300冊が見えてきたぞと密かに喜んでいるところです。

さて、いよいよこのシリーズも終盤に差し掛かってきましたが、ずっと読んでいる「興亡の世界史」(講談社)の紹介です。

#17「大清帝国と中華の混迷」(平野聡著):

万里の長城を越え、異民族でありながら漢人・朱子学・華夷思想が支配した明の後継国家となった清が、朝貢国としてチベット・モンゴルを従え、東アジア国家から内陸アジア国家に転換しつつ版図を拡張していく中で、仏教の保護者、騎馬民族のハン、そして中国皇帝という性格の異なる統治者という矛盾を内包していたこと、 やがて朱子学の引力が満州人の漢人化をもたらし、19世紀後半から再び東アジア国家となって西欧列強と日本を含む帝国主義抗争に巻き込まれたとの流れ、が分かりやすく解説してある本作は、このシリーズの特徴である教科書に無い歴史における視座を与えてくれるという意味で非常に面白いと思います。

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ある週末の金次郎読書日記、締めくくりは門井慶喜作品

ニュースはコロナ一色ですし、全体的に自粛ムードで周囲に面白いことも起こらず、取り立てて書くことが無いので、よく聞かれる、どうやってそんなにたくさん本を読んでいるの?という問いに答えるべく、この週末の読書生活を一挙公開!

●3月6日(金)

夕方まで在宅勤務をした後、妻と食材を買いに出かけ、夕食後から前日読み始めた「監禁面接」(ピエール・ルメートル著 文芸春秋)の続きを読むことに。全体464ページのうち200ページ程度まで読んだところで、どうしても睡魔に負けて就寝。本当はあと100ページ程度は読み進めておきたかったところ。

●3月7日(土)

年齢のわりにさほど早起きもできず、朝の8時ぐらいから「監禁面接」の続きを読み、午前中になんとか読了。

最初のうちは、失業中年がどんどん追い込まれ、我を忘れて暴走するだけの痛いお話で、ちょっと過激な「終わった人」(内館牧子著 講談社)ぐらいの話かと思っていたら、 そこはあのカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作で世の中を震撼させた著者だけあって、暴走は暴走でもがらりと違った展開となり、驚きつつ途中から読むペースがどんどん上がる感じになります。前述シリーズの「その女アレックス」(文芸春秋)での鮮やかな場面転換の妙を思い出しました。ちなみにヴェルーヴェン三部作の順番は「悲しみのイレーヌ」からオーソドックスに読むと心が折れるリスク有るので、やはり「アレックス」から「イレーヌ」と読んで、「傷だらけのカミーユ」で締めくくるのがよろしいかと思います。

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「石油の帝国」とグレタさんとアンチ・グレタさん

せっかく調べてまで覚えたのに(→こちら)、米民主党予備選からピート・ブッティジェッジ氏が撤退とニュースで見て、知性を感じる語り口がやや気になりかけていたところだったので、非常に残念な気分になりました。しかし、あまりにも弱かったですね。まだ38歳とお若いので今後に期待しましょう。

気を取り直して読み方の微妙な海外の方をもう一人。環境活動家として非常に注目を集めているグレタ・トゥンベリさんは有名ですが、 最近アンチグレタを標榜して急激に知名度を上げているオルタナ右翼ドイツ人女子がいるとの情報を聞き調べてみると、その名はNaomi Seibtさん(19)。

ファーストネームのナオミは問題無いとして、ファミリーネームはちょっと読みづらいですね。この方ドイツ人とのことでドイツ語的に正しく読むと〈ザイブト〉になるようで、ナオミ・ザイブトさんということになります。当面消えないことを願ってこちらを覚えることにしました。

このナオミ・ザイブトさんは自称climate realistだそうで、温室効果ガス排出による地球温暖化というロジックを〈馬鹿げた話〉と一刀両断し、再生エネ駆動ヨットで大西洋を東奔西走するグレタさんと完全に対立ポジションを取っています。気になったのでこれも調べてみて分かった、Naomiという名前のヘブライ語の意味であるpleasantnessとかsweetnessとかからイメージされる可愛らしさとは無縁の感じですね。

これまたいつものこじつけで恐縮ですが、漸く読了した「石油の帝国 エクソンモービルとアメリカのスーパーパワー」(スティーブ・コール著 ダイヤモンド社)は エクソン・ヴァルディーズ号の石油流出事故に始まり、レイモンドCEOによるモービル買収(810億ドル)、後を引き継いだティラーソンCEOによるXTO買収(410億ドル)の顛末や、ナイジェリア、チャド、インドネシア、赤道ギニア等政情不安定地域での生産活動に伴う時には反政府勢力、あるいは反政府勢力より厄介な政府との交渉を含む様々な問題、 ロシアやベネズエラ、サウジアラビアといった巨大埋蔵量を抱える独裁国家 との苛烈な交渉から、 徐々に重要性を増してきた気候変動問題への対応まで、非常に多様なテーマについてのこれまで秘されて明るみに出なかった事実を惜しげもなくさらけ出す大変素晴らしいノンフィクション作品です。

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謎のタイトルが気になる「HHhH」(ローラン・ビネ著 東京創元社)

本日、広告大手D社でコロナ感染者が確認され本社は全員テレワークとの対応が発表されていましたが、 金次郎の会社も仮にテレワークとなった場合、 家で読書をせずに職務専念義務を全うできるか、なかなか悩ましい問題なのでそんな事態にならぬことを心から祈っております。

推薦図書紹介本にあった「HHhH プラハ・1942年」(ローラン・ビネ著 東京創元社) は観ての通り意味不明なタイトルがあまりにも不親切で、 読者に手に取ってもらおうという媚が全く無い潔さに先ずは面食らいます。

このタイトルは、Diy(do it yourself:自分でやる)やNimby(not in my back yard:我が家の裏では遠慮します)のような略語で、 HHhH(Himmlers Hirn heißt Heydrich:ヒムラーの頭脳はハイドリッヒと呼ばれる)という意味になるそうですが、GGDD(言語道断)、MKS(負ける気がしない)といったDAI語を聞いた時のあのイラっとする感じが少しだけ蘇りますw

さて本書はフランス文学かつナチスものという高いハードルだったので、最初からかなり守りに入って読み始めたのですが、極めて入念な調査に支えられた強固なストーリーの枠組み、時空を自由に行き来する表現の自在性、シャープな章立てによるテンポの良さ、ルポでもノンフィクションでも小説でもない新感覚の読み応え、に引き込まれ、それなりに長い本ですが一気に読了してしまいました。

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新たな天皇誕生日に古代史関連本を読む

最近ニュースはコロナ一色で面白いネタもあまり無く、録画をためていたドラマ〈相棒〉を見ていたら、途中の番宣CMで東出くんが元気に演技している姿を何度も見るハメになり、 せっかく今年から新たに祝日となった天皇誕生日というのに、何となく冴えない感じです。

非常にこじつけ的になってしまいますがw、皇室つながりということで、古代関連の本で2月になって読んだ本を紹介します。

日本史で勉強した〈白村江の戦い〉は663年に倭国・百済連合軍が唐・新羅連合軍に大敗した、古代史における重要なイベントですが、何分この辺りの歴史は資料も乏しく、残っている資料も恣意的に書き換えられているものが多いため、 この戦いの背景や帰結については様々な解釈の余地があり、小説の題材にするのになかなか適していると言えます。

ちょっと前の時代を含めた主要キャストとしては、 蘇我入鹿、中大兄皇子=葛城皇子、中臣鎌子(鎌足)、皇極(斉明)天皇、 泉蓋蘇文(高句麗)、 金春秋(新羅)、 扶余豊しょう璋、鬼質福信(百済)、などが挙げられますが、 「白村江の戦い」(三田誠広著 河出書房新書)が鎌子を半島系の渡来人として描いている以外はかなりオーソドックスな歴史観に基づいて書かれているのに対し、 「白村江」(荒山徹著 PHP研究所)では、ちょっと新しい歴史解釈がされていて面白い。

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田中角栄と戦後政治を学び直す

先週は後半に出張が入り、時間が取れなかったためブログの更新が滞ってしまったのですが、とにかく空港でも機内でも異様なマスク着用率で、一瞬のスキならぬセキも許されないような雰囲気の中、 どうにか無事に帰国いたしました。今のところ全くの健康体ですが、まだ潜伏期間が10日以上残っているのでしばらく気持ち悪い日々が続きます。ちなみに渡航地は中国ではありませんのでご安心ください。

さて、最近故田中角栄元首相の名前がふとした会話でよく出てきたり、 難問山積の政治状況で角栄的リーダーシップが待望される、といった論調を耳にしたりと、再評価とは言わないまでも、その人となりや政治信条に改めて光が当たっているように感じます。

ところが、小さい頃の記憶を遡ってみると、 一番古い政治に関する記憶は 現役であった大平首相(当時)の死であり、 自分は三角大福時代を全く経験していないことを今さらながら認識し、 政治オンチもそろそろ卒業したいと思っていたこともあり、とりあえず何冊か本を読んで勉強してみることにしました。とんだ深みにはまるとも知らず。。。

先ず読んでみたのが、「異形の将軍:田中角栄の生涯」(津本陽著 幻冬舎 上巻 / 下巻)です。 この本は伝記的な内容で、高等小学校卒という学歴とは全く関係無い明晰な頭脳、裸一貫から成りあがる金儲けのセンス、ずば抜けた行動力と政治的決断力、情にもろく人間関係で非情になれない性格など、人間田中角栄を知る上ではとても参考になり、導入としてはなかなか良いチョイスだったと思います。コンピューター付きブルドーザーという仇名、選挙での票読みの正確さ、娘真紀子の溺愛ぶりなどが印象に残りました。

ただ、この本を読んだだけでは戦後政治の全体像が今ひとつ掴めず、大作で読み通すのに時間がかかるとやや躊躇はしたものの意を決して「小説吉田学校」(戸川猪佐武著 角川文庫 全八部)を読むことにしました。

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「わたしの名は紅」(オルハン・パムク著 藤原書店)

この週末は未読だった本屋大賞ノミネート作を2冊読み、驚いて笑って泣いて大変でしたw。 近いうちに感想を書こうと思いますが、ネタばれ無し主義者としては、特にミステリーは 面白ければ面白いほど書けることが減る構造になってしまうのでジレンマですね。

さて、「わたしの名は紅」(オルハン・パムク著 藤原書房)は、トルコのノーベル文学賞作家の手によるオスマン帝国時代を描いた歴史ミステリー小説ということで、好みのテーマが詰まっていると思い読み始めたものの、情報量が非常に多く消化しながら読み進めるのがなかなか手間取る作品でした。

ただ、世界的大ベストセラーとなったこちらも歴史ミステリーである「薔薇の名前」(ウンベルト・エーコ著 東京創元社 巻・下巻のイスラム版と言えるほど当時の宗教観、つまりは世界観や社会規範の描写が詳しく、知的好奇心を刺激される内容で、もう少し教養を深めた上で改めて挑戦しようと思わされる一冊でした。ミステリー比率が低いので、それなりに書くことが有ったのは助かりましたw。

物語の舞台となる1591年はムラト3世の治世で、チャルドランの戦いでサファビー朝を後退させ、エジプトのマムルーク朝を滅ぼしたセリム1世、第一次ウィーン包囲、ロードス島攻略で名高いスレイマン1世の黄金時代を経て、オスマン帝国の繁栄にやや影の差し始めている時期であり、体制締め付けのために、元々宗教的には寛容であった帝国がイスラム国家としての性格を強めているのが特徴的です。

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2019年振り返り(2~3月)

読書の話をしていると、どうやって次に読む本を選んでいるか、と尋ねられることが結構多いです。これといって定まったやり方があるわけではなく、いつも少し返答に窮するのですが、強いて言うなら①その時興味を持っている分野について、キーワード検索してみてヒットした本を適当に読む、②面白かった本の最後に書いてある参考文献を読む、③推薦書まとめ本を読んで参考にする、④王様のブランチbookコーナーを見る、⑤いま売れている本を読む、⑥会社の同僚や友人との会話の中で短期間に複数回話題に上ったテーマについて何冊か集中して読む、という感じでしょうか。また、なんとなくでも傾向を把握するために、テーマや作家毎に複数冊まとめて読むことが多いです。

あとは、「ローマ人の物語」(塩野七生著 新潮社、全15巻)、「興亡の世界史」(講談社、全21巻)、「徳川家康」(山岡荘八著 講談社、全26巻)等のように長く楽しめる面白いシリーズものを狙って読んでみるのも効率的です。上記⑥とも関係しますが、最近田中角栄元総理について会話する機会が多く、ちょっと関連書籍を読んでいて、今はまっているのが「小説吉田学校」(戸川猪佐武著 学陽書房、全8巻)です。感想またどこかで書きますね。

さて、そんな感じで去年の2~3月に選んで読んだ本の中で印象に残っているものをいくつか紹介します。

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今年もよろしくお願いします 2019年読書振り返り(1月)

あけましておめでとうございます!

最初は、人間の幅広げてみる?的な軽い気持ちで手当たり次第に本を読み始め、ちょっと読書の質上がるかも?と感想を書くようになり、せっかくなので色々な本の面白いところを紹介しちゃおうと昨年末からこのブログを始めるに至りました。私の趣味がかなり偏っているので若干心配ですが、読んで頂いているみなさんに少しでも参考になれば嬉しいです。

年始にあたり2019年の読書を振り返ってみると、なんと340冊読んでおりました!ただ、悲しいことにリストを見ても内容を忘れてしまっている本もそれなりに有り、今年はこのブログで書くことも意識して一冊一冊をじっくり味わって読んでみようと思います。

それでは、まず2019年1月に読んだ中で特に印象に残った本を簡単に紹介します!

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シリア視点で中東を読み解く 「アサド 中東の謀略戦」(パトリック・シール著 時事通信社)

先日イスラエル行ったのですが、何気なくゴラン高原をバックに写真撮影したりして、ここが米国が認めたイスラエル領土かー、と呑気だった自分が情けない。訪問前にこの本読んでおくべきでした。

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