「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~前編

緊急事態宣言下の東京で引きこもりの生活が続いておりますが、 おかげさまで今のところ夫婦共々元気に過ごしております。コロナになると嗅覚異常が出るとのことで、二人してやたらと色々なもののニオイを嗅ぎまくるというおかしなことにはなっておりますが(笑)。

2006年にシンガポールから帰国した際、海外での食道楽と運動不足生活がたたり大きく体重を増やしていた金次郎は、妻の友人の推薦すすめで「踏み台昇降運動」(通称フミショー)によるダイエットを始めました。

フミショーは床に置いた踏み台の昇り降りを40分前後繰り返すだけの単調な運動なのですが、これが存外有効で、体重は渡星前のレベルに戻り、その後もフミショーを継続しているおかげで、それなりに不摂生もしてきましたが標準体重を維持できている状況です。

フミショーにはインナーマッスルが刺激できるとか、太腿の筋肉がついて代謝が上がるとか、科学的にも色々と利点は有ると言われているそうなのですが、金次郎が特に気に入っているのは以下のポイントです。

●思い立ったらすぐできる

ダイエットで最も重要なことの一つは継続することで、それがなかなか難しいのが人情というものですが、 フミショーは運動することのハードルが極めて低い、すなわちやりたい時にすぐできる、特別な準備やジムに行く等のプロセスが不要、 ということで継続が容易という特徴が有り優れものです。外が暑かろうが、雨が降っていようが関係無く年中いつでも簡単にできるのもいいですね。

●~しながらできるので効率が良い

単調な運動を数十分もやるのは無理、飽きる、つまらない、と思われる方もいらっしゃると思いますが、意外にもテレビを見たり、音楽を聴いたり、それこそオーディオブックを聞いたりしながらの運動が可能なので、退屈もしなければ時間も有効に使えて非常に今風です。勿論単調な運動に没頭することでストレス発散や気持ちの切り替えができるのも気に入っているところです。

グローバルなコロナ問題でオンラインゲーム会社はWHOと提携するなど好調なようですが、ゲームもいいですがフミショーはより健康的なのでご興味有る方はお試し下さい。

さて、2018年9月15日に01巻を読み始めた「興亡の世界史」シリーズをとうとう2020年4月11日の00巻読了を以てコンプリートいたしました。19か月も要してしまいましたが、素晴らしい先生方による熱意のこもった新しい「世界史」解説への型にはまらぬ挑戦は新味に溢れていて、 目からウロコの連続という経験をした金次郎の世界史中級者という自信を打ち砕くものではありましたが、非常にためになりました。以下、簡単ですが00~10巻の感想です。

◆00巻:「人類文明の黎明と暮れ方」(青柳正規著)

旧石器時代からローマまでの長大な期間を対象とする本書は、歴史における要素還

元主義とホーリズムの対立など、正直よく分からない部分も有りましたが、 直立二足歩行に起因する脳容量の拡張とそれがもたらす幼児期の長期化と家族意識の形成、家族と先祖の関係を認識することを通じた死の概念などの高い精神性の獲得、 概念的なものを理解し得る知能が創造性を生み、石器や土器の高機能化に繋がった、というような部分には興味を引かれ、普段はつまらないと思って飛ばすところですが何とか読めました。 肥沃ではあるものの環境は厳しいメソポタミアと、ナイルの恵みに常に育まれているエジプトでは、神、冥界、徴税など様々な仕組みが然るべく違う、という点は面白かったですね。

◆01巻:「アレキサンドロスの征服と神話」(森谷公敏著)

神に近づくことと名誉を得ることをモチベーションとして、歴史に名高いアレキサンドロス大王が東に進み続けたことがよく分かります。何故そんなに強かったのかについての言及が無かった点はやや残念でしたが、ギリシャ・エジプト・ペルシャを含めたオリエント世界全体を股にかけるスケールの大きさは実感できます。

◆02巻:「スキタイと匈奴 遊牧の文明」(林敏雄著)

発掘調査の進展で少しずつ分かってきたユーラシア遊牧騎馬民族について、特に西のスキタイと東の匈奴の特徴とその類似性をヘロドトスの「歴史」と司馬遷の「史記」も引きながら詳説しています。 モンゴルや欧州への蛮族流入など遊牧騎馬民が歴史に与えた影響は大きいですが、旧共産圏の解体が更なる考古学的発見につながって、歴史の謎がどんどん明らかになるかと思うとわくわくします。

◆03巻:「通商国家カルタゴ」(栗田伸子・佐藤育子著」

地中海東岸にキュロスなどの都市国家を築いたフェニキア人がアッシリアの圧力に押し出されて西方に移住し建設したのがカルタゴですが、 西地中海の交易を独占して情報格差で収益を上げ繁栄した様子がよく分かります。 ハンニバルの名将ぶりに注目が集まりがちですが、実際はそれ以前に強い国家を造る仕組みにこそ見るべき点が有り、 そのあたりの記載が充実している本書は素晴らしい。

◆04巻:「地中海世界とローマ帝国」(本村陵二著)

「ローマ人の物語」(塩野七生著)と 細かい記載に結構齟齬が有り、塩野先生がストーリー性を優先して歴史資料の隙間をそれなりに類推されたんだな、と感じながら面白く読めました。古代ローマ史の第一人者である本村先生の著作ということもあり、長いローマの歴史がコンパクトに分かり易くまとまっております。

◆05巻:「シルクロードと唐帝国」(守康孝夫著)

大繁栄した唐帝国はいわゆる蛮族鮮卑の国であり、伝統的漢民族と異民族が融合した「唐民族」の国家である、というのはインパクトが有ります。 突厥・ウイグル・チベット、あるいは通商民族ソグド人との関係で語られる唐はユーラシア騎馬民族国家の周縁地域にすら見えてきます。西欧中心でも中華思想でもないマクロな世界史を感じられる一冊です。

◆06巻:「イスラーム帝国のジハード」(小杉泰著)

ムハンマドからアッバース朝までを中心に記述されていますが、現代のイスラム教やジハードの概念を正しく理解する上で、本書における〈内面の〉・〈社会的〉・〈剣の〉ジハードという分類は非常に分かり易いと思いました。

◆07巻:「ケルトの水脈」(原聖著)

かなりマニアックにケルト関連の歴史や習俗について解説されている本書では、スコットランド・アイルランド・ウェールズ・コーンウォール・マン島・ ブルターニュブルターニュなどが主なケルト地域とされています。 古代ケルトは数学を重視して、ピタゴラス学派と関係が有ったというのはちょっと意外でしたし、祭祀ドルイドやマギ、聖人信仰やアーサー王伝説など様々な物語の下敷きになっている文化が多く興味深いです。

◆08巻:「イタリア海洋都市の精神」(陣内秀信著)

アマルフィ・ヴェネチア・ジノヴァ・ピサなどの海洋都市の歴史のみならず、地形と関連した都市空間活用の市民性への影響など、世界史のやや拡張版で面白く読めます。 アマルフィの聖ヨハネ騎士団、ヴェネチアのラテン帝国建設といった十字軍との関連部分はやっぱりエキサイティングです。

◆09巻:「モンゴル帝国と長いその後」(杉山正明著)

本書では、西欧的な海の歴史観への偏りを批判し、 ユーラシアランドパワー国家が紡いだ陸の歴史の世界史における意義や重要性、更にはロシア・欧米によって歪められた歴史を鵜呑みにすることの危うさについて著者の思うところが自由に記述してあり相当面白く読めました。 〈タタルのくびき〉にまつわるモンゴル人非道説はロシア及び西欧史家による捏造(そもそも雷帝イヴァン4世はモンゴル人のハーフ)、 大清帝国に遊牧民権力が移譲されるまではチンギス・ハンとの血縁が重視されていて ティムール朝とその後継のムガール朝もその例に漏れないこと、 アフガニスタンという視座でランドパワーとシーパワーの対立を眺め直す試み、 など、うんちく的にも学問的にも知的好奇心を充たしてくれる一冊でした。

◆10巻:「オスマン帝国500年の平和」(林佳世子著)

大好きなオスマン帝国もので、当時の周辺国との対立状況や細かな社会制度まで丁寧に記述されており、知的好奇心を充たしてくれる一冊です。 トルコ系のスルタンを戴きトルコ語系の公用語を用いた国家ではあったものの、 後継のトルコ共和国に引っ張られた通称であるオスマン・トルコという呼び名は正しくなく、多種多様な民族・宗教を包含しながら広範な領域を支配したという意味できちんと〈オスマン帝国〉と呼ぶべきということが良く分かります。 ここを押さえて、アナトリアというよりバルカンがメインのヨーロッパ国家と認識することで、 デブシルメ制とかウィーン包囲とかへの何となくの違和感が解消されてすっきりします。

次回は11~20巻の感想を書きます。レア極まりない〈興亡の世界史ロス〉にならぬよう、 早く読み応えの有る次のシリーズものを見つけなければ!

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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