金次郎と宿敵Mによる本屋大賞2020予想対決!

いよいよ金次郎と宿敵Mとの本屋大賞予想対決の時がやって参りました!今日は余計なことは書かず、それぞれの総評、順位予想と一言コメントを紹介させて頂きます。

4月7日(火)に公式順位が発表される予定となっており、予め合意したルールに従って点数を計算、決着を付けることになります。 (詳細は→本屋大賞2020ノミネート作品発表!)

本を背負って本を読みながら本の山を積み上げる金次郎が勝つのか、老獪な言葉の魔術師Mがその感性の冴えを見せつけるのか、結果が待ち遠しいところです。

金次郎

【総評】

上位6作はすんなり選べたのですが、いずれ劣らぬ秀作揃いでそこからの順位付けに悩みに悩みました。結果、一番心に深く刺さったという基準で大賞は「夏物語」、当てに行く気持ちを少し忘れて、こんな時だから明るくなれる「店長が」を次点に推しました。多くの人に受け入れられるエンタメ作品として「線は、」は外せず第3位です。直木賞でスケールの大きさが売りの「熱源」は逆に壮大過ぎて理解が追い付かないかもと第4位、「ライオン」は素晴らしいが新井賞作は上位に来ないジンクスを信じ勝負に徹して第5位にしました。ミステリーは本屋大賞に弱い実績から「Medium」は泣く泣く第6位とさせて頂いております。

【順位予想】

本屋大賞:「夏物語」(川上未映子著 文藝春秋)

静かな社会現象である非配偶者人工授精を切り口に、生まれてくることを自ら選択できない子供の完全な受動性というある意味究極の理不尽に光を当てた本作は、家族の在り方を世に問う社会派小説であると共に、そもそも不条理な人生に苦悩しつつも立ち向かう覚悟の美しさに気付かせてくれる感動と導きの書でもあります。

第2位:「店長がバカすぎて」(早見和真著 角川春樹事務所)

バカという名の理不尽に振り回され、怒り、悩み、焦り、疲れ果て自分を見失いながらも、仕事に真摯に向き合い続ける苦境の契約社員書店員谷原さんがなんともチャーミングな本作は、同時にノミネート作中随一の笑える作品でもあります。そして、自分の部署には無理だけど、隣の部署にはいて欲しい山本店長は本当にバカで最高です。

第3位:「線は、僕を描く」(砥上裕將著 講談社)

老師に才能を見出される若者の成長を描くという少年漫画プロットの本作が、普通のエンタメ作品と一線を画す高みにあるのは、描かれなかったものと何も描かれていない余白にその本質を見出すという、奥深い水墨画の世界を、その世界に身を置く芸術家である著者の感性で鮮やかに疑似体験させてもらえるからだと思います。

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金次郎、父に電話をする+「興亡の世界史」シリーズ(全21巻 講談社)もいよいよ終盤

昨晩はユリコショックにより、海外赴任する友人の送別会が急遽キャンセルとなり(海外赴任そのものも当面難しそうですが)、在宅勤務終了後、在宅だらだらを楽しみつつ、実家@福岡の父に連絡してみました。

福岡はコロナ患者が11件というまずまずの優秀県ということもあり、幸い父はすこぶる元気そうにしており安心したのですが、逆に「東京は大変なことになっとらんか?あの街に集まっている若者はなんばしよっとか?電車にはどげんして乗りよるとか?」と立て続けに質問&激しく心配され親のありがたみが身に染みると同時に、地方からは東京はそれほどデンジャラスに見えているのだな、と改めて感じました。

SARSが流行した2003年にシンガポールに駐在しておりまして、感覚的にはあの時より危機感は高い気がしており、ネットメディアによる情報過多のせいか、年を取ったせいか、はたまた本当に危険な状態なのか、正直分かりませんが、親に心配かけぬよう感染防止には最大限気を付けたいと思います。 (あの時は、コンラッドホテルで食事した後、車寄せのおじさんに当日の宿泊者数を聞いたところ「5人!」と言われて絶句したことを鮮明に覚えています。)

コロナは勿論大変なのですが、読書が趣味というのはとても都合が良く、外出できないストレスも無く、在宅勤務修了時点で一瞬で趣味の時間に移行できるというのは非常に幸せです。おかげさまで今月は目標の25冊を既にクリアし、28冊目に突入しているというハイペースになっており、今年も300冊が見えてきたぞと密かに喜んでいるところです。

さて、いよいよこのシリーズも終盤に差し掛かってきましたが、ずっと読んでいる「興亡の世界史」(講談社)の紹介です。

#17「大清帝国と中華の混迷」(平野聡著):

万里の長城を越え、異民族でありながら漢人・朱子学・華夷思想が支配した明の後継国家となった清が、朝貢国としてチベット・モンゴルを従え、東アジア国家から内陸アジア国家に転換しつつ版図を拡張していく中で、仏教の保護者、騎馬民族のハン、そして中国皇帝という性格の異なる統治者という矛盾を内包していたこと、 やがて朱子学の引力が満州人の漢人化をもたらし、19世紀後半から再び東アジア国家となって西欧列強と日本を含む帝国主義抗争に巻き込まれたとの流れ、が分かりやすく解説してある本作は、このシリーズの特徴である教科書に無い歴史における視座を与えてくれるという意味で非常に面白いと思います。

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「日本列島回復論 この国で生き続けるために」(井上岳一著)とその関連本を読む

このブログで書いてから少し間があいてしまったので、あれやらないのかな?と思っている読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、〈本屋大賞対決〉、忘れておりません。

先週末に「流浪の月」を読了し、ノミネート10作品全てを読み終えましたので、これから順位予想を悩みに悩もうと思います。対決の相手であるMに確認したところ、「熱源」を残し9冊読み終えたとのことで、我々二人だけの非常に狭い世界でのどうでもいいニッチな争いではありますが、コロナのせいで刺激の少ない日常が続く中、4月7日の発表までこのネタで気分を上げて行こうと思います。

さて、学生時代のの先輩が推奨されていたので「日本列島回復論 この国で生き続けるために」(井上岳一著 新潮社)を読んでみました。

著者が4年の期間を費やして思いのたけを詰め込んだだけのことはあり、平易ながらも非常に理知的な文章で綴られる内容は多岐にわたり、情報の量と幅広さに、 気を抜くと圧倒されて迷子になってしまいそうです。

日本の国土の7割弱を占める森林が人々の生活の基盤であった時代から紐解き、 明治維新後の富国強兵、立身出世の流れの中で山村を中心とする地方の〈労働力源〉化が始まり、 回遊マグロのように安価な労働力を求め続けざるを得ない資本主義の進展と、 石油へのエネルギー転換、貿易自由化があいまってこの傾向が加速し、都市と地方の二極化構造が生まれた経緯を分かりやすく解説してあります。

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金次郎、本の紹介を頼まれてないけどまた紹介+直木賞作「熱源」を読了!

少し前に読書の弟子である文学少女に本を紹介した話を書きましたが、この文学少女とは美容師さんつながりなので、今週髪を切った際に、来週予約入ってますよ、と聞きつけたのをいいことに、姪っ子に嫌われてしまう親戚のうざいおじさん的にはなってしまいますが、勝手におすすめ本を紹介させて頂くこととしました。

少し脱線&解説しますと、このE美容師さんは、金次郎がかつてお世話になっていたチョイ悪だけど意外と繊細なK美容師、孤高の猛スピードカットのY美容師、の後輩にあたるのですが、金次郎の妻、金次郎の元同僚とその奥様(そして多分その娘ちゃん)、も髪を切ってもらっているという、なかなかご縁をつなぐ力のある方でかれこれ10年以上のお付き合いになります。E美容師はKさんともYさんとも違う雰囲気で、外苑前のサロンも落ち着いた感じなので、毎月うかがって癒されています。

さて、今回は散髪中には絞り込めず、このブログでのご連絡となってしまいましたが、これまで読んだ本のリストを見直してさんざん悩んだ結果、以下5冊をおすすめさせて頂くことにしました。いつか何かの拍子に手に取ってもらえると嬉しいですねー。

【金次郎から文学少女A&Bへのおすすめ作品5選】

「風が強く吹いている」(三浦しをん著 新潮社)

箱根駅伝がテーマのこの作品は、細かい問題は全てどうでもよくなる感動の連続で、 仲間、ライバル、逆境、大きな舞台、登場人物の肉体と精神両面での成長、とカタルシス要素がこれでもかと詰まっていて鉄板です。

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ある週末の金次郎読書日記、締めくくりは門井慶喜作品

ニュースはコロナ一色ですし、全体的に自粛ムードで周囲に面白いことも起こらず、取り立てて書くことが無いので、よく聞かれる、どうやってそんなにたくさん本を読んでいるの?という問いに答えるべく、この週末の読書生活を一挙公開!

●3月6日(金)

夕方まで在宅勤務をした後、妻と食材を買いに出かけ、夕食後から前日読み始めた「監禁面接」(ピエール・ルメートル著 文芸春秋)の続きを読むことに。全体464ページのうち200ページ程度まで読んだところで、どうしても睡魔に負けて就寝。本当はあと100ページ程度は読み進めておきたかったところ。

●3月7日(土)

年齢のわりにさほど早起きもできず、朝の8時ぐらいから「監禁面接」の続きを読み、午前中になんとか読了。

最初のうちは、失業中年がどんどん追い込まれ、我を忘れて暴走するだけの痛いお話で、ちょっと過激な「終わった人」(内館牧子著 講談社)ぐらいの話かと思っていたら、 そこはあのカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作で世の中を震撼させた著者だけあって、暴走は暴走でもがらりと違った展開となり、驚きつつ途中から読むペースがどんどん上がる感じになります。前述シリーズの「その女アレックス」(文芸春秋)での鮮やかな場面転換の妙を思い出しました。ちなみにヴェルーヴェン三部作の順番は「悲しみのイレーヌ」からオーソドックスに読むと心が折れるリスク有るので、やはり「アレックス」から「イレーヌ」と読んで、「傷だらけのカミーユ」で締めくくるのがよろしいかと思います。

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「石油の帝国」とグレタさんとアンチ・グレタさん

せっかく調べてまで覚えたのに(→こちら)、米民主党予備選からピート・ブッティジェッジ氏が撤退とニュースで見て、知性を感じる語り口がやや気になりかけていたところだったので、非常に残念な気分になりました。しかし、あまりにも弱かったですね。まだ38歳とお若いので今後に期待しましょう。

気を取り直して読み方の微妙な海外の方をもう一人。環境活動家として非常に注目を集めているグレタ・トゥンベリさんは有名ですが、 最近アンチグレタを標榜して急激に知名度を上げているオルタナ右翼ドイツ人女子がいるとの情報を聞き調べてみると、その名はNaomi Seibtさん(19)。

ファーストネームのナオミは問題無いとして、ファミリーネームはちょっと読みづらいですね。この方ドイツ人とのことでドイツ語的に正しく読むと〈ザイブト〉になるようで、ナオミ・ザイブトさんということになります。当面消えないことを願ってこちらを覚えることにしました。

このナオミ・ザイブトさんは自称climate realistだそうで、温室効果ガス排出による地球温暖化というロジックを〈馬鹿げた話〉と一刀両断し、再生エネ駆動ヨットで大西洋を東奔西走するグレタさんと完全に対立ポジションを取っています。気になったのでこれも調べてみて分かった、Naomiという名前のヘブライ語の意味であるpleasantnessとかsweetnessとかからイメージされる可愛らしさとは無縁の感じですね。

これまたいつものこじつけで恐縮ですが、漸く読了した「石油の帝国 エクソンモービルとアメリカのスーパーパワー」(スティーブ・コール著 ダイヤモンド社)は エクソン・ヴァルディーズ号の石油流出事故に始まり、レイモンドCEOによるモービル買収(810億ドル)、後を引き継いだティラーソンCEOによるXTO買収(410億ドル)の顛末や、ナイジェリア、チャド、インドネシア、赤道ギニア等政情不安定地域での生産活動に伴う時には反政府勢力、あるいは反政府勢力より厄介な政府との交渉を含む様々な問題、 ロシアやベネズエラ、サウジアラビアといった巨大埋蔵量を抱える独裁国家 との苛烈な交渉から、 徐々に重要性を増してきた気候変動問題への対応まで、非常に多様なテーマについてのこれまで秘されて明るみに出なかった事実を惜しげもなくさらけ出す大変素晴らしいノンフィクション作品です。

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辻村深月先生、勝手にお誕生日おめでとうございます!

本日やや偏頭痛がしてコロナウイルスが脳に到達したか?!と非科学的な妄想に捉えられそうになりましたが、一日安静にしていたらだいぶ調子が良くなりひと安心。このブログを書く気力も少し湧いてきました。

万全でないわりにちょっと話がややこしくなってしまうのですが、先日このブログで書きました文学少女(春から中学生!)への次なる紹介本を選ぶ枠組みと言うか基準を定めるために、 中学生向けの本のことならこれ以上の適任はいないと思い、 読書家として有名なかの芦田先生に頼ることにしました。

妻に「ライバルだったんじゃないの?」とあきれられましたが、 向こうの方が収入もきっと多いし、先生が生まれた瞬間から既に負けていた気もするので問題無いと、 大人としてのプライドをあっさり捨て去って「まなの本棚」(芦田愛菜著 小学館)を拝読させていただくことに。

この本自体は、どこまでが計算なのかは計り知れませんが、少し大人びた中学生的な仕上がりになっており、改めて有名子役恐るべしと感服させられる内容です。 古今東西の様々なジャンルの本が紹介されていて偏りが無く、読書そのものが好きなことがよく分かり、この点では非常に共感するところです。

先生はまだ中学生ということもあり(中身は35歳ぐらいかもしれませんがw)、 今のところ続きが気になってページをめくるストーリーフォロー型の読み手のようですが、金次郎の憧れるコンテキスト分析型読み手の素養もお持ちで、再び大人げなく嫉妬の念を禁じ得ません(苦笑)。

金次郎の嫉妬はさておき、この本の中で芦田先生が辻村深月先生の大ファンであり神と崇めていると知り(対談もされています)、そう言えば代表作の一つである「ツナグ」を読めてなかった間に、続編である「ツナグ 思い人の心得」が出たんだったと思い出し、先ずはこの2作を読了。

そこで何気なく目に入った著者紹介に、なんと1980年2月29日生まれ、とあります! 閏年の2月29日生まれの人は誕生日頻度低くて可哀そうだと思っていたのですが、こんなところにいらっしゃるとは!

周囲では見たこと無く、この機会に調べてみると、辻村先生の他には峰竜太さん、飯島直子さん、吉岡聖恵さん(いきものがかり)と誕生日占い的な傾向は見いだせず、強いて言うなら癒し系か?いや違うか?w

まぁとにかく辻村先生、ついでに峰さん・飯島さん・吉岡さん、おめでとうと言うことで既読の作品を何冊か紹介させて頂きます。ようやく読書ブログの趣旨に辿り着きました。だらだら書いてすみません。

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謎のタイトルが気になる「HHhH」(ローラン・ビネ著 東京創元社)

本日、広告大手D社でコロナ感染者が確認され本社は全員テレワークとの対応が発表されていましたが、 金次郎の会社も仮にテレワークとなった場合、 家で読書をせずに職務専念義務を全うできるか、なかなか悩ましい問題なのでそんな事態にならぬことを心から祈っております。

推薦図書紹介本にあった「HHhH プラハ・1942年」(ローラン・ビネ著 東京創元社) は観ての通り意味不明なタイトルがあまりにも不親切で、 読者に手に取ってもらおうという媚が全く無い潔さに先ずは面食らいます。

このタイトルは、Diy(do it yourself:自分でやる)やNimby(not in my back yard:我が家の裏では遠慮します)のような略語で、 HHhH(Himmlers Hirn heißt Heydrich:ヒムラーの頭脳はハイドリッヒと呼ばれる)という意味になるそうですが、GGDD(言語道断)、MKS(負ける気がしない)といったDAI語を聞いた時のあのイラっとする感じが少しだけ蘇りますw

さて本書はフランス文学かつナチスものという高いハードルだったので、最初からかなり守りに入って読み始めたのですが、極めて入念な調査に支えられた強固なストーリーの枠組み、時空を自由に行き来する表現の自在性、シャープな章立てによるテンポの良さ、ルポでもノンフィクションでも小説でもない新感覚の読み応え、に引き込まれ、それなりに長い本ですが一気に読了してしまいました。

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新たな天皇誕生日に古代史関連本を読む

最近ニュースはコロナ一色で面白いネタもあまり無く、録画をためていたドラマ〈相棒〉を見ていたら、途中の番宣CMで東出くんが元気に演技している姿を何度も見るハメになり、 せっかく今年から新たに祝日となった天皇誕生日というのに、何となく冴えない感じです。

非常にこじつけ的になってしまいますがw、皇室つながりということで、古代関連の本で2月になって読んだ本を紹介します。

日本史で勉強した〈白村江の戦い〉は663年に倭国・百済連合軍が唐・新羅連合軍に大敗した、古代史における重要なイベントですが、何分この辺りの歴史は資料も乏しく、残っている資料も恣意的に書き換えられているものが多いため、 この戦いの背景や帰結については様々な解釈の余地があり、小説の題材にするのになかなか適していると言えます。

ちょっと前の時代を含めた主要キャストとしては、 蘇我入鹿、中大兄皇子=葛城皇子、中臣鎌子(鎌足)、皇極(斉明)天皇、 泉蓋蘇文(高句麗)、 金春秋(新羅)、 扶余豊しょう璋、鬼質福信(百済)、などが挙げられますが、 「白村江の戦い」(三田誠広著 河出書房新書)が鎌子を半島系の渡来人として描いている以外はかなりオーソドックスな歴史観に基づいて書かれているのに対し、 「白村江」(荒山徹著 PHP研究所)では、ちょっと新しい歴史解釈がされていて面白い。

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ダイヤモンドプリンセスは呪われているのか?

東京マラソン出走が叶わず悲嘆に暮れている方が、会社の先輩、部活の先輩、海外準エリートランナーの友人などなど周囲に結構おられ、コースも我が家の近くを通るということで、この事態をまずまず身近に感じております。

本件を確実にネガティブな方向に勧めたのが、いまや世界中で知らぬ者はいないほど有名になり、ローランドに言わせれば、ダイヤモンドプリンセスでの感染者数か、それ以外か、ぐらいのインパクトになってしまっている豪華クルーズ客船での感染爆発ですが、 あれは昔火災で燃えた呪われた船だ!と言っている同僚が数人いたため調べてみると、 確かに2002年のドック火災で大炎上したのはダイヤモンドプリンセス!

ただ、現在横浜沖に停泊しているダイヤモンドプリンセスは同火災事典ではサファイヤプリンセスとして建造されていたものを急遽代船として名前を変えてデリバリーされたもので、燃えてしまったダイヤモンドプリンセスと不幸にも感染者が多数出てしまったダイイヤモンドプリンセスは物理的には別の船ということでした。

しかし、船そのものは呪われてはいなかったものの、ダイヤモンドプリンセスという名前がとても縁起が悪いということは言えてしまうような気がします。

上に書いた海外準エリートランナーの友人はこのレースを一つの節目にするとの意気込みで、 本番に向けてかなりトレーニングを積んできており、なんとか納得行く結果を出させてあげたかったですし、夫婦で応援も頑張ろうと思っていたので非常に残念です。

あまり関係無いような気もしますが、彼が気を取り直して次のレースで快走してくれることを期待して、私が推めた本で彼が気に入ったものをを紹介します。

その本は「シークレット・レース」(タイラー・ハミルトン/ダニエル・コイル著 小学館)という自転車レースに関するノンフィクションで、 ツールドフランス7連覇のランス・アームストロングがドーピングに手を染めたとされる事件の内幕が暴露されています。

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遂に「ライオンのおやつ」(小川糸著 ポプラ社)を読みました!

加齢のせいなのである程度は仕方が無いものの、 やはり、覚えられない、思い出せない、もどかしい思いをすることが最近増えていてちょっと残念な気分になります。

この2週間ぐらいの間にも、 三越のパン屋さん→ジョアン、 大好きなチョコレート→サティーとステットラー、 アニメ「七つの大罪」の人形のキャラ→ゴーセル、 など思い出せずに妻に聞いてしまうケース多数で老いを感じます。

あと、このところニュースでよく目にする単語でどうしても覚えられないのが、ブデチゲ?ブスジャッジ?ブチシャジ?、そう、米大統領選挙の民主党予備選に立候補しているあの秀才の名前は、濁点と小さい文字が多すぎて本当に覚えられません。 すぐに消えてしまうかもしれないよその国の候補者の名前を覚えるより、使える英単語とかフレームワークの一つでも覚えた方がいいかな、と思いつつどうしても気になって調べてしまいました。

彼のフルネームは、Peter Buttigieg、マルタからの移民の血筋ということですがどうしたらそういう字の並びになるのかという分かりづらさ。ローマ字的に読むとブッティジェジだと思うのですが、新聞などではブティジェッジと記載されていますね。まだスペルを調べていない人に差をつけるべく、明日から最初のッを意識してブッティジェジとイケてる発音したいと思います。

今週末は、楽しみにしていた新井賞作品の「ライオンのおやつ」(小川糸著 ポプラ社)をついに読みました。

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シェエラザードとシンガポール

先週久々に大学のゼミの友人と会って食事をしたのですが、 学生時代の記憶はカラオケとボーリングと飲み会とテキスト丸写しのプレゼン、 足元の興味は80歳まで続く借金返済と税金対策とサラリーマンシップということで、 高尚な経済学とか国際金融とかの話題は一切出ず、 ゼミの先生には本当に申し訳ない不真面目さだったという認識を共有して肩を叩き合う、大充実のひとときでした。

そんな楽しい会話の中、銀行員の友人が、ちょっと体調の悪いマーライオンぐらいの勢いで唾を飛ばしながら浅田次郎先生を推奨していたので、とりあえず「シェエラザード」(講談社 上巻 / 下巻)を読んでみました。

太平洋戦争最終盤に連合軍捕虜向けの物資輸送を委託され、攻撃を受けない安導権を付与されていた、世界有数の美しさと航行性能を誇る徴用豪華客船の阿波丸が疑惑の〈誤爆〉により撃沈された実際の悲劇をモチーフに、月並みですが戦争によって〈普通の人びと〉の人生がなす術無く翻弄されてしまったことへの悲しみ、〈運命〉を引き受けて生きて行くことの重み、等が描かれる内容です。

命の危険に晒されながら、一縷の希望を繋ぐために物語を紡ぎ続けた千一夜物語の王妃シェヘラザードと、絶望的な戦況においても明日へ続くポジティブな希望を求め続けた当時の人々の思いが重なります。文中に出てくるので、リムスキー・コルサコフの交響組曲「シェエラザード」も聴いてみると更に雰囲気盛り上がりますね。

金次郎がかつて駐在していたシンガポールが重要な舞台となっていて、クラークキー、ブキティマ、そしてラッフルズホテル等の懐かしい風景が思い出され望郷の念をかきたてられました。

望郷心が高まったところで、これまで読んだものの中でシンガポールが登場する小説を思いつくまま紹介します。

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25年前の恥ずかしい書類を発見!+2019年6~7月振り返り

オフィス引っ越しを前に、会社の机の中を片付けていたところ、どういうわけか25年前の就活時に会社に提出した書類(今で言うエントリーシート)のコピーが発掘されました。 恐る恐る完全に忘れてしまっているその中身を見ると、予想通り非常にマズい内容のオンパレード。こんな内容でよく内定もらえたものだと当時の人事担当の方の度量に感謝でした。

ちなみに不適切ポイントとしては、①写真が斜めに貼ってある、②学生時代の活動で印象に残っている点を記載する欄に、やたら感傷的に部活の大会の打ち上げでやったビールかけの思い出が綴られている、③「まぁ、・・・」等の不適当な口語表現が散見される、といったかなり不真面目なもの(汗)。

「日焼けした肌にビールがしみる痛みの思い出は、何かを思い切りやり切って得られた達成感の原体験として、私のモチベーションの源泉となっています。」なんのこっちゃ!ご迷惑をお掛けした会社の先輩方、金次郎に偉そうにされた後輩の皆さん、本当にすみません。

さて、金次郎の恥ずかしい話はこの辺にして、最近読んだ怖い本の感想と昨年6~7月の振り返りを。

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田中角栄と戦後政治を学び直す

先週は後半に出張が入り、時間が取れなかったためブログの更新が滞ってしまったのですが、とにかく空港でも機内でも異様なマスク着用率で、一瞬のスキならぬセキも許されないような雰囲気の中、 どうにか無事に帰国いたしました。今のところ全くの健康体ですが、まだ潜伏期間が10日以上残っているのでしばらく気持ち悪い日々が続きます。ちなみに渡航地は中国ではありませんのでご安心ください。

さて、最近故田中角栄元首相の名前がふとした会話でよく出てきたり、 難問山積の政治状況で角栄的リーダーシップが待望される、といった論調を耳にしたりと、再評価とは言わないまでも、その人となりや政治信条に改めて光が当たっているように感じます。

ところが、小さい頃の記憶を遡ってみると、 一番古い政治に関する記憶は 現役であった大平首相(当時)の死であり、 自分は三角大福時代を全く経験していないことを今さらながら認識し、 政治オンチもそろそろ卒業したいと思っていたこともあり、とりあえず何冊か本を読んで勉強してみることにしました。とんだ深みにはまるとも知らず。。。

先ず読んでみたのが、「異形の将軍:田中角栄の生涯」(津本陽著 幻冬舎 上巻 / 下巻)です。 この本は伝記的な内容で、高等小学校卒という学歴とは全く関係無い明晰な頭脳、裸一貫から成りあがる金儲けのセンス、ずば抜けた行動力と政治的決断力、情にもろく人間関係で非情になれない性格など、人間田中角栄を知る上ではとても参考になり、導入としてはなかなか良いチョイスだったと思います。コンピューター付きブルドーザーという仇名、選挙での票読みの正確さ、娘真紀子の溺愛ぶりなどが印象に残りました。

ただ、この本を読んだだけでは戦後政治の全体像が今ひとつ掴めず、大作で読み通すのに時間がかかるとやや躊躇はしたものの意を決して「小説吉田学校」(戸川猪佐武著 角川文庫 全八部)を読むことにしました。

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「わたしの名は紅」(オルハン・パムク著 藤原書店)

この週末は未読だった本屋大賞ノミネート作を2冊読み、驚いて笑って泣いて大変でしたw。 近いうちに感想を書こうと思いますが、ネタばれ無し主義者としては、特にミステリーは 面白ければ面白いほど書けることが減る構造になってしまうのでジレンマですね。

さて、「わたしの名は紅」(オルハン・パムク著 藤原書房)は、トルコのノーベル文学賞作家の手によるオスマン帝国時代を描いた歴史ミステリー小説ということで、好みのテーマが詰まっていると思い読み始めたものの、情報量が非常に多く消化しながら読み進めるのがなかなか手間取る作品でした。

ただ、世界的大ベストセラーとなったこちらも歴史ミステリーである「薔薇の名前」(ウンベルト・エーコ著 東京創元社 巻・下巻のイスラム版と言えるほど当時の宗教観、つまりは世界観や社会規範の描写が詳しく、知的好奇心を刺激される内容で、もう少し教養を深めた上で改めて挑戦しようと思わされる一冊でした。ミステリー比率が低いので、それなりに書くことが有ったのは助かりましたw。

物語の舞台となる1591年はムラト3世の治世で、チャルドランの戦いでサファビー朝を後退させ、エジプトのマムルーク朝を滅ぼしたセリム1世、第一次ウィーン包囲、ロードス島攻略で名高いスレイマン1世の黄金時代を経て、オスマン帝国の繁栄にやや影の差し始めている時期であり、体制締め付けのために、元々宗教的には寛容であった帝国がイスラム国家としての性格を強めているのが特徴的です。

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金次郎、本の紹介を頼まれる+2019年4~5月ふりかえり

先日、嬉しいことに金次郎が散髪しているヘアサロンの美容師さんが別のお客さんに金次郎おすすめ本を紹介してくれたところ、その方がそれらの本を気に入ってくれたようで、新たな紹介の依頼があったそうなのです!ありがたいことに、金次郎を読書の師匠と呼んでくれているとのことで、 初めての弟子(会ったことないけどw)への本ソムリエ活動に気合が入りました。

ただ・・・、なんと!その一番弟子は未来への希望溢れる小学生の文学少女だそうで、既に人生引き算ステージに入っている中年の金次郎とは 読書の趣味がエリザベス女王とメーガンさんほどかけ離れていると懸念されることから、洗髪中に大いに悩んで、炭酸泉を浴びながら以下をチョイスしました。気に入ってくれるかどうかドキドキです。

【金次郎から文学少女Aへのおすすめ作品5選】

「線は、僕を描く」(砥上裕将著 講談社)

説明不要のいま売れている作品です。プロットも分かり易く、世代関係無く楽しめると思い選択。頼りない男子が好きならはまるかも?

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本屋大賞2020ノミネート作品発表!

いよいよ本屋大賞のノミネート10作品が発表となりました!既読のものも未読のものもありますが、いずれ劣らぬ話題作揃いで4月7日の大賞発表が待ち遠しいところです。

さて、先日このブログでも書きました友人Mとの順位当て対決ですが、ルールは簡単で以下の通りです。

・それぞれがノミネート全作品を読み、1~10位の順位予想を4月3日までに提出する

・4月7日に発表される各作品の順位(N)とそれぞれが付けた順位の差を計算し、その差の絶対値に(11-N)を掛ける

(例)「作品A」を金次郎が7位、Mが3位と予想し、結果が1位だった場合

【金】:(7-1)×(11-1)=60

【M】:(3-1)×(11-1)=20

・上記の計算を10作品全てに実行し、その総和が少ない方が勝利!黄金の栞、をget!

お分かりの通り、上位にランクインした作品で順位の乖離が大きいとダメージ大きくなりますので、書店員さんになったつもりで、1位は外さない気概で予想したいと思います。ちなみに昨年は二人とも1位的中でした。

以下ノミネート作品と一言コメントです。

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「大人は泣かないと思っていた」(寺地はるな著 集英社)、いえ結構泣きますよ(笑)

タイトルを見てどうしても読まずにいられなくなったこの本。「大人は泣かないと思っていた」(寺地はるな著 集英社)は、閉鎖的な九州の田舎町で慣習や古い価値観などの旧弊、狭い町での濃厚な人間関係にがんじがらめにされながら生きざるを得ない登場人物たちが、じわじわとした下り坂の、特段の希望を見出せない日常の中で、‘泣かないはずの大人が泣く’瞬間をターニングポイントとして、少しだけ前に進む、というなかなかの感動作品です。

涙を見せない、ということそのものよりも、 大人が泣くことすら許されないほどの閉塞感、あるいはそれに象徴される自分の中で固まってしまっている拘り、を表現しているのは分かりつつも、 小説を読んだり、ドラマやアニメを見たりして 割と簡単に泣いてしまう金次郎にとって、 若干その自分で引いてしまっている越えてはいけない一線のイメージがわきづらかったのも事実ではあります(笑)。 出張に行く機中で「神様のカルテ」(夏川草介著 小学館)読んで号泣してしまい、全く涙が止まらずに往生したのを思い出しました。

さて、これまでどんな小説で泣いたかな、とリストを見直して見つけたのが以下です。

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芥川賞・直木賞・新井賞発表!

本日1月15日に第162回芥川賞・直木賞、そして書店員新井さんによる第11回新井賞が発表となりました。いずれも未読で悔しいのですが、以下が受賞作です。

【芥川賞】

「背高泡立草」(古川真人著 集英社)

【直樹賞】

「熱源」(川越宗一著 文芸春秋)

【新井賞】

「ライオンのおやつ」(小川糸著 ポプラ社) 

「熱源」はアイヌの人々が出てくる話のようで、最近読んだ「凍てつく太陽」(葉真中顕著 幻冬舎)や、「日本奥地紀行」(イザベラ・バード著 平凡社)でもアイヌ文化に触れる機会有り興味深かったので、これは直ぐに読まねばと思います。

【参考:「凍てつく太陽」】

社会派ミステリー作家である葉真中顕先生による北海道を舞台にした作品で、 戦時中の三国人差別問題、特高警察と軍部憲兵の対立構造等の 重いテーマを丁寧な調査に基づき社会派小説に仕上げた労作です。 アイヌの血を引く若者を主人公に据えることで、それぞれの魂が持つ使命のレベルで 思考することにfocusし、イデオロギー は都度着替えて良い衣服のようなものだと主張させるあたりかなり唸らせられました。どんでん返し有り伏線の回収も見事で秀逸なミステリーとして満足度高いです。

【参考:「日本奥地紀行」】

英国の女性探検家が明治初期に訪れた東北地方の農村や蝦夷地に暮らす人々の生活を描いた紀行文です。脊椎に持病を抱えながら、悪路を馬に乗って進む過酷な旅を3か月も続けた著者の冒険心や好奇心は驚異的です。また当時の西洋人としては極めて偏見を排した視点で日本人及び蝦夷地先住民について描写している姿勢が何より価値が高いと思います。日本人はとにかく子供をかわいがる(=英国人はもっと子供に厳しい)、日本人は馬などの家畜を物として扱う、飲酒に対する考え方の違い、等興味深い東西の比較が随所に見られて非常に面白い。とりわけ歴史的にも貴重とされるアイヌの人々についての記載は知らないことだらけで知的好奇心が充たされます。

前置きが異常に長くなってしまいましたが、書きたかったのは第161回芥川賞の今村夏子先生の作品についてです。

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2019年振り返り(2~3月)

読書の話をしていると、どうやって次に読む本を選んでいるか、と尋ねられることが結構多いです。これといって定まったやり方があるわけではなく、いつも少し返答に窮するのですが、強いて言うなら①その時興味を持っている分野について、キーワード検索してみてヒットした本を適当に読む、②面白かった本の最後に書いてある参考文献を読む、③推薦書まとめ本を読んで参考にする、④王様のブランチbookコーナーを見る、⑤いま売れている本を読む、⑥会社の同僚や友人との会話の中で短期間に複数回話題に上ったテーマについて何冊か集中して読む、という感じでしょうか。また、なんとなくでも傾向を把握するために、テーマや作家毎に複数冊まとめて読むことが多いです。

あとは、「ローマ人の物語」(塩野七生著 新潮社、全15巻)、「興亡の世界史」(講談社、全21巻)、「徳川家康」(山岡荘八著 講談社、全26巻)等のように長く楽しめる面白いシリーズものを狙って読んでみるのも効率的です。上記⑥とも関係しますが、最近田中角栄元総理について会話する機会が多く、ちょっと関連書籍を読んでいて、今はまっているのが「小説吉田学校」(戸川猪佐武著 学陽書房、全8巻)です。感想またどこかで書きますね。

さて、そんな感じで去年の2~3月に選んで読んだ本の中で印象に残っているものをいくつか紹介します。

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