今週2月3日(月)に本屋大賞2025のノミネート10作品が発表となりました。金次郎はそのうち8作品を既に読了しており、どれもがいずれ劣らぬ秀作との印象にてあまり驚きは有りませんでしたが、昨年の順位予想対決で苦杯を嘗める原因となった「成瀬は天下を取りにいく」の続編が候補作入りしており、過去の恨みという感情論を排して冷静に今年の予想に臨めるのか自分自身に問いかけているところです(笑)。と言うことで、4月9日(水)の大賞発表に向け、毎年恒例となっている宿敵Mとの予想対決を今年もやりますので、4月5日(土)頃の投稿をお待ちいただければと思います。さて、以下ノミネート作品の簡単な紹介です!
【本屋大賞2025ノミネート作品】
◆「アルプス席の母」(早見和真著 小学館):既読。甲子園を目指す高校球児たちを取り巻く世界を、球児の母親の視点で描いたかなりノンフィクションに近い異色候補です。候補作は五十音順に並んでいるのでたまたまリストの最初に記載されているだけなのですが、候補作発表のニュースを見た際にいきなりこれかと驚きを禁じ得ませんでした。早見作品で思い出されるのは、能天気な店長の緩さに癒され上位に推して見事に外し2019予想対決の敗因となった「店長がバカすぎて」が思い出され、「成瀬~」に加えこちらも金次郎の精神面での成長が試される難しい予想になりそうです。
◆「カフネ」(阿部暁子著 講談社):未読。大変申し訳無いのですが、阿部暁子先生はこれまで全く見たことも聞いたことも無く、前回の「レーエンデ国物語」の多崎礼先生や前々回の「ラブカは静かに弓を持つ」の安壇美緒先生のように毎度ねじ込まれるダークホース的な存在との位置づけです。しかし、有名売れ筋作品だけが候補作入りするのは商業主義が過ぎるのではとの批判を受けがちな本屋大賞ではありますが、示し合わせるわけでもない自由投票で必ずこういった作品が推されてくるのもまた事実で、世に出るべき作品や作家に光を当てようとする書店員の矜持を感じます。
◆「禁忌の子」(山口未桜著 東京創元社):既読。そういう意味では本作もダークホース的な位置づけになるのだろうとは思いますが、比較的上位に入りがちなジャンルであるサスペンス小説である点、衝撃のラストとその余韻としての読後感への評価が分かれるであろう点を考慮すると予想の難易度は極めて高いと言わざるを得ません。
◆「恋とか愛とかやさしさなら」(一穂ミチ著 小学館):既読。候補作入りすれば安定的に上位に入る、本屋大賞では滅法強い一穂先生ですが未だ大賞には手が届いておらず、満を持して頂点を目指す気概が感じられる作品です。初読時には大変効果的と感じた第二部の存在がやはり印象通りなのか、はたまた読者を混乱させる蛇足に過ぎなかったのか、じっくりと読み返して吟味したいと思います。
◆「小説」(野崎まど著 講談社):既読。虚構である小説というものの存在意義や本質に切り込んだ意欲作で、文学的に見てその内容は充分高い評価に値するものだと思います。ただ、それだけでは結果が量れないのが本屋大賞の難しいところで、ややファンタジーに寄り気味の不思議な世界観をどう捉えそれをどのように順位予想に反映すべきか今から頭が痛いです。
◆「死んだ山田と教室」(金子玲介著 講談社):既読。本作は通常必ず上位に食い込む王様のブランチBOOK大賞作品であり、嫌いでない青春小説ということもあり、ついつい無条件で上位に推してしまいそうになりますが、昨年のBOOK大賞作「黄色い家」が下位に沈んだ想定外の結果が金次郎の心を揺さぶりまくっています(笑)。金子先生は金次郎の友人Aさんのご子息の学校の先輩なのだそうで、この辺りのシンパシーが予想にどう影響してくるのか、もう自分で自分が分かりません(笑)。
◆「spring」(恩田陸著 筑摩書房):既読。バレエという深淵な世界に挑戦しようという意欲、美しく繊細な描写、そして何よりアートを文章で表現するという難しいテーマに果敢に挑戦し常に高みを目指し続ける恩田先生の姿勢に感銘を受けました。精読の際は、このバレエという題材がどこまで一般うけするのか、あるいは一般うけすると書店員が思うか否かに注目しながら読み進めたいと思います。
◆「生殖記」(朝井リョウ著 小学館):既読。本屋大賞2022では「正欲」で見事上位進出を果たした朝井先生ですが、ややタイトルでのギャップインパクトを狙ったコンセプトの被り感が厳しい書店員にどう見られるのかが注目される作品です。金次郎としては、朝井先生ならではの時代をえぐる鋭敏さと、二番煎じとの印象による埋没感のバランスをどちらに傾けるかを意識しながら再読してみたいところです。
◆「成瀬は信じた道をいく」(宮島未奈著 新潮社):既読。成瀬はいつまでもどこまでも成瀬なわけですが、彼女の成長力が続編はオリジナルを越えられないというジンクスを打ち破るほどのものであったのか、去年のしてやられた感を引きずったままではその繊細な評価はできそうにありません(汗)。
◆「人魚が逃げた」(青山美智子著 PHP研究所):未読。本屋大賞2021の「お探し物は図書室まで」で鮮烈な本屋大賞レースのデビューを飾った青山先生ですが、今年で5年連続候補作入りの快挙とはいえ、成績は2位→2位→6位→7位とやや〈町田カーブ〉を描いており不穏です。未読なので何とも言えませんが、金次郎の読後評価よりも実際の順位が高く出る傾向に有る青山作品を正しく順位予想できるかが今回の勝敗の一つのポイントにはなるだろうと思っています。
今回は、「小鳥とリムジン」(小川糸著 ポプラ社)、「イグアナの花園」(上畠菜緒著 集英社)、そして上位進出を勝手に予想していた「地雷グリコ」(青崎有吾著 KADOKAWA)が選外となっており奥が深いと感じると同時に、予想が外れる悪い流れになっているのではとの不安を禁じ得ない今日この頃です。
さて最後に簡単に。「まず良識をみじん切りにします」(浅倉秋成著 光文社)は浅倉先生が〈伏線の狙撃手〉を一旦封印し、これまでに無い感覚をずらされるような変な小説を書くことで才能の幅を証明した短編集となっています。金次郎は、集団心理とそれに抗おうとする主婦の葛藤を描いた「行列のできるクロワッサン」、ちょっとした気持ちのすれ違いがとんでもない事態を意図せず引き起こす怖さを野球をテーマに表現した「ファーストが裏切った」、意思決定の難しさを子供の命名という軽んじにくい状況をモチーフに活写した「完全なる命名」が好みでした。
予想対決の相手である宿敵Mは週末にめでたく結婚披露宴をされました。末永くお幸せに!そして、そんな幸せに加え予想対決での勝利まで求めるのはちょっとディマンディングではないでしょうかと申し上げたいところです(笑)。
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