海外文学について外国人と語るのは難しい

外国人と読書の話をしていてとても困ることは、「どんな本読んだの?」と聞かれて、海外有名文学作品のタイトルが直ぐに英語で浮かばないことです。映画のタイトルもそうですが、結構意訳されていることが多く、直訳して伝わらないと、内容を英語で説明するはめになり、これにはかなり手こずらされます。

前回のブログで書いた(→引きこもりのGWに「風と共に去りぬ」を読了)「風と共に去りぬ」は「Gone with the wind」なので比較的知らなくても行けそうですが、間違って「Left with wind」みたいになるとなんとなく〈風の左翼〉みたいになって意味不明となってしまうリスク有ります。

ちょうど読了して近日中に感想を上げる予定の「すばらしい新世界」(オルダス・ハクスレー著 講談社)はSFの超名作なのですが、「Wonderful new world」ではなく「Brave new world」ですし、チャールズ・ディケンズの「大いなる遺産」も「Great inheritance」ではなく「Great expectations」で、エミリー・ブロンテの「嵐が丘」に至ってはもはや訳もできませんが「Wuthering heights」が正式タイトルです(苦笑)。

原題はロシア語ですがドストエフスキーの後期五大長編のうち「Crime and punishment」は分かりますが、「白痴」は「The idiot」、「悪霊」は「Demons」と微妙に会話中には直訳で正解に辿り着けなさそうなタイトルが続きます。

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引きこもりのGWに「風と共に去りぬ」を読了

唐突ですみません。先日大阪府が提示した休業要請解除の基準の中に「陽性率7%以下」が一週間継続、というのを見たのですが、この数字は何かの役に立つものなのかとちょっと疑問に思いました。

この数字が意味する、かかりつけ医などの診察の結果検査が必要と判断された人や、明らかに濃厚接触していて感染が疑われた人のうち、どのくらいの割合の陽性者がいたか、というのは、つまりは「コロったかも?(by自分)」、「あなたコロってるかもしれませんよ。(byかかりつけ医)」の見立てがたまたま正しかった割合を表しているだけで、この数字が下がるというのは1.単純にPCR検査基準を緩めた(=上記見立てをもっと適当にした)、2.コロナに似た症状のかぜ患者が増えた、ことが示されているに過ぎず、コロナウイルス感染の広がり具合とか深刻さとかを代表している数字とは思えません。

「陽性率」を指標とするなら、無差別抽出した人にPCR検査をして、そのうちどの程度がウイルス保持者か、の比率を追いかける方が実際的と思うのですが如何でしょうか?

さて、水曜日でGWの5連休は終わってしまったのですが、この「妻と共に籠りぬ」だったお休みはひたすら「風と共に去りぬ(Gone with the wind)」(マーガレット・ミッチェル著 新潮社 全5巻)を読みふけっておりました。ダジャレですみません(苦笑)。

アカデミー賞受賞作の映画も見たことがなく、合計2000ページ超という大長編であることにも尻込み気味だったのですが、とにかくこれまで読んだ多くの本の中にヒロインであるスカーレット・オハラの人となりや物語の内容がたびたび登場するので、この本を経験しておかないと今後の読書が深まらないという問題意識の下、今回覚悟を決めて挑戦してみたところ、このところ興味を持っていたアメリカ史の最重要イベントの一つに数えられる南北戦争時代の社会がしっかりと描かれており、スカーレットの過激な性格には面食らいましたが、文学作品としては勿論のこと、歴史小説としても想像以上に興味を惹かれる内容で時間的には結構かかったものの気分的にはあっという間に読了した感覚です。

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〈軟禁生活〉を軽やかにやり過ごす「モスクワの伯爵」に感銘を受ける

以前このブログで紹介しました趣味がマラソンの友人はシンガポール在住で、「人権より検疫」、「自粛しないと粛清」のお国柄の下、軟禁生活にストレスを溜めている模様です。(関連はこちら→ダイヤモンドプリンセスは呪われているのか?

日本もそこまでは厳しくないものの、それなりに不自由を強いられ、やりたいことが存分にできない環境ですので、ある意味軟禁に近い状態とも言えると思います。

そこで、世界中でマラソンレースも中止となっていて活躍の場が無く可哀そうなランナー友人(しかもありがたくもご夫婦でこのブログを読んでくれている)にエールを送る意味も込め、フィクションではあるものの、気の遠くなるような〈軟禁生活〉を大らかに、明るく、そして前向きに過ごした元ロシア貴族を描いた小説をご紹介します。

「モスクワの伯爵」(エイモア・トールズ著 早川書房)では、貴族の身分で名門ホテルであるメトロポールの最高級スイートの宿泊客であったアレキサンドル・ロストフ伯爵が、革命後に堕落した階級としてそのホテルの屋根裏部屋に押し込められ、32年にわたって軟禁生活を送るストーリーになっています。

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金次郎、懲りずに文学少女に本を紹介+楡周平作品を読む

依然としてアベノマスクが届かない我が家では、SHARPがマスクの製造・販売を始めたことが話題になり、妻が獲得競争に参戦の意を示しましたので、「SHARPのマスクは液晶でできてるらしいよ。」と言ってみたところ、「え?!かっこいい!」と真に受けられ、SHARPマスクが買えてしまう事態を恐れおののく毎日です。あ、これ読まれたらバレますね(笑)。

さて、折角の新中学生だったのに休講となり可哀そうな我が弟子文学少女ABさんに、少しでもヒマつぶしになればとまたもやおすすめの本を紹介させて頂きます。読むペースがとても速いので、紹介できる本のストックが減ってきているのは気になりますが、今回はちょっと多めの7冊です!このところ共にお世話になっているE美容師のところにも行けておらず、金次郎は髪の毛ボサボサの金田一的な感じになりつつあります。。。

(これまでの紹介記事はこちら)

金次郎、本の紹介を頼まれてないけどまた紹介+直木賞作「熱源」を読了!

金次郎、本の紹介を頼まれる+2019年4~5月振り返り

【文学少女ABさんへのおすすめ本7選】

「しゃべれどもしゃべれども」(佐藤多佳子著 新潮社)

感動作品の大家である佐藤先生による、不器用・頑固・意地っぱりと、どうにもこじらせて上手く行かなさそうな登場人物たちの何とも言えないハーモニーがぐっと来る名作です。ABさんもこれから色々悩むことも有ると思いますが、そういう時に思い出して手に取って読み返して欲しい作品です。

「夏の庭 The friends」(湯本香樹実著 徳間書店)

感動小説ランキングに常に入る名作なので既読かもしれませんが、大人が読んでも考えさせられる少年たちの成長物語です。〈身近な人の死〉に接し、それを受け入れて、なんとか消化し乗り越えて行く過程で変わってゆく少年たちの姿を通して、おぼろげにでも人生の意義について思いを馳せてもらえたら、という余りにもおじさん臭い推薦文ですみません(笑)。

「さよならドビュッシー」(中山七里著 宝島社)

前回紹介した中で「カラスの親指」が一番面白かったという程のミステリー好きで、しかもピアノもやっているということなので、それならこの作品しか無かろう、と自信を持っておすすめします。名探偵かつ名ピアニストである岬洋介シリーズは何冊か出ているので、興味が湧けばそれらも読まれるといいですね。

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アメリカで500万部売れた「ザリガニの鳴くところ」を読む

コロナで家にこもる毎日が続いており、さぞやオンライン英会話のニーズが増えて懐が潤っているだろうと思い、授業中に先生に聞いてみたところ、「私もそう思っていたんだけど、生徒以上に先生が増えてるみたいで授業の予約が減っている。」と言われてしまい、なるほど&悲しい気持ちになりました。

同じくコロナも影響して昨晩WTI原油価格がマイナス圏に突入し、世界のマーケットを騒然とさせたアメリカですが、駐在経験の有る会社の先輩が、アメリカでは日本にいると想像もできないようなことがたびたび起こる、と言っていたことを改めて思い出しました。恐るべしアメリカ、ということで、取って付けたような感じとなりましたが、本日はアメリカが舞台の小説をご紹介です。

先ずは、会社の同僚に薦められて読んだ「ザリガニの鳴くところ」(ディーリア・オーエンズ著 早川書房)です。

〈ザリガニの鳴くところ〉というのは人が足を踏み入れない原生的な湿地のことをそう呼ぶとのことで、 まさに、1952年から1969年のノースカロライナ州のそんな場所を舞台に、わずか6歳の〈湿地の少女〉カイアが、偏見や差別、そして孤独と必死に折り合いを付けるサバイバルの中で、〈孤高のヒロイン〉へと成長する生き様を描いた、全米500万部のベストセラー小説です。

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「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~後編

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディ・ミカコ著 新潮社)は今とても売れている、と言うか売れ続けているノンフィクション作品ですが、とにかく本書の主役である中学生の息子くんが最高なのです。

アイデンティティの定まらない、東洋系で時には差別の対象にもなりかねないいたいけな中学生が、日本とは比較にならない多種多様な人種や階層、価値観のるつぼであるイギリス社会で、勿論本人なりには悩んでいるのだとは思うものの、我々大人が分別くさく難しい顔で理屈をこねながら、我が身やその言動を縛ると嘆いてみせるしがらみの数々を、 いとも簡単に、屈託無く、素知らぬ様子で軽やかに飛び越えて見せる姿に、 本当に胸のすく思いがする、そして我々が暗いと思い込んでいる世界の未来に希望を持たせてくれる本です。

自分の子供の頃を振り返ると、現代イギリスほどでは無いものの、当時の小中学校には確かに色々なバックグラウンドの子供たちが通っており、勿論そんな背景は気にせず日々の生活を送っていたわけですが、そういう違いに少年金次郎がただの無知だったのに対し、この息子くんはかなり分かっている、分かっているのにひょいと前に進んでいるところが本当にすごいと思います。

著者ミカコさんは金次郎と同じ福岡出身で年代も近いので、なんとなくギャップへの戸惑いというか驚きに共感するところ大ですが、 そのポジティブな驚きが成長する息子くんの姿への〈母ちゃん〉のなんとも言えない眼差しを通じて描かれている本作は、さすが売れているだけのことはある面白さでおすすめです。

そして、前回に引き続き、「興亡の世界史」シリーズ読破記念として、以下11~20巻の感想です。 (00~10巻の感想はこちらです→「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~前編

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「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~前編

緊急事態宣言下の東京で引きこもりの生活が続いておりますが、 おかげさまで今のところ夫婦共々元気に過ごしております。コロナになると嗅覚異常が出るとのことで、二人してやたらと色々なもののニオイを嗅ぎまくるというおかしなことにはなっておりますが(笑)。

2006年にシンガポールから帰国した際、海外での食道楽と運動不足生活がたたり大きく体重を増やしていた金次郎は、妻の友人の推薦すすめで「踏み台昇降運動」(通称フミショー)によるダイエットを始めました。

フミショーは床に置いた踏み台の昇り降りを40分前後繰り返すだけの単調な運動なのですが、これが存外有効で、体重は渡星前のレベルに戻り、その後もフミショーを継続しているおかげで、それなりに不摂生もしてきましたが標準体重を維持できている状況です。

フミショーにはインナーマッスルが刺激できるとか、太腿の筋肉がついて代謝が上がるとか、科学的にも色々と利点は有ると言われているそうなのですが、金次郎が特に気に入っているのは以下のポイントです。

●思い立ったらすぐできる

ダイエットで最も重要なことの一つは継続することで、それがなかなか難しいのが人情というものですが、 フミショーは運動することのハードルが極めて低い、すなわちやりたい時にすぐできる、特別な準備やジムに行く等のプロセスが不要、 ということで継続が容易という特徴が有り優れものです。外が暑かろうが、雨が降っていようが関係無く年中いつでも簡単にできるのもいいですね。

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金次郎と宿敵Mによる本屋大賞2020予想対決、結果発表!

本日14時より待ちに待った本屋大賞2020の発表があり、金次郎もMも仲良く〈イマイち〉として9位に予想した「流浪の月」が大賞に選ばれました(苦笑)。

昨年は揃って大賞を当てたのに今年は大外し、〈この本を全国の読者に届けたい〉という気持ちがかなり足りていなかったと反省するのも何か変なので、まぁいいか。

さて、予想対決の結果ですが、、、

マイナス196点 VS マイナス142点の大差でMの圧勝となりました(涙)。

お互い1位に予想した作品は下位に沈み互角だったものの、 金次郎は「店長が~」と「ノース~」の外れのダメージが大きく、全体に手堅くまとめたMに軍配が上がる結果となりました。「ノース~」を譲位に、「店長が~」はきちんと下位に予想していて当たっています。 悔しいですが、コロナが落ち着いたところで〈金の栞〉を進呈させて頂くこととします。来年は負けません。

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コロナの時代にカミュの「ペスト」とデフォーの「ペストの記憶」を読む

毎日コロナ一色ですが、昔の人は疫病の蔓延にどう対処したのかなと思い、最近売れていると噂の1947年に出版された「ペスト」(アルベール・カミュ著 新潮社)と、1720年出版の「ペストの記憶」(ダニエル・デフォー著 研究社)を読んでみることにしました。

「ペスト」は、仏領アルジェリアのゴラン市を舞台に、 突然ふりかかったペストの災厄の凄まじさと、 その猛威に立ち向かう人々の姿を描いた実存主義小説ですが、 極度な楽観主義、現実を直視しない姿勢、形式主義のお役所が後手後手に回る様子など、 前半に記されている内容はまさに我々がここ数週間で経験した事象であり、 時代も病気も違うので物語中盤から後半にかけて描写される、為す術の無い感染の蔓延が実際に起こるとは思いたくないものの、 何とも不安にさせられます。

アルコール消毒と言いつつ酒を飲んだり、 誰彼構わず抱き着いて病気をうつそうとしたり、 自分だけは大丈夫だから感染しないと思い込んでいる人がいたり、 とこの辺の感じは現在とあまり変わらないですね。

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金次郎と宿敵Mによる本屋大賞2020予想対決!

いよいよ金次郎と宿敵Mとの本屋大賞予想対決の時がやって参りました!今日は余計なことは書かず、それぞれの総評、順位予想と一言コメントを紹介させて頂きます。

4月7日(火)に公式順位が発表される予定となっており、予め合意したルールに従って点数を計算、決着を付けることになります。 (詳細は→本屋大賞2020ノミネート作品発表!)

本を背負って本を読みながら本の山を積み上げる金次郎が勝つのか、老獪な言葉の魔術師Mがその感性の冴えを見せつけるのか、結果が待ち遠しいところです。

金次郎

【総評】

上位6作はすんなり選べたのですが、いずれ劣らぬ秀作揃いでそこからの順位付けに悩みに悩みました。結果、一番心に深く刺さったという基準で大賞は「夏物語」、当てに行く気持ちを少し忘れて、こんな時だから明るくなれる「店長が」を次点に推しました。多くの人に受け入れられるエンタメ作品として「線は、」は外せず第3位です。直木賞でスケールの大きさが売りの「熱源」は逆に壮大過ぎて理解が追い付かないかもと第4位、「ライオン」は素晴らしいが新井賞作は上位に来ないジンクスを信じ勝負に徹して第5位にしました。ミステリーは本屋大賞に弱い実績から「Medium」は泣く泣く第6位とさせて頂いております。

【順位予想】

本屋大賞:「夏物語」(川上未映子著 文藝春秋)

静かな社会現象である非配偶者人工授精を切り口に、生まれてくることを自ら選択できない子供の完全な受動性というある意味究極の理不尽に光を当てた本作は、家族の在り方を世に問う社会派小説であると共に、そもそも不条理な人生に苦悩しつつも立ち向かう覚悟の美しさに気付かせてくれる感動と導きの書でもあります。

第2位:「店長がバカすぎて」(早見和真著 角川春樹事務所)

バカという名の理不尽に振り回され、怒り、悩み、焦り、疲れ果て自分を見失いながらも、仕事に真摯に向き合い続ける苦境の契約社員書店員谷原さんがなんともチャーミングな本作は、同時にノミネート作中随一の笑える作品でもあります。そして、自分の部署には無理だけど、隣の部署にはいて欲しい山本店長は本当にバカで最高です。

第3位:「線は、僕を描く」(砥上裕將著 講談社)

老師に才能を見出される若者の成長を描くという少年漫画プロットの本作が、普通のエンタメ作品と一線を画す高みにあるのは、描かれなかったものと何も描かれていない余白にその本質を見出すという、奥深い水墨画の世界を、その世界に身を置く芸術家である著者の感性で鮮やかに疑似体験させてもらえるからだと思います。

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金次郎、父に電話をする+「興亡の世界史」シリーズ(全21巻 講談社)もいよいよ終盤

昨晩はユリコショックにより、海外赴任する友人の送別会が急遽キャンセルとなり(海外赴任そのものも当面難しそうですが)、在宅勤務終了後、在宅だらだらを楽しみつつ、実家@福岡の父に連絡してみました。

福岡はコロナ患者が11件というまずまずの優秀県ということもあり、幸い父はすこぶる元気そうにしており安心したのですが、逆に「東京は大変なことになっとらんか?あの街に集まっている若者はなんばしよっとか?電車にはどげんして乗りよるとか?」と立て続けに質問&激しく心配され親のありがたみが身に染みると同時に、地方からは東京はそれほどデンジャラスに見えているのだな、と改めて感じました。

SARSが流行した2003年にシンガポールに駐在しておりまして、感覚的にはあの時より危機感は高い気がしており、ネットメディアによる情報過多のせいか、年を取ったせいか、はたまた本当に危険な状態なのか、正直分かりませんが、親に心配かけぬよう感染防止には最大限気を付けたいと思います。 (あの時は、コンラッドホテルで食事した後、車寄せのおじさんに当日の宿泊者数を聞いたところ「5人!」と言われて絶句したことを鮮明に覚えています。)

コロナは勿論大変なのですが、読書が趣味というのはとても都合が良く、外出できないストレスも無く、在宅勤務修了時点で一瞬で趣味の時間に移行できるというのは非常に幸せです。おかげさまで今月は目標の25冊を既にクリアし、28冊目に突入しているというハイペースになっており、今年も300冊が見えてきたぞと密かに喜んでいるところです。

さて、いよいよこのシリーズも終盤に差し掛かってきましたが、ずっと読んでいる「興亡の世界史」(講談社)の紹介です。

#17「大清帝国と中華の混迷」(平野聡著):

万里の長城を越え、異民族でありながら漢人・朱子学・華夷思想が支配した明の後継国家となった清が、朝貢国としてチベット・モンゴルを従え、東アジア国家から内陸アジア国家に転換しつつ版図を拡張していく中で、仏教の保護者、騎馬民族のハン、そして中国皇帝という性格の異なる統治者という矛盾を内包していたこと、 やがて朱子学の引力が満州人の漢人化をもたらし、19世紀後半から再び東アジア国家となって西欧列強と日本を含む帝国主義抗争に巻き込まれたとの流れ、が分かりやすく解説してある本作は、このシリーズの特徴である教科書に無い歴史における視座を与えてくれるという意味で非常に面白いと思います。

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「日本列島回復論 この国で生き続けるために」(井上岳一著)とその関連本を読む

このブログで書いてから少し間があいてしまったので、あれやらないのかな?と思っている読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、〈本屋大賞対決〉、忘れておりません。

先週末に「流浪の月」を読了し、ノミネート10作品全てを読み終えましたので、これから順位予想を悩みに悩もうと思います。対決の相手であるMに確認したところ、「熱源」を残し9冊読み終えたとのことで、我々二人だけの非常に狭い世界でのどうでもいいニッチな争いではありますが、コロナのせいで刺激の少ない日常が続く中、4月7日の発表までこのネタで気分を上げて行こうと思います。

さて、学生時代のの先輩が推奨されていたので「日本列島回復論 この国で生き続けるために」(井上岳一著 新潮社)を読んでみました。

著者が4年の期間を費やして思いのたけを詰め込んだだけのことはあり、平易ながらも非常に理知的な文章で綴られる内容は多岐にわたり、情報の量と幅広さに、 気を抜くと圧倒されて迷子になってしまいそうです。

日本の国土の7割弱を占める森林が人々の生活の基盤であった時代から紐解き、 明治維新後の富国強兵、立身出世の流れの中で山村を中心とする地方の〈労働力源〉化が始まり、 回遊マグロのように安価な労働力を求め続けざるを得ない資本主義の進展と、 石油へのエネルギー転換、貿易自由化があいまってこの傾向が加速し、都市と地方の二極化構造が生まれた経緯を分かりやすく解説してあります。

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金次郎、本の紹介を頼まれてないけどまた紹介+直木賞作「熱源」を読了!

少し前に読書の弟子である文学少女に本を紹介した話を書きましたが、この文学少女とは美容師さんつながりなので、今週髪を切った際に、来週予約入ってますよ、と聞きつけたのをいいことに、姪っ子に嫌われてしまう親戚のうざいおじさん的にはなってしまいますが、勝手におすすめ本を紹介させて頂くこととしました。

少し脱線&解説しますと、このE美容師さんは、金次郎がかつてお世話になっていたチョイ悪だけど意外と繊細なK美容師、孤高の猛スピードカットのY美容師、の後輩にあたるのですが、金次郎の妻、金次郎の元同僚とその奥様(そして多分その娘ちゃん)、も髪を切ってもらっているという、なかなかご縁をつなぐ力のある方でかれこれ10年以上のお付き合いになります。E美容師はKさんともYさんとも違う雰囲気で、外苑前のサロンも落ち着いた感じなので、毎月うかがって癒されています。

さて、今回は散髪中には絞り込めず、このブログでのご連絡となってしまいましたが、これまで読んだ本のリストを見直してさんざん悩んだ結果、以下5冊をおすすめさせて頂くことにしました。いつか何かの拍子に手に取ってもらえると嬉しいですねー。

【金次郎から文学少女A&Bへのおすすめ作品5選】

「風が強く吹いている」(三浦しをん著 新潮社)

箱根駅伝がテーマのこの作品は、細かい問題は全てどうでもよくなる感動の連続で、 仲間、ライバル、逆境、大きな舞台、登場人物の肉体と精神両面での成長、とカタルシス要素がこれでもかと詰まっていて鉄板です。

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ある週末の金次郎読書日記、締めくくりは門井慶喜作品

ニュースはコロナ一色ですし、全体的に自粛ムードで周囲に面白いことも起こらず、取り立てて書くことが無いので、よく聞かれる、どうやってそんなにたくさん本を読んでいるの?という問いに答えるべく、この週末の読書生活を一挙公開!

●3月6日(金)

夕方まで在宅勤務をした後、妻と食材を買いに出かけ、夕食後から前日読み始めた「監禁面接」(ピエール・ルメートル著 文芸春秋)の続きを読むことに。全体464ページのうち200ページ程度まで読んだところで、どうしても睡魔に負けて就寝。本当はあと100ページ程度は読み進めておきたかったところ。

●3月7日(土)

年齢のわりにさほど早起きもできず、朝の8時ぐらいから「監禁面接」の続きを読み、午前中になんとか読了。

最初のうちは、失業中年がどんどん追い込まれ、我を忘れて暴走するだけの痛いお話で、ちょっと過激な「終わった人」(内館牧子著 講談社)ぐらいの話かと思っていたら、 そこはあのカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作で世の中を震撼させた著者だけあって、暴走は暴走でもがらりと違った展開となり、驚きつつ途中から読むペースがどんどん上がる感じになります。前述シリーズの「その女アレックス」(文芸春秋)での鮮やかな場面転換の妙を思い出しました。ちなみにヴェルーヴェン三部作の順番は「悲しみのイレーヌ」からオーソドックスに読むと心が折れるリスク有るので、やはり「アレックス」から「イレーヌ」と読んで、「傷だらけのカミーユ」で締めくくるのがよろしいかと思います。

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「石油の帝国」とグレタさんとアンチ・グレタさん

せっかく調べてまで覚えたのに(→こちら)、米民主党予備選からピート・ブッティジェッジ氏が撤退とニュースで見て、知性を感じる語り口がやや気になりかけていたところだったので、非常に残念な気分になりました。しかし、あまりにも弱かったですね。まだ38歳とお若いので今後に期待しましょう。

気を取り直して読み方の微妙な海外の方をもう一人。環境活動家として非常に注目を集めているグレタ・トゥンベリさんは有名ですが、 最近アンチグレタを標榜して急激に知名度を上げているオルタナ右翼ドイツ人女子がいるとの情報を聞き調べてみると、その名はNaomi Seibtさん(19)。

ファーストネームのナオミは問題無いとして、ファミリーネームはちょっと読みづらいですね。この方ドイツ人とのことでドイツ語的に正しく読むと〈ザイブト〉になるようで、ナオミ・ザイブトさんということになります。当面消えないことを願ってこちらを覚えることにしました。

このナオミ・ザイブトさんは自称climate realistだそうで、温室効果ガス排出による地球温暖化というロジックを〈馬鹿げた話〉と一刀両断し、再生エネ駆動ヨットで大西洋を東奔西走するグレタさんと完全に対立ポジションを取っています。気になったのでこれも調べてみて分かった、Naomiという名前のヘブライ語の意味であるpleasantnessとかsweetnessとかからイメージされる可愛らしさとは無縁の感じですね。

これまたいつものこじつけで恐縮ですが、漸く読了した「石油の帝国 エクソンモービルとアメリカのスーパーパワー」(スティーブ・コール著 ダイヤモンド社)は エクソン・ヴァルディーズ号の石油流出事故に始まり、レイモンドCEOによるモービル買収(810億ドル)、後を引き継いだティラーソンCEOによるXTO買収(410億ドル)の顛末や、ナイジェリア、チャド、インドネシア、赤道ギニア等政情不安定地域での生産活動に伴う時には反政府勢力、あるいは反政府勢力より厄介な政府との交渉を含む様々な問題、 ロシアやベネズエラ、サウジアラビアといった巨大埋蔵量を抱える独裁国家 との苛烈な交渉から、 徐々に重要性を増してきた気候変動問題への対応まで、非常に多様なテーマについてのこれまで秘されて明るみに出なかった事実を惜しげもなくさらけ出す大変素晴らしいノンフィクション作品です。

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辻村深月先生、勝手にお誕生日おめでとうございます!

本日やや偏頭痛がしてコロナウイルスが脳に到達したか?!と非科学的な妄想に捉えられそうになりましたが、一日安静にしていたらだいぶ調子が良くなりひと安心。このブログを書く気力も少し湧いてきました。

万全でないわりにちょっと話がややこしくなってしまうのですが、先日このブログで書きました文学少女(春から中学生!)への次なる紹介本を選ぶ枠組みと言うか基準を定めるために、 中学生向けの本のことならこれ以上の適任はいないと思い、 読書家として有名なかの芦田先生に頼ることにしました。

妻に「ライバルだったんじゃないの?」とあきれられましたが、 向こうの方が収入もきっと多いし、先生が生まれた瞬間から既に負けていた気もするので問題無いと、 大人としてのプライドをあっさり捨て去って「まなの本棚」(芦田愛菜著 小学館)を拝読させていただくことに。

この本自体は、どこまでが計算なのかは計り知れませんが、少し大人びた中学生的な仕上がりになっており、改めて有名子役恐るべしと感服させられる内容です。 古今東西の様々なジャンルの本が紹介されていて偏りが無く、読書そのものが好きなことがよく分かり、この点では非常に共感するところです。

先生はまだ中学生ということもあり(中身は35歳ぐらいかもしれませんがw)、 今のところ続きが気になってページをめくるストーリーフォロー型の読み手のようですが、金次郎の憧れるコンテキスト分析型読み手の素養もお持ちで、再び大人げなく嫉妬の念を禁じ得ません(苦笑)。

金次郎の嫉妬はさておき、この本の中で芦田先生が辻村深月先生の大ファンであり神と崇めていると知り(対談もされています)、そう言えば代表作の一つである「ツナグ」を読めてなかった間に、続編である「ツナグ 思い人の心得」が出たんだったと思い出し、先ずはこの2作を読了。

そこで何気なく目に入った著者紹介に、なんと1980年2月29日生まれ、とあります! 閏年の2月29日生まれの人は誕生日頻度低くて可哀そうだと思っていたのですが、こんなところにいらっしゃるとは!

周囲では見たこと無く、この機会に調べてみると、辻村先生の他には峰竜太さん、飯島直子さん、吉岡聖恵さん(いきものがかり)と誕生日占い的な傾向は見いだせず、強いて言うなら癒し系か?いや違うか?w

まぁとにかく辻村先生、ついでに峰さん・飯島さん・吉岡さん、おめでとうと言うことで既読の作品を何冊か紹介させて頂きます。ようやく読書ブログの趣旨に辿り着きました。だらだら書いてすみません。

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謎のタイトルが気になる「HHhH」(ローラン・ビネ著 東京創元社)

本日、広告大手D社でコロナ感染者が確認され本社は全員テレワークとの対応が発表されていましたが、 金次郎の会社も仮にテレワークとなった場合、 家で読書をせずに職務専念義務を全うできるか、なかなか悩ましい問題なのでそんな事態にならぬことを心から祈っております。

推薦図書紹介本にあった「HHhH プラハ・1942年」(ローラン・ビネ著 東京創元社) は観ての通り意味不明なタイトルがあまりにも不親切で、 読者に手に取ってもらおうという媚が全く無い潔さに先ずは面食らいます。

このタイトルは、Diy(do it yourself:自分でやる)やNimby(not in my back yard:我が家の裏では遠慮します)のような略語で、 HHhH(Himmlers Hirn heißt Heydrich:ヒムラーの頭脳はハイドリッヒと呼ばれる)という意味になるそうですが、GGDD(言語道断)、MKS(負ける気がしない)といったDAI語を聞いた時のあのイラっとする感じが少しだけ蘇りますw

さて本書はフランス文学かつナチスものという高いハードルだったので、最初からかなり守りに入って読み始めたのですが、極めて入念な調査に支えられた強固なストーリーの枠組み、時空を自由に行き来する表現の自在性、シャープな章立てによるテンポの良さ、ルポでもノンフィクションでも小説でもない新感覚の読み応え、に引き込まれ、それなりに長い本ですが一気に読了してしまいました。

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新たな天皇誕生日に古代史関連本を読む

最近ニュースはコロナ一色で面白いネタもあまり無く、録画をためていたドラマ〈相棒〉を見ていたら、途中の番宣CMで東出くんが元気に演技している姿を何度も見るハメになり、 せっかく今年から新たに祝日となった天皇誕生日というのに、何となく冴えない感じです。

非常にこじつけ的になってしまいますがw、皇室つながりということで、古代関連の本で2月になって読んだ本を紹介します。

日本史で勉強した〈白村江の戦い〉は663年に倭国・百済連合軍が唐・新羅連合軍に大敗した、古代史における重要なイベントですが、何分この辺りの歴史は資料も乏しく、残っている資料も恣意的に書き換えられているものが多いため、 この戦いの背景や帰結については様々な解釈の余地があり、小説の題材にするのになかなか適していると言えます。

ちょっと前の時代を含めた主要キャストとしては、 蘇我入鹿、中大兄皇子=葛城皇子、中臣鎌子(鎌足)、皇極(斉明)天皇、 泉蓋蘇文(高句麗)、 金春秋(新羅)、 扶余豊しょう璋、鬼質福信(百済)、などが挙げられますが、 「白村江の戦い」(三田誠広著 河出書房新書)が鎌子を半島系の渡来人として描いている以外はかなりオーソドックスな歴史観に基づいて書かれているのに対し、 「白村江」(荒山徹著 PHP研究所)では、ちょっと新しい歴史解釈がされていて面白い。

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ダイヤモンドプリンセスは呪われているのか?

東京マラソン出走が叶わず悲嘆に暮れている方が、会社の先輩、部活の先輩、海外準エリートランナーの友人などなど周囲に結構おられ、コースも我が家の近くを通るということで、この事態をまずまず身近に感じております。

本件を確実にネガティブな方向に勧めたのが、いまや世界中で知らぬ者はいないほど有名になり、ローランドに言わせれば、ダイヤモンドプリンセスでの感染者数か、それ以外か、ぐらいのインパクトになってしまっている豪華クルーズ客船での感染爆発ですが、 あれは昔火災で燃えた呪われた船だ!と言っている同僚が数人いたため調べてみると、 確かに2002年のドック火災で大炎上したのはダイヤモンドプリンセス!

ただ、現在横浜沖に停泊しているダイヤモンドプリンセスは同火災事典ではサファイヤプリンセスとして建造されていたものを急遽代船として名前を変えてデリバリーされたもので、燃えてしまったダイヤモンドプリンセスと不幸にも感染者が多数出てしまったダイイヤモンドプリンセスは物理的には別の船ということでした。

しかし、船そのものは呪われてはいなかったものの、ダイヤモンドプリンセスという名前がとても縁起が悪いということは言えてしまうような気がします。

上に書いた海外準エリートランナーの友人はこのレースを一つの節目にするとの意気込みで、 本番に向けてかなりトレーニングを積んできており、なんとか納得行く結果を出させてあげたかったですし、夫婦で応援も頑張ろうと思っていたので非常に残念です。

あまり関係無いような気もしますが、彼が気を取り直して次のレースで快走してくれることを期待して、私が推めた本で彼が気に入ったものをを紹介します。

その本は「シークレット・レース」(タイラー・ハミルトン/ダニエル・コイル著 小学館)という自転車レースに関するノンフィクションで、 ツールドフランス7連覇のランス・アームストロングがドーピングに手を染めたとされる事件の内幕が暴露されています。

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遂に「ライオンのおやつ」(小川糸著 ポプラ社)を読みました!

加齢のせいなのである程度は仕方が無いものの、 やはり、覚えられない、思い出せない、もどかしい思いをすることが最近増えていてちょっと残念な気分になります。

この2週間ぐらいの間にも、 三越のパン屋さん→ジョアン、 大好きなチョコレート→サティーとステットラー、 アニメ「七つの大罪」の人形のキャラ→ゴーセル、 など思い出せずに妻に聞いてしまうケース多数で老いを感じます。

あと、このところニュースでよく目にする単語でどうしても覚えられないのが、ブデチゲ?ブスジャッジ?ブチシャジ?、そう、米大統領選挙の民主党予備選に立候補しているあの秀才の名前は、濁点と小さい文字が多すぎて本当に覚えられません。 すぐに消えてしまうかもしれないよその国の候補者の名前を覚えるより、使える英単語とかフレームワークの一つでも覚えた方がいいかな、と思いつつどうしても気になって調べてしまいました。

彼のフルネームは、Peter Buttigieg、マルタからの移民の血筋ということですがどうしたらそういう字の並びになるのかという分かりづらさ。ローマ字的に読むとブッティジェジだと思うのですが、新聞などではブティジェッジと記載されていますね。まだスペルを調べていない人に差をつけるべく、明日から最初のッを意識してブッティジェジとイケてる発音したいと思います。

今週末は、楽しみにしていた新井賞作品の「ライオンのおやつ」(小川糸著 ポプラ社)をついに読みました。

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