引きこもりのGWに「風と共に去りぬ」を読了

唐突ですみません。先日大阪府が提示した休業要請解除の基準の中に「陽性率7%以下」が一週間継続、というのを見たのですが、この数字は何かの役に立つものなのかとちょっと疑問に思いました。

この数字が意味する、かかりつけ医などの診察の結果検査が必要と判断された人や、明らかに濃厚接触していて感染が疑われた人のうち、どのくらいの割合の陽性者がいたか、というのは、つまりは「コロったかも?(by自分)」、「あなたコロってるかもしれませんよ。(byかかりつけ医)」の見立てがたまたま正しかった割合を表しているだけで、この数字が下がるというのは1.単純にPCR検査基準を緩めた(=上記見立てをもっと適当にした)、2.コロナに似た症状のかぜ患者が増えた、ことが示されているに過ぎず、コロナウイルス感染の広がり具合とか深刻さとかを代表している数字とは思えません。

「陽性率」を指標とするなら、無差別抽出した人にPCR検査をして、そのうちどの程度がウイルス保持者か、の比率を追いかける方が実際的と思うのですが如何でしょうか?

さて、水曜日でGWの5連休は終わってしまったのですが、この「妻と共に籠りぬ」だったお休みはひたすら「風と共に去りぬ(Gone with the wind)」(マーガレット・ミッチェル著 新潮社 全5巻)を読みふけっておりました。ダジャレですみません(苦笑)。

アカデミー賞受賞作の映画も見たことがなく、合計2000ページ超という大長編であることにも尻込み気味だったのですが、とにかくこれまで読んだ多くの本の中にヒロインであるスカーレット・オハラの人となりや物語の内容がたびたび登場するので、この本を経験しておかないと今後の読書が深まらないという問題意識の下、今回覚悟を決めて挑戦してみたところ、このところ興味を持っていたアメリカ史の最重要イベントの一つに数えられる南北戦争時代の社会がしっかりと描かれており、スカーレットの過激な性格には面食らいましたが、文学作品としては勿論のこと、歴史小説としても想像以上に興味を惹かれる内容で時間的には結構かかったものの気分的にはあっという間に読了した感覚です。

アイルランド系成り上がり農園領主であるジェラルド・オハラとフランス貴族の血筋である貴婦人エレン・オハラの長女として生まれたスカーレットは、確かにパッションと生命力に溢れた、前向きで型破りでしかも美貌という非常に魅力的な「新しい女」なわけですが、一方で、超エゴイストかつ潔いまでの自己中心主義者で癇癪持ちの激しい気性、相手の心情を全く読み取れない鈍感さ、直ぐに理解できないことを突き詰めて考えない浅薄さ、目的のためには手段を択ばない冷徹なマキャベリストなのに加えて非常に日和見的と、一つでも持っているとかなり深刻な周囲とのコミュニケーション上の問題を引き起こし得る欠点を山のように抱えているという、絶対に近くにはいて欲しくない「ヤバい奴」であり、感情移入しにくいばかりでなく、読んでいてとてもはらはらさせられます。

そんな際物をヒロインに据え、更にその他にも、皮肉屋で露悪的というか悪党で偽悪者のロマンチストであるレット・バトラー、人格や貴婦人としての要件充足度で言えばヒロイン候補最有力なのに残念なほど奇跡的なお人よしであるメラニー・ウィルクス、自分の世界でしか生きられない弱いインテリで優柔不断のアシュリー・ウィルクス、究極の世間知らずで直ぐに気絶するピティパット・ハミルトン、をはじめとした、多彩でキャラの濃い、はっきり言ってイライラする登場人物がたくさん出てくるこの小説が面白いのは、それぞれの思いが全く噛み合っていないのに生活はそれなりに回って行くし、愛情に支えられた幸福らしきものがそれなりに生まれる、という滑稽さなのかな、とややひねくれ気味に思います。

勿論、突然のパラダイムシフトを突き付けられた人々が見せる様々な対応、トラウマに立ち向かう不撓不屈のサクセスストーリー、すれ違いが連続する恋愛小説、などなど非常に多様な読み方のできる小説である点も魅力ですし、息詰まる南北戦争の攻防、アメリカのイメージとは全く違うヨーロッパ的階級社会と社交、黒人奴隷の中にも存在する階級格差、南部で一儲けしてやろうと北部からやってきたカーペットバッガーや裏切って共和党側についた南部白人を意味するスキャラーワグなどについての新たな知識、悪名高きKKK活動の一端、など多くの学びを得られる本でもあり、読了に要した時間分の価値は有る内容でした。

ちょうど岩波新書のシリーズアメリカ史を読みはじめたところで、「南北戦争の時代 19世紀」(貴堂嘉之著 岩波書店)読了直後だったこともあり、物語の主な舞台であるジョージア州アトランタにもそれなりの土地勘を持って臨め理解が深まったのも良かったですし、参考文献として読んだ「アメリカ黒人の歴史」(本田創造著 岩波書店)も非常に役に立ちました。この南北対立の構図は現代アメリカにつながる部分も多く、他にも関連書籍を読んでじっくりと勉強したい領域ですね。最後になりましたが、「風と共に去った」のは、南部白人が当時謳歌していた貴族文化的社会、ということになります。

4月後半から一歩も外に出ていなかったら、日光に当たらなかったのが原因か、生まれて初めて夜眠れない症状が出て焦りました。その後、意識して家の近所を散歩するようにしているのですが、驚くほど人がいてちょっと何が起こっているのか理解できません。。。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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