金次郎、本の紹介を頼まれてないけどまた紹介+直木賞作「熱源」を読了!

少し前に読書の弟子である文学少女に本を紹介した話を書きましたが、この文学少女とは美容師さんつながりなので、今週髪を切った際に、来週予約入ってますよ、と聞きつけたのをいいことに、姪っ子に嫌われてしまう親戚のうざいおじさん的にはなってしまいますが、勝手におすすめ本を紹介させて頂くこととしました。

少し脱線&解説しますと、このE美容師さんは、金次郎がかつてお世話になっていたチョイ悪だけど意外と繊細なK美容師、孤高の猛スピードカットのY美容師、の後輩にあたるのですが、金次郎の妻、金次郎の元同僚とその奥様(そして多分その娘ちゃん)、も髪を切ってもらっているという、なかなかご縁をつなぐ力のある方でかれこれ10年以上のお付き合いになります。E美容師はKさんともYさんとも違う雰囲気で、外苑前のサロンも落ち着いた感じなので、毎月うかがって癒されています。

さて、今回は散髪中には絞り込めず、このブログでのご連絡となってしまいましたが、これまで読んだ本のリストを見直してさんざん悩んだ結果、以下5冊をおすすめさせて頂くことにしました。いつか何かの拍子に手に取ってもらえると嬉しいですねー。

【金次郎から文学少女A&Bへのおすすめ作品5選】

「風が強く吹いている」(三浦しをん著 新潮社)

箱根駅伝がテーマのこの作品は、細かい問題は全てどうでもよくなる感動の連続で、 仲間、ライバル、逆境、大きな舞台、登場人物の肉体と精神両面での成長、とカタルシス要素がこれでもかと詰まっていて鉄板です。

高い目標に挑戦する勇気と、チームとして何かを成し遂げることの難しさと面白さを感じてもらえればいいな、と思い選出しました。

「カラスの親指 by rule of crow’s thumb」(道尾秀介著 講談社)

道尾先生の作品は、どんでん返しのやられた感もさることながら、 結構人間を描いていて、単純なミステリーの枠に収まらないので、物語というものの厚みのある面白さを感じてもらうのにはうってつけと思い選びました。

特に、阿部寛主演で映画化もされたこの本は、ストーリー展開も伏線回収も鮮やかなので道尾ワールドを充分楽しんでもらえると思います。

「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち~」(三上延著 KADOKAWA)

文学を深く味わうというよりは、本と本に関わる人々にまつわる物語に読者を引き込む内容で、特に文中でモチーフとなるたくさんの本を「読んでみたい!」という気持ちにさせられるので、シリーズもので何冊も出ていることもあり、活字中毒の文学少女にはもってこいの作品と思います。

シリーズのストーリー全体としてきちんと辻褄が合っており、ひとつながりの大長編としても楽しめますし、長短編ミステリー集としてもそれぞれのお話が気持ちよく完結して読後感スッキリの満足度です。

「さよなら、田中さん」(鈴木るりか著 小学館)

文学少女と同年代の小学生が書いた小説なので目線が近くて興味が沸きやすいかな、と思い選んだ本作ですが、小学生といえども、内容は全く侮れず、いい大人であり、かつ読書家を自認する金次郎が我を忘れて読み進めてしまう面白さです。

特にお母さんがすごいのですが、とにかく逆境をものともしない田中さん母娘の潔さや強さに、なんだか心が洗われて癒されます。 しかし、スーパーの経営の話とか、お見合いの話とか、大人の事情もよく理解されていて、金次郎が何回小学生をやり直しても絶対このクオリティでは書けない自信有ります(笑)。

「ワンダー」(R.J.パラシオ著 ホルプ出版)

児童書で映画化もされた有名な本なので既読かもしれませんが、この本は大人も泣いてしまう感動作です。

勿論この物語で描かれている主人公オーガストの5年生の1年間も、家族や友人との感動溢れる交流の軌跡で素晴らしいのですが、ぜひ文学少女には、この愛すべきオーガストを形成した、ここに至る10年間の家族と彼本人の葛藤と努力に少しでも思いを馳せて欲しいと思います。そうすることで、ストーリーを追いかけるだけではない、 もう一段深い部分で感動を味わえる読書の楽しみに触れてもらえるのではないかと期待してこの本を選びました。あと、金次郎もいつもやらかしてしまう、〈口は災いのもと〉という社会で生きて行く上で非常に重要な教訓も実感できる部分はとてもためになります(笑)。

さて、通常の読書もしておりまして、直木賞作であり本屋大賞ノミネート作でもある「熱源」(川越宗一著 文芸春秋)をようやく読了しました。

日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったリトアニア生まれのポーランド人の二人の人生が極東サハリンで交差するストーリーを軸に、 これでもかと繰り返される言われなき差別やアイデンティティの喪失という苛烈な経験の中で、人々が時には強く、時には微かに、心の深いところで感じる〈熱〉を頼りに必死に生きるさま、 そしてその〈熱〉の源であるそれぞれが持つ〈魂〉の純粋さを描くことで、 改めて人種や主義信条といった隔たりを超える人間という存在についての思いを伝えようとする作品だと感じました。

実在の人物が数多く登場する史実に基づいたフィクションなので、小説世界に入り込むのが容易で読みやすく、 何より、ポーランド、北海道・サハリン・ウラジオストク、東京そして南極、とスケールが壮大なのにすべての場面を丁寧に濃淡無く描けているところがすごい。女性の入れ墨や熊送りの儀式などアイヌ特有の習俗、そして北の大地の美しい自然の描写も素晴らしく、さすがは直木賞作です。

今回なんとか5作を選ぶことができましたが、当たり前ですが小中学生に好適なここ数年で読んだ本のリストは非常に少なく、 だからと言って35年前の地方の少年だった頃の記憶を引っ張り出してくるのも何か違う気もしていて、 結果新しく読もうと本を選ぶときの視点が少し変わって、選択の幅が広がったのは似たような本ばかりに目が行ってしまいがちな中年にとっては良い刺激となっております。 まぁでも、いずれ芦田先生の力はお借りすることになると思います(笑)。「まなの本棚」の続編にも期待しよう!

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

「金次郎、本の紹介を頼まれてないけどまた紹介+直木賞作「熱源」を読了!」への5件のフィードバック

  1. 師匠、頼まれてなくないです!
    改めまして、金次郎さんこんにちは。もっと早くにお礼を申し上げたかったのですが、休校でヒマしてるABが居るということは母が忙しく…
    ABとも、ご紹介いただいた本をすべて、ビブリア古書堂は扉子さんまで、読了いたしました。私は「ワンダーと田中さんは読まなくていいよ」と言われたので、それ以外を読み終えました。
    本来なら感想などお話したいのですが、休校二人とテレワーク一人がおり、飯炊きに追われる日々。取り急ぎお礼だけで失礼します。

    1. 恵子さん、ご連絡ありがとうございます!家事大変ですね、うちも妻がストレスを溜めております。。。
      しかし、休校&外出が難しいとはいえ、あの量を既に読了とはスゴい!頼もしい弟子たちの熱量に敬服します。
      何かと不自由な毎日に少しでも潤いを足せるよう、また近いうちに紹介記事書きますね。
      Eさんのところにいつ行けることやら。。。

      1. 金次郎さん、ありがとうございます。
        AとBの感想です…聞いてから間が空いたので、すっかり忘れました私が。
        今回の中で一番人気は「カラスの親指」でした。東野圭吾好きの二人にヒットしたようです。僅差の次点が「風が強く吹いている」でした。読んだ!という手応えが良かったようです。ちなみに私はこちらが一位でした。主人公以外のメンバーにしっかりとスポットライトがあたるところが、みんなで繋いでいくんだなぁという感動に繋がりました。
        ビブリアは、八冊?くらいをどんどんと読み進め。うん、面白いよー、という意味のまったくない感想しか出ませんでしたが。小学校の図書の先生が「感想を求めてはいけません」とおっしゃっていましたので、飽きずに読みきったので良しとします。私も「風~」のあとに読んだからか最初は物足りなく挫折しそうになりましたが、3冊目くらいから連ドラのように続きが気になる、になりました。「ワンダー」と「田中さん」は、読みやすかった、と。これが感想?
        最近の読書傾向など、お話したいことがまだまだあるのですが、長くなりましたので日を改めて。最後に一つ、本ではなくピアノなのですが、レッスンがお休みになり何か譜読みをしようとなりまして、選ばれたのが「The Dream of the Lambs」羊と鋼の森、です。本は、図書館の予約の順番がまだまだ回ってこないのですが…

        1. 恵子さん、感想のご連絡ありがとうございます。先日は本屋大賞の予想も見事に外しましたが、人それぞれ違う感じで楽しめるのが読書の醍醐味ですね。「カラスの親指」がトップとは意外でした。
          頂いた感想も参考にしつつ、また近いうちにおすすめ本を紹介します。ピアノと言えば、あまりにも有名ですが「蜜蜂と遠雷」も面白いです。
          http://www.piano.or.jp/enc/news/2017/02/03_22628.html

          1. 恵子さん、紹介記事をupしましたのでお時間あるときにでもご覧下さい。

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