ある週末の金次郎読書日記、締めくくりは門井慶喜作品

ニュースはコロナ一色ですし、全体的に自粛ムードで周囲に面白いことも起こらず、取り立てて書くことが無いので、よく聞かれる、どうやってそんなにたくさん本を読んでいるの?という問いに答えるべく、この週末の読書生活を一挙公開!

●3月6日(金)

夕方まで在宅勤務をした後、妻と食材を買いに出かけ、夕食後から前日読み始めた「監禁面接」(ピエール・ルメートル著 文芸春秋)の続きを読むことに。全体464ページのうち200ページ程度まで読んだところで、どうしても睡魔に負けて就寝。本当はあと100ページ程度は読み進めておきたかったところ。

●3月7日(土)

年齢のわりにさほど早起きもできず、朝の8時ぐらいから「監禁面接」の続きを読み、午前中になんとか読了。

最初のうちは、失業中年がどんどん追い込まれ、我を忘れて暴走するだけの痛いお話で、ちょっと過激な「終わった人」(内館牧子著 講談社)ぐらいの話かと思っていたら、 そこはあのカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作で世の中を震撼させた著者だけあって、暴走は暴走でもがらりと違った展開となり、驚きつつ途中から読むペースがどんどん上がる感じになります。前述シリーズの「その女アレックス」(文芸春秋)での鮮やかな場面転換の妙を思い出しました。ちなみにヴェルーヴェン三部作の順番は「悲しみのイレーヌ」からオーソドックスに読むと心が折れるリスク有るので、やはり「アレックス」から「イレーヌ」と読んで、「傷だらけのカミーユ」で締めくくるのがよろしいかと思います。

午後からはちょっと冊数を稼ぐペースが足りないぞ、と不安になり、短めの本でとりあえず数を稼ぐことに(笑)。この話をするとたいてい〈何と戦っていらっしゃるのですか?〉と怪訝な感じにされるのですが、経営の要諦は分かりやすいKPIということで、とりあえず機能しているので良しとします。

「京都寺町三条のホームズ(13)麗しの上海楼」(望月麻衣著 双葉社)はもはや舞台が上海で全く京都寺町三条でもなんでもないのがちょっとおかしいですが、上海の市制の雰囲気も出てますし、円生との因縁に関わる展開も面白いので、退屈せずにあっという間に読了。(14)は舞台がニューヨークのようで、これもどうなの?とは思いますが、結局読んでしまうと思います。シリーズものの強さですね。

この勢いで、「上皇の日本史」(中公新書)、「壬申の乱と関ヶ原の戦い」(祥伝社)を読んで面白かった本郷先生の 「乱と変の日本史」(本郷和人著 祥伝社)を更に夜にかけて読みはじめ、 これも256ページと分量がさほど多くないのでこの日のうちに読み終えて満足して就寝。

日本史上の画期をなすいくつかの争いの構図を分かりやすく解説しつつ、争いの背景にある社会的要請と、その争いを契機として社会がどう変わったのか、を紐解く試みは非常に興味深いですが、著者がこの本を著した真の意図は、大ヒットした「応仁の乱:戦国時代を生んだ大乱」(呉座勇一著 中公新書)に対する反論であることは第7章 明徳の乱、第8章応仁の乱、での記載からも明らかですね。

本郷先生は、山名・司馬・大内グループvs細川・赤松・京極・一色グループという幕府内の長きにわたる確執の発露として応仁の乱を捉える立場で、通説である将軍家及び畠山氏の後継者問題を重視していない点が興味深いところ。背後で義満を動かした細川頼之の評価が高いのも新鮮です。 また、陰謀論を排除する姿勢も鮮明で、日本三大どうでもいい話として、〈本能寺の変の黒幕探し〉、〈坂本龍馬暗殺の黒幕探し〉、〈下山事件の黒幕探し〉が挙げられているのが面白かったですね。

●3月8日(日)

前日の王様のブランチBOOKコーナーで門井慶喜さんが紹介されていたので、最新刊の前に既刊の話題作を読んでおくことに。 先ずは朝7時過ぎから「家康、江戸を建てる」(門井慶喜著 祥伝社)を読み、午後イチぐらいに読了。なかなかのペースで満足度高いです。 利根川の治水、金貨鋳造、石の切り出しと石垣づくり、西からの飲料水確保、天守閣造営とそこに込められた思い、についての5つの短編が納められており、家康の並々ならぬ江戸開発への執念が、 馴染みの地名やその由来と共に鮮やかに立ち上がってくるので、 まだ東京暮らし30年のえせ江戸っ子金次郎にも親しみをもって読める作品です。

そして、この週末最期の一冊として直木賞作の「銀河鉄道の父」(門井慶喜著 講談社)を午後から夜にかけて一気に読みました。如何にして稀代の童話作家宮沢賢治は生まれたのか、を父宮沢政治郎の視点で描き出す秀作です。花巻や岩手の自然をイメージしながら、改めて宮沢賢治作品を読んでみようと思わせる一冊です。

生来の愛情深さを押し殺して厳格な父親像をなんとか保とうと葛藤しつつ苦心する政治郎、 そんな父を乗り越えたい気持ちと自分の中にある様々な衝動との折り合いをつけられず悩む賢治、という父子の心が紆余曲折を経て寄り添っていく様子が、悲しい別れもあいまって、たまらなく心を打ちます。賢治より政治郎にどんどん感情移入してしまうので、やはり金次郎には創作の才無し、ということですね。

毎週こんな感じで週末の3日間で5冊読めると週末4回で20冊となり、目標の25冊に到達するかどうかは、平日の頑張り次第、ということになります。妻がほとんど登場しませんが、一緒にテレビを見たり、お菓子を食べたりと、それなりに円満にやっておりますのでご心配無く(笑)。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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