金次郎、佐藤優先生に刺激され高校時代を回想する

先輩に薦められ佐藤優先生の「国家の罠:外務省のラスプーチンと呼ばれて」(新潮社)を読もうとしていたのに、以前紹介した「十五の夏」の影響か手が滑り「友情について 僕と豊島昭彦君の44年」(講談社)を読みました。佐藤先生の浦和高校時代以来の親友である豊島昭彦さんが膵臓ガンで余命宣告されたことを契機に編まれた、言ってしまえば〈市井の人〉の来し方を描いたこの本は、その出版に至る経緯も影響しているのかもしれませんが、山あり谷ありの人生を投げ出さずに、自分の生きた証を刻むべく地に足を付けて日々の生活を送ることの大切さを実感させられる、50歳目前の金次郎の心にずっしりと響く内容でした。豊島さんの日債銀の破綻からあおぞら銀行での苦労や転職先のゆうちょ銀行での不遇の記述を読み、自分の環境は恵まれているなと感謝しつつ、それに甘えていることへの自覚と反省を新たにする良い機会ともなりました。でも、若い人にはちょっと実感が持てない内容かもしれないですね。人生の証を刻むことに加え仕事以外の生活を充実させることの大事さが作中で語られていますが、そういう意味ではこのブログもちっぽけではありますが、書き続けていて良かったなと思いました。これからも頑張ります。

ところで作中に佐藤先生と豊島さんとの浦和高校時代のエピソードについての回想が頻出するのですが、よくこんなに高校時代の出来事を覚えているなぁと感心しました。と言うのも、金次郎は高校時代の友人に会うたびに、自己中、周囲に興味が無かった、傍若無人、などと辛辣に非難されがちで(冗談交じり、と信じたい)、身に覚えはないものの本人も高校時代の記憶が曖昧なために、そんな筈は断じてない、と言い張ることもできず、とにかくすみませんでしたとよく覚えてもいないかつての自分の言動に謝罪することしきりであり、そんな自分と比較しての感心というわけです。

そこで、現代にネタが非常に乏しい金次郎として、今回は佐藤優ばりに高校時代の記憶を掘り起こして書いてみることにします。

しかし、いざ書こうとすると、入試、合格発表、入学式と一応経験した筈なのに全く記憶が無く、なんとなく校歌や応援歌、学校伝統の体操などを異常に練習させられたことを覚えている程度です。あ、その後応援団に入れと先輩から強要(?)され、泣きながら当時所属していた陸上部の先輩に断ってくれと頼んだ意味不明の記憶がいま蘇りました(笑)。学年10クラスのうち1年の時は1-7組で共学なのに男子クラス(ちなみに3年間男子クラス)、ちょっと癖のある字を書かれる国語のS先生が担任をされていたことは覚えているものの、そういうざっくりとした枠組み以外のディテイルが記憶障害のように思い出せません(苦笑)。

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ディストピア小説「日没」は桐野夏生版の「1984年」!

英会話の授業の中で使うマテリアルとして、日々のニュースを題材とするものがあるのですが、通常は読むことの無い海外のニュースを見ていると結構心に引っかかる内容のものがあります。

例えば、小学生のクラスでの人気は生まれ月が早ければ早いほど高い、という薄々気づいていたもののはっきり言わないでよと思う統計データの紹介などです(笑)。愛想が良くて良心的に振る舞う生徒に教師がより高い成績を付ける傾向が強い、という微妙な研究結果の紹介もその類ですね。ちなみにそのニュース内ではナルシストの生徒は嫌われ者だが成績が良い傾向にある、とも書かれていてちょっと笑いました。

また、ルーマニアでは小説「吸血鬼ドラキュラ」の舞台となった古城がワクチン接種センターとなり、吸血鬼デザインのユニフォームを着た医療従事者がワクチンを打ってくれる上に、城内にある〈拷問部屋〉に無料で入れる特典までついているようです。わりとシュールで好きですが、そんなことでワクチン接種が喚起される気は全くしませんね(笑)。

このように基本的には気にはなるけど役には立たないトリビア的なものが殆どで、どうやってニュースを選定しているのかの方が寧ろ気になりますが、時々面白いものもあります。

中国では、今年1月から離婚届を二度提出するシステムが導入されたようで、一時提出後30日経過した時点で二次提出をしてreconfirmをしないと離婚が無効になる仕組みになっているとのこと。面白いのはなんとこの〈クーリングオフ〉制度を導入して以降離婚数が72%も減少したとのデータで、これまで離婚がいかに感情の勢いで実行されていたかが分かって興味深いです。冷静に考える時間が持てて良かった、というポジティブな意見がある一方で、生き地獄が30日余分に続いただけ、という悲しいコメントも紹介されていて悲喜こもごもの様子がうかがえますね。中国政府は最近権力集中=独裁の度を強めていますので、こういう制度ができるということは政府が離婚を望んでいないのではないか、という忖度から離婚数が減少した、と考えるのは穿った見方過ぎるでしょうか。

最後にもう一つ、米国アラバマ州では保守的キリスト教徒の反対により長らく公立学校でヨガを取り入れることが禁止されていたとのことです。最近はマインドフルネスの流行もあり、健康に良くストレス解消にもなるヨガが漸く取り入れられるようになったものの、エクササイズの名将は全て英語とする、〈オーム〉や〈ナマステ〉などの言葉を使ってはいけない、親はヨガがヒンドゥー教の一部であることを理解していることを示す文書に署名する必要がある、催眠術や宗教的トレーニングなどをヨガのクラスに含めることはできない、などのおよそ理解に苦しむ規則の順守が義務付けられているそうで、米国のかなりの部分の人が宗教的保守派層に属していることを改めて実感させられる情報でした。

上にも書いたように、中国はジョージ・オーウェルの「1984年」的なビッグブラザー国家に向かっている気がしてなりませんが、まさに「1984年」を彷彿とさせるディストピア小説を読んだので紹介します。その本とは桐野夏生先生の「日没」(岩波書店)です。金次郎は読書初心者の頃、大変申し訳ないことに桐野先生を勝手にオジサンだと思い込み、「路上のX」(朝日新聞出版)を読んだ際に、なんでオジサンがJKの気持ちを不安定さとか未熟さとか真っ直ぐさとか含めて、こんなに鮮やかにリアルにぎりぎりの筆致で描けるのだろうと驚愕してしまっておりましたが、後になって女性だったと知り恥ずかしいというか、あの驚きを返してくれという気分になったのが第一印象です(苦笑)。その後、直樹賞作の「柔らかな頬」(講談社)も読み、人間の弱さの表現に改めて感服すると共に、結果的に共感しづらい嫌な奴がたくさん登場し、読後になんとも言えない気分になる桐野作品の傾向もしっかりと理解しました。

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金次郎、2010年に48歳で早逝された民俗学ミステリーの鬼才北森鴻先生を偲ぶ

最近歯医者さんにお世話になる機会があり、その後お決まりコースの歯のクリーニングとなりました。そんな中で感じた違和感が、歯科衛生士さんにより何度も繰り返される「あいてください」というフレーズ。口を開けなければ治療はできないので、合図は別にどんな言葉でも良いのですが、さすがに「あいてください」は違うんじゃないのと気になって気持ちよい筈のクリーニングに全く集中できません。

そもそも「あいて=開いて」は「開く」というさ行五段活用動詞の連用形「開い」に接続助詞(補助)である「て」が連なっている形で、「開く」は自動詞なので、「あいてください」で省略されている「開いて」の主語は「口」ということになります。つまりこの歯科衛生士の方は、金次郎の「口」に向かって開けゴマ的に「あいてください」と指示を出している構図になっており、いやいや「口」に指示を出すのは持ち主たる金次郎なので、先ずはこちらに話を通して下さいよ、という気分になります(笑)。

正解としては、「金次郎さん、お口をあけて下さい」の省略形である「あけてください」だと思うのですが、よく考えると主語である金次郎の顔面はタオルで覆われており、タオルに向かってお願いするのもなんなので、表に出ている「口」さんに「あいてよ」とお願いしたくなるのもちょっと分かるような分からぬような。ちなみに「あける=開ける」はか行下一段活用動詞(他動詞)である「開ける」の連用形+「て」ということになります。

もしかしてだけど(♪ドブロック)、衛生士の方のマニュアルには「ひらいて=開いて」を使い「金次郎さん、お口を開いてください」と記載されていたものを読み違えて「あいてください」になってしまったのか、とも一瞬思いましたが、「口をひらく」となるとどちらかというとしゃべることを意識した口開けの意味が強くなり、「心をひらいて」とか「手術で胸をひらく」のような意志をともなう状況を叙述する表現と思われ、やはりただの覚え間違いかな、と非常にどうでもいい結論に到達してしまいました(苦笑)。以前のブログでご紹介した、内館先生のようなちょっとややこしいうるさ型にならぬよう気を付けねば。

さて今回は、非常に残念ながら11年前に48歳の若さ(現在の金次郎と同じ歳)で早逝された民俗学ミステリーの鬼才北森鴻先生の代表作である蓮丈那智フィールドファイルシリーズについて紹介します。

「凶笑面」「触身仏」「写楽・考」「邪馬台」「天鬼越」(いずれも新潮社)の5作から成るこのシリーズは、孤高の民族学者である蓮丈那智が助手の内藤三國と共に、古くからのしきたりに関連して日本中で発生する事件を民俗学的な視点と膨大な知識で解決に導くというお話が多数収められている作品群です。記紀にはじまり、習俗や宗教、中国の史書にいたる広範な知識を自由自在に組み合わせて納得感の高いストーリーを構成する北森先生の博覧強記ぶりとクリエイティビティには畏敬の念すら感じます。特に繰り返し出てくるモチーフのたたら(=製鉄業)を鉄器(=軍事力)という観点から列島内の支配階層と結びつけて、製鉄民族の移動(燃料である木材を使い果たすため)と支配体制の推移を関連付ける考え方には非常に腹落ち感が有りました。

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金次郎、「旅する練習」の三島由紀夫賞受賞をきっかけに文学賞について整理する

このブログでも紹介し、強敵「推し、燃ゆ」なかりせば芥川賞であったと思われる乗代雄介先生の「旅する練習」(講談社)が第34回三島由紀夫賞に選出されました。ちなみに昨年の第33回は宇佐見りん先生の「かか」(河出書房新社)が受賞していますし、最近の結果を見ても、上田岳弘先生、本谷有希子先生、村田沙耶香先生、今村夏子先生と作品はそれぞれ違うものの両方の賞を受賞されている作家が多く、乗代先生も有名になり過ぎてまだあまり売れていない新人作家から選出するという芥川賞の選考基準から外れない限りは受賞が濃厚と勝手に予想しております。

また、芥川賞未受賞者を対象とするとの暗黙のルールの下、新人の登竜門として新たな才能を発掘することに注力している野間文芸新人賞(講談社)を取ると、その後かなりの確率で芥川賞を受賞するのが一つのパターンとなっており、乗代先生はこちらも「本物の読書家」(講談社)で受賞済みであり、まさに今もっとも芥川賞に近い純文学作家といえるかと思います。

三島賞は純文学や評論、詩歌や戯曲までが対象となりますが、同じく新潮社が後援している山本周五郎賞は優れた物語に与えられる賞で、同じ方向性の直木賞よりは若干文学的というかエンタメに振り切れていないとの印象です。今年の受賞作はここしばらく読みたい本リストのかなり上位に入っている「テスカトリポカ」(佐藤究著 KADOKAWA)で、メキシコとインドネシアと日本で麻薬密売と臓器売買が出てくるお話だそうで、ちょっと想像を越えていますがとにかく読むのが楽しみです。

文学賞では上に挙げた芥川賞や直木賞が年二回の選考ということもありメディアへの露出も多く文学界の最高峰というようなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、特に芥川賞は(三島賞もそうですが)、上述の通り選考対象が新鋭作家の作品とされており、権威としてはそこまで高いというわけではないようです。

それではどの賞がより権威が有るかというと、ちょっと自信がありませんが時代を代表する小説や戯曲を選ぶコンセプトの谷崎潤一郎賞(中央公論新社)、同名の新人賞(吉川英治文学新人賞)が存在するのでベテラン作家が受賞することの多い吉川英治文学賞(講談社)などが該当するかと思います。ちなみに最新の谷崎賞は「日本蒙昧全史」(磯﨑憲一郎著 文芸春秋)、吉川賞は「風よ 嵐よ」(村山由佳著 集英社)となっており、磯﨑先生は芥川賞、村山先生は直木賞受賞経験者でなんとなくより高い到達点という位置づけを感じますよね(笑)。

ただ、この他にも、川端康成文学賞(短編)、泉鏡花文学賞、野間文芸賞、柴田錬三郎賞、司馬遼太郎賞などなど数多くの文学賞があり、全貌は全く掴めておりませんので間違っていたらすみません。

更にこれ以外に高額賞金でも有名な江戸川乱歩賞のようにミステリーを対象としている多くの賞や、本屋大賞や新井賞のように本屋さんが何らかの形で選んでいるもの、最初にも少し書いた新人賞など挙げだしたらきりがなく、この世界は本当に奥が深く深入りするのが少し怖いです(笑)。

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金次郎、最高のスパイミステリーである「ジョーカー・ゲーム」(柳広司著)シリーズを堪能

 

今年の9月からデジタル庁が創設されることが決まったとニュースでやっていましたが、この話題を耳にするたびになんとなく違和感を感じ続けていたため、ちょっとじっくり考えてみることにしました。デジタルという言葉の意味は、ばらばらの、離散した、量子的な、のような感じで、対義語のアナログは、連続した、となるわけですが、そもそもよく考えたらこれは形容詞じゃないですか。直訳すると、ばらばらな庁、離散した庁、量子的な庁となり、百歩譲ってカタカナを使ってもデジタルな庁ということで意味が全く分かりません。なんとなくイケてる感じにしたかったのは理解できるものの、財務省や経済産業省、あるいは国税庁やスポーツ庁のようにきちんと何を担当するのかを表す名詞を前に持ってくるべきで、例えばデジタル産業庁、デジタル基盤推進庁、デジタル技術庁、国民デジタル官吏庁などでしょうか(笑)。違和感の正体が分かってすっきりしましたが、極端な話ビューティフル庁やクール庁と同じ構造の名前になっており、非常に情けないと同時にこの新設された庁の先行きが危ぶまれる、ひいては日本のデジタル化の遅れがどんどん加速してしまう懸念でとても不安になるニュースでした。また、高給取りになり得るデジタル技術関連で高いスキルを持った人が果たしてデジタル庁に公務員として安定的に務めてくれるのだろうか、と考えると暗澹たる気分になります。頑張ってくれ、ガースーさん。

さて、本日はこのところはまっている柳広司先生の本を何冊か紹介します。

「ジョーカー・ゲーム」(KADOKAWA)、「パラダイス・ロスト」(KADOKAWA)、「ラスト・ワルツ」(KADOKAWA)はいずれも戦前戦中の日本陸軍の中に秘密裏に創設されたスパイ養成組織である〈D機関〉で訓練を受けたとんでもない能力を持つスパイたちが繰り広げる諜報戦を描いたスパイミステリーシリーズです。目的を遂行するためにはスパイは目立つべきではなく、そのためには絶対に殺人という注目を浴びる行為は犯さない、そして、死ぬことは何の役にも立たず、心臓が動いている間は生きて情報を持ち帰ることだけを考える、というスパイの行動哲学が、当時の如何に死ぬべきかを神聖視する価値観と真っ向から対立しているのが非常に面白い。また何といっても、〈D機関〉の創設者であり全てを統率し魔王と呼ばれ怖れられる存在の結城中佐の仕事を徹底的にやり切る姿が最高にカッコいい作品です。それぞれの短編に違う名も無きスパイたちが登場し、どんな窮地に追い込まれても軽々と任務を遂行するプロフェッショナリズムにはフィクションであることは分かりつつ感動させられます。

金次郎は愛する第二の故郷シンガポールのラッフルズホテルが舞台となっている「失楽園」、華族恋愛モノかと思いきやしっかり裏切られる「舞踏会の夜」が好きでした。都合つかず未読なシリーズ作品の「ダブル・ジョーカー」(KADOKAWA)も早く読みたくてうずうずしております。

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金次郎、文学女子に緊急事態GWを楽しく過ごすための本を紹介

会社でかなり若手の同僚と何気なく昔住んでいた笹塚の話をしていた際に、以下のブログで紹介している通り、金次郎がかつて暮らしていた学生ハイツはパチンコ・カラオケ・サウナが揃った最強のビルの中に入っていたという話題となりました。

学生ハイツの話①

学生ハイツの話②

もう30年も前の話ですし、そのビルがまだ存在しているかどうかも自信が無かったのですが、なんと後輩はその建物を知っており、しかも有名だとのこと。どうやら、当時は非常に怪しげな空間と感じていたそのビルの上層階のサウナが、最近〈天上のアジト〉として意識の高いヤングエグゼクティブ(死語)の間で、心身の状態を整えるのに良い、とブームになっているのだそうです。トレンドは巡るといいますが、ここ数十年サウナブームが来た記憶は無く、一つのことを粘り強くやり続けることの力を垣間見たエピソードでした。

学生ハイツでの楽しかった思い出は後から後から浮かんでくるものの、どうもいざブログで詳細を書こうとすると不適切な内容を含むものが多く(笑)、マズい部分を削除してしまうと全然面白くないお話になってしまうので悩ましいところです。最近は女帝ゆりこをTVで見ない日は無いですが、都知事を見ると時々あの頃まだできたばかりの都庁の中にあったバーでバイトをしていた学生ハイツの仲間が持って帰ってくる豪華な残飯を晩餐会と称して賞味するのを毎週楽しみにしていたのを思い出します。学生時代ということで舌の記憶には自信が無いですが、それなりのクオリティだったとの印象で、やはりまだまだ世の中はバブルの只中だったのだなと思います。バブルと言えばトレンディドラマを連想してしまいますが、東京ラブストーリー後の織田裕二全盛期だった当時、俺は電車の中で織田裕二と何度も間違えられ声をかけられたと自慢気に語っていたハイツの先輩であるM本さんがジミー大西にしか見えなかったのを思い出して懐かしくなりました。すぐに裸になっていたM本さん元気かなぁ。

さて、前回のブログでの予告通り、駆け込みとなってしまいましたが、緊急事態宣言下のGWに向け、文学少女ABさんに本の紹介です。ABさんも中学2年生となり、そろそろ金次郎を含めたおじさん全般への嫌悪感が高まり始めるお年頃かと思いますが、そこは仮にも師匠ということで、他の一般おじさんとは一線を画したいところにて、師匠の威厳を保つためにも面白い本を紹介せねばとプレッシャーに負けそうです。

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【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2021予想対決の結果を発表!

振り返ると学生時代は勉学に打ち込んだり、陸上競技に励んだり、友人と異性を取り合ったりと、何かと順位や勝敗を意識し、結果に拘りながら日々を送っていたように思います。

ところが、だんだんと年を重ね、五十路が目前に迫る近頃では、気持ちに折り合いを付けて身を処す術も覚え、流れや長いものに身を任せつつ、日々淡々と早寝早起きしたり、踏み台昇降運動をしたり、PCのキーボードを消毒したりしながら、穏かにのんびりと時を過ごす隠者のような生活を送っており、常に気持ちは平常心で風の無い日の湖面のようにどこまでも平たんで乱れの無い状態を保っております。

最近は、久方ぶりに出社するようになり、後輩とコーヒーを飲みながら他愛もない雑事について語り合う時間にこの上ない幸福を感じ、サラリーマン生活終盤も捨てたものではない、と慮外の充実すら感じている今日この頃です。

読者の皆さん、もう気付かれましたか。はい、避けています。今日どうしても触れなければならないその話題を。そうです。その通りです。金次郎は負けました。去年に引き続き二連敗です。また金の栞を三菱マテリアルで買わなければなりません。本当に本当に悔しいです。Mが意気揚々と連絡してきた瞬間は、心がリアス式海岸みたいにギザギザになりましたし、シンガポールのマラソン走るおじさんから「負けた?」とメールをもらった際は、もう一生本屋で本を買うものか、という気分になりました(笑)。会社の同僚の皆さんにもブログを紹介して読んでいただいたので恥ずかしい限りです。

ということで気持ちの整理をする必要が有り、ブログ更新がやや遅れてしまい申し訳ありませんでしたが、気を取り直して結果発表&反省&言い訳です。

【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2021順位予想対決!

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【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2021順位予想対決!

いよいよこの日がやって参りました。今年は4月14日(水)に発表となる本屋大賞の順位を予想してしまおうという大それた企画を始めて3年目になりますが、さてさてどうなることやら。宿敵Mもドイツから予想を届けてくれましたので、今回はいつもより少し長いですが、どうぞ最後までお付き合い下さい。昨年の予想ブログを読んでいただいた方から、作品毎の評価を読み比べたいとの要望が多かったので今年はそのような構成にしております。では、前置き抜きで早速予想です。

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いよいよ本屋大賞2021ノミネート作品発表!

金次郎と宿敵Mによる本屋大賞2020予想対決、結果発表!

金次郎と宿敵Mによる本屋大賞2020予想対決!

【金次郎の総評】

年間300冊以上の本を読み続ける中で、どんな本にでも面白さを見出す技術を期せずして磨いてしまった金次郎にとって、この本屋大賞予想対決は年に一度の楽しみであると同時に、一年を代表する候補作の数えきれない面白さを無理矢理カウントして順位を付けねばならないという意味で最大の鬼門イベントでもあります。

こんな言い訳から入らざるを得ないほど、今年は売れまくっている芥川賞作の「推し、燃ゆ」や昨年大賞を取った凪良ゆうの次作をはじめとした話題作が多数な上に、どうしても評価にバイアスがかかってしまうアイドル加藤シゲアキの「オルタネート」の候補作入りもあいまって、本当に難儀な予想作業となりました。中途覚醒症状の悪化が止まりません。

緩慢にフラストレーションが蓄積していくコロナ禍の社会で求められているものは何なのか、これまで読書に割く時間があまり取れなかった人も本を手に取ることが多くなったという変化を順位にどう反映させるべきか、などのポイントを真面目に考え、悩みに悩んだ結果、作品の質は勿論ですが、前向きな希望や救いの存在、ストーリーの分かり易さを重視して予想を組み立てることとしました。

そうして約一か月、考えて書いてつまずいて(♪スキマスイッチ「ボクノート」より)、並べた結果が紙クズとならぬことを祈りつつ、大賞には「滅びの前のシャングリラ」を推薦します!昨年大賞の「流浪の月」を9位と予想してしまった贖罪の気持ちはさて置き、舞台設定の面白さと、絶望の中で際立つ救いを描いた点を評価しました。悲惨な話を暗く描かないために時折配置されたセンス溢れるユーモアも大好きな作品です。

惜しくも2位となったのは「推し、燃ゆ」。本作が傑作であることには疑問の余地無しで、宇佐見りんの文章が放つ圧倒的な力は他の候補作を凌駕していると感じます。しかしながら、誰もがすんなり受け入れられる分かり易いお話かと問われれば否と答えざるを得ず、数十万部も売れた本を更に売りたいと書店員が推すかについても若干の懸念が残るため、作品の質というよりは順位予想というゲームの性格から次点としました。

3位は王様のブランチBOOK大賞に輝いた「52ヘルツのクジラたち」。希望、救い、分かり易さと三拍子そろった秀作ですが、少しだけご都合主義との印象が残り、どうしても許容したくない登場人物の多さもマイナスに働きこの順位となっております。

読書家の最大の敵ともいうべき偏見に囚われ、アイドルの書く小説なんてとこれまで敬遠していたことを正直に白状し、そんな自分の眼の曇りに気づかせてくれた加藤先生に感謝の念を表します。4位の「オルタネート」、エンタメ作品として非常に面白かったです。

【Mの総評】

今年で本企画3回目ですが、今までで一番悩みました。明確に生きづらさが増しているいまの世の中に真正面から向き合い、且つ文芸として高い水準でそれを結晶化させた宇佐美りん「推し、燃ゆ」が個人的最「推し」でしたが、「売り場からベストセラーをつくる!」という本屋大賞のコンセプトを考えると既に芥川賞をとり評判もついてきている同作が受賞は難しいかなと。

従い、次いで完成度が高いと思った町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」を1位としました。町田そのこはほかの作品は読んだことはないのですが、キャリア的にここで本屋大賞を取って一段上のステージに上がるという展開はあるような気がします。

伊吹有喜「犬がいた季節」は2年前に大賞となった瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」と同系統の、普通の生活の中の人間関係のあれこれを丁寧に描いた“ほのぼの感動系”で、過去の本屋大賞の傾向を踏まえると上位に食い込む予感がします。

何故か電子書籍化されておらず不承不承当地ドイツまで取り寄せた加藤シゲアキ「オルタネート」は案外好みでしたが(*送料はもとが取れたと思います。正直に言うと色物だと思ってました、すみません。)、直木賞ノミネート作品(&こちらも割と既に売れている)ということで4位。凪良ゆう「滅びの前のシャングリラ」は流石読ませる筆致でエンタメとして楽しめましたが、2年連続大賞受賞への書店員さんたちの心理的ハードルは高いと予想し、5位としました。が、1~5位はどれが大賞を取ってもおかしくはないと思います。

全体としては短編集・オムニバス形式の作品が4編もノミネートされていることが少し気になりました。たぶん、読者側に長編をこなす体力がなくなってきておりウケる小説の形も変容してきているのだと想像します。そんな中、山本文緒「自転しながら公転する」は、既に作家としてそれなりのキャリアがあることを加味して若干辛めの7位としましたが、だらだらと行ったり来たりする主人公の感情の波に振られ続けているといつの間にか読了していたというある意味”伝統芸能”的小説で、こういう長編もまだまだちゃんと世の中に出てきてくれると一読者として嬉しいなと思いました。

【金次郎順位予想】

大賞 「滅びの前のシャングリラ」

2位 「推し、燃ゆ」

3位 「52ヘルツのクジラたち」

4位 「オルタネート」

5位 「お探し物は図書室まで」

6位 「犬がいた季節」

7位 「八月の銀の雪」

8位 「逆ソクラテス」

9位 「この本を盗む者は」

10位 「自転しながら公転する」

【M順位予想】

大賞 「52ヘルツのクジラたち」

2位 「推し、燃ゆ」

3位 「犬がいた季節」

4位 「オルタネート」

5位 「滅びの前のシャングリラ」

6位 「お探し物は図書室まで」

7位 「自転しながら公転する」

8位 「八月の銀の雪」

9位 「この本を盗む者は」

10位 「逆ソクラテス」

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金次郎、課題図書を読了し「闇の自己啓発」に挑んだものの・・・

 

いわゆる〈ポリティカルコレクトネス(PC)〉の見地から、性別や性的志向、人種や国籍などによる差別を含意してしまう言葉の使用を避け、中立的な表現に置き換える意識が高まって久しいですが、先日これもダメなのか、という例を目にしました。看護婦→看護師、ビジネスマン→ビジネスパーソン、スチュワーデス→キャビンアテンダントなどは分かり易いですし、女子力とか言ってはいけないんだろうな、というのは理解できるのですが、今回使ってはだめかもと知ったのはマンホールという言葉。そう、あの下水や埋設されている電線など地下インフラ関連の作業をするために開けられているあの穴です。どうやらそういう作業に携わった作業員の方がかつて男性であったことからその名前が付いたようなのですが、さすがに、雨の日にマンホールの蓋の上で滑らないよう気を付けましょう、と言う際に差別的な意味合いは全く無いと思いつつも、そういうことにも気を付けなければ誰かを傷つけてしまうのか、と思い直しNGワードリストに入れました。ちなみにPC的にはメンテナンスホールというのが正式なようです。ついでに色々考えてみたのですが、仕事でよく使う工数の単位であるman hourもたぶん不適切、業界用語のmiddlemanも恐らく✖で、騎士道精神の象徴で当たり前のエチケットであったレディーファーストも今や、お先にどうぞ、的なジェスチャーで下手をすると差別主義者のレッテルを貼られるという難儀な時代となっております。しかし、家政婦は見た、はPC的にはどういうタイトルになるのだろうか。ハウスキーパーは見た、だとちょっと雰囲気出ませんね(笑)。

さて、「闇の自己啓発」の課題図書⑤は「現代思想2019年11月号 反出生主義を考える」(青土社)です。この本は古代ギリシャに遡る〈生まれてこない方が良かった〉という考え方を独自の理論で〈反出生主義〉としてまとめ上げたデイヴィッド・ゼネターの主張についての様々な論稿を集めた構成になっています。

直感的に理解し難いところはありますが、ゼネターの主張のセントラルドグマは、存在してしまったために生じる苦痛は、存在しなかったことで発生する快楽の減少(=0)より常に大きいという基本的非対称性から出生を否定し、人類は穏やかに絶滅に向かうべき、というものです。

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大沢在昌作品の中で「新宿鮫」と双璧をなす代表作「狩人シリーズ」を紹介

そろそろ会社に少し顔を出そうかな、と複数の事業を経営する青年実業家のような感じで書きましたが、ただのテレワーク人材です(苦笑)。前回の緊急事態宣言の時同様に中途覚醒症状が発症し、上手くいけば21時就寝の3時起床、下手をすると22時就寝の2時起床、というようなぎりぎりの生活を送っております。あーよく寝たと思いながら目を覚まし、時計を見て1時だったときの辛い気持ちは人生で5本の指に入るぐらい厳しいものが有りますね。最近は、起きた際に聞こえる近くの高速道路の走行音(=交通量)でだいたいの時刻が分かるという特殊能力を身に着けましたが、全く役に立つ気がしません。

さて、大沢在昌先生といえば、以前このブログでも紹介した新宿を舞台にしたハードボイルド警察小説である「新宿鮫シリーズ」が有名ですが、商業的に疑問を感じるほど似通った内容を描いた「狩人シリーズ」なる作品群も手掛けられており、金次郎はこちらもかなり気に入って読んでいます。「新宿鮫シリーズ」ではキャリア警察官であるにもかかわらずある事情から出世も異動もかなわない境遇に追い込まれた鮫島が漠然とした屈託を抱えながら、警察という巨大組織の不条理な圧力に抗いつつ様々な事件を解決していくという、鮫島個人に焦点が当たった鮫島目線のストーリーになっています。一方、「狩人シリーズ」では中年太りで風采の上がらないノンキャリア刑事である佐江が、期せずして得た相棒とその相棒が持ち込んでくる面倒な事件にしぶしぶながらも関り、大変危険な目に遭いつつも事件を解決に導くという展開で、やや達観気味の佐江が相棒と結ぶ人間関係とそれが故に悩む佐江の葛藤を軸に物語は進んでいきます。鮫島と違い、佐江のスタンスは受け身でやや引き気味であり、作中での描かれ方もワンオブゼムという感じなのですが、逆に金次郎はその全体を見通す大局観や状況に応じたしなやかさが好きだったりもします。

まぁ「新宿鮫シリーズ」全11巻と「狩人シリーズ」全5巻を読破して、ようやくこの微妙な違いを朧気に理解したというのが正直なところですので、初読の方にはどちらもほぼ同じ印象になると思われます。より多く死にかけるのは佐江、意外にも恋愛がストーリーの重要な要素となっているのが鮫島、というのはちょっとしたポイントかもしれません。

では、「狩人シリーズ」の簡単な紹介と金次郎による独断評価です。

◆「北の狩人」(幻冬舎、以下全て同じ 上巻下巻):北国の訛の有る、明らかに尋常でない雰囲気でしかもかなり強い若者が新宿に現れ古い事件について尋ね回るところから始まるこの物語は、プロットもよく練られていますし、登場人物も魅力的で、1990年代の新宿の猥雑さも鮮やかに描かれているということで、その後シリーズ化されたのも頷ける秀作です。宮本という登場人物が非常にいい味を出しておりますし、主人公である雪人の恋愛も古風で良し。(評価★★★★☆)

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ミステリーホラーの注目作家澤村伊智作品を読む

ややとっつきにくいタイトルではありますが、「闇の自己啓発」(江永泉ほか著 早川書房)という本が最近売れています。公開されているまえがき、にもありますが、社会や組織にとって都合のよい〈人形〉になるための自己啓発と一線を画し、自己を保ち続けるために企画された〈闇の〉自己啓発としての月例読書会の内容を書籍化したこの本は全6章から構成されており、それぞれの章はダークウェブやAI、反出生主義などのテーマを取り上げた課題図書について議論された内容が記載されている、筈です。筈、と書いたのは、金次郎は未だ本編を読んでおらず、課題図書から取り掛かっているためで、かなり内容の重たい本を合計7冊読む必要が有り、このブログで感想を紹介するにはもう少し時間がかかると思います。お楽しみに!という内容になるか不明ですが(笑)、しばしお待ち頂ければと思います。ちなみに第1章の課題図書は「ダークウェブ・アンダーグラウンド」(木澤佐登志著 イーストプレス)でした。

さて、闇つながりというわけではないですが、今回はホラー小説の名手である澤村伊智先生の作品を紹介します。

澤村先生は、2015年に日本ホラー小説大賞を受賞した「ぼぎわんが、来る」(KADOKAWA)でデビューされ、本作は選考委員も絶賛の出来栄えで後に「来る」として岡田准一主演で映画にもなっています。また、登場人物の比嘉琴子・真琴姉妹はその後の作品にも度々出てくる人気キャラクターとなっています。

勿論、本編に登場する謎の化物ぼぎわんの強大な呪いの力も非常に怖いのですが、人間の心の闇や他人とのちょっとしたすれ違いや認識の相違によって生じる隙間が呪いを引き寄せているという構図にリアリティが感じられて怖さ倍増です。また、ぼぎわんそのもののおどろおどろしい描写を通じて感じられる表面的な知覚的怖さではなく、こういう気分の時にこのタイミングでこう呼びかけられたらそれは怖い!というように、怖さの概念そのものに働きかけられているという感覚が新鮮でした。

「恐怖小説 キリカ」(講談社)は「ぼぎわん~」の受賞から出版、二作目の「ずうのめ人形」(KADOKAWA)の執筆プロセスをドキュメンタリー的になぞりつつ、恐ろしい連続殺人が進行するというフェイク・ドキュメンタリーの手法で描かれた作品で、圧倒的なリアリティを読者に感じさせることを通じて破壊力のあるホラーに仕上げた意欲作です。勿論主人公は著者澤村伊智本人となっています。途中まで、どの登場人物がどう恐ろしい存在になるのか分からず、歯医者さんで虫歯の治療を受けている時に、いつどんな痛みがやってくるのかと身体に力を入れて身構えるあの感覚で読まされるのでかなり疲労しました(笑)。しかし、本作は講談社から出ているのに、KADOKAWAの話がばんばん出てきて、こういうのって大丈夫なのかな、という気分になったり、前2作のネタバレにはなっていないかなと気をもんだりするのもハラハラするミニホラーな感覚でした。

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ニューヨークを舞台にダイヤモンドを巡る陰謀が繰り広げられる「カッティング・エッジ」を堪能

いよいよ今週から医療従事者の皆さんへのワクチン接種が開始されるようですが、妻に「ファイザーのワクチンはマイナス80度で保存するから、接種するときかなり薬が冷やっとするらしいよ。」と言ったら、かなりびびっておりました(笑)。それはさて置いても、もう少しワクチンについて説明が有ればいいのにとは思います。厚労省のHPを見れば書いてあるのかな。

さて、2月に入り、森会長の女性蔑視発言が取りざたされておりますが、英文の記事では、

Mr.Mori made a sexist comment.

のような感じで書かれます。少し、あれ?と感じますが、Sexistには名詞の〈性差別主義者〉という意味が有る一方、形容詞で〈性差別(主義)的な、性差別(主義者)の〉のような意味も有り、~シストというとナルシストやピアニストのように~な人というふうに名詞で使いがちな日本人にはちょっと違和感の有る形になっています。また、うっかり間違って、

Mr.Mori made the sexiest comment.

としてしまうと、森さんは最高にわくわくするような発言をした、となり意味がおかしくなってしまうので注意しましょう。(sexy【セクシーな、魅力の有る、わくわくする)の最上級がthe sexiestですね。)

言葉の形にこだわってしまう金次郎は、sexistが形容詞ということを知り、最上級はまさかthe sexistestなのか、と思い辞書を引いてみましたが、比較級・最上級の表現は見当たりませんでした。でも、似たような単語で同様に形容詞が有るracist【人種差別主義者(の)】には最上級でthe racistestと記載が有りましたので、恐らくそのように変化するものと思われます。でもよく考えると、差別主義は黒か白かしかないので、コンセプト的に比較級や最上級が存在することがそもそもおかしいわけで、若干マシな差別主義者がいるかのような誤った使い方をしないよう注意しようと思いました。

ここで本題ですが、全く何のきっかけも無く「カッティング・エッジ」(ジェフリー・ディーヴァー著 文芸春秋)を読んだところ、これがかなり面白くてはまりました。捜査中の事故による怪我の後遺症で四肢マヒに苦しむ天才科学分析官であるリンカーン・ライムが、僅かに現場に残された証拠から魔法のように犯人に迫るサスペンススリラーで、知らなかったのですが既に本作でシリーズ第14作とのこと。作品毎に一つのテーマを著者が徹底的に深掘りしてストーリーを作り込んでいるので、読後にはちょっと事情通になった気分にもさせてくれる、テーマ、スピーディーな展開、どんでん返しの連続と一粒で三度美味しい作品となっております。

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金次郎、「カネを積まれても使いたくない日本語」(内館牧子著)の内容に慄然

バレンタインデーはまだなのに、日本橋三越で2月初旬から始まったバレンタインイベントで購入した年に一度の楽しみである高級チョコをなんともう食べてしまいました。今年はDelReYの10個セットで、外側のチョコ部分は勿論、中に入っているガナッシュが抜群でした。コーヒー、キャラメル、ピスタチオなどの定番だけでなく、金次郎がやや苦手としているパッションフルーツやエキゾチックフルーツのガナッシュも息が止まるほど美味で、不要不急かつ禁断のセカンドDelReYを買うかどうか真剣に妻と二人で検討中です。ちょっとお高いのは気になりますが、1個いくらという計算を忘れて楽しみたいクオリティです。

さて、自称読書家でもありますし、それなりに日本語は気を付けて使っており、会社ではメール内でのおかしな表現には中年らしく目くじらを立てております。会議中でも「今の発言は意味がよく分からない。」や「今の発言、これまでの議論の文脈と整合してないよね。」などと言ってしまう煙たいおっさんそのものです。

そんな金次郎が愕然とさせられた本が「カネを積まれても使いたくない日本語」(内館牧子著 朝日新聞出版)です。最初に出てくる〈ら抜き〉のあたりでは未だ内館先生と共に世の乱れた日本語を糾弾しよう、と意気込み、有名スポーツ選手が「オリンピックに出られる。」が言えずに「~に出れる。」でもなく微妙に変化して「オリンピックに出れれる。」と言ってしまったエピソードに、レレレのおじさんかよ、と突っ込みを入れる余裕すらありました。お名前様やご住所様などの表現にも違和感が有ったので、これに対する批判も、よしよし、と読んでおりました。

ところが、いきなり【させて頂く】がやり玉に上がると、時々使っていることに冷や汗。更に、【結構~します】や【というふうに】、【してみたいと思います】、【普通に】、【仕事で汗をかく】などの高使用頻度の表現がどんどん気持ち悪い、美しくないと断じられ、読み終わる頃には最初の勢いは消え、すっかり意気消沈でした。徹底的にへりくだる、断定を避けて存在しないリスクすら回避する、という姿勢が最近の言葉の乱れの背景とのことで、勇気を出してシンプルかつ美しい日本語でリスクを取っていこうと少し思いました。【やばい】というのはその筋の方が使っていた言葉のようですが、今ではすっかり定着し、上品なおばさままでもが「やぼうございます。」と言ったとの話は面白い。また、判断するを、判断【を】する、のように【を】を入れる表現もおかしいと書かれていて、読んだ直後に森会長が「不適切な発言につき、撤回をさせて頂きます。」と言っていて笑えました。

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「アガサ・クリスティー自伝」は最高に面白くておすすめ!

昨年2020年は後にミステリーの女王と呼ばれることになるアガサ・クリスティーが「スタイルズ荘の怪事件」(早川書房)でデビューし、〈灰色の脳細胞〉で知られるエルキュール・ポワロを世に出してから100年のメモリアルイヤーでした。

ポワロは、第一次大戦で荒廃した欧州大陸からイギリスに亡命してきたベルギー人の元刑事で50代という設定ですが、クリスティーもその後ポワロが50年以上も活躍するとは夢にも思わず、ひたすら小学一年生を続けながらストーリーが緩慢に進んでいく名探偵コナンばりの苦しみを味わうことになっています。クリスティー自身も、もっと若い設定にしておくべきだったと悔やんでいますね(笑)。

極めて大雑把な分析ではありますが、シャーロック・ホームズを情報収集重視のひらめきタイプ、エラリー・クイーンを緻密なロジック積み上げタイプの名探偵だとすると、ポワロは秩序を重んじ細部に拘る共感力タイプの名探偵と言えるかと思います。〈相棒〉の杉下右京はクイーンとポワロの間、明智小五郎はホームズタイプというイメージでしょうか。

そんなポワロものを中心に多くの作品を残したクリスティーは1976年没ということで、金次郎が4歳の頃までご存命だったことになり、親の世代にクリスティーは同時代の人気作家だったというのがちょっと実感が沸きません。偉大過ぎるからでしょうか。

そんなわけで、100周年を機に前から気になっていた「アガサ・クリスティー自伝」(アガサ・クリスティー著 同 上巻下巻)を読んでみたのですが、これが非常に面白い本で大変おすすめです。

クリスティーが15年かけて記したこの本は、クリスティー自身の人柄についてや、数多の名作が産み出された背景は勿論、当時のイギリス社会や大英帝国統治下の植民地の様子も垣間見え、ミステリーファンならずとも楽しめる一冊となっています。

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いよいよ本屋大賞2021ノミネート作品発表!

このブログもそうですが、仕事でメールを書いていても、どうも自分の文章が長たらしくてイケていない、と思うことが多いです。実際、ブログのタイポをチェックしてもらっている妻にも一文が長すぎて分かりづらいと頻繁に指摘されて修正を余儀なくされています(苦笑)。そんな時に見つけたのが、「動物農場」や「1984年」でお馴染みのジョージ・オーウェルが文章を書く際に悪文とならぬよう留意していた以下の6つの質問と6つの規則、です。ここに共有して、自らの戒めとしますので違反事例ございましたらコメント頂戴できればと思います(笑)。先ずは、次回から文章がどう変わるか乞うご期待!

【オーウェル6つの質問】

○私は何を言おうとしているのか?:一般論でなく自分自身の見解を自分の言葉で、ということだと思います。

○どんな言葉で表現するか?:伝えたいことが定まれば、自ずと使う言葉も一般的な使い古されたものでなくなりオリジナリティが出てくる、ようです。

○どのような表現やイディオムを使えば明確になるか?:ありきたりでなく新鮮なものを選ぶように、との教えです。

○この表現は効果を発揮するのに十分な新鮮さがあるか?:ちょっと上の質問と似ていますね。

○もっと短く言えるだろうか?・回避できるはずの見苦しいことを、何か言っていないだろうか?:この最後の問は、かなり耳が痛い。。。

【オーウェル6つの規則】

○印刷物で見慣れた比喩を使ってはならない:残念ながら比喩を使えるほど文才有りません(苦笑)。

○短い言葉で用が足りる時に、長い言葉を使ってはならない・ある言葉を削れるならば、常にけずるべきである:結構気にしているつもりですが、まだまだですね。

○能動態を使える時に受動態を使ってはならない:これはやっている気がしますね。英語を話す際にも無意味な受動態を使っていると反省。

○相当する日常的な日本語が思い浮かぶ時に、外国語や学術用語、専門用語を使ってはならない:これも結構誤魔化しでやっているかも、ダサい。。。

○あからさまに野蛮な文章を書くぐらいなら、これら5つの規則を破る方がまだ良い:そもそも野蛮な文章の意味が分かりません(笑)。

さて本題です。1月21日に本屋大賞2021の候補作品が発表され、いよいよこのブログにおける年に一度の大イベントである宿敵Mとの本屋大賞予想対決がスタートいたしました。ルールは昨年通り(詳細はこちら→本屋大賞2020ノミネート作品発表!)、Mが現在ドイツ在住という点を若干考慮して、Mによる予想提出締め切りは4月5日(日)24:00(日本時間)といたしました。大賞の発表は4月14日(水)ですが、それまでしばらくの間楽しめそうです。前回は非常に悔しい惨敗で、金の栞(@結構高額)を購入させられましたので、今回は勝って金次郎の金栞を手に入れたいと思います。

ノミネート10作品のうち7作が既読でしたが、何となく読まず嫌いにしていたNEWS加藤先生を遂に読むことになるので、アイドルが書いた小説という先入観をどこまで抑えて客観的に予想できるかが一つのポイントと思います。また、前回9位とあさっての予想をしてしまった凪良先生をどこに位置付けるか、常連だが上位に来ない伊坂作品の評価をどうするか、こちらも常連の深緑先生のファンタジー挑戦を正しく消化できるか、など悩みどころ満載です。ともあれ、以下ノミネート作品の簡単な紹介です。

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年末年始に乱読した本のご紹介、特に「52ヘルツのクジラたち」と「推し、燃ゆ」が推し!

しばらく前に翠江堂のいちご大福についてとても美味しいと書きましたが、今が旬のいちご大福、金次郎のおすすめ店をもう一軒紹介します。とは言え、既に紹介するまでもない有名店なのでご存知の方も多いと思いますが、我が故郷の誇る鈴懸です!東京には、新宿伊勢丹とミッドタウン日比谷に入っていますが、これまた福岡名産のあまおうを上品なこしあんと柔らかい求肥で包んだいちご大福は絶品です。緊急事態宣言直前のぎりぎりのタイミングで日本橋三越に催事で出店されており、今年もどうにか旬の味覚を堪能することができました。11月~4月の季節限定品とのことなので、何とか早くコロナに落ち着いてもらって、4月までにもう一度食べたいところです。

甘味と言えば、去年コロナ影響で銀座四丁目交差点の鹿の子が閉店されたと知った時は夫婦揃って呆然としてしまいました。銀座三越に入っている販売店では持ち帰り用のあんみつが買えるようですが、やはりあのお店で食べる絶品鹿の子あんみつとは比べるべくもありません。何度でも温かくて美味しいお茶を注いで下さるホスピタリティ溢れる店員の皆さんにもうお会いできないかと思うと、コロナへの負の感情が高まり過ぎて、呪術廻戦で言うところの呪霊になってしまいそうです。ちなみにアニメ呪術廻戦は非常に面白いので未だの方は是非一度ご覧ください。

年末年始にやることが無く、猛烈な勢いで本が読めたのは良かったものの、あの本もこの本も紹介したいと思いつつ感想メモを書くのをサボっていたら、だいぶ内容が朧気&感想が薄れ気味になってしまいました。。。なので本日は質より量ということで失礼いたします。

王様のブランチBOOK大賞を受賞した「52ヘルツのクジラたち」(町田そのこ著 中央公論新社)は、声無き叫びもきっと誰かに届くから諦めずに叫び続けよう、そしてその叫びをキャッチするために自分の心の傷から目をそらさずに、その痛みときちんと向き合おう、という強いメッセージを感じる感動作です。若干ご都合主義的なところも無くは無いですが、謎で読者を引っ張るプロットもよく練られていて、流石はブランチ良い本を見つけてきますね。今週21日に予定されている本屋大賞候補作にノミネートされる可能性が高いと思います。

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文学女子とその母上に冬休みにじっくり読める本を紹介

金次郎はカラオケ好き&時には歳を忘れてロックバンドのライブに行く程度の音楽趣味で全く高尚な感じではないのですが、10年以上前にふと手に取った〈澤野工房〉という聞き慣れないレーベルのジャズアルバムが気に入って何枚か買い集めたり、そのアーティストの渋谷でのコンサートに夫婦で行ったりしていました。そこで見た主催者の澤野さんは、ごく短いスピーチの間にもそのジャズへの情熱とお人柄が滲み出る、大変魅力的な方だなと強く印象に残っていました。ここのところ読書三昧で音楽もあまり聴けておらず、コンサートにも足を運べていなかったのですが、「澤野工房物語 下駄屋が始めたジャズレーベル 大阪・新世界から世界へ」(澤野由明著 DU BOOKS)という澤野さんの活動を綴った本を見つけて読んでみて、100年以上続く下駄屋の四代目である澤野さんが、ジャズ好きが高じて〈聴きたいものが売っていなければ自分で作る〉の精神で自らのレーベルを立ち上げるまでのいきさつや、アルバム全体を一つの作品として髪の毛から足の裏まで全身で音楽を聴いて味わって欲しい、というジャズへの熱い思いに触れ、純粋に感動したこともあり、客席からとはいえ同じ空気を共有した親近感も手伝って、またCDを買って聴きたいなという気分になりました。

広告無し、ストリーミング無し、ベスト盤無し、とお金儲けセオリーとは真逆のやり方を貫いて、徹底的に品質に拘る澤野さんの信念が世界中のアーティストや顧客に確りと評価される様子は、現代の多様化を極める消費者マーケティングで生き残る一つの型を体現していると思います。残存者利益で下駄屋が盛り返してきている、というのも面白い。

さて、まだお会いしたことは有りませんが、このブログを支えてくれている弟子の文学女子ABさんに読書の秋以来の本の紹介です。先日、学校の先生から綿矢りさ作品を読みましょうとの課題が出たとのコメントを頂きましたので、簡単に「蹴りたい背中」(河出書房新社)、「手のひらの京」(新潮社)、「ひらいて」(新潮社)、「憤死」(河出書房新社)をコメント欄で紹介しましたが、今回は更に選りすぐりの5作品を捻りだしました。既に美容室図書館経由で読まれたと思うのでリストに入れていませんが、「和菓子のアン」(坂木司著 光文社)もきっと好みの方向ではないかと思います。

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【アフター4読書一周年記念】人気記事ランキング発表!(1~5位)

金次郎家ではテレビを垂れ流し的に見ることがあまり無く、ニュース以外は録画してある番組を見るのがほとんどなのですが、そんなたまにしか見ないテレビでこの数か月気になってやまないCMが有ります。そのCMとは、はいあの〈やっちゃえ、日産〉でお馴染みの木村さんの出演されている一連のシリーズです。最新の自動運転バージョンでは、〈スカイラインなんて自分で走る方が ゼッタイ 楽しい〉、〈でも、意外とさぁ〉、〈こいつの運転も、かなりイケてる〉、〈やるじゃん、プロパイロット〉と次々に繰り出される台詞でじわじわとぞわぞわ感が高まり、とどめの〈追い越しちゃう?〉で言葉にできないざわつきが金次郎の心を支配します。木村さんはカッコいいですし、同世代のスターであることに全く異論無しなのですが、このCMは確実に彼のそういうポジティブで分かり易い一面を売りにしたものでなく、もっと何か得体のしれないものに心の奥底に働きかけられているような焦燥を感じさせられ、新しくて怖いCMだなぁ、と思いながら目が離せなくなっております(笑)。皆さんの印象は如何でしょうか?

前回→【アフター4読書一周年記念】人気記事ランキング発表!(6~10位)に引き続き、いよいよ人気上位記事の発表です!前回の内容を読んだ妻に、どうして10位から発表しなかったのか!、とさんざん詰(なじ)られましたので(涙)、今回はきちんと下位の記事から発表させて頂きたいと思います。

5位:金次郎、中学生になった文学女子への本の紹介に挑戦(2020年6月30日)

改めて紹介した本のリストを眺めていて、大人げないと言うか大人過ぎるセレクションにかなりのKY印象を禁じ得ません(苦笑)。住野先生を気に入ってもらえたことと、大人である文学女子のお母さんに楽しんで読んで頂けたことがせめてもの救いです。とは言え、いずれ劣らぬ名作揃いであることは間違い無いですから、このブログを読んで頂いている未読の方は是非お試し下さい。

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気が早いですが、金次郎は2024年のアメリカ大統領選挙に注目!

ようやく落ち着いてきたアメリカ大統領選挙ですが、アメリカではトランプ大統領をどうしても再選させたくない人々を〈ネバートランパーズ〉と呼ぶようで、英語って面白いとちょっと思いました。日本でも大阪の梅田がバイデンと読めるとか、宇部市のバス停の上梅田がジョーバイデンと読めるとか、福井県小浜市ばりの微妙なフィーバーが少し笑えます。やや気の早い話ですが、金次郎は次の2024年の選挙に注目しておりまして、さすがに81歳になるバイデンさんはちょっと更に4年は難しいと思うので、にわかにブームとなっているカマラ・ハリス副大統領が民主党候補として選挙を戦う可能性も大いに有ると思っています。共和党はと言うと、勿論たくさん候補はいると思いますが、有力候補の一人が前国連大使のニッキー・ヘイリーさん。こちらもインド系の女性ということで、もしカマラvsニッキーという戦いになれば、アメリカの多様性と新しい時代の象徴の選挙になりそうで、今回の白人のおじいさん同士のシルバーな選挙戦とは違った形で盛り上がれるのではないかと今から楽しみにしているところです。ちなみに民主党にはアレキサンドリア・オカシオ=コルテス(通称AOC)さんという、スーパー左翼の女性候補(現在31歳)も一部の人にかなり人気が有り、こちらが出てきてもやっぱり面白い。早く4年後にならないかな、と思ったりする今日この頃です。

さて読書ですが、読もうかなどうしようかな、と何度も迷って遂に読んだのが「いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件」(大崎善生著 KADOKAWA)です。闇サイトで出会った3人の男が、全く見ず知らずの女性を金目当てで連れ去り殺害した悲惨な事件を被害者の人生に焦点を当てて描いたずっしり重いノンフィクションです。事件の起こった2007年当時も報道を観て気にはなっていましたが、この本を読み、悩みながらもひたむきに生きようとしていた被害者の方の無念、母一人子一人のささやかな幸せを失った親御さんの塗炭の苦しみの一端を知って、犯人を許せない気持ちは勿論ですが、なんとなくニュースを消費していただけで、事件の後に30万人以上の署名を集めて、一人殺しても死刑にはならない、との所謂〈永山基準〉の壁に立ち向かわれたご遺族の活動も知らなかった自分が非常に情けなくなりました。お母さんにマイホームをプレゼントする夢のためにこつこつ貯めた貯金を守ろうと、犯人の脅しに屈せず暗証番号を絶対に明かさなかった被害者の方の途方も無い勇気にただただ首を垂れるばかりです。彼女の食べ歩きブログが署名活動に使われていた関係でまだ閲覧できるのですが、日常を奪われた無念が胸に迫ってくるようで殆ど読めませんでした。

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金次郎はビジネスパーソンとしてちゃんとビジネス書も読んでいます

今回ちょっと長いのでいきなり本の紹介です。ネタ切れではありませんのでご心配なく(笑)。感想を書くのに骨が折れるのでやや敬遠気味でしたが、たまにはビジネス書的なものも紹介せねばと思い、どうせならと長らく積読となっていた「ティール組織:マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」(フレデリック・ラルー著 英知出版)を気合で読んでみました。

この本は組織をその発展段階によって幾つかに分類した上で、現在その中でも最も進んだ形態であるとされる〈進化型組織〉に焦点を当て、その仕組みや優れている点について実例を挙げながら解説する内容となっています。

それぞれの発展段階にイメージカラーが付されているのが面白いのですが、原始時代の環境を受け入れるしかない狩猟採集を目的とする組織は〈受動型組織(無色)〉と規定され、呪術的な〈神秘型組織(マゼンダ)〉、そしてマフィアのような〈衝動型組織(レッド)〉と続きます。

現在の日本企業は〈達成型組織(オレンジ)〉から〈多元型組織(グリーン)〉への移行期という大まかなイメージですが、この本で紹介されているのは更にその先の形態である〈進化型組織(ティール)〉ということになっています。ティール色がどんな色かよく分からないので調べると青と緑の中間的な色のようで、何となく自然の多様性を穏かな精神で俯瞰するようなイメージの色かな、という印象です。

〈多元型組織〉への移行に四苦八苦している金次郎のような凡人には、より進んだ組織と言われてもなかなかピンと来ませんが、〈進化型組織〉を象徴する特徴は1.セルフマネジメント、2.全体性(フォールネス)、3.存在目的、ということで、簡単に言うと、ノルマも戦略もリーダーもない少人数のチームの集合体として構成される組織が、組織の存在目的だけを羅針盤に、完全な情報公開と助言システムを活用して、ひたすらに目的達成を追求する、ということのようです。利益や成長が一義的な目標とされておらず、もう一段高い存在目的のレベルで組織の在り方を考えており、営利企業にも非営利組織にも活用可能、株主利益至上主義でなくスチュワードシップに対応している、という点でなんとなく最先端感は出ています。

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