金次郎、中学生になった文学女子への本の紹介に挑戦

先週は三日出社だったのですが、毎日会社に行って時々飲み会して、時には客先訪問をしたり出張に行ったりしていた日々が幻だったのではないか、と思うほどかなり疲労してへとへとになりました(笑)。今後徐々に慣れて行くのか、それとも加齢により元には戻れないのか、慎重に様子を見なければと真剣に思った一週間でした。

土曜日にE美容師を訪問し髪の毛をさっぱりと切り、ダイエット中というE美容師にはやや酷だったかなと後で思った「難事件カフェ」(似鳥鶏著 光文社)、「難事件カフェ2 焙煎推理」(同)を紹介しておきました。どうして酷かと言いますと、このミステリーには至る所に超美味しそうなスイーツの数々がそれにぴったりと合う珈琲や紅茶と共に登場し物語に彩を添えており、空腹に耐えながら読むのは不可能な内容になっているためです。もやし食べて頑張っているEさん、ごめん。

さて、このブログでお馴染みの文学少女への本紹介シリーズは、ありがたくも多くのviewを頂いておりますが、今回も晴れて入学式を済ませ中学生となった文学少女改め文学女子A&Bさんに僭越ながらいくつか本をお薦めいたします。東野圭吾、村上春樹といった著名作家の作品を読み漁られているということで、あまり制約無しに会社で隣に座っている同僚に紹介する感じでやってみますので忌憚のない感想を頂ければと思います。お恥ずかしながら、うちの同僚よりA&Bさんの方が読書はたくさんされていますね(苦笑)。。。

(これまでの紹介記事はこちら)

金次郎、懲りずに文学少女に本を紹介+楡周平作品を読む

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金次郎、本の紹介を頼まれる+2019年4~5月振り返り

【金次郎から文学女子ABさんへのおすすめ作品9選】

「カディスの赤い星」(逢坂剛著 講談社):初版は昭和60年ぐらいだと思うのでちょっと古い本にはなりますが、とにかくページをめくる手が止まらなくなるストーリー展開の吸引力、スペインにも飛ぶ大きなスケール、最後に驚かされるミステリーとしての完成度、とどれを取っても傑作と言って良いクオリティです。金次郎が、面白いミステリーを紹介して下さい、と頼まれた際に必ず候補になる作品で楽しめること間違い無しです。

「君の膵臓をたべたい」(住野よる著 双葉社):ブームにもなり本屋大賞で2位にもなって映画化もされた作品なので既に読まれたかもしれませんね。タイトルだけ見て気持ち悪いと思って敬遠してしまうのは勿体無い爽やかな青春小説であることに加え、終盤のあの心臓がつぶれるかと思う衝撃が圧巻なので、ぜひ体験して欲しいところです。

「また、同じ夢を見ていた」(住野よる著 双葉社):クラスでちょっと浮いてしまっている大人びた少女の目線で紡がれる不思議なお話です。唯一の友達である尻尾のちぎれたネコちゃんの可愛さに癒されるだけでなく、感動のラストに向かって少しずつ謎が明らかになるプロットも凝っていて、「君の膵臓~」で鮮烈にデビューした著者が読者の期待にきちんと応えた第二作です。

「慟哭」(貫井徳郎著 東京創元社):大御所貫井先生のデビュー作にして最高傑作ではないかと金次郎が勝手に思っている珠玉のミステリーです。二つの視点が交互に描かれ、緊迫感と不穏さがどんどん高まって行く展開は炎天下の描写とあいまってまさに手に汗を握ります。

「理由」(宮部みゆき著 新潮社):ものすごくたくさんの登場人物を一人ひとり緻密にドキュメンタリータッチで描き込んでいく、宮部流の真骨頂とも言える作品で、高級マンションで起こった殺人事件を犯人の動機に焦点を当ててじっくりと解明していく読み応えの有る直木賞作品です。

「戦場のコックたち」(深緑野分著 東京創元社):第二次世界大戦中のヨーロッパが舞台という珍しい設定で、従軍コックが非日常の最たるものと言える戦場で〈日常の謎〉に挑む新し過ぎるチャレンジに満ちた作品です。近刊の「ベルリンは晴れているか」(筑摩書房)もヨーロッパが舞台ですが、どうして日本人に海外がこんなに細かく描けるのだろう、と深緑先生にはいつも驚かされます。

「ロング・グッドバイ」(レイモンド・チャンドラー著、村上春樹訳 早川書房):村上春樹が愛してやまないレイモンド・チャンドラーの私立探偵フィリップ・マーロウシリーズの中でも最も有名と言っても過言ではない名作です。マーロウのタフな感じの魅力は流石に中学生には受け入れられないかとは思いつつ、完全に個人的な趣味で選定してしまいました。金次郎は古い翻訳と両方読みましたが、村上先生の翻訳は非常に味が有って好きです。マーロウとレノックスが杯を重ねて友情を育んだギムレットをバーで注文したらジンが強すぎてベロベロに酔ったことを思い出します。

◆「夜は短し歩けよ乙女」(森見登美彦著 KADOKAWA):〈先輩〉と〈黒髪の乙女〉が京都を舞台に繰り広げるハチャメチャな出来事を描く、森見ワールド全開の漫画的小説です。とにかくエンターテインメントに浸りたい気分の時はこういう作品が良いですね。

「7つの名前を持つ少女 ある脱北者の物語」(イ・ヒョンソ/デヴィッド・ジョン著 大和書房):北朝鮮初のTEDスピーカーとなった著者の波乱の半生を描いたノンフィクション作品です。最近何かと話題の北朝鮮について知る入口としては重すぎず、絶望の後に救出されるという感動の場面もなかなか良いので時事ネタものとしてリストに入れてみました。金次郎の若いうちから世界の出来事に目を向けておけばよかったとの反省も踏まえた選出です(笑)。

さて通常の読書ですが、相変わらず自分の思考の癖が気になるので、「THINK SMART 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法」(ロルフ・ドベリ著 サンマーク出版)、「事実はなぜ人の意見を変えられないのか:説得力と影響力の科学」(ターリー・シャーロット著 白揚社)の二冊を読んで勉強してみました。様々なバイアスとヒューリスティックスが必ずしも正しい意思決定につながらないのは、人類の進化を育んだ原始社会と現代社会のリスクプロファイルのギャップに起因するところが大きいと感じます。直感に頼り過ぎてはいけない一方、他人の説得にはデータやロジックへの過度な依存も危険、と言われてもなかなか難しいですが、このソーシャルネットワーク全盛の時代に、人間が本能的に持っている社会との関わり方のデフォルトパターンについては、これらの本を何度も読んで認識しておくべきと感じました。少し話はそれますが、人間の脳は先回りしてどんどん未来のことを考えるようにできている、というのは、仕事で色々と失敗をする前に知っておきたかった。。。

以下は少し前に書いたマイケル・ルイスの本の感想ですが、この本にも上述の本にもノーベル賞経済学者であるダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」が度々出てくるので、次はこれを読みます。

+++「かくて行動経済学は生まれり」(マイケル・ルイス著 文芸春秋)は行動経済学の代表的なモデルであるプロスペクト理論を導き出したダニエル・カーネマンとエイモア・トベルスキーの友情と偉大な才能のケミストリーという奇跡について描いたノンフィクションです。著者の代表作である「マネーボール」では経験的アプローチと統計的アプローチの対立がメジャーリーグを舞台に見事に描かれましたが、本作では経験的アプローチが間違った結論に辿り着く仕組みを解明しようとした二人のイスラエル人科学者の人生を描いています。代表制や利用可能性などのヒューリスティックスは既にあまりにも有名なので、理論の深掘りでなく二人の天才の親交やそれぞれの生い立ちとか性格にフォーカスしている著者の着眼点がいつもながら素晴らしい。未読なのでカーネマンの「ファスト&スロー」を読書リストに追加です。+++

とっても長くなってしまいました、すみません&最後まで読んで頂きありがとうございます!

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

「金次郎、中学生になった文学女子への本の紹介に挑戦」への8件のフィードバック

  1. 金次郎さん、こんにちは。
    今回もご紹介ありがとうございます。
    さっそく図書館予約したり、読む準備をしています。

    前回ご紹介いただいたものは、アガサクリスティ以外は読了しました、ふたりは。アガサクリスティ、まだ見つけられず。本屋をぶらぶらするのは不要不急かと思うと気がひけるし。難しい時代です。
    あれ、そういえば感想聞いてない… 学校も部活も始まり、あまり本の話をすることがなくなってしまったので。いまはずーっと部活…吹奏楽…の話一辺倒です。読むのは、学校の読書時間も使って進んでいるようですが。また聞かねば。

    ここ最近は、岬洋介シリーズを読み進めたり…最初のドビュッシーが一番面白かったそうですが…、「カラフル」、「パパの電話を待ちながら」をE美容師にお借りしたり。「ぼくたちは国境の森でであった」を「師匠が読書感想文みたいな本、って」と渡したら、笑ってました。

    学校の図書館も、7月からようやくオープンした模様です。まだ閲覧自由ではなく、そもそもが予約入場?らしいですが。それでも、ABとも、週1回の1年生曜日には予約して見に行っているらしいです。ついでに借りてきてくれればいいのに、本を用意するのは母の仕事と思っているようで、「本は家にある」と。お友だちと情報交換して自分で手にとればいいのにさ… ぶつぶつ…

    1. 恵子さん、こんにちは。もう遠い昔ですが、中学生になりたての頃は、新しい友達、楽しみにしていた部活(陸上部)、おじさんみたいな先輩、人生で初めて悪に接近した気分にさせられた不良の存在、暴力教師、と目まぐるしくて、完全に親の心子知らず状態だったことを思い出します。ABさんの無限の可能性が本当に羨ましいですが、お母さんはストレスですね^^
      遊び呆けて中学校の図書室の場所も覚えていないくせに僭越ですが、ABさんが「あの本を読んでいた頃あんなことがあったなー」と大人になってから振り返り易いように、心に引っかかりそうな本を選んでまた紹介します!

      1. 金次郎さん、こんにちは。
        ようやく、ABに前回の感想?を聞きました。Aはドビュッシーが、Bは舟を編むがベストとのこと。次点はそれぞれ舟とドビュッシーで、以下、夜のピクニックが続きます。
        学校の図書館… たしかに、中学校も高校も記憶にありません。どんなところだったのでしょうか笑
        先日Eさんに、「満願」と「透明な夜の香り」をお借りしました。Eさんは満願は中学生にはどうだろう、お母さんが読んでみて判断を、と言っていたのに、さっさと先に読まれてしまいました。どういうことかしら?

        1. 恵子さん、ご連絡ありがとうございます。おかげさまで、なんとなくお二人の好みが分かってきた気がします。次回も楽しく読んでもらえるよう頑張ります。E美容師に薦めたその二冊はどちらもなかなか面白いので、先を越されてしまっても是非メゲずに恵子さんもお読み下さい^^

  2. 金次郎さん、いつまでも「ライオンのおやつ」問題です笑
    ABちゃん、夏休み前に図書室で本を借りてきました。そのとき一緒だったお友だちに「ライオンのおやつ」をオススメし、その子は借りたそうです。ということは、ライオンは中学校の司書さんに中学生OKと認められたのですね(^.^)
    別のお友だちには、ピブリアを持たせたそう。
    自分たち用には、住野よるさんの「また、同じ夢を見ていた」が入っていました。膵臓が気に入ったみたいです。
    昨日Eさんから、「難事件カフェ」をお借りしました。まだ読んでいないそうですが、我が家の読書ペースのほうが早いからお先にどうぞ、と。お先に失礼します。

    1. 恵子さん、お返事遅くなりすみません。やはり35年も時が経つと中学生のレベルも上がってくるということですね。恐れ入りました(笑)。住野先生は好きで読んでいるので、またリストに入れますね。入れるまでもなく読んでしまうかな。。。ようやく紹介できそうな本がたまってきたので、やや気が早いですが読書の秋に向けてまたブログに書きますね。読書感想文のお役にも立っているそうで嬉しいです。Eさんには先日「国宝」(吉田修一)をおすすめしておきました。

  3. 金次郎さん、こんばんは。
    Eさんから、読書感想文のこと聞いてくださいましたか。ABとも、夏休み前にさっと決まり順調だわと思っていたのですが… 思わぬ障壁がありました。「数学の自由研究」という、昭和の中学生には縁もゆかりもなかった課題です。外部のコンクールなので過去の作品は見つかりましたが、いざ自分のテーマとなると頭を抱えるのみ。実は読書感想文は努力目標で、うーむこのまま時間切れかと思っていましたが、なんとか昨日から書き始めることができました。二人とも才能がないため、つまんない感想文を書いておりますが、努力目標にちゃんと取り組んで偉いなと思います。
    という状況で、二人はこの夏まったく本を読んでおりません。感想文の目処がついた昨日、やっと読書が解禁されました。かわいそうに…

    1. 恵子さん、こんばんは。
      読書好きが2週間も本を読めないのは辛いですね。私はそんなことになったら、中身の無いスカスカおやじになってしまう恐怖で更に眠れなくなると思います(笑)。
      数学の自由研究、全くイメージわきませんが、例えば統計的な仮説検証などをやるのですかね?ちなみに、読書しながら数学も楽しめる作品としては、垣根先生の「光秀の定理」は好適と思います。来年はこれで一石二鳥!

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