あけましておめでとうございます!2021年こそは質の高い読書を目指します

金次郎家評では、さだまさし、玉置浩二、superflyのパフォーマンスが素晴らしく、想定外に良かったのがミスチルとYOASOBI、という感じの無観客をものともしなかった紅白歌合戦でしたが、氷川さんの美川憲一化が既定路線入りしたこととYOSHIKIさんのメイクが違った意味で印象に残りました。

総合司会のウッチャンが老けたね、と妻と話していた際に、そう言えば30年前金次郎が上京してきた頃住んでいた学生ハイツの目の前の部屋に、ウッチャンナンチャンが上京したばかりの学生の部屋訪問という番組の企画でやって来たことをふと思い出しました。テレビに出たその部屋の友人が、あのコンビかなり仲が悪い、と言っていたのが懐かしい(笑)。その学生ハイツは、1~2Fがパチンコ、3Fがカラオケ、9~11Fがサウナというビルの4~8Fという素晴らしい環境で、そこでは不思議な仲間たちとのバカ過ぎるハイティーン生活が繰り広げられたのですが、楽しかった思い出を忘れてしまわないようこのブログでもぼちぼち書いていこうと思います。

年男だった2020年は感覚的にはあっという間に過ぎ去りましたが、家にいることが多かったからか読書は随分とはかどり、この1年で374冊読むことができました。結果としては一日一冊を達成でき人生最多の読書量となったのですが、やはり量を追いかけ過ぎたきらいが有り、去年のお正月のブログで掲げた一冊一冊をじっくり読み込むとの目標が今一つ達成できなかったと反省してます。

リストを眺めてみると、本屋大賞の予想をいつの間にか意識していたのか、小説の新刊に偏った本の選択になっており、50代目前となる今年は哲学や科学関連、歴史的名著などを厚めにじっくり読んで、どうにか人間の幅を広げて年相応になれるよう頑張ろうと思います。

さて、新年一発目の本の紹介はベン・マッキンタイアー著の歴史諜報活動ものです。「KGBの男 冷泉史上最大の二重スパイ」(ベン・マッキンタイアー著 中央公論新社)は、ソ連KGBの諜報員であったオレーク・ゴルジエフスキーがMI6に協力する二重スパイとなったいきさつや、スパイ工作の詳細、旧ソ連での内部調査の生々しい実態などをリアルに描写したスパイ映画さながらのノンフィクション作品です。

見破られぬよう工夫された微妙な目印による合図を一日何度も点検して回ったり、逃走の合図が出るのを待って雨の日も風の日も目印を抱えて同じ場所に通い続けたり、極めつけは数時間をかけて念入りに尾行をまく〈ドライクリーニング〉を繰り返したりと、とにかく面倒臭くて忍耐が必要な諜報員実務が細かく説明されていて、素直に感心すると同時に、せっかちかつずぼらな自分には絶対無理だなと思いながら読みました。

ゴルジエフスキーの諜報活動は、当時のサッチャー首相とゴルバチョフ書記長の会談内容に影響を与えたり、ソ連の内情をリークすることでアメリカによるスターウォーズ作戦の推進を後押ししたりと、冷戦下での情報戦のまさに中心で実行されており、大げさでなくソ連崩壊にも間接的に影響を与えた事実にぞくぞくします。

最終版の息をのむ脱出作戦の迫真の描写は、まさに究極のドキュメンタリーであり、小説より奇とされる事実の力に圧倒されます。

「ナチを欺いた死体:英国の奇策・ミンスミート作戦の真実」(ベン・マッキンタイアー著 中央公論新社)は第二次大戦中に英国諜報部が中心となって実行したミンスミート作戦について詳述した、こちらもノンフィクションです。

ミンスミート作戦とは、ナチスに連合国の地中海進出作戦における上陸地点がギリシャかサルディニアであり、常識的に上陸地点と想定されるシチリアはフェイクであると信じ込ませるために、偽の機密情報を持たせた軍人に偽装した死体をスペイン沿岸に投棄する、というもので、破天荒かつスパイ作戦や諜報戦略のエッセンスが詰まったたいへん興味深い内容となっています。

条件に合致する適当な死体を探し保存する、偽軍人の人物像を作り上げる、持たせる手紙の内容を吟味する、どこから誰を通じてナチスに情報を流すか考える、英国側の情報が洩れなかったとの認識をナチスに信じ込ませる、適切な場所で見つかるよう死体を潜水艦から上手い具合に投棄する、とやることは多く難易度も高いのですが、チャールズ・チョムリー(Cholomondeleyと異常に読みにくいw)とユーエン・モンテギューが緻密に忍耐強くこの任にあたり、紆余曲折は有ったものの見事に作戦は成功し、連合国はほぼ戦力を失うことなく要地シチリア上陸を果たしました。

結果としてヨーロッパ戦況の大きな変化、その後のムッソリーニ失脚につながったことから、あまり知られていませんが、ミンスミート作戦は歴史上有数の欺瞞作戦成功例と言えると思います。

後から振り返ると、この作戦も完璧ではなく、その細部にはそれなりの綻びも有り、ナチス側に見破るチャンスも有ったのですが、失敗にはつきものの確証バイアスと追従主義が本件においても正しい判断の妨げとなっており、この部分はビジネスにおいても学ぶところ大でした。

死体を仕立てて情報を流すのもさることながら、当時中立国であったスペインが機密情報を律義に英国に送り返してしまうと元も子もなく、どうすれば微妙に裏切ってナチス側への漏洩が実現するか、がこの作戦の一つのカギであり、関係者の演技ぶりはその気持ちを想像すると非常に面白く読めます。また、この作戦の元ネタにジェームス・ボンドの生みの親であるイアン・フレミングが関わっていたとか、007シリーズの謎のボスであるMのモデルにあたる人が登場しているとか、面白いエピソードも満載ですが、個人的には死体が身に着けた下着が故オックスフォード大学学長の遺品であったという部分が笑えて好きでした。

長くなったので今回はこのあたりで。今年もどうぞ宜しくお願いします!

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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