〈板垣死すとも自由は死せず〉の嘘!

(前回の 「二人のカリスマ」(江上剛著)を読みセブン&アイを改めて学ぶ が読めないケースが有ったようなので、宜しければこちらからお願いいたします。)

相棒シーズン19が遂に始まりましたが、何と言っても先日亡くなられた芦名星さんが出演されており、これまでと変わらぬ好演をされていたのを観て非常に悲しい気持ちになりました。初回は全く違和感無かったですが、第二回の放送では声が少しいつもと違うかな、という印象で、後付けではありますが色々と悩まれていたのだろうか、と思ったりして更に悲しくなりました。心よりご冥福をお祈りいたします。

さて、門井慶喜先生は歴史上の人物を主人公としたフィクションをよく書かれていますが、ヒーロー化するようなデフォルメをされておらず、筋の通らないところや、意地悪で嫌な奴なところもそれなりに描かれているので、読後の痛快感は強くないのですが、人間くさいリアルさが感じられるところがだんだん癖になってきます。以前のブログで紹介した作品では徳川家康と宮沢賢治が主人公でしたが、今回は板垣退助と辰野金吾という渋いところを攻めています。

「自由は死せず」(門井慶喜著 双葉社)は、幕末の志士、維新の元勲、自由民権運動家、憲政の父、とめまぐるしくキャラ変を繰り返す、ある意味捉えどころの無い板垣退助の半生を、特段美化することもなく、淡々と描いた作品です。

教科書的には、立志社から国会期成同盟、そして自由党と他に先駆けて本格政党を立ち上げ、〈自由〉の概念を国民に根付かせた民権運動家として記憶している部分が大きいですが、薩土密約から土佐軍の近代化、甲府での新選組撃破、会津城攻略など、幕末の激動期にもかなり活躍していたと知ってやや意外でした。武市半平太、中岡慎太郎、後藤象二郎ら土佐藩出身者との縁が面白く描かれていますが、同じ土佐出身でも坂本龍馬や岩崎弥太郎との関わりは薄かったようで扱いは小さめです。

 

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「二人のカリスマ」(江上剛著)を読み、セブン&アイを改めて学ぶ

 

昨日、美味しいお寿司を食べてほろ酔い上機嫌で帰宅した際に、よい子はうがい、と思い洗面所のコップに水を汲みうがいをしようとしたところ、若干というか大いなる違和感を感じました。酔いも手伝い気にせずうがいを強行したところ、信じられない量の泡が口から溢れるホラーな状況に。慌てて口中をゆすいだのですが、どうやら妻が買ってきたものを除菌消毒した洗面所の掃除の際にうがいコップを洗おうとキッチン洗剤を注入したのを忘れて放置してしまっていたようです。歯が洗いたての皿のようにピカピカになったかな、と思ってチェックしましたが普通でした(笑)。コロナ対策で色々と除菌に気を使ってくれている妻に感謝するシャボン玉おやじでした。

さて読書の話。「二人のカリスマ」(江上剛著 日経BP社 スーパーマーケット編コンビニエンスストア編)は伊藤雅敏、鈴木敏文両大立者の立志伝ですが、イトーヨーカ堂とセブン・イレブン・ジャパンの歴史を知るのに非常に有用な内容でした。不勉強で今ひとつよく分かっていなかったこの二社の関係がクリアに理解できますし、ダイエーや西友との違いも、この部分はフィクションだと思いますが、三者三様の経営者の因縁も絡めて描かれているので理解し易いです。〈成長より生存〉を掲げる守りの伊藤さんと、常にイノベーティブな攻めの鈴木さんが好対照ですが、同時代、同じ会社にこれほどの凄い人材が揃って、尚且つ共に活躍したという奇跡が本当に羨ましいです。また、会社が大きくなってもお店の周囲の掃除を欠かさず、いつまでも恩のある千住商店街への義理を忘れない伊藤兄弟の母上が素晴らしい。妻が近くの赤札堂によく通っていますが、羊華堂(千寿)は赤札堂(上野)、キンカ堂(池袋)と共に東京三堂と呼ばれていたことは知りませんでした。

江上先生の作品を初めて読み、かなり面白かったので、「百年先が見えた男」(PHP文芸文庫)も読んでみましたが、こちらは高杉先生の「炎の経営者」的な内容で、やや感情移入度が低かったものの、大原総一郎クラレ元社長の崇高な精神に触れ、仕事に取り組む姿勢について考え直すきっかけになる一冊でした。驕らず謙虚に、世の中のためになる難しい仕事に挑戦し続けること、が大切と言われ、胸に手を当てて唸っております(苦笑)。クラレや大原一族についてもだいぶ詳しく描かれており参考になりますね。

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「ユーラシアの双子」(大崎善生著)を読んで海外旅行を疑似体験

本日は人間ドックに行って参りました。感染対策がどうなっているのか等やや不安でしたが、若干密ではあったものの、不安を感じる場面はなく、非常にスムーズに完了しました。驚いたのは、胃カメラ用に真ん中に穴が開いたマスクが用意されていたことで、正直誰の何を守っているのか微妙ではありましたが、気持ちは伝わりました(笑)。おかげさまで、結果もそこそこで、悪玉コレステロールの微増以外は大きな変化無し。ただ、こんなに外食してないのに微増といえ増えているのはちょっと困ったなという感じです。そして、一年間楽しみにしていたドック後の昼食についている、絶品のフルーツソースがけヨーグルトが業者変更により無くなってしまっていたのがたいへん残念で、やけになり帰りにラ・メゾンドショコラでチョコレートを購入してしまいました。悪玉コレステロール。。。

さて読書ですが、最近は海外出張も旅行も機会が無いので、「聖の青春」(講談社)で大感動した大崎善生先生の「ユーラシアの双子」(講談社 上巻下巻)を旅小説と思い読んでみることに。ところが、旅は旅なのですが、最愛の娘を自殺という形で失い、その責任を感じ悩み続けて人生の目標を見失った五十男の石井が、旅先での出会いや経験、シベリア鉄道内の閉鎖空間での内省、そして娘同様鬱病に苦しみ自殺を決意し偶然にも石井と同じくリスボンを目指すエリカとの関わりを通じ暗闇の中に一条の光を見出す再生の物語というかなり重い内容でした。ユーラシア大陸横断の旅の中で、多様な人々、歴史、芸術や食文化に触れ、朝から晩まで浴びるように酒を飲み続ける石井が、外部からの刺激と深い内省によって自己の境界線も曖昧となる混沌の中から自分自身を再構築して行く過程は、同年代の金次郎にはたいへん刺激的であると同時に、将来の可能性への希望ともなりました。ただ、焼酎、ウォトカ、赤白ワインそしてたくさんのローカルビールと絶え間なく飲み続ける石井さん、再生の前にアル中が心配になります(笑)。

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ある意味フランスを代表する作家であるミシェル・ウエルベックの最新刊を読む

以前ブログでも紹介したストロベリーナイトシリーズのドラマ版で姫川玲子役が本当に素晴らしかった竹内結子さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。悲しい気分にまかせて、本日はどちらかと言うとネガティブな気分になる本ばかりを集めて紹介します(苦笑)。

「その日、朱音は空を飛んだ」(武田綾乃著 幻冬舎)はスクールカーストという単純な言葉では全く表現しきれない高校生の込み入った人間関係を描きつつ、他人同士が分かり合うことの難しさを突き付けてくる、かなり怖い気分にさせられる青春ミステリーです。なぜ怒っているのか、なぜ悲しんでいるのか、実際に他人の心の底は分からない中で、相手を思いやることの本質についても考えさせられます。自分が高校生の頃は何も考えずに楽しく過ごしたと朧気に記憶していますが、無神経に多くの人を傷つけたのではと冷や汗ものです。女子高生の飛び降り自殺というモチーフは「冷たい校舎の時は止まる」(辻村深月著 講談社)と重なります。

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いつの間にか読書の秋が始まり、慌てて文学女子に本を紹介

金次郎がまだ若かりし頃、政界ではYKK(山崎拓・小泉純一郎・加藤紘一)が新世代のリーダーとしてもてはやされておりました。それがいつの間にかNが増えてNYKKになったので、Nこと中村喜四郎代議士とはどんな人なのか、と興味を持ったことを覚えています。その後彼は若くして建設大臣となり、建設族のプリンスとして将来の総理候補と目されるまでになったのですが、突然のゼネコン汚職スキャンダルで逮捕、起訴され、最終的には有罪が確定して服役の憂き目を見るというアップダウンの激しい半生だったと記憶していました。

金次郎はその後政治に興味を失ってフォローしていなかったのですが、最近中村喜四郎の名前をちょくちょく見るなと思い調べるとなんと未だ連続当選中で、無所属で国会議員を続けられていると知り驚きました。そこで、昨年刊行された「無敗の男 中村喜四郎 全告白」(常井健一著 文芸春秋)を読んでみたのですが、中村代議士の政治に拘り続ける執念がとにかく凄くて圧倒されました。格差是正を掲げて70歳を過ぎても打倒自民党を目指して野党共闘を働きかける意気軒高ぶりや、自らバイクで地元を走り回る〈選挙の鬼〉の姿は故田中角栄を彷彿とさせ印象的です。人のいないところを選んで辻説法するとか、組織的な選挙活動はしないなど、選挙に関する逆張りの理論もなかなか面白いと思いました。

また、ロッキード事件前後の田中派の状況や、当時の小沢一郎との確執など政局についての裏話も盛り込まれており、最近の話では特に恩讐を越えた小沢一郎への働きかけの場面はなかなか迫力が有って引き込まれますし、逮捕取り調べ時の140日間完全黙秘で名前すら名乗らなかったエピソードや、刑務所暮らしでどう自分を保っていたかの話などは本当に凄みを感じます。最近めっきり少なくなった〈政治屋〉に思いを馳せ、令和の時代の政治について改めて考えるきっかけとなる本でした。

さて、ちょっと前まで暑かったのに、最近めっきり過ごしやすくなり、もう秋じゃないか、と慌てて恒例のお薦め本企画です。文学女子ABさんは中学生となり部活でお忙しいようですし、金次郎がE美容師に紹介した本をEさんに先んじて美容室図書館からレンタルされているとのことなので(笑)、今回はそれらを外して六作品選んでみました。楽しんで頂けると嬉しいです。

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金次郎、いま売れている「法廷遊戯」(五十嵐律人著)を読んで翻弄される

先日友人が、火鍋の天香回味(テンシャンフェイウェイ)が閉店したらしい、と不吉なことを言ってきたので、慌てて食べログを見てみると、9月16日から全店舗で感染対策・営業時間短縮の上で営業再開する、というお知らせが出ており心から安心しました。通常は火鍋の締めで食べるラーメンをランチではメインとして出してくれるこのお店は、二日酔いの時や、ちょっとピリッとしない午前中にもってこいのランチスポットでしたので、コロナに負けずに頑張ってくれて本当に良かったです。早速9月中旬に応援も兼ねて訪問しようと思います。

さて、前回フィクションとノンフィクションについて書きましたが、ちょうど同じタイミングでその両方に長けた稀代のversatilistである松本清張先生の作品を解説した「「松本清張」で読む昭和史」(原武史著 NHK出版)を読みました。不朽の名作「点と線」や「砂の器」の時代背景の説明や著者の鉄道へのこだわりについての解説なども非常に興味深いのですが、何より以前このブログでも紹介した「昭和史発掘」の戦後史バージョンである「日本の黒い霧」(松本清張著 文芸春秋 上巻下巻)に出会えたことが収穫でした。

60年安保で社会が騒然とするさ中に、日米関係の闇の部分が生まれる契機となった占領時代のGHQ暗躍に鋭く切り込んだこの勇敢なノンフィクションは、当時51歳と脂の乗った著者の真実追求への熱情を感じられる名作です。「下山国鉄総裁謀殺事件」ではGHQ参謀第二部(G2)の関与をG2/GS(民政局)間の主導権争いという背景と合わせ独自の視点で描いており、その核心に迫る推理には納得感有り頷かされます。

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友人に薦める〈爽やか〉な〈夏〉小説!

このところ金次郎家もドラマ「半沢直樹」の高視聴率に貢献しており、毎度劇的な展開をなかなか楽しんで観てはいるのですが、リアリティの無さはまぁ良いとして、あまりにも単純化された二項対立の構図を(金次郎家も含め)視聴者が求めているというのは、やはりコロナの時代にストレスを感じずに毎回きちんとスカッとしたいという社会の要請ということなのでしょうか?そうだとすると、やはりNHK大河は苦戦するでしょうし、「白い巨塔」や「不毛地帯」のような重厚な長編小説を趣深い連続ドラマに仕立てる挑戦は近い将来には見られないのだろうなと思いちょっと寂しいです。某メガバンクに半沢のモデルとなった方が実在されていると何かの記事で読みましたが、グループのトップを争われているとのことなので、ドラマのような大立ち回りでコンプライアンスに引っかからぬようくれぐれもご注意頂きたいと思います(笑)。

さて、今回は会社の同僚でありこのブログも読んでくれているTHKさんからの、〈爽やか〉、〈夏〉、〈人が死なない〉小説を紹介して欲しい、とのリクエストにお応えいたします。先ず、既読本のリストをざっと眺めてみたのですが、驚くほど人がバタバタ死ぬ上に、とても爽やかとは言えない小説の比率が高く、自分の趣味の偏りに強い危惧を感じました(苦笑)。貧弱なリストからかき集めたものだけでは足りないので、恥ずかしながら色々調べてみて、良さそうな本を読んで比較した結果のトップ3が以下となります。テーマがテーマなので、どうしてもスポ根、中高生関連が中心になっちゃいますね。ちょっとTHKさんの好みとは違う気もしますがあしからず。

3位 「DIVE!!」(森絵都著 講談社 ):サラブレッド天才ダイバー富士谷要一、類まれな素質の持ち主である坂井智季、伝説の高校生ダイバー沖津飛沫を中心に、多感な少年たちの葛藤と成長を描いた王道スポ根小説です。ライバルとの切磋琢磨、様々な大人の事情への反発、などのお約束な部分も良いですし、何より自分の枠を超えて行こうとチャレンジする姿が素晴らしい。ジャッジや採点に縛られたくないという思いと、所詮人生はルールと評価に縛られるものという達観のせめぎ合いは、簡単に善悪や是非を決められない、二項対立で片付けられない難しさ故の深みが有りますね。三人のメインダイバーだけでなく、サブキャラたちが非常にいい味を出しているのもこの小説の特徴で物語に立体感が出ています。金次郎はサラブレッドでも天才でもないですがクール&ビッグマウスの要一が押しキャラです。スーパーマイナースポーツと言ってよい飛込みに少しだけ詳しくなれたのも収穫でした。【爽やか度★★★★ 夏度★★★】

 

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〈心の闇〉の宇佐美まこと先生と〈こじらせ〉の寺地はるな先生を読む

妻の趣味が音楽ライブ鑑賞や関連する音楽DVD視聴ということもあり、金次郎宅のテレビは、ちょっと悲しいですがオリンピックに向けて開発されたと思われるややハイスペックモデルを奮発して設置しております。この週末はライブイベントが中止となり振替的に行われた配信ライブを夫婦で視聴してそれなりに盛り上がり、音質的にもテレビ変えて良かったなと実感したところです。このテレビにして気づいたことは、番組やCMによってサウンドの質が全くばらばらに違うという点です。正直この宣伝にそんなクオリティは不要だろうと思うようなCMの音がものすごく重厚感に溢れていたりしてギャップを感じることが結構多く驚きます。一番ビクっとするのは、NHKの「ダーウィンが来た!」で、7時のニュースが終わって気を抜いていると、突然の轟音に心臓が止まるかと思ったこともたびたび。そもそも世界中のいきものの珍しい生態を紹介するどう考えても映像中心のこの番組、オープニングの音楽やヒゲじいのダジャレを最高の音響で届ける意味がよく分かりません(笑)。

 

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スウェーデンの傑作「ミレニアム」シリーズ完結

先日、金次郎のプレ誕生日祝いということで、名店エーグルドゥース@目白のケーキを妻と共に食べまして、その美味しさにただただ二人で感動いたしました。看板モンブランはイートインのみ(たぶん)のようで、妻が買ってきてくれたのがいちごショートケーキ、チーズケーキ、チョコレートケーキなど6点!二日に分けてちびちびと味わいましたが、どれもバランス良く上品で至福の時間を過ごしました。イデミ・スギノ@宝町の方が極限までたくさんの素材の調和を追求しているという点ではエッジが立っていますが、エーグルドゥースの最高級オーソドックスも全く負けておらず甲乙つけ難い仕上がりです。

さて本の話です。2017年に一気に読んだミレニアム・シリーズは本格ミステリー、ハードボイルド、政治的陰謀、圧巻の法廷対決などなど盛りだくさんで読み応え十分の傑作でした。全編を通してかなりリベラルな内容ですが、ジャーナリズムのあるべき姿への信念、女性の強さへの敬意が溢れていて素晴らしい。主役のミカエル・ブルムクヴィストは40代のジャーナリストですが、とても若々しく活躍していて好感が持てました(笑)。残念なことに著者のスティーグ・ラーソンさんは初期三部作を世に出した後心筋梗塞で急逝されてしまったのですが(享年50)、この作品の凄いところは、別の作家が次の三部作を同じ主要登場人物、設定で引き継いだ点です。今回読んだ第二部の著者のダヴィド・ラーゲルクランツさんは元々ノンフィクション作家ということで、どんな内容になるのか少し心配でしたが、昨年完結した三部作も全く違和感無く読み進められてたいへん満足できました。ストーリーの軸足がドラゴンのタトゥーを背負ったスーパーハッカーであるリスベット・サランデルの生い立ちとその宿業に少しずつ移り、ミカエルから主役の座を奪う展開ですが、リスベットも葛藤を抱えるたいへん魅力的なキャラクターであり、これはこれで良しだと思います。六作合計で一億部を突破しているというのは本当に凄い。ミステリー好きとしては、とにかく「ドラゴン・タトゥーの女」をぜひ読んで頂きたいところです。

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どうにかこのブログも半年続きました(感謝)

意を決して昨年12月から始めたこのブログもはや半年以上続いており、意外と頑張っている自分を少しだけほめている今日この頃ですが、更新ペースもやや落ち気味となり、更に続けていくにはやり方を少し変える必要が有るのかな、と思ったりもしています。仕事も少しだけ忙しくなりましたし、毎回の分量がそれなりに多いのがやや重荷になっているところも有るので、今回はちょっとショートバージョンを試してみます。

先日も書きましたが、小説には視点という物が有り、この視点をぶれさせないことが、読者が物語世界に没頭し続けるための重要な条件となります。最近読んだ本の中では、「逆ソクラテス」(伊坂幸太郎著 集英社)は小学生が主役の短編集で、後書きでも触れられている通り、視点が子供なので難しい言葉や大人しか使わない表現抜きでの描写が求められるという制約の中で、深い人生の機微を伝えようとする著者の試みはなかなか見上げたものだと思います。それぞれの短編の表題に〈逆〉とか〈非〉や〈アン〉のような否定を表す言葉が配されていて、無意識に流してしまう思い込みを鮮やかに反転させられるストーリー展開になっており、独特の伊坂流が遺憾なく発揮されていて最近の作品の中では好きな方に入る一冊でした。短くてすぐ読めるのでおすすめです。

 

ちょっと古い作品ですが、「パーフェクト・ブルー」(宮部みゆき著 東京創元社)は元警察犬の目線で物語が語られるという突飛な設定のミステリーです。非常に中立的な間合いでバランス良く登場人物を描写する効果を生んでおり、他の誰の視点をメインにしても、完全な三人称複数視点にしても、この作品のジャズバンド感は出せなかったのではないかと著者の工夫に感服いたしました。また、犬が実際に出来事を見聞きできるポジションにいないと物語を進められないのですが、非常に自然に犬が同伴できる状況を作っているところに著者の苦心と巧さが感じられ、唸らされっぱなしで読みました。ちょっとした不祥事で直ぐに大会出場を辞退する高校野球の異常な雰囲気に若かりし金次郎が違和感を感じていたちょうどその頃にまさに出版されたこの本を読んで、当時の気分を思い出しました。

全く話は変わりますが、現役医師の作家さんと言うと「神様のカルテ」シリーズの草川先生が思い浮かぶところですが、金次郎は久坂部羊先生が結構好きでよく読みます。医療ものは死生観をつきつけられるので苦しい時も有りますが、日ごろ目を背けがちな老いや病について強制的に考えさせられるので時々読むようにしています。

「悪医」(朝日新聞出版)と「祝葬」(講談社)はガン治療の功罪を医師ならではの視点で描いている秀作で、特に「祝葬」の方は短命医者一族の死の謎に迫るというサスペンス要素も有り面白いです。「破裂」(幻冬舎)と「テロリストの処方」(集英社)は治療中の事故や病院経営、終身制になっている医師免許の信頼性など、医療現場の課題に光を当てるミステリーです。「怖い患者」(集英社)は医療にまつわる医師や患者の狂気を描いた短編集で本当に怖い気分でぞくぞくできるホラー作品。「無痛」(幻冬舎)はドラマ化もされたサスペンスミステリーで先天性無痛症の役柄を中村蒼さんが熱演、今かなり来ている浜辺美波ちゃんも金髪姿で登場していました。

いつもの半分ぐらいですが、これぐらいならさすがに負担は少ないです。内容が薄くなっていたらすみません。。。

 

 

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金次郎、中学生になった文学女子への本の紹介に挑戦

先週は三日出社だったのですが、毎日会社に行って時々飲み会して、時には客先訪問をしたり出張に行ったりしていた日々が幻だったのではないか、と思うほどかなり疲労してへとへとになりました(笑)。今後徐々に慣れて行くのか、それとも加齢により元には戻れないのか、慎重に様子を見なければと真剣に思った一週間でした。

土曜日にE美容師を訪問し髪の毛をさっぱりと切り、ダイエット中というE美容師にはやや酷だったかなと後で思った「難事件カフェ」(似鳥鶏著 光文社)、「難事件カフェ2 焙煎推理」(同)を紹介しておきました。どうして酷かと言いますと、このミステリーには至る所に超美味しそうなスイーツの数々がそれにぴったりと合う珈琲や紅茶と共に登場し物語に彩を添えており、空腹に耐えながら読むのは不可能な内容になっているためです。もやし食べて頑張っているEさん、ごめん。

さて、このブログでお馴染みの文学少女への本紹介シリーズは、ありがたくも多くのviewを頂いておりますが、今回も晴れて入学式を済ませ中学生となった文学少女改め文学女子A&Bさんに僭越ながらいくつか本をお薦めいたします。東野圭吾、村上春樹といった著名作家の作品を読み漁られているということで、あまり制約無しに会社で隣に座っている同僚に紹介する感じでやってみますので忌憚のない感想を頂ければと思います。お恥ずかしながら、うちの同僚よりA&Bさんの方が読書はたくさんされていますね(苦笑)。。。

(これまでの紹介記事はこちら)

金次郎、懲りずに文学少女に本を紹介+楡周平作品を読む

金次郎、本の紹介を頼まれてないけどまた紹介+直木賞作「熱源」を読了!

金次郎、本の紹介を頼まれる+2019年4~5月振り返り

【金次郎から文学女子ABさんへのおすすめ作品9選】

「カディスの赤い星」(逢坂剛著 講談社):初版は昭和60年ぐらいだと思うのでちょっと古い本にはなりますが、とにかくページをめくる手が止まらなくなるストーリー展開の吸引力、スペインにも飛ぶ大きなスケール、最後に驚かされるミステリーとしての完成度、とどれを取っても傑作と言って良いクオリティです。金次郎が、面白いミステリーを紹介して下さい、と頼まれた際に必ず候補になる作品で楽しめること間違い無しです。

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猫エッセイを読んだことによる道草で「新宿鮫」をほぼコンプリート

前回のブログ(金次郎、久々に出社して中途覚醒が改善)では、「おひとり様作家、いよいよ猫を飼う。」(真梨幸子著 幻冬舎)を読んでしまった結果、真梨ワールドにはまってしまい予定していた読書計画が大幅に狂ってしまったというようなことを書きました。これを書いている今も「殺人鬼フジコの衝動」(真梨幸子著 徳間書店)を読んでおりますので、その影響は継続しているのですが、ここに辿り着くまでにも大きな山が有りました。

「おひとり様~」では、真梨先生も二冊持っていて参考にしているという「小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない」(大沢有正著 角川文庫)という本が紹介されており、ちょっと前のブログで物語を書く難しさを痛感した金次郎は、どうしても興味が湧いてしまいこの本も読んでみる誘惑に勝てず。

エンターテイメント小説界の大御所である大沢先生が惜しげもなく面白い小説を作り上げるための心構えと技術を提示して下さっているこの本は、悩める小説家志望の生徒へのダメ出しで溢れていて、少しだけ金次郎のサラリーマン駆け出し時代を思い出します(笑)。

力の有るキャラクターを細部の設定まで練り上げること、どのポイントで読者の心を動かそうとするのか、そのために必要な謎とトゲを物語にどう折り込むのかを考えること、主人公を苦しめてその人生に変化を与えること、破ってはならないフェアネスのルールなど、たいへん興味深い内容が盛りだくさんですし、これまで読んで面白かったと思う作品を振り返ってみると、やはりこれらの要素がきちんと充足されていたなと改めて感心したりもしました。

まぁ理屈はそれなりに理解したとしても、実際に創作しようとすると凡人の金次郎にはイケている文章は全く思いつかないわけですが、中でもとりわけ難しいと思うのが、やはり〈視点〉の問題だと思います。基本的なものとして、一人称の私小説、三人称一視点、三人称多視点という選択肢があるわけですが、物語のテーマが最も効果的に読者に伝わるものを選べと言われても、分かるのは一人称だと読者が感情移入し易い代わりに直接体験しか描けない制約が有ることぐらいで、それぞれの効果がどう違うのかを明確に区別して理解するのが難しい。更に、視点が決まったとしても、その視点をぶらさぬように矛盾を排除し客観性を保ちながら物語を進めるとなると、もはや完全にギブアップで、世の作家の皆さんは本当に凄いと脱帽いたします。

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金次郎、久々に出社して中途覚醒が改善

このところ苦しんできた中途覚醒不眠ですが(→金次郎、中途覚醒症状に苦しみつつ読書は継続)、色々と生活の中で対策を講じてみたり、かかりつけの鍼灸の先生に診てもらったりした結果、一進一退しながら少しずつではあるものの症状は快方に向かっておりました。

そんな中、緊急事態が解除され、会社の判断も諸々留意しながら一部出社せよということになりましたので、断続的にやって来る眠気と闘いながら3か月ぶりに会社に行って参りました。

そうしたら!今週は一度だけの出社だったのですが、その晩、次の晩とかなり長時間眠ることができ、何のことはない、金次郎の身体メカニズムが25年の社会人生活を経て、ヒューマンビーイングからサラリーマンビーイングにリプログラムされていただけだったというオチで、嬉しくもあり切なくもなる出来事でした。

とは言え、まだ完快ではないので、もっと会社に行かねばと思う一方、快適で読書にも便利な在宅勤務を離れがたいという気持ちも有り、このジレンマに悶々としましたが、とりあえず来週は2日出社でお茶を濁します(笑)。

さて、金次郎は妻と共にネコ好きで、我が家に家族としてネコちゃんを迎えるかどうか悩むことが最早趣味と言うかお約束となっていますが、なかなか決断できずにおり、その反動かついついネコをタイトルに含む本を手に取ってしまいがちです。そんなことで、今回たまたま読んだのが「おひとり様作家、いよいよ猫を飼う。」(真梨幸子著 幻冬舎)で、ネコちゃんの話は後半にしか出てこないこのエッセイ集を読んでしまったために、組み立てていた読書計画が大きく狂うことになりました。

元々の計画では、「英仏百年戦争」(佐藤賢一著 集英社)、「双頭の鷲」(同 新潮社)と連続で読破して面白かったので、佐藤先生の「小説フランス革命」全12巻を冊数を稼ぐシリーズものとして、集中して読むことにしておりました。

「英仏百年~」では、当時の欧州大陸側から見た英国の位置づけが、日の沈まぬ大英帝国を経験した現代のものとは全く違う周縁的なものであった事実を改めて認識することができ、その後長らく続いて行く英仏抗争の根源に触れることができます。シェークスピアでしか歴史を学ばない英国人が、英仏戦争は英国の勝利に終わったと事実誤認しているという点は、前回のブログに書きました「すばらしい新世界」に登場した野蛮人ジョンを思い出してちょっと笑えます。

 

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金次郎、中途覚醒症状に苦しみつつ読書は継続

これまでもちょこちょこ書いておりますが、5月に入ったぐらいから不眠というか中途覚醒というか、まともに夜寝て朝起きる、というリズムが乱れ、2~3時間眠ってはパッチリと眼が冴えるというやや辛い状態になる日が時々発生していました。

日光に当たっていないせい?、運動不足?、知らぬ間のストレス?、などと原因に思いを巡らせて、散歩をしたり、暑いのを我慢してカーテンを開け放ったり、呼吸法を試したり、眼が冴えても頑張って布団の中で羊ではつまらないので、学生時代の部活を思い出して、走り幅跳び1本、走り幅跳び2本‥と100本ぐらいまで数えてみたりと試行錯誤してみたものの、結局徒労に終わりました。走り幅跳びカウントはなんだかとても疲れた上に眠れないので最悪でした(苦笑)。

そうこうしているうちに、5月も終盤となり、この症状がもう1か月も続いており、このまま悪化したらどうなってしまうのだろう‥とやや不安になりましたが、なんとなく最近長めに眠れるようになってきた感じなので原因は結局不明ですが一安心です。ご心配をお掛けしました。ちょうど異動の時期と重なっているので、まさか緊張?、とも思いましたが、さすがにそれはないかな。でも、自分のことはよく分からないというのがたくさんの小説で語られている事実なので、そういう自分もいるのかも、と思ってストレスをいつの間にか溜め込んでいるような事態にならぬよう気を付けます。

さて、そんな不規則な生活の中、朝の2~4時ぐらいに読書をすることが多かったのですが(苦笑)、中途覚醒と戦いながら読んだ本をいくつか紹介します。

「コンビニチェーン進化史」(梅澤聡著 イースト・プレス)は、我々の暮らしに欠かすことのできない存在となった、ビッグ3に代表されるコンビニエンスストアの起こりから現在に至る産業史をコンパクトにまとめて解説している内容で、コンビニの歴史と金次郎の人生がほぼ重なることもあり、非常に興味深く読めた一冊でした。

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海外文学について外国人と語るのは難しい

外国人と読書の話をしていてとても困ることは、「どんな本読んだの?」と聞かれて、海外有名文学作品のタイトルが直ぐに英語で浮かばないことです。映画のタイトルもそうですが、結構意訳されていることが多く、直訳して伝わらないと、内容を英語で説明するはめになり、これにはかなり手こずらされます。

前回のブログで書いた(→引きこもりのGWに「風と共に去りぬ」を読了)「風と共に去りぬ」は「Gone with the wind」なので比較的知らなくても行けそうですが、間違って「Left with wind」みたいになるとなんとなく〈風の左翼〉みたいになって意味不明となってしまうリスク有ります。

ちょうど読了して近日中に感想を上げる予定の「すばらしい新世界」(オルダス・ハクスレー著 講談社)はSFの超名作なのですが、「Wonderful new world」ではなく「Brave new world」ですし、チャールズ・ディケンズの「大いなる遺産」も「Great inheritance」ではなく「Great expectations」で、エミリー・ブロンテの「嵐が丘」に至ってはもはや訳もできませんが「Wuthering heights」が正式タイトルです(苦笑)。

原題はロシア語ですがドストエフスキーの後期五大長編のうち「Crime and punishment」は分かりますが、「白痴」は「The idiot」、「悪霊」は「Demons」と微妙に会話中には直訳で正解に辿り着けなさそうなタイトルが続きます。

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金次郎、懲りずに文学少女に本を紹介+楡周平作品を読む

依然としてアベノマスクが届かない我が家では、SHARPがマスクの製造・販売を始めたことが話題になり、妻が獲得競争に参戦の意を示しましたので、「SHARPのマスクは液晶でできてるらしいよ。」と言ってみたところ、「え?!かっこいい!」と真に受けられ、SHARPマスクが買えてしまう事態を恐れおののく毎日です。あ、これ読まれたらバレますね(笑)。

さて、折角の新中学生だったのに休講となり可哀そうな我が弟子文学少女ABさんに、少しでもヒマつぶしになればとまたもやおすすめの本を紹介させて頂きます。読むペースがとても速いので、紹介できる本のストックが減ってきているのは気になりますが、今回はちょっと多めの7冊です!このところ共にお世話になっているE美容師のところにも行けておらず、金次郎は髪の毛ボサボサの金田一的な感じになりつつあります。。。

(これまでの紹介記事はこちら)

金次郎、本の紹介を頼まれてないけどまた紹介+直木賞作「熱源」を読了!

金次郎、本の紹介を頼まれる+2019年4~5月振り返り

【文学少女ABさんへのおすすめ本7選】

「しゃべれどもしゃべれども」(佐藤多佳子著 新潮社)

感動作品の大家である佐藤先生による、不器用・頑固・意地っぱりと、どうにもこじらせて上手く行かなさそうな登場人物たちの何とも言えないハーモニーがぐっと来る名作です。ABさんもこれから色々悩むことも有ると思いますが、そういう時に思い出して手に取って読み返して欲しい作品です。

「夏の庭 The friends」(湯本香樹実著 徳間書店)

感動小説ランキングに常に入る名作なので既読かもしれませんが、大人が読んでも考えさせられる少年たちの成長物語です。〈身近な人の死〉に接し、それを受け入れて、なんとか消化し乗り越えて行く過程で変わってゆく少年たちの姿を通して、おぼろげにでも人生の意義について思いを馳せてもらえたら、という余りにもおじさん臭い推薦文ですみません(笑)。

「さよならドビュッシー」(中山七里著 宝島社)

前回紹介した中で「カラスの親指」が一番面白かったという程のミステリー好きで、しかもピアノもやっているということなので、それならこの作品しか無かろう、と自信を持っておすすめします。名探偵かつ名ピアニストである岬洋介シリーズは何冊か出ているので、興味が湧けばそれらも読まれるといいですね。

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金次郎と宿敵Mによる本屋大賞2020予想対決、結果発表!

本日14時より待ちに待った本屋大賞2020の発表があり、金次郎もMも仲良く〈イマイち〉として9位に予想した「流浪の月」が大賞に選ばれました(苦笑)。

昨年は揃って大賞を当てたのに今年は大外し、〈この本を全国の読者に届けたい〉という気持ちがかなり足りていなかったと反省するのも何か変なので、まぁいいか。

さて、予想対決の結果ですが、、、

マイナス196点 VS マイナス142点の大差でMの圧勝となりました(涙)。

お互い1位に予想した作品は下位に沈み互角だったものの、 金次郎は「店長が~」と「ノース~」の外れのダメージが大きく、全体に手堅くまとめたMに軍配が上がる結果となりました。「ノース~」を譲位に、「店長が~」はきちんと下位に予想していて当たっています。 悔しいですが、コロナが落ち着いたところで〈金の栞〉を進呈させて頂くこととします。来年は負けません。

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金次郎と宿敵Mによる本屋大賞2020予想対決!

いよいよ金次郎と宿敵Mとの本屋大賞予想対決の時がやって参りました!今日は余計なことは書かず、それぞれの総評、順位予想と一言コメントを紹介させて頂きます。

4月7日(火)に公式順位が発表される予定となっており、予め合意したルールに従って点数を計算、決着を付けることになります。 (詳細は→本屋大賞2020ノミネート作品発表!)

本を背負って本を読みながら本の山を積み上げる金次郎が勝つのか、老獪な言葉の魔術師Mがその感性の冴えを見せつけるのか、結果が待ち遠しいところです。

金次郎

【総評】

上位6作はすんなり選べたのですが、いずれ劣らぬ秀作揃いでそこからの順位付けに悩みに悩みました。結果、一番心に深く刺さったという基準で大賞は「夏物語」、当てに行く気持ちを少し忘れて、こんな時だから明るくなれる「店長が」を次点に推しました。多くの人に受け入れられるエンタメ作品として「線は、」は外せず第3位です。直木賞でスケールの大きさが売りの「熱源」は逆に壮大過ぎて理解が追い付かないかもと第4位、「ライオン」は素晴らしいが新井賞作は上位に来ないジンクスを信じ勝負に徹して第5位にしました。ミステリーは本屋大賞に弱い実績から「Medium」は泣く泣く第6位とさせて頂いております。

【順位予想】

本屋大賞:「夏物語」(川上未映子著 文藝春秋)

静かな社会現象である非配偶者人工授精を切り口に、生まれてくることを自ら選択できない子供の完全な受動性というある意味究極の理不尽に光を当てた本作は、家族の在り方を世に問う社会派小説であると共に、そもそも不条理な人生に苦悩しつつも立ち向かう覚悟の美しさに気付かせてくれる感動と導きの書でもあります。

第2位:「店長がバカすぎて」(早見和真著 角川春樹事務所)

バカという名の理不尽に振り回され、怒り、悩み、焦り、疲れ果て自分を見失いながらも、仕事に真摯に向き合い続ける苦境の契約社員書店員谷原さんがなんともチャーミングな本作は、同時にノミネート作中随一の笑える作品でもあります。そして、自分の部署には無理だけど、隣の部署にはいて欲しい山本店長は本当にバカで最高です。

第3位:「線は、僕を描く」(砥上裕將著 講談社)

老師に才能を見出される若者の成長を描くという少年漫画プロットの本作が、普通のエンタメ作品と一線を画す高みにあるのは、描かれなかったものと何も描かれていない余白にその本質を見出すという、奥深い水墨画の世界を、その世界に身を置く芸術家である著者の感性で鮮やかに疑似体験させてもらえるからだと思います。

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金次郎、本の紹介を頼まれてないけどまた紹介+直木賞作「熱源」を読了!

少し前に読書の弟子である文学少女に本を紹介した話を書きましたが、この文学少女とは美容師さんつながりなので、今週髪を切った際に、来週予約入ってますよ、と聞きつけたのをいいことに、姪っ子に嫌われてしまう親戚のうざいおじさん的にはなってしまいますが、勝手におすすめ本を紹介させて頂くこととしました。

少し脱線&解説しますと、このE美容師さんは、金次郎がかつてお世話になっていたチョイ悪だけど意外と繊細なK美容師、孤高の猛スピードカットのY美容師、の後輩にあたるのですが、金次郎の妻、金次郎の元同僚とその奥様(そして多分その娘ちゃん)、も髪を切ってもらっているという、なかなかご縁をつなぐ力のある方でかれこれ10年以上のお付き合いになります。E美容師はKさんともYさんとも違う雰囲気で、外苑前のサロンも落ち着いた感じなので、毎月うかがって癒されています。

さて、今回は散髪中には絞り込めず、このブログでのご連絡となってしまいましたが、これまで読んだ本のリストを見直してさんざん悩んだ結果、以下5冊をおすすめさせて頂くことにしました。いつか何かの拍子に手に取ってもらえると嬉しいですねー。

【金次郎から文学少女A&Bへのおすすめ作品5選】

「風が強く吹いている」(三浦しをん著 新潮社)

箱根駅伝がテーマのこの作品は、細かい問題は全てどうでもよくなる感動の連続で、 仲間、ライバル、逆境、大きな舞台、登場人物の肉体と精神両面での成長、とカタルシス要素がこれでもかと詰まっていて鉄板です。

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ある週末の金次郎読書日記、締めくくりは門井慶喜作品

ニュースはコロナ一色ですし、全体的に自粛ムードで周囲に面白いことも起こらず、取り立てて書くことが無いので、よく聞かれる、どうやってそんなにたくさん本を読んでいるの?という問いに答えるべく、この週末の読書生活を一挙公開!

●3月6日(金)

夕方まで在宅勤務をした後、妻と食材を買いに出かけ、夕食後から前日読み始めた「監禁面接」(ピエール・ルメートル著 文芸春秋)の続きを読むことに。全体464ページのうち200ページ程度まで読んだところで、どうしても睡魔に負けて就寝。本当はあと100ページ程度は読み進めておきたかったところ。

●3月7日(土)

年齢のわりにさほど早起きもできず、朝の8時ぐらいから「監禁面接」の続きを読み、午前中になんとか読了。

最初のうちは、失業中年がどんどん追い込まれ、我を忘れて暴走するだけの痛いお話で、ちょっと過激な「終わった人」(内館牧子著 講談社)ぐらいの話かと思っていたら、 そこはあのカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作で世の中を震撼させた著者だけあって、暴走は暴走でもがらりと違った展開となり、驚きつつ途中から読むペースがどんどん上がる感じになります。前述シリーズの「その女アレックス」(文芸春秋)での鮮やかな場面転換の妙を思い出しました。ちなみにヴェルーヴェン三部作の順番は「悲しみのイレーヌ」からオーソドックスに読むと心が折れるリスク有るので、やはり「アレックス」から「イレーヌ」と読んで、「傷だらけのカミーユ」で締めくくるのがよろしいかと思います。

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