「二人のカリスマ」(江上剛著)を読み、セブン&アイを改めて学ぶ

 

昨日、美味しいお寿司を食べてほろ酔い上機嫌で帰宅した際に、よい子はうがい、と思い洗面所のコップに水を汲みうがいをしようとしたところ、若干というか大いなる違和感を感じました。酔いも手伝い気にせずうがいを強行したところ、信じられない量の泡が口から溢れるホラーな状況に。慌てて口中をゆすいだのですが、どうやら妻が買ってきたものを除菌消毒した洗面所の掃除の際にうがいコップを洗おうとキッチン洗剤を注入したのを忘れて放置してしまっていたようです。歯が洗いたての皿のようにピカピカになったかな、と思ってチェックしましたが普通でした(笑)。コロナ対策で色々と除菌に気を使ってくれている妻に感謝するシャボン玉おやじでした。

さて読書の話。「二人のカリスマ」(江上剛著 日経BP社 スーパーマーケット編コンビニエンスストア編)は伊藤雅敏、鈴木敏文両大立者の立志伝ですが、イトーヨーカ堂とセブン・イレブン・ジャパンの歴史を知るのに非常に有用な内容でした。不勉強で今ひとつよく分かっていなかったこの二社の関係がクリアに理解できますし、ダイエーや西友との違いも、この部分はフィクションだと思いますが、三者三様の経営者の因縁も絡めて描かれているので理解し易いです。〈成長より生存〉を掲げる守りの伊藤さんと、常にイノベーティブな攻めの鈴木さんが好対照ですが、同時代、同じ会社にこれほどの凄い人材が揃って、尚且つ共に活躍したという奇跡が本当に羨ましいです。また、会社が大きくなってもお店の周囲の掃除を欠かさず、いつまでも恩のある千住商店街への義理を忘れない伊藤兄弟の母上が素晴らしい。妻が近くの赤札堂によく通っていますが、羊華堂(千寿)は赤札堂(上野)、キンカ堂(池袋)と共に東京三堂と呼ばれていたことは知りませんでした。

江上先生の作品を初めて読み、かなり面白かったので、「百年先が見えた男」(PHP文芸文庫)も読んでみましたが、こちらは高杉先生の「炎の経営者」的な内容で、やや感情移入度が低かったものの、大原総一郎クラレ元社長の崇高な精神に触れ、仕事に取り組む姿勢について考え直すきっかけになる一冊でした。驕らず謙虚に、世の中のためになる難しい仕事に挑戦し続けること、が大切と言われ、胸に手を当てて唸っております(苦笑)。クラレや大原一族についてもだいぶ詳しく描かれており参考になりますね。

雰囲気はだいぶ変わりますが、「ブラック・ハンド アメリカ史上最竟の犯罪結社」(スティーブン・トールティ著 早川書房)は、18世紀後半から19世紀初頭にかけてニューヨークを中心に全米を恐怖に陥れた犯罪結社と、それに果敢に立ち向かう孤高の警察官ジョセフ・ペトロシーノとの闘いを描いたノンフィクションです。誘拐や恐喝によって市民から金を巻き上げる犯罪組織ブラック・ハンドは勿論怖いのですが、それよりも先行して移住した人々が後から来た移民を差別するアメリカの社会構造がとても怖いと感じました。イギリス系、オランダ系、ユダヤ系が先行し、その後1840-50年代のじゃがいも飢饉でアイルランド系が急増、差別されつつ警察官や消防士などの下級公務員に居場所を見つけたアイルランド系が更に後から来たイタリア系移民を差別する、という悲しい構図です。ブラック・ハンドがイタリア系であったために一般のイタリア系移民はただでさえ職も無く貧乏なのに差別の対照となり、犯罪に巻き込まれてもアイルランド系が牛耳っている警察にはロクに捜査もしてもらえないという惨状だったようです。ここに登場したのが、イタリア系初の警察官となったペトロシーノですが、彼がイタリア系移民の地位向上を目指し、徹底的にブラック・ハンドと対決する強さはカッコいいですし、その執念には心を打たれます。彼の葬儀に空前絶後の25万人が集まったという事実が、志半ばで倒れたとはいえ、彼の思いがニューヨーク市民に届いた証であり、少しだけ溜飲が下がる思いでした。この後、アメリカは華麗なる(?)マフィア全盛の時代に入って行くことになります。

マフィアと言えば、メキシコがメインの舞台なのでやや違うのですが、ドン・ウィンズローの「犬の力」(角川書店 上巻下巻)、「ザ・カルテル」(同 上巻下巻)はメキシコとアメリカを中心に繰り広げられる麻薬戦争を、ある程度事実に即してそれぞれ30年、10年という壮大なスケールで描く犯罪小説でありつつ、麻薬に関わり翻弄される様々な人々の喜怒哀楽にも丁寧に寄り添った人間ドラマでもあり、二冊合計で2000ページを超える長編にも拘わらず一気に読める秀作です。「犬の力」では〈悪〉、「ザ・カルテル」では〈憎しみ〉が重要なテーマとなっており、悪と悪の、憎しみと憎しみのせめぎ合いや、正義が勝つわけではなく勝った者が正義という無慈悲な争いの連続は読むのがちょっと苦しい部分も有りますが迫力充分です。主人公である麻薬捜査官アート・ケラーの信念、苦悩、葛藤はなかなか人間臭く、強いのですがジャック・バウアーほどの人間離れ感は無くそれなりにリアリティも感じられます。また、麻薬組織、警察、軍隊、政府、メディアそして常に被害者となる市民と多様で多岐にわたる登場人物それぞれが手抜き無くしっかり描写されていて著者の筆力と精緻な仕事ぶりに感動です。シリーズ続編の「ザ・ボーダー」も読まねば。

今週結婚記念日を迎え18周年となりました。あっという間だったなー。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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