いよいよ今年も決戦の時がやって参りました。4月9日(木)の本屋大賞2026結果発表を前に、上司の異動に伴うあれこれや、2月末に始まったイラン戦争に起因する業務におけるドタバタと将来への言い知れぬ不安で、PCの故障や胃腸炎に苦しんだ昨年とは違った意味で集中力の維持が難しい3月でしたが、どうにか納得の予想を完成させることができました。宿敵Mが海外駐在となり、オフィスでお互い意識して読書の話題を避けるようなことはもうありませんが、在欧州の人に日本が誇る(笑)本屋大賞の予想で負けるわけにはいかないという新たなプレッシャーが加わり、非常に緊張感の高い日々でした。過去7戦は4勝3敗で金次郎リードにて、一つの目安となる10戦で負け越しの可能性がなくなる5勝目を獲りにいきたいと思います。ちなみに10戦終わったらこの対決の内容をまとめて自費出版しようと二人で夢を語っております(笑)。前回同様Chat GPTにも参戦してもらっていますので、人類と人工知能との勝負という観点でもお楽しみいただければと思います。以下がその予想ですが、全員「カフネ」を大賞に推した前回と異なり、三者三様の予想となっており結果が非常に気になるところです。金次郎とMの対決では、「暁星」、「イン・ザ・メガチャーチ」の位置が勝敗を分けることになると思います。Mの選評を見ると、大賞の「エピクロス~」のものより7位の「イン・ザ~」の方が圧倒的に長く、本当にその予想でいいの?という気分になっております(笑)。
【金次郎の総評】
今年の順位予想にあたり何度も自分に言い聞かせたのは、2次投票の締めが3月1日であり、2月末に始まったイラン戦争の影響を考慮しなくて良い点であった。攻撃開始が2週間早ければ、先の見えぬ困難な時代を前に社会を鼓舞すべく、書店員の投票が前向きな印象の作品に偏る可能性も検討が必要となり予想の難易度が更に上がる危機であった。そんな中、今年大賞に推すのは「イン・ザ・メガチャーチ」。「正欲」、「生殖記」の朝井先生だけに、どう捏ね繰り回してくるかと先入観全開で読み始めたが、意外にも正々堂々と世相を捉える気概に満ち、密度の濃さと構成の妙も秀逸で、選評の字数内では本作の良さを表現しきれぬ別格の出来で、絢爛たるビッグネームに乱歩賞/ブランチBOOK大賞ダブル受賞作の激戦に難解な予想になると気が重かったが、早々にトップ確定でやや拍子抜けの結果となった。陰謀論が生成される構造の解説は大変好みであり、活用すべく内容を頭に叩き込むこととした。一方、今年は2~4位、5~7位、8~10位の各グループが接戦で、こちらの順位付けが困難を極め往生した。そこから一歩抜けた2位は「PRIZE―プライズー」で、作家としての本音を臆せず赤裸々にぶちまけた村山先生に最大限の敬意を表したい。創作への思いの詰まったストーリーに加え、直木賞に関するうんちくや有名作家の裏話など読書家にとって即ち書店員にとって捨て置けぬ内容が満載で、本屋大賞向きの作品と評価し次点とした。3位は「エピクロスの処方箋」で、雄町と彼を取り巻く人々の世界線が熟成した結果、極めて稀なことにシリーズ前作を上回る感動が生み出されており、リスクは有るが4位であった前作を越える予想とした。恋の行方が気になる続編にも期待が高まる。4位は「殺し屋の営業術」。出来栄えとしてはもう一段の上位もあり得たが、やや軽い印象の文体と残虐表現の不整合が気になり上位群の中では一番下に置いた。
【Mの総評】
今回は、名だたる大御所に新鋭・中堅陣がどう挑戦していくかが見どころと思っていたが、残念ながら圧倒的に面白いと思う作品には出会えなかった。つまり、順位予想は例年以上に難渋したということだ。上位3作はほぼ同着だが、純粋な面白さと時代に寄り添ったテーマ設定とのバランスを鑑み、『エピクロス』を1位とした。16年前に『神様のカルテ』で惜しくも大賞を逃した雪辱なるか。物語の完成度だけ取れば『暁星』推しだが、湊かなえはすでに大御所枠であることを加味して、気鋭の野宮有を2位とした。中盤グループに目を向けると、『PRIZE』は(作中では本屋大賞をこき下ろしていたが(笑))苦境に喘ぐ書店業界を元気づける意味合いもあり、大御所ディスカウントを跳ね返し4位とした。『熟柿』『ありか』の“弱い”主人公対決は『熟柿』に軍配も、森バジルの今後の活躍期待込みで『探偵小石』を5位と置き、『熟柿』は続く6位。7位以下は作品の出来という観点で見れば正直順不同だが、朝井リョウ作品は世間にそれなりに推されている感もあり、上位入賞もありえなくはないので保険で7位。瀬尾まいこ『ありか』は、この賞が過去の受賞者に対しては総じて辛口採点となることも出来栄えに加味し、申し訳ないが最下位とした。さて、私事ながら、昨年末より再びドイツ勤務となった。いまはアムステルダムのホテルでこの評を書いている。前回ドイツにいた際は、コロナそしてウクライナ侵攻でついにこの世の終わりかと思ったが、何のことはない、世界はさらに混沌としてきている。そうなると作家には何かを解説したい欲が出るのか、主人公が無知蒙昧そうな身近な人物(を介して読者)に複雑な事象を説明するという構図が複数作で見られた。が、いったい何を焦っているのか。楽屋話や意図の良くわからないファンタジーに手練れの技の範疇で逃げるのも良いが、現実が小説をすでに超えまくっている中で、とりわけ大御所の皆様には、一般読者がいま何を求めているのかを真剣に考えてほしいと切に願う。
【金次郎順位予想】
大賞 「イン・ザ・メガチャーチ」(朝井リョウ著 日経BP日本経済新聞出版)
2位 「PRIZE―プライズ―」(村山由佳著 文藝春秋)
3位 「エピクロスの処方箋」(夏川草介著 水鈴社)
4位 「殺し屋の営業術」(野宮有著 講談社)
5位 「失われた貌」(櫻田智也著 新潮社)
6位 「熟柿」(佐藤正午著 KADOKAWA)
7位 「探偵小石は恋しない」(森バジル著 小学館)
8位 「ありか」(瀬尾まいこ著 水鈴社)
9位 「暁星」(湊かなえ著 双葉社)
10位 「さよならジャバウォック」(伊坂幸太郎著 双葉社)
【M順位予想】
大賞 「エピクロスの処方箋」(夏川草介著 水鈴社)
2位 「殺し屋の営業術」(野宮有著 講談社)
3位 「暁星」(湊かなえ著 双葉社)
4位 「PRIZE―プライズ―」(村山由佳著 文藝春秋)
5位 「探偵小石は恋しない」(森バジル著 小学館)
6位 「熟柿」(佐藤正午著 KADOKAWA)
7位 「イン・ザ・メガチャーチ」(朝井リョウ著 日経BP日本経済新聞出版)
8位 「失われた貌」(櫻田智也著 新潮社)
9位 「さよならジャバウォック」(伊坂幸太郎著 双葉社)
10位 「ありか」(瀬尾まいこ著 水鈴社)
【候補作別評価】
◆「暁星」(湊かなえ著 双葉社)
(金 9位)元首相暗殺事件をモチーフとし宗教団体の社会影響を世に問うノンフィクション的な前半では、そんな団体に依存して生きた毒母に全てを奪われた暁による復讐が描かれる。著者が後半に託した、救いの無い物語でも別の視点で捉えることで壮大な恋愛小説に塗り替えられるとの思いは理解するが、とにかく筋が追い辛く、伏線と回収のトレースに頭を使わされ過ぎて物語世界に没頭できず、消化不良のカタルシス不足との印象で9位となった。
(M 3位)宗教二世を扱う本作からは、統一教会問題および安倍晋三元首相の暗殺が当然想起されるため、ともするとドキュメンタリーのようなトーンになりそうなところ、湊かなえ独特の筆致によって、フィクションとしてしっかり立った作品に仕上がった。Bパートを素直に受け取って愛を描いた作品と見ても面白いし、同パートの主人公は、宗教二世としての運命から実は逃れられていなかった、とミステリー的に解釈してもまた味わい深い。『PRIZE』と同じく文壇の権威ある賞を題材に据えながら、宗教二世の問題とも絡めてこの完成度にまで仕上げた手腕は、さすがというほかない。
◆「ありか」(瀬尾まいこ著 水鈴社)
(金 8位)母親のネグレクトを経験したシングルマザーの美空が、母と自分、自分と娘の関係を対比させつつ過去を消化し、周囲の助けを得て未来への一歩を踏み出す王道の成長物語。愛らしいひかりとのやり取りは微笑ましいが、それでさえ若干大人過ぎる5歳児に嘘臭さを感じてしまう自分が辛い。真の悪人が登場しない展開には特段の山場が見当たらず、義弟颯斗のセクシャリティを筋回し上の小道具にしている点も気になり下位群との評価とした。
(M 10位)面白くなかった。展開は手に取るように読めてしまい、何より主人公が強くなっていく過程に説得力が感じられなかった。主人公の母親以外は総じて良い人であることは確かに救いではあるが、母子とは何かが大きなテーマなのだから、肝心の母の描写はもっと解像度を上げてほしかった。子どもとのやりとりもやや冗長というか、多くは不要ではないかと感じた。さらに、義弟がゲイという設定も必要だったのかどうか。村山由佳(が描く大御所作家) に言わせればこうだろう。「エモーショナルな語り口には見るべきものがあり、万人の共感を得そうな人物造型に好感をもったが、惜しむらくは登場人物の言動に飛躍がない。人間にはもう少しわからなさが欲しい」。
◆「イン・ザ・メガチャーチ」(朝井リョウ著 日経BP日本経済新聞出版)
(金 大賞)3人の視点人物それぞれの視野狭窄と推しへの没入を描き、推し活全盛時代を生み出した孤独と、その背景としてのSNSや多様性が齎した属性の固定化を浮き彫りにする。誰もが拠って立てる正しさが消失した社会に生きる人々の不安や、推しではなく推し活そのものの中に連帯と物語を見出し安寧を得る精神構造に正面から向き合った本作は、視点の奇抜さをエッジにしてきた過去作からの進化が顕著で、既に売れているが躊躇無く大賞に推す。
(M 7位)作家生活15周年記念と銘打った集大成的作品で注目度も高い本作だが、個人的には才能の枯渇を思わずにいられない内容だった。お世辞にも文章が上手な作家ではなく、テクニックのパターンも限られていて既視感ある描写が続くなか、本作から得られたのは推し活文化についての考察以上のものではなかった(その意味で日経出版から出ているのはある意味正しいのかもしれない)。登場人物にすべて言わせるのではなく、また現実をニヒルにとらえるだけでもなく、人物やその交わりを深堀することで複雑な現実世界の微妙なニュアンスをどう掬い取るかこそ、作家の腕の見せどころではなかったか。物語のクライマックスにも、過去作を上回るカタルシスはない。『PRIZE』で主人公が大御所作家から投げかけられる、「そういう流行りの題材を滔々と語るのって小説のやることかしら。ドキュメンタリーのほうがよっぽど伝わるんじゃない?」「次々に登場する人物が皆、作者の語りたいテーマを代わりに語るなど作為が見え、かえって小説がこぢんまりとしてしまった」という言葉に尽きる。このテーマでは、『チ。』がヒットした漫画家・魚豊の『ようこそ!FACTへ』を是非勧めたい。
◆「失われた貌」(櫻田智也著 新潮社)
(金 5位)顔を潰され身元を示す物を消され遺棄された変死体の発見に始まり、無関係に映る大小様々な事件が散発する中、浮かんでは消える謎が短期間の捜査により解明されていく様を描くミステリー。刑事日野の警察学校時代の因縁を絡めた時間的広がりが、多様な糸を緻密に織り上げ重厚に構築された横山秀夫的世界に奥行きを加えている。警察小説らしい地味さの評価に悩んだ末に「ノースライト」での失敗も考慮し少し上げてこの順位とした。
(M 8位)いまひとつ乗り切れず。なんとなく読み進めているうちに、いつの間にかエンディングを迎えていた。肝心のトリックも伏線が張られすぎており、ミステリー素人の私でも薄々勘づいてしまった。本の帯には“本物の「伏線回収」と「どんでん返し」をお見せしましょう”とあるが、まさにこの技術の高さにどこまで乗れるか、という世界か。あと警察物ミステリーは、刑事たちの造形や内面への切り込みが伴わないと、書店員にとっても熱を込めて推しにくいのではないか。
◆「エピクロスの処方箋」(夏川草介著 水鈴社)
(金 3位)ガイドワイヤーの向こうが見えていると技術を激賞される雄町が、医療に対する思索の果てに技術の巧拙など取るに足らず人を救うのは人でしかないと喝破し、理想の医師像を語る姿が素敵過ぎる。そんな理想と医師としての栄達の相克を、哲学者エピクロスの受けた誤解との対比で描く工夫は前作比で圧倒的に分かり易く、感動に比例する涙の量と医療が直面する課題と向き合う社会性も総合評価し、異例の続編による前作越えの3位とした。
(M 大賞)「医師で作家」枠、夏川先生の雄町哲郎シリーズ第二弾。哲学する医者が主人公ということで、朝井リョウ作品と同様、教訓めいた語りが続くが、本作の主人公は人間臭いところも結構あって、不思議と嫌味がない。周囲の人物もしっかりキャラが立っていて好感が持てる。続編も楽しみだし、何より、生きづらさへの「処方箋」が必要な昨今の状況に十分ミートしていることを勘案し、この位置とした。
◆「殺し屋の営業術」(野宮有著 講談社)
(金 4位)知識、会話術、表情から僅かな仕草まであらゆる営業術を磨き上げ、違法な手段も躊躇無く駆使して抜群の実績を上げ続ける鳥井が、営業先で殺人の場面に遭遇したことを契機に想定外の進化を遂げる様を描いたクライムサスペンス。殺し屋の営業マンという天職に出会い、空虚さから脱して充実した生の実感を謳歌する鳥井の変貌ぶりが印象的だが、その残虐性と重要モチーフであるべき営業術が後半影を潜めた点がやや残念でこの順位とした。
(M 2位)江戸川乱歩賞、そして(本予想においては)鬼門とも言える王様のブランチBOOK大賞を受賞した本作。奇抜でありながらぎりぎりのところで不思議とあり得ると思わせる設定、非凡な営業センスを持ちつつもある意味では何の色もついていなかった主人公が、殺し屋たちとの交わりのなかで変化していくプロセスを丁寧に描いている点、強敵との知恵比べを含むミステリーパートのトリックなど、読み応えは十分。こちらも続編が楽しみだ。
◆「さよならジャバウォック」(伊坂幸太郎著 双葉社)
(金 10位)アリスの中のジャバウォックはイメージの掴みにくい怪物だが、本作中では寄生した人間を凶暴化させ記憶を混沌とさせるウイルス的に描かれる。正直そんなジャバウォックを巡るこの物語の核が再読しても全く不明で、伏線とその回収もご都合主義的、ラストの納得感も非常に低く、掛け値無く面白くなかったの一言に尽きる。特徴的な伊坂風登場人物が秩序無き物語世界で好き勝手に動く混沌のみではどうしても評価できず最下位とした。
(M 9位)伊坂先生のデビュー25周年記念作品。だが、正直つまらなかった。ページを繰るのが苦痛で、伊坂幸太郎という名前が持つ信用だけを頼みに読み進めたが、終盤の仕掛けにもカタルシスはなく、いったい何を描きたかったのかと思った。もうキャリアも実績も十分にあるのだから、この時代に作家・伊坂幸太郎は何を書きたいのか、自らに切実に問い直してほしい。腹の底から痺れるような小説をお願いだから書いてくださいよ、先生!
◆「熟柿」(佐藤正午著 KADOKAWA)
(金 6位)轢き逃げの罪を犯し服役したかおりは、獄中出産した息子への思いから園児連れ去りや入学式乱入などの事件を引き起こす。行き場を失いただ流されるままに西に向かって移動を繰り返すかおりが、身を捨てての贖罪と息子への思慕しか存在しない空虚さから脱し、意志を持ち自身の人生を歩みだす姿には静かな感動を禁じ得ない。ただ、この長く地味な展開がタイパ重視の現代読者に広く受け入れられるイメージが湧かず6位の予想とした。
(M 6位)私にとり初・佐藤正午作品となったが、どこか引っ掛かりがある独特の書きぶりに個人的には好感をもった。ただ、人物造形はやや平板というか、「良い人」「悪い人」の輪郭がはっきりしすぎているのが難点。恵まれない状況の中でも必ず良い人と巡り合う、というのは救いの提示としては理解できるが、現実の苛烈さを思えば、そのご都合主義が現実に苦しむ人の心にどこまで届くのかには疑問も残る。あと細かいがコミュニケーションが何でも電話で済まされるのはジェネレーションギャップというか取材不足ではと思った。
◆「探偵小石は恋しない」(森バジル著 小学館)
(金 7位)推理小説オタクとして謎との遭遇を渇望するも浮気調査に明け暮れる探偵小石が、デキ助手の蓮杖とポップな会話を繰り広げつつ事件を解決に導く本格ミステリー。特殊設定への依存度が存外低く、各エピソードのどんでん返しがいつの間にか繋がって過去の事件と有機的に結びつく骨太なプロットは伏線の配置と合わせ非常に巧い。エモいラストも良く高評価だが、我が故郷福岡という舞台設定への無意識の肩入れをやや懸念して7位とした。
(M 5位)ミステリー初心者の私でも十分に楽しめた(途中、叙述トリックとは何かをわざわざ説明してくれる親切さ!) 。ただ、前半は相当にグダグダした展開なので、(何かが来るとは分かっていても) 終盤のカタルシスを楽しみに耐える必要があるのがやや厳しい。また、主人公たちの独特な掛け合いは好き嫌いが分かれると思われ、ここに乗れないとしんどい読書体験になってしまうか。タイトルとも関連する主人公の特殊能力の設定は理解できるが、ここだけややファンタジー寄りでもあり、別のアプローチもあり得たのではないかと思う。
◆「PRIZE―プライズ―」(村山由佳著 文藝春秋)
(金 2位)文学的であることと広く世に受け入れられることという創作に付き纏う葛藤の象徴として直木賞を提示しつつ、狂おしい程にこの賞を欲する作家の姿を通じ承認を求める飽くなき人間の業を描く。編集者のお仕事小説でありながら、どこまで書いてどこまで読者に預けるかという小説論の真髄にまで触れる内容は昨年の「小説」に比肩し得るレベル。上位群での位置付けに悩んだが、本屋がこの本を推さずしてどうするとの思いから2位とした。
(M 4位)大御所枠でしかも直木賞作家である村山由佳が、性格的に相当難がありおよそ読み手の共感は得づらいであろう主人公に「本屋大賞ではだめ、直木賞でないと」と喝破させ、しかもそれが直木賞の胴元たる文藝春秋社から刊行されるという、複雑な入れ子構造を伴った楽屋話的作品。職業小説としては佳品と言うべきだが、それ以上の広がりや余韻にはやや乏しいか。ところで、本作の中である意味“正気を保っている”編集者がいずれも男性である点は、村山由佳の編集者観という意味で興味深かった。
【参考:Chat GPTによる順位予想】
大賞「ありか」:母と娘を正面から描きつつ、親子を善悪で切らない。最も“手渡しやすい”本。
2位「暁星」:宗教2世の切実さと、小説/手記の二重構造が強い。重いのに推進力がある。
3位「PRIZEプライズ―」:承認欲求と文壇の業を、強烈なエンタメにした一冊。書店員票を呼ぶ題材。
4位「イン・ザ・メガチャーチ」:“推し”と物語消費の功罪を撃ち抜く同時代性は随一。刺さる人には非常に強い。
5位「熟柿」:罪、母性、再生を静かに積む。派手さはないが、読後の残響はかなり深い。
6位「失われた貌」:ミステリとしての完成度は圧倒的。三冠級の強さだが、ややジャンル色を考慮。
7位「探偵小石は恋しない」:ネタ密度と反転の快感が鮮烈。口コミが加速すれば、もっと上でも驚かない。
8位「エピクロスの処方箋」:医療と幸福の問いを、哲学エンタメとして読ませる。誠実さが光る良作。
9位「さよならジャバウォック」:DV殺害の極限状況から予測不能な結末へ。吸引力は強いが、今回はこの位置。
10位「殺し屋の営業術」:設定の勝ち筋が明快な快作。乱歩賞の勢いはあるが、上位争いでは一歩下に見た。
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相変わらず長文になってしまいましたが最後までお読みいただき有難うございました。来週の大賞発表と順位予想対決の結果を楽しみにお待ちください!
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