金次郎、文学女子に緊急事態GWを楽しく過ごすための本を紹介

会社でかなり若手の同僚と何気なく昔住んでいた笹塚の話をしていた際に、以下のブログで紹介している通り、金次郎がかつて暮らしていた学生ハイツはパチンコ・カラオケ・サウナが揃った最強のビルの中に入っていたという話題となりました。

学生ハイツの話①

学生ハイツの話②

もう30年も前の話ですし、そのビルがまだ存在しているかどうかも自信が無かったのですが、なんと後輩はその建物を知っており、しかも有名だとのこと。どうやら、当時は非常に怪しげな空間と感じていたそのビルの上層階のサウナが、最近〈天上のアジト〉として意識の高いヤングエグゼクティブ(死語)の間で、心身の状態を整えるのに良い、とブームになっているのだそうです。トレンドは巡るといいますが、ここ数十年サウナブームが来た記憶は無く、一つのことを粘り強くやり続けることの力を垣間見たエピソードでした。

学生ハイツでの楽しかった思い出は後から後から浮かんでくるものの、どうもいざブログで詳細を書こうとすると不適切な内容を含むものが多く(笑)、マズい部分を削除してしまうと全然面白くないお話になってしまうので悩ましいところです。最近は女帝ゆりこをTVで見ない日は無いですが、都知事を見ると時々あの頃まだできたばかりの都庁の中にあったバーでバイトをしていた学生ハイツの仲間が持って帰ってくる豪華な残飯を晩餐会と称して賞味するのを毎週楽しみにしていたのを思い出します。学生時代ということで舌の記憶には自信が無いですが、それなりのクオリティだったとの印象で、やはりまだまだ世の中はバブルの只中だったのだなと思います。バブルと言えばトレンディドラマを連想してしまいますが、東京ラブストーリー後の織田裕二全盛期だった当時、俺は電車の中で織田裕二と何度も間違えられ声をかけられたと自慢気に語っていたハイツの先輩であるM本さんがジミー大西にしか見えなかったのを思い出して懐かしくなりました。すぐに裸になっていたM本さん元気かなぁ。

さて、前回のブログでの予告通り、駆け込みとなってしまいましたが、緊急事態宣言下のGWに向け、文学少女ABさんに本の紹介です。ABさんも中学2年生となり、そろそろ金次郎を含めたおじさん全般への嫌悪感が高まり始めるお年頃かと思いますが、そこは仮にも師匠ということで、他の一般おじさんとは一線を画したいところにて、師匠の威厳を保つためにも面白い本を紹介せねばとプレッシャーに負けそうです。

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コロナの時代に「美しき免疫の力」を読み免疫について学ぶ

読書家としての一大イベントである本屋大賞対決が終わり、しかも2連敗という結果となってしまい、やや燃え尽き気味でブログを書くモチベーションが高まらぬ中、勝者Mから以下のようなコメントが届きました。

“今年は1位と3位を当てたので私の完勝と言っても良いのではと思います(笑)。 金次郎さんの来年の捲土重来に期待しております!”

こんな普通のコメントをする者に負けるとは、臥薪嘗胆、不惜身命、一意専心で捲土重来したいと思います。

しかし、おかげさまでこの本屋大賞企画は皆さまにたくさん読んでいただいており、非常に速いペースで弱小ブログとしての第一目標である200PVを越えました。通常はそこまでいくのに早くても2か月程度はかかるので、2週間足らずで到達というのは非常に嬉しい結果です。読者の皆様どうもありがとうございます。

ついでに以前の記事のPV数を見直してみたところ、投稿当初はマニア過ぎたのか伸び悩んでいた「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を紹介した記事がいつの間にか400前後のPV数まで増えており、どこからビューが湧いてきたのか全く分からずかなり謎ではありますが、本当に興味深い内容のシリーズだったので、このブログが少しでも読者数増加に貢献できていれば嬉しい限りです。

「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~前編

「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~後編

さて、今週の紹介はずっと積読になっていた「美しき免疫の力:人体の動的ネットワークを解き明かす」(ダニエル・M・デービス著 NHK出版)です。この本だけだと難しいので、参考資料として「現代免疫物語beyond:免疫が挑むガンと難病」(岸本忠三著 講談社)も一緒に読んで力を借りました。

これらの本は、非常に複雑で精緻な機構を有する免疫システムの説明を、その解明と医療への応用の歴史と共に解説してある科学書です。未だ謎の部分も多い免疫システムについてその全貌を理解するのはそもそも不可能ですが、COVID19

のワクチン接種も始まったということで、なんとか基礎的な仕組みだけでも頭に入れたいと思いつつ行きつ戻りつしながら読み進めました。

しかし、先ず、免疫とは体内に侵入してきた細菌やウイルスのような異物を、自己と非自己、有害と無害に選別し、非自己・有害と認定したものに対して攻撃を仕掛ける機構と定義できるわけですが、その働きの95%を占める自然免疫と、しぶとく生き残った異物に対して発動する獲得免疫に分けられる、という初歩の初歩を知るところからのスタートなので正直道のりは険しかったです。

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【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2021予想対決の結果を発表!

振り返ると学生時代は勉学に打ち込んだり、陸上競技に励んだり、友人と異性を取り合ったりと、何かと順位や勝敗を意識し、結果に拘りながら日々を送っていたように思います。

ところが、だんだんと年を重ね、五十路が目前に迫る近頃では、気持ちに折り合いを付けて身を処す術も覚え、流れや長いものに身を任せつつ、日々淡々と早寝早起きしたり、踏み台昇降運動をしたり、PCのキーボードを消毒したりしながら、穏かにのんびりと時を過ごす隠者のような生活を送っており、常に気持ちは平常心で風の無い日の湖面のようにどこまでも平たんで乱れの無い状態を保っております。

最近は、久方ぶりに出社するようになり、後輩とコーヒーを飲みながら他愛もない雑事について語り合う時間にこの上ない幸福を感じ、サラリーマン生活終盤も捨てたものではない、と慮外の充実すら感じている今日この頃です。

読者の皆さん、もう気付かれましたか。はい、避けています。今日どうしても触れなければならないその話題を。そうです。その通りです。金次郎は負けました。去年に引き続き二連敗です。また金の栞を三菱マテリアルで買わなければなりません。本当に本当に悔しいです。Mが意気揚々と連絡してきた瞬間は、心がリアス式海岸みたいにギザギザになりましたし、シンガポールのマラソン走るおじさんから「負けた?」とメールをもらった際は、もう一生本屋で本を買うものか、という気分になりました(笑)。会社の同僚の皆さんにもブログを紹介して読んでいただいたので恥ずかしい限りです。

ということで気持ちの整理をする必要が有り、ブログ更新がやや遅れてしまい申し訳ありませんでしたが、気を取り直して結果発表&反省&言い訳です。

【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2021順位予想対決!

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【アフター4読書恒例企画】本屋大賞2021順位予想対決!

いよいよこの日がやって参りました。今年は4月14日(水)に発表となる本屋大賞の順位を予想してしまおうという大それた企画を始めて3年目になりますが、さてさてどうなることやら。宿敵Mもドイツから予想を届けてくれましたので、今回はいつもより少し長いですが、どうぞ最後までお付き合い下さい。昨年の予想ブログを読んでいただいた方から、作品毎の評価を読み比べたいとの要望が多かったので今年はそのような構成にしております。では、前置き抜きで早速予想です。

(関連記事はこちら)

いよいよ本屋大賞2021ノミネート作品発表!

金次郎と宿敵Mによる本屋大賞2020予想対決、結果発表!

金次郎と宿敵Mによる本屋大賞2020予想対決!

【金次郎の総評】

年間300冊以上の本を読み続ける中で、どんな本にでも面白さを見出す技術を期せずして磨いてしまった金次郎にとって、この本屋大賞予想対決は年に一度の楽しみであると同時に、一年を代表する候補作の数えきれない面白さを無理矢理カウントして順位を付けねばならないという意味で最大の鬼門イベントでもあります。

こんな言い訳から入らざるを得ないほど、今年は売れまくっている芥川賞作の「推し、燃ゆ」や昨年大賞を取った凪良ゆうの次作をはじめとした話題作が多数な上に、どうしても評価にバイアスがかかってしまうアイドル加藤シゲアキの「オルタネート」の候補作入りもあいまって、本当に難儀な予想作業となりました。中途覚醒症状の悪化が止まりません。

緩慢にフラストレーションが蓄積していくコロナ禍の社会で求められているものは何なのか、これまで読書に割く時間があまり取れなかった人も本を手に取ることが多くなったという変化を順位にどう反映させるべきか、などのポイントを真面目に考え、悩みに悩んだ結果、作品の質は勿論ですが、前向きな希望や救いの存在、ストーリーの分かり易さを重視して予想を組み立てることとしました。

そうして約一か月、考えて書いてつまずいて(♪スキマスイッチ「ボクノート」より)、並べた結果が紙クズとならぬことを祈りつつ、大賞には「滅びの前のシャングリラ」を推薦します!昨年大賞の「流浪の月」を9位と予想してしまった贖罪の気持ちはさて置き、舞台設定の面白さと、絶望の中で際立つ救いを描いた点を評価しました。悲惨な話を暗く描かないために時折配置されたセンス溢れるユーモアも大好きな作品です。

惜しくも2位となったのは「推し、燃ゆ」。本作が傑作であることには疑問の余地無しで、宇佐見りんの文章が放つ圧倒的な力は他の候補作を凌駕していると感じます。しかしながら、誰もがすんなり受け入れられる分かり易いお話かと問われれば否と答えざるを得ず、数十万部も売れた本を更に売りたいと書店員が推すかについても若干の懸念が残るため、作品の質というよりは順位予想というゲームの性格から次点としました。

3位は王様のブランチBOOK大賞に輝いた「52ヘルツのクジラたち」。希望、救い、分かり易さと三拍子そろった秀作ですが、少しだけご都合主義との印象が残り、どうしても許容したくない登場人物の多さもマイナスに働きこの順位となっております。

読書家の最大の敵ともいうべき偏見に囚われ、アイドルの書く小説なんてとこれまで敬遠していたことを正直に白状し、そんな自分の眼の曇りに気づかせてくれた加藤先生に感謝の念を表します。4位の「オルタネート」、エンタメ作品として非常に面白かったです。

【Mの総評】

今年で本企画3回目ですが、今までで一番悩みました。明確に生きづらさが増しているいまの世の中に真正面から向き合い、且つ文芸として高い水準でそれを結晶化させた宇佐美りん「推し、燃ゆ」が個人的最「推し」でしたが、「売り場からベストセラーをつくる!」という本屋大賞のコンセプトを考えると既に芥川賞をとり評判もついてきている同作が受賞は難しいかなと。

従い、次いで完成度が高いと思った町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」を1位としました。町田そのこはほかの作品は読んだことはないのですが、キャリア的にここで本屋大賞を取って一段上のステージに上がるという展開はあるような気がします。

伊吹有喜「犬がいた季節」は2年前に大賞となった瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」と同系統の、普通の生活の中の人間関係のあれこれを丁寧に描いた“ほのぼの感動系”で、過去の本屋大賞の傾向を踏まえると上位に食い込む予感がします。

何故か電子書籍化されておらず不承不承当地ドイツまで取り寄せた加藤シゲアキ「オルタネート」は案外好みでしたが(*送料はもとが取れたと思います。正直に言うと色物だと思ってました、すみません。)、直木賞ノミネート作品(&こちらも割と既に売れている)ということで4位。凪良ゆう「滅びの前のシャングリラ」は流石読ませる筆致でエンタメとして楽しめましたが、2年連続大賞受賞への書店員さんたちの心理的ハードルは高いと予想し、5位としました。が、1~5位はどれが大賞を取ってもおかしくはないと思います。

全体としては短編集・オムニバス形式の作品が4編もノミネートされていることが少し気になりました。たぶん、読者側に長編をこなす体力がなくなってきておりウケる小説の形も変容してきているのだと想像します。そんな中、山本文緒「自転しながら公転する」は、既に作家としてそれなりのキャリアがあることを加味して若干辛めの7位としましたが、だらだらと行ったり来たりする主人公の感情の波に振られ続けているといつの間にか読了していたというある意味”伝統芸能”的小説で、こういう長編もまだまだちゃんと世の中に出てきてくれると一読者として嬉しいなと思いました。

【金次郎順位予想】

大賞 「滅びの前のシャングリラ」

2位 「推し、燃ゆ」

3位 「52ヘルツのクジラたち」

4位 「オルタネート」

5位 「お探し物は図書室まで」

6位 「犬がいた季節」

7位 「八月の銀の雪」

8位 「逆ソクラテス」

9位 「この本を盗む者は」

10位 「自転しながら公転する」

【M順位予想】

大賞 「52ヘルツのクジラたち」

2位 「推し、燃ゆ」

3位 「犬がいた季節」

4位 「オルタネート」

5位 「滅びの前のシャングリラ」

6位 「お探し物は図書室まで」

7位 「自転しながら公転する」

8位 「八月の銀の雪」

9位 「この本を盗む者は」

10位 「逆ソクラテス」

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金次郎、課題図書を読了し「闇の自己啓発」に挑んだものの・・・

 

いわゆる〈ポリティカルコレクトネス(PC)〉の見地から、性別や性的志向、人種や国籍などによる差別を含意してしまう言葉の使用を避け、中立的な表現に置き換える意識が高まって久しいですが、先日これもダメなのか、という例を目にしました。看護婦→看護師、ビジネスマン→ビジネスパーソン、スチュワーデス→キャビンアテンダントなどは分かり易いですし、女子力とか言ってはいけないんだろうな、というのは理解できるのですが、今回使ってはだめかもと知ったのはマンホールという言葉。そう、あの下水や埋設されている電線など地下インフラ関連の作業をするために開けられているあの穴です。どうやらそういう作業に携わった作業員の方がかつて男性であったことからその名前が付いたようなのですが、さすがに、雨の日にマンホールの蓋の上で滑らないよう気を付けましょう、と言う際に差別的な意味合いは全く無いと思いつつも、そういうことにも気を付けなければ誰かを傷つけてしまうのか、と思い直しNGワードリストに入れました。ちなみにPC的にはメンテナンスホールというのが正式なようです。ついでに色々考えてみたのですが、仕事でよく使う工数の単位であるman hourもたぶん不適切、業界用語のmiddlemanも恐らく✖で、騎士道精神の象徴で当たり前のエチケットであったレディーファーストも今や、お先にどうぞ、的なジェスチャーで下手をすると差別主義者のレッテルを貼られるという難儀な時代となっております。しかし、家政婦は見た、はPC的にはどういうタイトルになるのだろうか。ハウスキーパーは見た、だとちょっと雰囲気出ませんね(笑)。

さて、「闇の自己啓発」の課題図書⑤は「現代思想2019年11月号 反出生主義を考える」(青土社)です。この本は古代ギリシャに遡る〈生まれてこない方が良かった〉という考え方を独自の理論で〈反出生主義〉としてまとめ上げたデイヴィッド・ゼネターの主張についての様々な論稿を集めた構成になっています。

直感的に理解し難いところはありますが、ゼネターの主張のセントラルドグマは、存在してしまったために生じる苦痛は、存在しなかったことで発生する快楽の減少(=0)より常に大きいという基本的非対称性から出生を否定し、人類は穏やかに絶滅に向かうべき、というものです。

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大沢在昌作品の中で「新宿鮫」と双璧をなす代表作「狩人シリーズ」を紹介

そろそろ会社に少し顔を出そうかな、と複数の事業を経営する青年実業家のような感じで書きましたが、ただのテレワーク人材です(苦笑)。前回の緊急事態宣言の時同様に中途覚醒症状が発症し、上手くいけば21時就寝の3時起床、下手をすると22時就寝の2時起床、というようなぎりぎりの生活を送っております。あーよく寝たと思いながら目を覚まし、時計を見て1時だったときの辛い気持ちは人生で5本の指に入るぐらい厳しいものが有りますね。最近は、起きた際に聞こえる近くの高速道路の走行音(=交通量)でだいたいの時刻が分かるという特殊能力を身に着けましたが、全く役に立つ気がしません。

さて、大沢在昌先生といえば、以前このブログでも紹介した新宿を舞台にしたハードボイルド警察小説である「新宿鮫シリーズ」が有名ですが、商業的に疑問を感じるほど似通った内容を描いた「狩人シリーズ」なる作品群も手掛けられており、金次郎はこちらもかなり気に入って読んでいます。「新宿鮫シリーズ」ではキャリア警察官であるにもかかわらずある事情から出世も異動もかなわない境遇に追い込まれた鮫島が漠然とした屈託を抱えながら、警察という巨大組織の不条理な圧力に抗いつつ様々な事件を解決していくという、鮫島個人に焦点が当たった鮫島目線のストーリーになっています。一方、「狩人シリーズ」では中年太りで風采の上がらないノンキャリア刑事である佐江が、期せずして得た相棒とその相棒が持ち込んでくる面倒な事件にしぶしぶながらも関り、大変危険な目に遭いつつも事件を解決に導くという展開で、やや達観気味の佐江が相棒と結ぶ人間関係とそれが故に悩む佐江の葛藤を軸に物語は進んでいきます。鮫島と違い、佐江のスタンスは受け身でやや引き気味であり、作中での描かれ方もワンオブゼムという感じなのですが、逆に金次郎はその全体を見通す大局観や状況に応じたしなやかさが好きだったりもします。

まぁ「新宿鮫シリーズ」全11巻と「狩人シリーズ」全5巻を読破して、ようやくこの微妙な違いを朧気に理解したというのが正直なところですので、初読の方にはどちらもほぼ同じ印象になると思われます。より多く死にかけるのは佐江、意外にも恋愛がストーリーの重要な要素となっているのが鮫島、というのはちょっとしたポイントかもしれません。

では、「狩人シリーズ」の簡単な紹介と金次郎による独断評価です。

◆「北の狩人」(幻冬舎、以下全て同じ 上巻下巻):北国の訛の有る、明らかに尋常でない雰囲気でしかもかなり強い若者が新宿に現れ古い事件について尋ね回るところから始まるこの物語は、プロットもよく練られていますし、登場人物も魅力的で、1990年代の新宿の猥雑さも鮮やかに描かれているということで、その後シリーズ化されたのも頷ける秀作です。宮本という登場人物が非常にいい味を出しておりますし、主人公である雪人の恋愛も古風で良し。(評価★★★★☆)

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金次郎、「カネを積まれても使いたくない日本語」(内館牧子著)の内容に慄然

バレンタインデーはまだなのに、日本橋三越で2月初旬から始まったバレンタインイベントで購入した年に一度の楽しみである高級チョコをなんともう食べてしまいました。今年はDelReYの10個セットで、外側のチョコ部分は勿論、中に入っているガナッシュが抜群でした。コーヒー、キャラメル、ピスタチオなどの定番だけでなく、金次郎がやや苦手としているパッションフルーツやエキゾチックフルーツのガナッシュも息が止まるほど美味で、不要不急かつ禁断のセカンドDelReYを買うかどうか真剣に妻と二人で検討中です。ちょっとお高いのは気になりますが、1個いくらという計算を忘れて楽しみたいクオリティです。

さて、自称読書家でもありますし、それなりに日本語は気を付けて使っており、会社ではメール内でのおかしな表現には中年らしく目くじらを立てております。会議中でも「今の発言は意味がよく分からない。」や「今の発言、これまでの議論の文脈と整合してないよね。」などと言ってしまう煙たいおっさんそのものです。

そんな金次郎が愕然とさせられた本が「カネを積まれても使いたくない日本語」(内館牧子著 朝日新聞出版)です。最初に出てくる〈ら抜き〉のあたりでは未だ内館先生と共に世の乱れた日本語を糾弾しよう、と意気込み、有名スポーツ選手が「オリンピックに出られる。」が言えずに「~に出れる。」でもなく微妙に変化して「オリンピックに出れれる。」と言ってしまったエピソードに、レレレのおじさんかよ、と突っ込みを入れる余裕すらありました。お名前様やご住所様などの表現にも違和感が有ったので、これに対する批判も、よしよし、と読んでおりました。

ところが、いきなり【させて頂く】がやり玉に上がると、時々使っていることに冷や汗。更に、【結構~します】や【というふうに】、【してみたいと思います】、【普通に】、【仕事で汗をかく】などの高使用頻度の表現がどんどん気持ち悪い、美しくないと断じられ、読み終わる頃には最初の勢いは消え、すっかり意気消沈でした。徹底的にへりくだる、断定を避けて存在しないリスクすら回避する、という姿勢が最近の言葉の乱れの背景とのことで、勇気を出してシンプルかつ美しい日本語でリスクを取っていこうと少し思いました。【やばい】というのはその筋の方が使っていた言葉のようですが、今ではすっかり定着し、上品なおばさままでもが「やぼうございます。」と言ったとの話は面白い。また、判断するを、判断【を】する、のように【を】を入れる表現もおかしいと書かれていて、読んだ直後に森会長が「不適切な発言につき、撤回をさせて頂きます。」と言っていて笑えました。

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「アガサ・クリスティー自伝」は最高に面白くておすすめ!

昨年2020年は後にミステリーの女王と呼ばれることになるアガサ・クリスティーが「スタイルズ荘の怪事件」(早川書房)でデビューし、〈灰色の脳細胞〉で知られるエルキュール・ポワロを世に出してから100年のメモリアルイヤーでした。

ポワロは、第一次大戦で荒廃した欧州大陸からイギリスに亡命してきたベルギー人の元刑事で50代という設定ですが、クリスティーもその後ポワロが50年以上も活躍するとは夢にも思わず、ひたすら小学一年生を続けながらストーリーが緩慢に進んでいく名探偵コナンばりの苦しみを味わうことになっています。クリスティー自身も、もっと若い設定にしておくべきだったと悔やんでいますね(笑)。

極めて大雑把な分析ではありますが、シャーロック・ホームズを情報収集重視のひらめきタイプ、エラリー・クイーンを緻密なロジック積み上げタイプの名探偵だとすると、ポワロは秩序を重んじ細部に拘る共感力タイプの名探偵と言えるかと思います。〈相棒〉の杉下右京はクイーンとポワロの間、明智小五郎はホームズタイプというイメージでしょうか。

そんなポワロものを中心に多くの作品を残したクリスティーは1976年没ということで、金次郎が4歳の頃までご存命だったことになり、親の世代にクリスティーは同時代の人気作家だったというのがちょっと実感が沸きません。偉大過ぎるからでしょうか。

そんなわけで、100周年を機に前から気になっていた「アガサ・クリスティー自伝」(アガサ・クリスティー著 同 上巻下巻)を読んでみたのですが、これが非常に面白い本で大変おすすめです。

クリスティーが15年かけて記したこの本は、クリスティー自身の人柄についてや、数多の名作が産み出された背景は勿論、当時のイギリス社会や大英帝国統治下の植民地の様子も垣間見え、ミステリーファンならずとも楽しめる一冊となっています。

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いよいよ本屋大賞2021ノミネート作品発表!

このブログもそうですが、仕事でメールを書いていても、どうも自分の文章が長たらしくてイケていない、と思うことが多いです。実際、ブログのタイポをチェックしてもらっている妻にも一文が長すぎて分かりづらいと頻繁に指摘されて修正を余儀なくされています(苦笑)。そんな時に見つけたのが、「動物農場」や「1984年」でお馴染みのジョージ・オーウェルが文章を書く際に悪文とならぬよう留意していた以下の6つの質問と6つの規則、です。ここに共有して、自らの戒めとしますので違反事例ございましたらコメント頂戴できればと思います(笑)。先ずは、次回から文章がどう変わるか乞うご期待!

【オーウェル6つの質問】

○私は何を言おうとしているのか?:一般論でなく自分自身の見解を自分の言葉で、ということだと思います。

○どんな言葉で表現するか?:伝えたいことが定まれば、自ずと使う言葉も一般的な使い古されたものでなくなりオリジナリティが出てくる、ようです。

○どのような表現やイディオムを使えば明確になるか?:ありきたりでなく新鮮なものを選ぶように、との教えです。

○この表現は効果を発揮するのに十分な新鮮さがあるか?:ちょっと上の質問と似ていますね。

○もっと短く言えるだろうか?・回避できるはずの見苦しいことを、何か言っていないだろうか?:この最後の問は、かなり耳が痛い。。。

【オーウェル6つの規則】

○印刷物で見慣れた比喩を使ってはならない:残念ながら比喩を使えるほど文才有りません(苦笑)。

○短い言葉で用が足りる時に、長い言葉を使ってはならない・ある言葉を削れるならば、常にけずるべきである:結構気にしているつもりですが、まだまだですね。

○能動態を使える時に受動態を使ってはならない:これはやっている気がしますね。英語を話す際にも無意味な受動態を使っていると反省。

○相当する日常的な日本語が思い浮かぶ時に、外国語や学術用語、専門用語を使ってはならない:これも結構誤魔化しでやっているかも、ダサい。。。

○あからさまに野蛮な文章を書くぐらいなら、これら5つの規則を破る方がまだ良い:そもそも野蛮な文章の意味が分かりません(笑)。

さて本題です。1月21日に本屋大賞2021の候補作品が発表され、いよいよこのブログにおける年に一度の大イベントである宿敵Mとの本屋大賞予想対決がスタートいたしました。ルールは昨年通り(詳細はこちら→本屋大賞2020ノミネート作品発表!)、Mが現在ドイツ在住という点を若干考慮して、Mによる予想提出締め切りは4月5日(日)24:00(日本時間)といたしました。大賞の発表は4月14日(水)ですが、それまでしばらくの間楽しめそうです。前回は非常に悔しい惨敗で、金の栞(@結構高額)を購入させられましたので、今回は勝って金次郎の金栞を手に入れたいと思います。

ノミネート10作品のうち7作が既読でしたが、何となく読まず嫌いにしていたNEWS加藤先生を遂に読むことになるので、アイドルが書いた小説という先入観をどこまで抑えて客観的に予想できるかが一つのポイントと思います。また、前回9位とあさっての予想をしてしまった凪良先生をどこに位置付けるか、常連だが上位に来ない伊坂作品の評価をどうするか、こちらも常連の深緑先生のファンタジー挑戦を正しく消化できるか、など悩みどころ満載です。ともあれ、以下ノミネート作品の簡単な紹介です。

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年末年始に乱読した本のご紹介、特に「52ヘルツのクジラたち」と「推し、燃ゆ」が推し!

しばらく前に翠江堂のいちご大福についてとても美味しいと書きましたが、今が旬のいちご大福、金次郎のおすすめ店をもう一軒紹介します。とは言え、既に紹介するまでもない有名店なのでご存知の方も多いと思いますが、我が故郷の誇る鈴懸です!東京には、新宿伊勢丹とミッドタウン日比谷に入っていますが、これまた福岡名産のあまおうを上品なこしあんと柔らかい求肥で包んだいちご大福は絶品です。緊急事態宣言直前のぎりぎりのタイミングで日本橋三越に催事で出店されており、今年もどうにか旬の味覚を堪能することができました。11月~4月の季節限定品とのことなので、何とか早くコロナに落ち着いてもらって、4月までにもう一度食べたいところです。

甘味と言えば、去年コロナ影響で銀座四丁目交差点の鹿の子が閉店されたと知った時は夫婦揃って呆然としてしまいました。銀座三越に入っている販売店では持ち帰り用のあんみつが買えるようですが、やはりあのお店で食べる絶品鹿の子あんみつとは比べるべくもありません。何度でも温かくて美味しいお茶を注いで下さるホスピタリティ溢れる店員の皆さんにもうお会いできないかと思うと、コロナへの負の感情が高まり過ぎて、呪術廻戦で言うところの呪霊になってしまいそうです。ちなみにアニメ呪術廻戦は非常に面白いので未だの方は是非一度ご覧ください。

年末年始にやることが無く、猛烈な勢いで本が読めたのは良かったものの、あの本もこの本も紹介したいと思いつつ感想メモを書くのをサボっていたら、だいぶ内容が朧気&感想が薄れ気味になってしまいました。。。なので本日は質より量ということで失礼いたします。

王様のブランチBOOK大賞を受賞した「52ヘルツのクジラたち」(町田そのこ著 中央公論新社)は、声無き叫びもきっと誰かに届くから諦めずに叫び続けよう、そしてその叫びをキャッチするために自分の心の傷から目をそらさずに、その痛みときちんと向き合おう、という強いメッセージを感じる感動作です。若干ご都合主義的なところも無くは無いですが、謎で読者を引っ張るプロットもよく練られていて、流石はブランチ良い本を見つけてきますね。今週21日に予定されている本屋大賞候補作にノミネートされる可能性が高いと思います。

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文学女子とその母上に冬休みにじっくり読める本を紹介

金次郎はカラオケ好き&時には歳を忘れてロックバンドのライブに行く程度の音楽趣味で全く高尚な感じではないのですが、10年以上前にふと手に取った〈澤野工房〉という聞き慣れないレーベルのジャズアルバムが気に入って何枚か買い集めたり、そのアーティストの渋谷でのコンサートに夫婦で行ったりしていました。そこで見た主催者の澤野さんは、ごく短いスピーチの間にもそのジャズへの情熱とお人柄が滲み出る、大変魅力的な方だなと強く印象に残っていました。ここのところ読書三昧で音楽もあまり聴けておらず、コンサートにも足を運べていなかったのですが、「澤野工房物語 下駄屋が始めたジャズレーベル 大阪・新世界から世界へ」(澤野由明著 DU BOOKS)という澤野さんの活動を綴った本を見つけて読んでみて、100年以上続く下駄屋の四代目である澤野さんが、ジャズ好きが高じて〈聴きたいものが売っていなければ自分で作る〉の精神で自らのレーベルを立ち上げるまでのいきさつや、アルバム全体を一つの作品として髪の毛から足の裏まで全身で音楽を聴いて味わって欲しい、というジャズへの熱い思いに触れ、純粋に感動したこともあり、客席からとはいえ同じ空気を共有した親近感も手伝って、またCDを買って聴きたいなという気分になりました。

広告無し、ストリーミング無し、ベスト盤無し、とお金儲けセオリーとは真逆のやり方を貫いて、徹底的に品質に拘る澤野さんの信念が世界中のアーティストや顧客に確りと評価される様子は、現代の多様化を極める消費者マーケティングで生き残る一つの型を体現していると思います。残存者利益で下駄屋が盛り返してきている、というのも面白い。

さて、まだお会いしたことは有りませんが、このブログを支えてくれている弟子の文学女子ABさんに読書の秋以来の本の紹介です。先日、学校の先生から綿矢りさ作品を読みましょうとの課題が出たとのコメントを頂きましたので、簡単に「蹴りたい背中」(河出書房新社)、「手のひらの京」(新潮社)、「ひらいて」(新潮社)、「憤死」(河出書房新社)をコメント欄で紹介しましたが、今回は更に選りすぐりの5作品を捻りだしました。既に美容室図書館経由で読まれたと思うのでリストに入れていませんが、「和菓子のアン」(坂木司著 光文社)もきっと好みの方向ではないかと思います。

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瀬尾先生の新作長編「夜明けのすべて」と犬はやはり泣ける伊吹先生の「犬がいた季節」を読む

以前のブログでカタカナ表記がおかしいと書いた途端に民主党候補指名レースから離脱してしまったので薄く責任を感じていたピート・ブティジェッジさんですが、バイデン新政権の運輸相となって温暖化ガス排出削減の推進役になられるようです。低排出と言えば、そうEVです(笑)。前回はEVの充電が切れそうになり、ナビに従ってようやくたどりついた充電ポイントで家庭用コンセントを提示され暗澹たる気分になったところまで書きました。既にその段階でPONR(Point of no return=引き返す方が遠くなるポイント、ケミストリーではない)を越えつつあった我々も簡単にOK, thank youと言うわけにもいかず、何か手段が思いつかないかと日産ディーラーの店員さんに食い下がりました。暫く沈思黙考した店員さんは、環境意識が高そうには見えない割に無謀なEVドライブを繰り広げるおっさん二人組を憐れんでくれたのか、「うろ覚えやけど、そっちの方にくさ、暫く走ったところにたい、コンビニがあろうが、そこにくさ、充電ポイントが有ったっちゃなかったろうか。」、と若干方言がきつ過ぎる記憶の改竄がされている気はしますが、頼りないもののなんとか首の皮一枚つながるアドバイスをくれたのでした。非常に心もとなくはありましたが、この藁に縋るしか選択肢が無いおっさんコンビは再び無言で腹ペコになりつつ店員さんの指し示す方角にリーフを走らせ、30分ほどで目指すファミマを遂に発見。しかし、こんなカエルの大合唱が響く田んぼの真ん中に最新テクノロジーのEV充電ポイントなど有る筈も無いと絶望しかけたその瞬間、興奮した後輩が日本語の苦手な帰国子女のような指示代名詞だらけの声を上げました。

「金次郎さん、あのあそこの駐車場の端っこに有るあれ、まさかあれのあれじゃないでしょうか!」

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凪良ゆう先生は「滅びの前のシャングリラ」で二年連続の本屋大賞なるか?

コロナで会食もさほど無く、読書以外に特段やることもないのでオンライン英会話のレッスンをよく受けていますが、イディオムは本当に意味不明なものが多くて困ります。自分が英語が苦手なだけかもしれませんが(苦笑)。例えば、to steal someone’s thunderは誰かの雷を盗むではなく、他人を出し抜く・功績を横取りする、という意味だそうで、完全に鳩豆状態でした。同じく呆然としたのがmodus operandi(MO)で、この意味は仕事のやり方・運用方法・(犯人の)手口、だそうです。。。

さて気を取り直して(笑)、前回の続きです。10年前とはいえ、我々も一応大人なので、一度の充電で走行できる距離と福岡―長崎間の距離は事前に確認しており、長崎市内で観光や買い物をしている間に充電すれば福岡空港まで余裕で戻れる計算でした。EVは給油がいらないから楽ですね、とか喋りつつ、EVならではの加速を試したりパワーウィンドーを上げ下げしたりしながら楽しくドライブして30分程度経過した時だったでしょうか、突然後輩が不審そうにつぶやきました。

「金次郎さん、電池残量メーターがおかしいです。」

後輩が新車同然のEVをレンタカーできたと自慢していたこともあり、故障ではないだろうとは思いましたが、確かにメーターは走行時間を考えると有り得ない50%を示しており、走行中にもみるみる減っていきます。慌てふためいてとりあえず減速してみたところメーターの動きが安定しましたので、どうやら時速60キロ以上出してしまうと異常に充電が減ってしまうようです。これも新しい技術を取り入れる際につきものの試行錯誤と思い直し、高速道路上で迷惑なカメとなりのろのろ走行でひたすら抜き去られる運転を甘んじて受け入れることに。爽快な気分が一転車内がかなりどんよりした雰囲気になってきたので、気分を変えようと窓を開けたりラジオをつけてみたりしたところ、後輩の悲し気なつぶやき再び。

「金次郎さん、充電が減るので窓とかラジオとか電機関係には触らないで下さい。」

ここから暫く、ノロノロ、窓無し、エアコン無し、ラジオも無しで無音かつ無言という忍耐の時間が30分程度続き、二人ともかなり敗戦処理的なローテンションになり始めた頃、けたたましく鳴り響くアラーム音と共にナビが無感情な声で告げました。

「直ぐに充電して下さい。直ぐに充電して下さい。間もなく運転できなくなります。」

まだ佐賀県に入ったばかりで先は長く一瞬パニックになりましたが、午前中の早い時間に出発したことが幸いし、時間に余裕が有ったので、一旦高速を下りて充電ポイントを探すことにしました。早速優れものと噂のナビシステムで最寄りの充電ポイントを選び、ナビの指示通りに下道を進みます。消し方の分からないアラーム音とアナウンスを響かせつつ、こんな場所に充電ポイントが本当に有るのかと不安にさせる山道を小一時間程度走った先に見つけたのは、普通の日産ディーラーの営業所。恐る恐る充電させてくれと頼んでみたところ、店員さんは怪訝な表情。その店員さんが投げやりに指さした駐車場の片隅に有ったのは、なんと普通に家庭でスマホを充電するあのコンセント!まさかと思いつつ、「フル充電までどの程度かかりますか?」と聞いたところ、驚愕の「うーん、明日の朝ぐらいかな。」という返答。。。どうなるんだ、金次郎とその後輩?!更に続きます。

今週は、本屋大賞候補作へのノミネートが有力な作品を何冊か読みました。先ずは「滅びの前のシャングリラ」(凪良ゆう著 中央公論新社)で、早くも「流浪の月」に続いて二年連続大賞受賞も噂される人気作です。一か月後に地球が滅亡すると知らされた時、人々は何を考え、これまでの人生をどう振り返って、残された最後の日々を誰と如何にして過ごすのか、という重いテーマを、深刻になり過ぎないぎりぎりのタッチの巧みな文章さばきと心を軽くしてくれるユーモアを駆使して最後まで全く投げ出す気を起こさせずに読ませてしまう筆力はさすがです。一か月という短過ぎず長過ぎずの期限設定の絶妙さが、登場人物のみならず読者にもきちんと考える時間を与えているので、物語に引き込まれた読者もいつの間にか自分にとって本当に大切なものが何かを考えさせられていて、その大切なものを思って生きていくという希望につながる、逆説的絶望のお話になっています。人間が持つ生得の倫理観を重視するマルクス・ガブリエルの新実存の考え方に通じる部分も有り、最近ちょうど関連本を読んだところだったので興味深かったです。外すと恥ずかしいですが、金次郎は上位10作品へのノミネートを予想します。

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期待通り面白かった染井為人先生の「正体」を紹介!

最近やたらと環境意識が高まっており、2030年代にはガソリン車も販売されなくなるなど時代は大きく変わっているなと感じます。これからはハイブリッド車や電気自動車(EV)の時代になるのだと思いますが、先日ふと思い出した10年前にEVに乗った時のことを書きたいと思います。大きな会議に参加するために福岡に出張した際に、日程的に土曜日の昼間が空いてしまい、一つ下の後輩にレンタカーを運転させ長崎まで行ってカステラを買おうとの話になりました。カッコいい車を借りるよう後輩にお願いしていたところ、後輩が借りてきたのはまだ出たばかりの日産リーフ。当時は珍しい100%バッテリーで動くEVで、確かに運転席もパソコンみたいというか、近未来的でカッコよく、でかしたと後輩を褒めていざ出発。やや曇り空なのは今イチでしたが、走行中の音は静かだし、始動からの加速はすごいし、ナビシステムも当時としてはかなり画期的な感じで、最初のうちは非常にノリノリだったのをよく覚えています。長崎ではちゃんぽんにしましょう、いや皿うどんだろう、などと軽口を飛ばしつつ高速も軽快に飛ばしていた頃の我々には、その後この旅に恐ろしい展開が待ち受けていることなど知る由も有りませんでした。。。続きは次回(笑)。

「正体」(染井為人著 光文社)は、注目作家である染井先生の最新刊で、逃走を続ける脱走少年死刑囚と、そうとは知らずに彼と関わる人々の交流を通じ、人間の持つ多面性や他人を信じることの難しさを問いかけるサスペンス小説です。読者は最後の最後まで日本中を震撼させた殺人鬼とされる主人公の〈正体〉を見極めるべく登場人物たちと共に悩むことになります。状況や相手によって態度をあっけなく変える人間の弱さや醜さもさることながら、いつどんなはずみでネガティブなレッテルを貼られるかわからない危険だらけの現代社会で、信頼されるに足る人間として生きて行くことの大切さについて考えさせられる作品でもあります。様々な属性、評判やレッテルに惑わされることなく、相手の〈正体〉を感じ取れる眼力を身に着けたいところですが、かなりハードルは高いと言わざるを得ませんね(苦笑)。過去三作同様(紹介はこちら)充分面白く読めたのでおすすめ作品であることは間違い無いものの、もう一つのテーマである死生観については、やや踏み込みが甘かった印象にて、次回作での更なる飛躍に期待です。

 

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【アフター4読書一周年記念】人気記事ランキング発表!(1~5位)

金次郎家ではテレビを垂れ流し的に見ることがあまり無く、ニュース以外は録画してある番組を見るのがほとんどなのですが、そんなたまにしか見ないテレビでこの数か月気になってやまないCMが有ります。そのCMとは、はいあの〈やっちゃえ、日産〉でお馴染みの木村さんの出演されている一連のシリーズです。最新の自動運転バージョンでは、〈スカイラインなんて自分で走る方が ゼッタイ 楽しい〉、〈でも、意外とさぁ〉、〈こいつの運転も、かなりイケてる〉、〈やるじゃん、プロパイロット〉と次々に繰り出される台詞でじわじわとぞわぞわ感が高まり、とどめの〈追い越しちゃう?〉で言葉にできないざわつきが金次郎の心を支配します。木村さんはカッコいいですし、同世代のスターであることに全く異論無しなのですが、このCMは確実に彼のそういうポジティブで分かり易い一面を売りにしたものでなく、もっと何か得体のしれないものに心の奥底に働きかけられているような焦燥を感じさせられ、新しくて怖いCMだなぁ、と思いながら目が離せなくなっております(笑)。皆さんの印象は如何でしょうか?

前回→【アフター4読書一周年記念】人気記事ランキング発表!(6~10位)に引き続き、いよいよ人気上位記事の発表です!前回の内容を読んだ妻に、どうして10位から発表しなかったのか!、とさんざん詰(なじ)られましたので(涙)、今回はきちんと下位の記事から発表させて頂きたいと思います。

5位:金次郎、中学生になった文学女子への本の紹介に挑戦(2020年6月30日)

改めて紹介した本のリストを眺めていて、大人げないと言うか大人過ぎるセレクションにかなりのKY印象を禁じ得ません(苦笑)。住野先生を気に入ってもらえたことと、大人である文学女子のお母さんに楽しんで読んで頂けたことがせめてもの救いです。とは言え、いずれ劣らぬ名作揃いであることは間違い無いですから、このブログを読んで頂いている未読の方は是非お試し下さい。

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【アフター4読書一周年記念】人気記事ランキング発表!(6~10位)

昨年12月に始めたこのブログですが、試行錯誤しながらどうにか一年続いて参りました。ストックしていたネタの枯渇懸念により、途中からやや更新ペースが落ちてしまったものの、前回分までで計72投稿とそれなりに頑張れたかなと思います。とりあえず、目つきの悪いヤンキーが公園のゴミを拾っているのを見た時のような、あの飲み会担当の金次郎さんが真面目に文章を書いている!、というポジティブギャップによる好印象戦略を継続する意味でも、二周年に向けて楽しんで頂ける記事を書いていこうと思います。引き続き宜しくお願いいたします。

と言うことで、前回のブログの最後に予告しました通り、一周年を記念して、これまでに読んで頂いた回数の多い記事のランキングを作成してみました。金次郎(とその妻)以外にこの順位に興味を持たれる方はそんなにはいらっしゃらないと思いますし、記事の最後に〈いいね!〉ボタンを付けているわけでもないので、どちらかと言うとたくさんクリックされたタイトルランキングのような気もしてきましたが、あまり細かいことにはこだわらず、先ずは以下6~10位の発表です。

6位:ダイヤモンドプリンセスは呪われているのか?(2020年2月21日)

思えばまだこの頃は日本国内での感染者も少なく、他人事感満点の内容となっておりますね。最近レースの機会も無く、目標を見失って料理にはまっている海外準エリートランナー友人へのエールが今は昔、という雰囲気です。最後まで読まないと出てきませんが、マリファナの本についての感想はなかなか良いですね(自画自賛)。

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「イモータル」(萩耿介著)は何度読んでも意味不明

ネットで見つけた記事ですが、なんとアメリカ人の14%がパスワードにcovidを使っているとのこと!毎日10万人以上感染しても気にせずマスクレスの人も多いアメリカらしいと言えばらしいですし、目的不明のフェイクニュースかもしれませんが、その記事にはtrumpが12%、bidenが9%使われているとも記載有り、こちらはなんとなく信じられるような気がします。誕生日やペットの名前を押さえてのパスワードトップは万国共通で鉄板の123456とのことで、やはり人類みな兄弟ですね。

アルツゥール・ショーペンハウエルの「読書について」(PHP研究所)を読み、読書は他人の頭を借りているだけなのでその後の反芻やoutputをしないと無意味、紙の上に書かれた思考とは砂の上の足跡以上のものではない、などなどの厳しいお言葉を頂戴し、本日非常に真面目にこのブログに取り組んでおります(苦笑)。カントを師とし、〈超人〉ニーチェに多大な影響を与えたショーペンハウエルはその後一世を風靡したヘーゲルと激しく対立して不遇をかこうこととなります。彼の〈認識論〉がインドのウパニシャッド哲学から影響を受けたというのはなんともグローバルですが、そういえばそんな小説が有ったなと思い「イモータル」(萩耿介著 中央公論新社)を読み返してみました。現代日本とインド、17世紀のムガール帝国、そして革命期のフランスを舞台に、宇宙普遍の原理であるブラフマンへの思いや憧れに衝き動かされて生きる魂=本質の表象としてのアートマンを描く、古代インド起源のウパニシャッド哲学を題材にした非常に壮大かつよく分からないお話です(笑)。内なる自我の本質たるアートマンを突き詰める中で、真理ブラフマンとの融合〈梵我一如〉を追求する物語が綴られていると思うものの、自分でも何を書いているかよく分からないので、全くナイスな紹介になっておらず恐縮ですが、もう少し修行して三度目読んだら理解できることを信じ、今回はこの辺にしておきます。

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金次郎はビジネスパーソンとしてちゃんとビジネス書も読んでいます

今回ちょっと長いのでいきなり本の紹介です。ネタ切れではありませんのでご心配なく(笑)。感想を書くのに骨が折れるのでやや敬遠気味でしたが、たまにはビジネス書的なものも紹介せねばと思い、どうせならと長らく積読となっていた「ティール組織:マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」(フレデリック・ラルー著 英知出版)を気合で読んでみました。

この本は組織をその発展段階によって幾つかに分類した上で、現在その中でも最も進んだ形態であるとされる〈進化型組織〉に焦点を当て、その仕組みや優れている点について実例を挙げながら解説する内容となっています。

それぞれの発展段階にイメージカラーが付されているのが面白いのですが、原始時代の環境を受け入れるしかない狩猟採集を目的とする組織は〈受動型組織(無色)〉と規定され、呪術的な〈神秘型組織(マゼンダ)〉、そしてマフィアのような〈衝動型組織(レッド)〉と続きます。

現在の日本企業は〈達成型組織(オレンジ)〉から〈多元型組織(グリーン)〉への移行期という大まかなイメージですが、この本で紹介されているのは更にその先の形態である〈進化型組織(ティール)〉ということになっています。ティール色がどんな色かよく分からないので調べると青と緑の中間的な色のようで、何となく自然の多様性を穏かな精神で俯瞰するようなイメージの色かな、という印象です。

〈多元型組織〉への移行に四苦八苦している金次郎のような凡人には、より進んだ組織と言われてもなかなかピンと来ませんが、〈進化型組織〉を象徴する特徴は1.セルフマネジメント、2.全体性(フォールネス)、3.存在目的、ということで、簡単に言うと、ノルマも戦略もリーダーもない少人数のチームの集合体として構成される組織が、組織の存在目的だけを羅針盤に、完全な情報公開と助言システムを活用して、ひたすらに目的達成を追求する、ということのようです。利益や成長が一義的な目標とされておらず、もう一段高い存在目的のレベルで組織の在り方を考えており、営利企業にも非営利組織にも活用可能、株主利益至上主義でなくスチュワードシップに対応している、という点でなんとなく最先端感は出ています。

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〈板垣死すとも自由は死せず〉の嘘!

(前回の 「二人のカリスマ」(江上剛著)を読みセブン&アイを改めて学ぶ が読めないケースが有ったようなので、宜しければこちらからお願いいたします。)

相棒シーズン19が遂に始まりましたが、何と言っても先日亡くなられた芦名星さんが出演されており、これまでと変わらぬ好演をされていたのを観て非常に悲しい気持ちになりました。初回は全く違和感無かったですが、第二回の放送では声が少しいつもと違うかな、という印象で、後付けではありますが色々と悩まれていたのだろうか、と思ったりして更に悲しくなりました。心よりご冥福をお祈りいたします。

さて、門井慶喜先生は歴史上の人物を主人公としたフィクションをよく書かれていますが、ヒーロー化するようなデフォルメをされておらず、筋の通らないところや、意地悪で嫌な奴なところもそれなりに描かれているので、読後の痛快感は強くないのですが、人間くさいリアルさが感じられるところがだんだん癖になってきます。以前のブログで紹介した作品では徳川家康と宮沢賢治が主人公でしたが、今回は板垣退助と辰野金吾という渋いところを攻めています。

「自由は死せず」(門井慶喜著 双葉社)は、幕末の志士、維新の元勲、自由民権運動家、憲政の父、とめまぐるしくキャラ変を繰り返す、ある意味捉えどころの無い板垣退助の半生を、特段美化することもなく、淡々と描いた作品です。

教科書的には、立志社から国会期成同盟、そして自由党と他に先駆けて本格政党を立ち上げ、〈自由〉の概念を国民に根付かせた民権運動家として記憶している部分が大きいですが、薩土密約から土佐軍の近代化、甲府での新選組撃破、会津城攻略など、幕末の激動期にもかなり活躍していたと知ってやや意外でした。武市半平太、中岡慎太郎、後藤象二郎ら土佐藩出身者との縁が面白く描かれていますが、同じ土佐出身でも坂本龍馬や岩崎弥太郎との関わりは薄かったようで扱いは小さめです。

 

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「二人のカリスマ」(江上剛著)を読み、セブン&アイを改めて学ぶ

 

昨日、美味しいお寿司を食べてほろ酔い上機嫌で帰宅した際に、よい子はうがい、と思い洗面所のコップに水を汲みうがいをしようとしたところ、若干というか大いなる違和感を感じました。酔いも手伝い気にせずうがいを強行したところ、信じられない量の泡が口から溢れるホラーな状況に。慌てて口中をゆすいだのですが、どうやら妻が買ってきたものを除菌消毒した洗面所の掃除の際にうがいコップを洗おうとキッチン洗剤を注入したのを忘れて放置してしまっていたようです。歯が洗いたての皿のようにピカピカになったかな、と思ってチェックしましたが普通でした(笑)。コロナ対策で色々と除菌に気を使ってくれている妻に感謝するシャボン玉おやじでした。

さて読書の話。「二人のカリスマ」(江上剛著 日経BP社 スーパーマーケット編コンビニエンスストア編)は伊藤雅敏、鈴木敏文両大立者の立志伝ですが、イトーヨーカ堂とセブン・イレブン・ジャパンの歴史を知るのに非常に有用な内容でした。不勉強で今ひとつよく分かっていなかったこの二社の関係がクリアに理解できますし、ダイエーや西友との違いも、この部分はフィクションだと思いますが、三者三様の経営者の因縁も絡めて描かれているので理解し易いです。〈成長より生存〉を掲げる守りの伊藤さんと、常にイノベーティブな攻めの鈴木さんが好対照ですが、同時代、同じ会社にこれほどの凄い人材が揃って、尚且つ共に活躍したという奇跡が本当に羨ましいです。また、会社が大きくなってもお店の周囲の掃除を欠かさず、いつまでも恩のある千住商店街への義理を忘れない伊藤兄弟の母上が素晴らしい。妻が近くの赤札堂によく通っていますが、羊華堂(千寿)は赤札堂(上野)、キンカ堂(池袋)と共に東京三堂と呼ばれていたことは知りませんでした。

江上先生の作品を初めて読み、かなり面白かったので、「百年先が見えた男」(PHP文芸文庫)も読んでみましたが、こちらは高杉先生の「炎の経営者」的な内容で、やや感情移入度が低かったものの、大原総一郎クラレ元社長の崇高な精神に触れ、仕事に取り組む姿勢について考え直すきっかけになる一冊でした。驕らず謙虚に、世の中のためになる難しい仕事に挑戦し続けること、が大切と言われ、胸に手を当てて唸っております(苦笑)。クラレや大原一族についてもだいぶ詳しく描かれており参考になりますね。

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