朝井まかて先生の「落陽」(祥伝社)を読み、2020年は明治神宮鎮座100年と知りました

「落陽」(朝井まかて著 祥伝社)は、忘れがたい古の都を離れ、近代日本発展のために馴染みの無い東京を拠点とされた明治天皇の思いと、その志への敬慕の念を示すべく、永続的な神宮の杜を作ろうとした人々の熱意がシンクロする、筆致爽やかな歴史小説です。

内容は結構事実に即していて、明治から大正にかけての江戸東京の活気や急速な変化もその場にいるかのように体感できます。そういう意味では最近よく見る時代振り返り本とも言えますね。

神宮内苑には杉などの針葉樹林がふさわしいとされるものの、関東は気候や土壌が広葉樹林帯とされることから、広葉樹を中心として藪に堕さない厳かな佇まいの人工林を如何にして造営するか、このプロジェクトに関わった人々の苦心が伺えます。

直木賞作である「恋歌」(講談社)では、明治の歌人であり、三宅花圃や樋口一葉の師として名を遺した中島歌子の半生を通して、幕末水戸藩での諸生党と天狗党の激烈な抗争を描く中で、登場人物の人生と辞世の句に込められた思いを鮮やかに結び付け、忘れられつつある’和歌の心’の懸命さや真摯さを浮かび上がらせています。 受牢のシーンは創作部分が多いですが、この壮絶さをきっちり描くことによる効果絶大と感じました。

どちらの作品も、結末で語りての目線が、半歩前、を向き、まだ形を成してはいないけれど未来の変化への希望が感じられる構成になっているところが好きです。また、とにかく緻密な時代考証が本当にすごいと思います。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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