アメリカ社会の陰の部分を描き出す出色のノンフィクションを二冊!

私はレイモンド・チャンドラーやジェームス・エルロイが結構好きなこともあり、時代を問わずアメリカの裏社会ものをよく読みます。中でも特に印象に残っている作品をご紹介します。勿論チャンドラーやエルロイ作品についてもどこかで書きます。

「ヤバい社会学 一日だけのギャング・リーダー」(スディール・ベンカテッシュ著 東洋経済新報社)は、インド系アメリカ人のおたく大学院生がシカゴの団地に形成されている貧しい住民、ホームレス、売春婦、ヤク中、自治会長、警察、ギャングの微妙なバランスの上に成り立つエコシステムに入り込み、そこで得た日の当たらない社会のあれこれを綴ったノンフィクションです。

ギャング組織の収益モデルや利権をめぐる自治会長とギャング・リーダーの対立、無法地帯であっても決して無秩序でなく一定のルールが存在していることなど、非常に興味深い内容でどんどん読めます。

絶対に交わらない世界に住む著者とギャング・リーダーの間に芽生える友情のような結びつきには、微笑ましさと同時に特に後半になるにつれ一抹の寂しさを感じさせられ心がざわざわします。この内容は色んなアングラ社会を描いた小説の下敷きになっている気がしますね。

「マルコムX自伝」(マルコムX/アレックス・ヘイリー著 アップリンク)は20世紀有数のノンフィクションと言われるだけのことはある臨場感。ハーレムでハスラーやってボロボロの状態から、Nation of Islamでの過激な逆差別活動、メッカ巡礼を経て、肌の色と無関係な人間の平等の意識にたどり着くまで、驚く程彼を変貌させたものは、新たな知識や経験から学ぶことへの欲求、感動を素直に受け入れる純粋さ、だったように思います。その純粋さゆえに暗殺されることになったのですが。。。革命家の激動の人生、ではありますが、学ぶことで変われる、可能性への希望の書でもあります。

出張や旅行で行くアメリカはとっても平和なんですけどねー。表社会と裏社会がシュレディンガーのネコのように重なって存在していると考えるとちょっと面白い。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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