家母長制ってなに?世界は広い! フェニミズム小説「三つ編み」と共に

「女たちの王国:結婚のない母系社会 中国秘境のモソ人と暮らす」(曹惠虹著 草思社)は家父長制の象徴たる華僑系の一族に生まれたシンガポール女性である著者が、法曹界での最高のキャリアから早期退職した後に、中国雲南省に今も残る母系血統を中心に家母長制を維持する村での生活を通して、その稀有な世界観に深く共感して書かれたルポです。

結婚や父親という概念が存在しないというのはかなり衝撃的で、母系に連なる一つ上の世代は全員お母さん、自分の属する世代はみな姉妹、という考え方は父系のファミリーツリーに染まった頭ではなかなか理解できません。そこまで振れているので、世界に存在する男性優位構造の究極の相対化という著者の目論見はなかなかに成功していると思います。一方、そういう村にも中国マネーと共に中国文化が流入し、家父長制を表現する言語体系である標準中国語での教育が普及するにつれ、モソ人 の伝統や価値観が希薄化している、という事実も語られていて何となく寂しい気分になります。

ただ、とは書いてみたものの、私がシンガポールに駐在していた4年間の記憶では、シンガポールの女性は総じて強めだったような。。。華僑=家父長制というステレオタイプな私の発送こそが修正されるべきですね。

さて、最近読んだフェミニズム小説といえば、フランスでベストセラーとなり、日本では第10回新井賞作品となった「三つ編み」(レティシア・コロンバニ 早川書房)が印象に残ります。

凄まじいカースト制の実情から物語が始まり、すぐにシチリア・モントリオールと舞台が展開するので、ちょっと話の流れが見えずとまどいますが、次第に3人の、境遇は全く違えど、差別と苦境に立ち向かう強い女性たちの戦いに引き込まれて行くことになります。この3人の人生がどう絡み合うかは読んでのお楽しみですが、映画監督である著者が切り取るそれぞれの街の風景も味わい深く、旅の気分も感じられる内容で(インドの汽車の旅はちょっときついですが)、色々な意味で非常に読みごたえのある作品でおすすめです。

しかし、インドの女性差別はこんなにひどいのか!と思っていたら、(信頼性に議論は有るところですが)ジェンダーギャップ指数で日本は110位とインド以下。。。改めて当たり前になっている慣習や自分の住む社会の常識を見つめ直す意識と、そのための勉強が必要と感じます。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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