これぞラテンアメリカ文学! マジックリアリズムのガブリエル・ガルシア=マルケスを3冊

有名だけど読み通した人はそんなにいないという意味ではトルストイの「戦争と平和」に匹敵する「百年の孤独」でノーベル文学賞を受賞したガルシア=マルケス、作品ごとに違う文体に挑戦できる才能はさすがで他の作品も一読の価値有りです。

「迷宮の将軍」(新潮社)ではラ米をスペインから解放した英雄シモン・ボリバールの最晩年を描いていますが、政争に疲れ、時に民衆からの尊敬も失い、寂しく落ち延びる病身の’解放者’を描くことで、半ば神話となったボリバールの’人間’の部分に光を当て、解放という大事業を神ではなく’普通の人’が実現したことの凄さを改めて浮かび上がらせています。現在と回想が行き来する構成の歴史小説で、我々にはあまり馴染みの無いボリビア国名の由来でもあるボリバールを知って、その人となりに惹きつけられる作品です。

「コレラの時代の愛」(新潮社)では19世紀末ー20世紀初頭のコロンビア社会を発展・風俗・宗教・生活などの面から丁寧に描き、50年以上一人の女性を思い続けるという’有り得ない愛’を徹底的にリアルに描いています。有り得ないのにリアル!なのが凄い。そして、愛とは、夫婦とは、老いとは、などについて深く考えさせられる内容となっており、40代も半ばを過ぎた私にこそふさわしい本だと思いました(笑)。

「愛その他の悪霊について」(新潮社)は18世紀植民地時代のコロンビアを舞台に、白人・インディオ・黒人とその混血が入り混じる重層社会の複雑な習俗や宗教を描いた極めてラ米文学的な作品です。ローマカトリックが現地社会にどう入り込み支配していたのかの現実 を理解する一助にもなりますし、現生を生きる異端の無神論者と死後の世界に向かって生きるキリスト教徒の死生観の対照も印象的です。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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