金次郎、耳鼻科を求めて晴海トリトンまで遠征

最近2か月ほどノドの一部になんとなく違和感が出たり消えたりという状態が続いており、花粉の影響かな、それともストレスのせいかななどと日々少しだけ気にしながら過ごしておりました。それがある週末にそこそこの痛みに成長してしまい、これは何かのヤバい病ではないかとびびった金次郎は、ちょうど月曜に予定していた眼科の定期通院が早く終わりそうだったこともあり、よし耳鼻科にも行って治してもらおうと思い立ち、妻の協力も仰ぎつつ耳鼻科医院の検索を開始いたしました。ところが頑張って探してみても耳鼻科はレアキャラのようでちょうど良いところがなかなか見つかりません。

近所の古ぼけた耳鼻科は昭和というか戦後の雰囲気で、毎回判で押したように「ノドが少し赤い、吸入ですね」としか言われず、患者としてはもう少し病状についての細かい説明が欲しいところなので、やむを得ず範囲を広げて広域検索をすることといたしました。様々な感染症が流行している昨今ですので、予約無しで待合室にぎゅうぎゅうに押し込められるのは避けたいところであり(近所の戦後耳鼻科はまさにそんな感じ)、web予約ができるところに絞って探してみたものの、週末の花粉大量飛散で花粉症の方が処方薬をもらいに殺到したためか、全く予約が取れず、漸く見つけた晴海トリトンの耳鼻科まで遠征することとなりました。〈夢未来クリニック〉というネーミングにやや斬新さを感じつつ向かったのですが、病院内も明るく、お子さんのはしゃぐ声が活発で、スタッフの皆さんにも感じよく接していただき非常に快適であったものの、ノドとは別にどういう訳かなんとなく視線を感じるなどのもやもやとした違和感がつきまとい、その原因が分からず首を傾げたりしておりました。そうこうしているうちに番号を呼ばれ診察室に入ると、穏やかを絵に描いたような先生ににこやかかつ優しくご対応いただき、結果としては地元の戦後耳鼻科同様に「ノドが少し赤いですね」というだけの診断ではございましたが(汗)、ヤバい病気でないことも確認でき、晴れ晴れとした気分で病院を後にすることができました。ところが、トリトンでお昼を食べたところまでは順調だったのですが、自宅に戻ってその日の通院についてあれこれと会話をしているさ中に妻がふいに放った一言が金次郎の違和感をものの見事に、そして何とも言えぬ恥ずかしさと共に解決してくれました。その衝撃の一言とは、「その病院、小児科だったんじゃないの?」です(汗)。確かに夢や未来は子供に使う表現で51歳にはやや不適当ですし、確認したwebにも〈小児科〉が最も強調されて一番上に記載されていましたし、先生も「ボクちゃんなんちゃいでちゅか?」とまではいかないものの、非常に優し気な対応でしたし、待合室の椅子が異常に低かった気もしますし、そもそも待合室に子供とその保護者しかいなかったことを思い出し、何ということをしてしまったのかと振り返ってぞっとしました。ネットで調べてみると小児科受診が可能なのは一般的には15歳まで、思春期も色々と不安定なので18歳ぐらいまでは診てもらっても大丈夫とあり、金次郎は33歳オーバーとなってしまいました。同じサイトに「大人も診てもらえる?」という見出しが有り、そこに一縷の望みをかけて必死で読みましたが、かぜや鼻炎、花粉症薬の処方などは〈保護者の方も〉対応可能と記載されており、やはり大人単品ではNGだったようです(涙)。

さて本の紹介です。「ショート・セール」(楡周平著 光文社)では、落ち目となった日本の自動車メーカーを舞台に繰り広げられる外資系買収ファンドによる短期的な株価上昇至上主義のリストラ手法に問題提起しつつ、お得意のテーマである本邦自動車産業のEV化における立ち遅れを改めて強調すると同時に、古めかしい伝統的な日本的経営に警鐘を鳴らす内容となっております。更に、投資ファンドの運用術に加え、その基盤をなす情報収集ノウハウやネットワークの重要性などにも触れ、中国不動産バブルの崩壊という最近のネタも盛り込んだ非常に中身の濃い経済小説に仕上がっていると思います。勿論実際のビジネスはこんなドラマチックな感じでは進みませんが、相変わらずその発想や視点のヴィジョナリーぶりには学ぶところの多い一冊でした。ファンドからプロ経営者として日本企業に送り込まれる外国人CEOが主要登場人物の一人となりますが、金次郎が仕事をしている化学業界でも最近外国人プロ経営者の功罪がホットな話題となっているので大変面白く読めました。

「虚像」(高杉良著 新潮社 上 覇者への道下 驕りの代償)は明らかにオリックスをモデルにしたワールド・ファイナンスという企業で出世の階段を上る若きエリートの視点から日本の政財界を動かす黒幕実力者である剛腕社長の姿を描いた経済小説です。直接的には表現されていませんが、オリックスの宮内元会長が村上ファンドの村上氏と組んで一儲けした話や、ホリエモンが新参の若手として歯牙にもかけられていない様子が明らかにそれと分かる形で描かれていてなかなか面白いです。高杉先生の小泉・竹中改革路線への強い反感が随所に表れている点は良いのですが、やはり単なる事実の列挙と批判に止まらず、バブル後の経済不振にあえいでいた当時の日本経済がどのように建て直されるべきであったかについての持論を展開していただければ尚良かったのではないかと感じました。しかし、このワールド・ファイナンスの剛腕社長は人間としてはとんでもないおっさんでしたが、宮内氏は実際どんな人であったのか大変興味が湧き、評伝など出ていたら読んでみたいと思いました。

高杉作品をもう一冊。「転職」(同 KADOKAWA)では、ビジネス界の大物をモデルにスケールの大きいストーリーを描いてきたこれまでの作品と異なり、マーケティングを極めて社長を目指すという夢を追いかけ外資系企業で転職を繰り返した少しだけ手の届きそうなビジネスパーソンの物語となっています。新卒で入社したアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に始まり、P&G、リーバイス、モルソン・クアーズ、ブルーボトルコーヒー、アサヒコと全く異なる業界を渡り歩く転職をそれぞれ成功させた主人公小野健一の信念と勤勉さには素直に感銘を受けました。また、P&Gでのファブリーズのブランドマネージャー担当や、あの絶頂期のキムタクを起用したリーバイス501のCMキャンペーン、近所の清澄白河で長蛇の列をなしていたブルーボトルコーヒーなど、彼の手掛けた仕事がイメージし易く親近感が湧く内容であったのも読み易さに繋がっていると感じました。ただ、何よりも一番驚かされたのが後書きだったというのは、これまでの高杉作品には無いどんでん返し感で面食らいました(笑)。ご興味の有る方はぜひ本作のレビューなどを参照せずにご一読されることをお薦めします。

このところ毎日本屋大賞2024の順位予想のことが頭から離れません(笑)。もうすぐノミネート10作品の2度目の通読が終わるのでいよいよ感想を書きながら順位を付ける段階ですが、その作業をしつつ別の本も読んで更にブログも書くというのはなかなかにハードで帰宅後ゆっくりする暇が全く有りません(涙)。4月最初の投稿で予想を発表いたしますので苦心の結果に乞うご期待です!

読書日記ランキング
読書日記ランキング

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA