金次郎、「破天荒」(高杉良著)を読み破天荒なレジェンドについて回想する

金次郎は入社以来化学品業界でお世話になっておりますが、石油化学新聞記者から経済小説の大家となった高杉良先生の自伝的小説である「破天荒」(新潮社)を読み、日本の石油化学産業の勃興期の雰囲気を感じなんだか嬉しくなりました。本名の杉田亮平として実際に書かれた署名記事の引用などを通じて臨場感いっぱいに描かれる日本合成ゴムの工場建設から民営化までの流れは、現在の業界地図との対比という視点で読むと業界構造の大きな変化に改めて驚かされますし、エチレン不況カルテルのスクープ記事に関する様々な反応の生々しい描写からは当時の石化産業の苦境が伺えると同時に、これも現在との比較において官民の関係の変容に改めて思いを致す契機ともなりました。エチレン不況カルテルといえば、金次郎が入社した当時にもその残滓のようなものが存在していたな、と思い出して懐かしくなる一方で、自分も随分長くこの業界にいるものだ、となかなかに感慨深いものが有りました。また、これまで「炎の経営者」(文芸春秋)などの高杉作品を読んで感じていた小説的でないジャーナリスティックな文体のルーツを垣間見ることができた読書体験だったとも言えると思います。

一瞬ご自身のことを破天荒と言ってしまうセンスは若干どうなのだろうか、と感じる一方で、金次郎が社会人となった約30年前ですらこの業界には社内外問わず破天荒な方がたくさんいらっしゃったことを思い出し、いわんや高杉先生は更に一世代前の方ですので、このタイトルにも納得した次第です。噂で聞いたものも含めですが、若かりし頃の金次郎の記憶に鮮烈に残っている破天荒例を挙げますと、会社の給湯室でママレモン(最近あまり見ないキッチン洗剤)で颯爽と洗髪される方、朝まで飲んで出社後すぐにトイレの個室に入って寝たら便座にお尻がはまって抜けなくなった方、「あれがあれでそれがなにして」と指示代名詞的な言葉でほぼ会話を成立させる強者、その後大変なことになるとも知らずに酔っぱらって反社の方の家の立派な外壁に立ち小便をしてしまう豪傑、交通事故に遭われ顔面を負傷された際にさる有名俳優の写真を示し、「この顔に戻してほしい」とピンチをチャンスに変えようとされた胆力の持ち主など枚挙にいとまが有りません。そんな雲の上の先輩方の中でも、特に印象に残っている極めつけは、何と言っても飲み会の芸でガラスのコップを食べる技を披露される超人の方の話です。いや本当に、こういうレジェンドに思いを馳せると、常識や世間体に縛られている自分の人間の小ささがいたたまれなくなりますが、どうにか頑張って定年までにできる限り後輩たちの心に何らかの爪痕を遺さねば、と決意を新たにいたしました(笑)。

“金次郎、「破天荒」(高杉良著)を読み破天荒なレジェンドについて回想する” の続きを読む