金次郎の妻、ケーキ崩壊の中心でケーキ崩壊を叫ぶ

少しご挨拶が遅くなってしまいましたが、あけましておめでとうございます。本年も頑張ってこのブログを書き続けていこうと思いますので応援いただけますと幸いです。一応読書ブログを謳っていることもあり、年初にあたり2023年の読書結果からご紹介したいと思います。2020年の読了数が374冊、2021年は392冊、2022年は379冊であったのに対し、昨年は375冊を読み切り、どうにかこれまでのペースを維持することができました。振り返ると月30~32冊のペースで平均的に読めており、すっかり読書が生活の一部として定着した感覚が有ります。とは言え、あまり読了冊数に拘り過ぎてしまうと、少しでも時間が空いたら本を読まなくてはならないという強迫観念に襲われ、ボーっとする時間が全く取れず心が休まりませんので(涙)、今年は緩めに350冊ぐらいを目標に中身の濃い読書をしていければと思います。でも早速年末に引き続いて三が日も読書にどっぷり浸かった生活となってしまいいきなり反省しているところです。

そんな中でも微妙に外出はしておりまして、29日は青葉台の整体の先生に年末のご挨拶をした後に地元に戻って日本橋高島屋の地下で食事をして帰ったのですが、金次郎はデパート入り口でのいつになく丁寧な対応を見て配達クリスマスケーキ崩壊事件からの信頼回復に努めているのだなと心の中で店員さんを労いつつ地下レストランエリアに向かっておりました。年末ということもあってか非常に混み合っていたため、入店までの待ち時間つぶしの足しにと、金次郎が妻にネットで何か面白いニュース無いの?と聞いたところ、あのケーキ問題は原因究明せずに幕引きするらしいよ、と音量調整無しに記事内容を説明し始め、大変肝を冷やす一幕が有りました(笑)。TPOそっちのけで目の前のおしゃべりに熱くなってしまいがちな性分と、直前にディンタイフォンの小籠包かグリル満点星の洋食かの選択で頭がいっぱいになってしまったことが運悪く重なって、ここが高島屋の本拠地ビル内部であることを完全に忘却し不適切発言に至ってしまったようで、金次郎は報復としてわざと崩壊させたオムライスが運ばれてくる事態に怯えながらお料理を待つこととなりました。大晦日は我が家の恒例行事である日本橋三越に10時の開店前から並んで三が日の食材を確保するという一大イベントが有り、前年に開店20分前に行って長蛇の列に驚愕したことを踏まえ、今回は開店40分前を目指し家を出ることといたしました。すると思惑通り前年の2列目から1列目に昇格して並ぶことができ、よし今年は最大の目標である人気ローストビーフをあまり待たずにゲットできるぞとほくそ笑んでおりましたが、開店と同時にかなりのダッシュでお店に向かったものの、既に10組ほどに先を越されるという意外な状況に呆然とする事態となりました。二人でがっくり肩を落としつつ待ちながら敗因を分析した結果、前回はまだコロナ期間だったこともあり入り口が屋外の一か所に限定されていたのに対し、今回からは地下食料品売り場入り口にも並ぶことができるようになっていたことに気づかず、のほほんと従来通り1Fの入り口に並んでしまっていた我々は食料品フロアへのアプローチが若干不利になってしまったという結論に至りました。来年はこの反省を活かしちゃんと地下に並ぼうと思います。さて問題のローストビーフですが、相変わらずの大人気で、有り得ない数量を購入されている明らかにお金持ちのおばさまが複数散見され同じ列に並んでいることにやや引け目を感じた一方で、昨年遭遇して嫌な気分にさせられた、「ここのお肉うちのワンちゃんの大好物なんですのよ」といううちの妻を圧倒的に凌駕する不適切発言をしたセレブおばさまが近くにいなかったのがせめてもの救いでした(笑)。人間である金次郎夫婦でございましたが、和牛もオーストラリア牛もどちらも大変美味しくいただきました。

さて今年も懲りずに本の紹介を続けて参ります。「世襲 政治・企業・歌舞伎」(中川右介著 幻冬舎)は、政治、企業、芸能の各分野での〈世襲〉について、首相経験者、阪急、西武などの私鉄各社、トヨタ、ホンダなどの完成車メーカー、市川團十郎や尾上菊五郎といった名跡を継承していく歌舞伎の世界を例にとり、その権威や権力が受け継がれていく実態を明らかにしたノンフィクション作品です。良くも悪くも実力でのし上がってきた戦後第一世代の政治家が現役を退いた後、地盤、知名度、若いうちから政界でのキャリアを築けるという明確なアドバンテージの利用が当たり前となり、第二世代以降歴代首相をはじめとして急速に政治の世襲化が蔓延した現状及び背景がよく分かり興味深い内容でした。企業パートでは、阪急の創業一族が宝塚歌劇団を創めたことは何となく知っていても、その東京支部的な位置づけの東京宝塚歌劇団が東宝の前身であった点は知らなかったので驚きました。そして、この阪急の一族に名を連ねているのが熱血漢松岡修造さんと知り、その御曹司の雰囲気に納得すると共に、やはりテニスはお金持ちのスポーツなのだなと改めて認識いたしました。自動車メーカーでは世襲のトヨタとそうでない日産が対比されて解説されていますが、世襲の仕組みが無い組織では権力移譲のメカニズムが機能しにくく、スターリンやプーチンあるいはカルロス・ゴーンなども例示しつつ長期独裁政権が出現し易い点が強調されていたのが印象に残りました。そして、この本でとりわけ勉強になったのが歌舞伎についての解説部分でした。お恥ずかしながら浅学の金次郎は歌舞伎の世界に全く疎く、何ゆえに市川海老蔵(現在の13代市川團十郎)がそんなにもてはやされるのかについて全く理解しておりませんでした。この本を読み、歌舞伎界で初めて親子で名跡を世襲したのが市川團十郎であり、その名跡の格は他の大名跡より一段上で、歌舞伎=市川團十郎と言っても過言でないというほどの存在と知り漸く合点がいく思いでした。その他にも市川團十郎宗家の弟子筋としてその芸の世襲を脇で支えてきた歴代松本幸四郎をはじめ、市村羽左衛門、中村勘三郎、尾上菊五郎、中村吉右衛門、片岡仁左衛門、中村歌右衛門などの名跡についてもその継承に興味が湧き、「歌舞伎 家と血と藝」(同 講談社)、「団十郎とは何者か」(赤坂治績著 朝日新聞出版)を読んで勉強し、だいぶイメージが掴めてきました。そもそも歌舞伎は、古くは中村座、市村座、森田座(後に守田座に改称)の江戸三座と呼ばれた座元、近年には松竹に代表される興行主の影響力が強く(中村勘三郎や市村羽左衛門は座元の名跡ですね)、それらのパワーバランスに役者の移籍が絡んで非常に複雑であること、成田屋、成駒屋、音羽屋、髙麗屋、橘屋などの屋号が別に存在すること(それに加えて市川團十郎=堀越家、尾上菊五郎=寺嶋家のように本名も有る)、それぞれの一門が日舞の家元にもなっていて混同しがちなこと、歌舞伎特有である女形の存在、家を繋いでいこうとする執念がもたらす複雑な実子・養子関係、そしてとにかく襲名を通じて次々と名前が変わることによる覚えにくさがあいまって非常にとっつきにくい世界となってしまっております。その上、歌舞伎そのものをテレビでもライブでもほぼ観る機会が無く、紙の上での知識とその実態が容易に結びつかないというのもこの世界に入り込むハードルになっていたように感じました。ただ、今回学習して基礎の基礎のイメージは持てたと思いますので、今後も関連本を読み、劇界に関するニュースに注意を払いつつ少しずつ勉強していこうと思います。まだまだ7代目市川團十郎が整備した歌舞伎十八番をはじめとした演目や、時代物、世話物、世界といった様式についての知識が全く無いので先が長過ぎて気が重いところではあります(汗)。

最後に簡単にもう一冊だけ。「植物少女」(朝比奈秋著 朝日新聞出版)は、自分の出産時に植物状態になってしまった母への複雑な思いを抱く主人公美桜が、物言わぬ母との長年にわたるコミュニケーションを通じ、自らの存在や社会との関係、生きるということ、愛するということについての思いを深め成長していく様子を描いた大変胸に迫る作品でした。美桜の父親や祖母の葛藤もさることながら、親戚の冷たい反応にもリアリティが有り、慢性病棟に入院している同じく植物状態の患者達やその家族、医師や看護師とのやり取りには心に沁みる部分も多く、自分の人生を見つめ直す上でも良い読書体験になったと思います。

年始の3日には大好きな大阪お好み焼きのきじに並んで豚玉と焼きそばを堪能いたしました。散歩しながらの帰路で、たまたま箱根駅伝のトップを走る青山学院のアンカーを応援することができたので、今年は何かいい事が有るかなと勝手に期待しております(笑)。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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