金次郎、新年にあたって高過ぎる目標を設定

前回のブログでは今年の読書量を350冊程度にしようと目標を定めました。ふと気付いたのですが、毎年読書量の目標は真剣に設定するものの、それ以外のその年の過ごし方についてはほぼ放置となっており、必然的にめりはりの無いのっぺりした日常となるだけでなく、今後の人生設計にとって重要なリスキリングなどのテーマも完全に疎かになっており反省いたしました。と言うことで、今年は肩に力を入れまくって新年の抱負について考えてみたのですが、この場で発表することで退路を断って達成を目指したいと思います。

①先ずは妻の股関節痛もかなり回復し、長時間座ったり歩いたりするのにもさほど支障が無くなってきましたので、今年は思い切って海外旅行にでも挑戦してみようかと思いつきました。さすがに10時間以上のフライトはまだ厳しいと思いますので、アジアの近場とするか、ハワイぐらいまで足を延ばすか考えどころです。これ遊びの予定ですね(笑)。②このブログにも書いた昨夏の温泉企画が非常に楽しかったこともあり(読書家金次郎、文豪にあやかる初夏の伊豆行 前編中編後編)、Aさんとはまた今年も行きましょうという話になっており、北関東か東北か諸々吟味の上で実現したいと思います。これまた遊び。③遊びばかりではさすがにまずいと思い直し(笑)、これまで時間がかかり過ぎるので敬遠してきた洋書の原文読書に挑戦したいと思います。英会話の先生からは英語での読書が上達に必須と毎回うんざりするほど言われ、日本語でしか読書をしていないと言うとため息をつかれますので、ちょっと長めの古典名作でも読んでおいて、あれとあれは英語で読みましたけど何か?と言い放ってみたいと思います。その過程で、改めて最近疎かになっていた英単語やイディオムのボキャブラリーをブラッシュアップして少しはマシな英語がしゃべれるよう頑張りたいと思います。④これは昨年の人間ドック時から継続している課題ですが、10月の人間ドックまでに体重をあと2.5Kg落として、その後は57Kg台前半を維持し、絶対に検査後の講評時に数値改善を自慢したいと思います。指名料を支払ってでも前回金次郎を鼻で笑ってきた医師と対決したいところです。⑤このブログも5年目に入り、過去の記憶を搾り出すのもかなり限界に近付いておりますので(涙)、何かしら新企画を考えようと思います。ややビジネス寄りにしてこれまでの経験や知見を共有する回を時々差し込むか、はたまた不定期に創作を試みるか。でもどちらも難易度が高く過去の切り売りの方がまだ簡単な気がします(汗)。⑥これも以前どこかで書きましたが、今年はストレス発散も兼ねてカラオケを復活したいと思います。ただ歌うだけだとつまりませんので、たくさん自主練してコロナ前より上達した状態で再デビューを目指したいと思います。なんならカラオケ教室に通ってもいいぐらいです(笑)。これらを全部こなすにはかなり通常の読書を犠牲にしなければならず、やや自分にとって大切なことを見失ってしまっている懸念も否定できない上に、人生設計ともリスキリングとも無関係な抱負となり呆然としておりますが、とにかく色々と挑戦して楽しく思い出深い一年にしたいところです。適宜このブログで経過を報告して参ります!年末に何もできていなかったらすみません。

さて本の紹介です。この年末年始で長年の懸案であったSF超大作の「三体」シリーズ(劉慈欣著 早川書房)を読破いたしました。オバマ元大統領も、ここで描かれる異星人との緊迫した駆け引きと比べれば議会での折衝など苦にならないと絶賛した本作は、SFで宇宙と来ればお約束の量子力学のオンパレードで好みの領域ということもあり知的好奇心がたっぷり充足されました。シリーズ第1作の「三体」は中国のインテリ層には地獄であった文化大革命時代に父を亡くし社会に絶望した科学者が恐ろしいことをしでかすという、シリーズの準備運動的な位置づけの作品です。作中に出てくるゲーム〈三体〉のコンセプトが本当によく練られていて、ゲーム内で様々に提示される事象の暗喩を一生懸命読み解く作業も、ほぼ徒労に終わったものの(涙)、なかなかに楽しかったです。どれだけクリエイティブであろうとも、描写してしまうと現実感が出て陳腐になってしまいがちなのですが、作中では敵である三体星人の姿かたちがほぼ描写されないことによって、その底知れぬ恐ろしさが逆に際立つ効果を生んでいて唸らされました。「三体Ⅱ 黒暗森林」()では、ただでさえ三体星人とは圧倒的な科学技術力の差が存在する上に、量子もつれの片割れの陽子コンピューター=智子を地球に送り込まれてしまったために、全ての情報が筒抜けになると同時に物理学の基礎研究ができなくなって科学が進歩しないという絶望的な状況に陥る中で、頭の中で考えていることだけは三体星人に見破られないという細すぎる蜘蛛の糸にすがって対抗しようとする地球人がなかなかに健気に描かれています。敗北主義が蔓延する中で何とか事態を打開しようと知恵を絞って三体星人の裏の裏をかこうとする〈ウォールフェイサー〉と、そのまた裏を狙ってくる〈ウォールブレイカー〉の駆け引きは大変読み応えが有りました。終盤で出てくる、猜疑連鎖・技術爆発というキーワードとタイトルに有る〈黒暗森林〉の関連が明らかとなって終幕に向かうあたりの興奮度合いは凄かったです。宇宙空間での〈終末戦争〉の描写は凄まじいの一言でした。いよいよ完結編の「三体Ⅲ 死神永生」()では、ものすごく壮大な空間的、時間的スケールで描かれる〈愛〉がテーマの物語です。男性と女性、鷹派と鳩派など著者お得意の二項対立の構図を通じて、人間の本質的な部分が語られ、社会の雰囲気によって善が悪に、そしてまた悪が善と見なされるといった人間の弱い部分や群集心理の怖さについても描写されるちょっと社会派な雰囲気も含んでいて一瞬SFを忘れました。金次郎は重要人物である雲天明が長い時間をかけて考え御伽噺の中に異星人に分からぬよう忍ばせた暗喩を、地球人が必死で読み解いている場面が最も気に入りました。と説明しても全く内容がご理解いただけないと思いますので、ぜひ実際にお読みいただくことをお薦めいたします。少しだけ量子力学の基礎をさらっと眺めてから読むと没入感がかなり上がると思います。

「源静香は野比のび太と結婚するしかなかったのか」(中川右介著 PHP研究所)は国民的マンガであるドラえもんの中に現代社会で深刻化する様々な課題が50年前から既に表出していた事実を明らかにするなかなか興味深い内容の本でした。なぜ本来ヒロインである筈のしずかちゃんが特に同性である女性から徹底的に不人気なのかについて、自己主張が無さ過ぎて人間性が見えてこない、同性の友人がいなさ過ぎる、必ずしものび太を守るわけではない母性の日和見性、お風呂を覗かれることを許容してしまうジェンダー意識の低さ、そしてスクールカースト上位にありながら最終的にはのび太と結婚して鬼ババ的専業主婦になる負け組的な将来への嫌悪といったどちらかと言うとフェミニズム的な視点を軸に掘り下げている最初の章が特に面白かったです(笑)。映画を中心とした〈冒険物〉ジャンルの作品ではそれなりに戦闘ヒロインの様式にはまってくるなど、著者はどちらかと言うとしずかちゃん擁護派の立場でした。暴力を正当化するためには多数VS少数の構図が必要であり、故にジャイアンはのび太をいじめる際に腕力的にはほぼ役に立たないスネ夫という存在を必要とするという構造を、国際社会の同意を錦の御旗として武力介入を正当化するアメリカ外交のアナロジーとして分析するくだりにも興味深いものが有りました。関連本として紹介されていた「トワイライト」(重松清著 文藝春秋)も読んでみました。小学校のクラスの中でのポジションがジャイアンとしずかちゃんにあたる二人が結婚して40代間近になっているという設定のお話なのですが、ジャイアンはDV夫になっているは、一方のしずかちゃんは元のび太と不倫をしたがるという破天荒かつ悲しい展開に、さびれ行く郊外の団地という舞台が醸し出す落日感が加わって胸が苦しく切なくなる作品でした。タイムマシーンになぞらえた小学校卒業時に埋めたタイムカプセルも小道具として上手く効いており巧さを感じますが、若い非ドラえもん全盛期世代にはやや理解されにくい作品だと思います(笑)。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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