金次郎、映画ハイキュー!!とバンドSPYAIR復活に大感動

バレーボールに打ち込む高校生たちを描いた人気マンガ・アニメシリーズ、「ハイキュー!!」の映画化作品である「劇場版ハイキュー!!ゴミ捨て場の決戦」が現在大人気で、封切り後僅か20日足らずで興行収入は既に50億円を超えるという大ヒットを記録しています。元々テレビアニメシリーズも第4期まで全て観てきた「ハイキュー!!」ファンの金次郎ですので、当然時間を見つけて映画館に足を運びました。特典欲しさも有り早々に観賞済みであった妻も、感動をもう一度ということで一緒に行くこととしましたが、さすがは「ハイキュー!!」の中でも屈指の人気エピソードである〈烏野高校VS音駒高校〉のライバル対決を描く内容ということで妻は冒頭から、金次郎もかなり序盤から滝のように流れ出す涙が止まらぬ涙腺崩壊状態となり、終演後も暫く立ち上がれない有様でした(笑)。

本作は烏野の1年生で〈小さな巨人〉に憧れる日向翔陽と音駒2年でコミュ障&頭脳派セッターの孤爪研磨との真剣勝負と熱い友情を軸に展開しますが、金次郎の拙い文章ではあの感動は絶対に伝えきれないのでここで詳細は述べません。理屈を越えて広がる世界の可能性に触れたことで、普段感情の動きに乏しい研磨の情熱の火種が灯りとなって輝いた瞬間の感動を是非映画館で味わっていただきたいと思います。恥ずかしながら、こう書いているだけで泣けてきます(汗)。金次郎夫婦が本作に感動する理由がもう一つ有り、それは主題歌を担当しているというバンドSPYAIRへの思いです。ストレートなロックサウンドを武器にアニメ版「ハイキュー!!」の主題歌をはじめ、これまでも数多くのヒット曲やアニメタイアップ曲を手掛けてきたSPYAIRでしたが、2年前にメインボーカルのIKEが突然脱退を宣言し、バンド継続は決めたものの、ボーカル不在で満足な活動ができず、ファンとしてはやはり解散の危機なのではと気をもむ状況が続いておりました。夫婦でよくライブを観に行っておりましたので、残ったそれぞれのメンバーにも思い入れが有り、我が子を見守るかのようにやきもきしながら動向を注視してきたのですが、ライブもできず新曲も出せない苦境にあっても、彼らはとにかく諦めずに次のボーカルを探すべく活動を続けておりました。すると、そんな彼らの姿を見て興味を持ってくれるプロデューサーも現れ、2代目ボーカルを選ぶ大々的なオーディションが企画されるに至り、遂に新ボーカルも決まり、1年の雌伏期間を経て昨年活動再開にこぎつけました。それはそれで感激だったのですが、圧倒的な存在感と色気の有るIKEのボーカルが特徴的なバンドでしたので、他メンバーより一回りも若く歌声もやや繊細な新ボーカルであるYOSUKEが過去のナンバーを歌っている音源を聴くとやはり違和感を禁じえず、どうなってしまうんだろうと傍観者ながら老婆心を募らせておりました。ところが、今回のハイキュー!!とのビッグタイアップとなった主題歌♪オレンジが主役の一人である研磨のZ世代的な雰囲気や映画全体の世界観と非常に良くマッチしており、過去の二番煎じではない新生SPYAIRの将来性を実感することができる楽曲に仕上がっていたのが嬉しかったです。しかも、〈絶対に諦めない〉という「ハイキュー!!」のメインメッセージとSPYAIRの復活までの経緯が劇的にオーバーラップすることもあって、本編で泣き過ぎてとっくに枯れたと思っていた涙がエンドロールの主題歌の場面で更に大洪水になるという感動をいただくことができました。♪オレンジは各種音楽チャートでも上位に入っており、一旦消えかかったバンドとしては本当に奇跡的な復活劇で、諦めない気持ちの大切さを学ばせてもらったSPYAIRをこれからも有難く応援していこうと思います。

さて本の紹介です。「気がつけば地獄」(岡部えつ著 KADOKAWA)はSNSが介在することで物語が予測不能な展開を見せるちょっとホラーなサスペンス小説です。37歳専業主婦の紗衣が夫に内緒で購入した美顔器が同じマンションの別の部屋に誤配達されるところから物語は始まります。なんとこの誤配達を差配したのは紗衣の夫の不倫相手である夏希なのですが、この紗衣と夏希がSNS上で繋がることで問題はどんどん複雑化し気持ち悪さが増していきます。内容的には紗衣と夏希はそれぞれ自分を取り戻し、前時代的なジェンダー感覚を有する紗衣の夫が懲悪されるという比較的ありがちなフェミニズム小説なのですが、いつ瓦解してもおかしくない薄氷の三角関係がひたすら続いていく展開のスリリングさのせいでそんなテーマの平板さは全く気にならず一気に読める作品でした。薄氷がバリバリと破れるラスト数行は読みごたえ充分でした(笑)。同じく岡部先生の「嘘を愛する女」(同 徳間書店)は長澤まさみ主演映画のノベライズ作品となります。主人公の由加利は、震災時のふとした出会いの後に奇跡の再会をし現在は同棲5年目となっている気が利いて大らかな恋人の桔平との結婚を意識していますが、そんな桔平がくも膜下出血で病院に緊急搬送され意識不明の重体になるという非常に辛いところから物語は始まります。そして、更に傷口に塩を塗り込むが如く、「ある男」(平野啓一郎著 文藝春秋)と似たような展開ではありますが、入院に関する一連の事務手続きの中で桔平の名前から職業に至る全ての情報が偽物であると判明し由加利はどん底に突き落とされます。これまで食品会社の一線でキャリアを積んできた由加利でしたが仕事も手に付かず、私立探偵を雇って桔平の過去というパンドラの箱を開ける決意をし、遥か瀬戸内まで旅にでる展開となるわけですが、それなりに爽やかなラストは読んでからのお楽しみとして、金次郎的にはやはり出会いと再会の場面がややご都合主義に見え気になってしまいました。また、桔平が医師でありながら、それなりに読ませる小説風の日記を書いている点にも嫉妬的反感を覚えましたが(笑)、まぁ映画だから仕方無いですかね。

「真夜中法律事務所」(五十嵐律人著 講談社)は「法廷遊戯」(同)での鮮烈なデビュー以来「不可逆少年」(同)、「原因において自由な物語」(同)と講談社から立て続けに質の高いリーガルミステリーを世に出してきた著者の新境地となる特殊設定ミステリーです。真の殺人犯が何らかの形で裁かれるまで殺人事件の被害者である死者が成仏できないというなかなか面白い〈死者のルール〉が設定されているのが味噌なのですが、この設定が、ある事件がきっかけで成仏できない幽霊が見えるようになってしまった検事が、成仏に向け冤罪あるいは未解決事件の真相を暴き真犯人を見つけるべく奮闘するというストーリー展開の妥当性をきっちり支えていて素晴らしいと思います。そして、〈死者のルール〉は全貌が明らかになっていないために、これをどこまで論理的に敷衍して実際のケースに当てはめて考えられるかが事件の謎を解く一つの鍵になっている点が読者に頭を使わせる効果を生んでいてよく考えられているなと感心いたしました。裁判での結審後に幽霊が見えるか否かで冤罪を生み出してしまったことが明白となることから、検事が自分の仕事の責任に押しつぶされそうになるというのはなかなか面白い切り口でしたし、現在の起訴後有罪率が99.9%である一方で不起訴処分が6割を超えているという状況を是正し、司法制度の正当性を法曹界全体で担うべきとの観点から全件起訴を目指すという考え方は、既にそういう議論は為されているのでしょうが、物を知らない金次郎にとっては非常に斬新で勉強になりました。

先日の定期検査で少し眼圧が上がっていたのでダイアモックスという薬を服用しているのですが、この薬は眼球の中だけでなく体中の水分を排出させる働きが有り、副作用として手足のしびれやだるさという症状が出ます。それらはいつものことで諦めているのでいいのですが、水分排出のせいで一気に体重が減って目標を急激に達成しそうになっており、ちょっと複雑な気分です(涙)。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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